| 補習二日目。
前回の確認テストから始まった授業のあと、私だけがなぜか杉鉄に呼び出された。
「今回の答案…」
差し出された一枚の紙切れ。 「おっ♪満点♪」
「…ねぇ。なんで?」
「いや…私、やればできる子なんですよ〜」
へらっと笑う。
「仲田さん?」
杉鉄の目は真剣。
「いや。テストの日は頭痛がひどくて…」
上目づかいにうかがうと、表情は硬いまま。
「すいません。」
ぺこっと一礼。 なおも変わらない杉鉄の目。
「私の教え子にも一人、白紙答案出した子がいたの。 この学校の子じゃないけど。 何か自分で解決出来ない悩みがあったら、ちゃんと誰かに頼ってね。 もちろん私でもいいから。」
へぇ…こんな模範的なお説教が、鉄の杉山から聞けるなんて…ちょっと意外だわ。 同じことを理子にも言うのかって思ったら、複雑な気分だけどさ。
そこから少し間があったから、話はそれだけなんだと思った。
さっさとこの場を終えよう。 そう思って切り出した。
「私悩みなんてないんですよ。」
いつもの営業スマイルを惜しみなく。
「白紙答案もほんの出来心ってヤツで…反省してます。もうしません。まじめに補習も受けますんで」
申し訳なさそうな表情もちゃんと演出…
「すいませんでした。」
一気に言って、一礼。 ドアへ向かう。
「仲田さんっ」
私を追いかけるように杉鉄の声。
呼び止めたくせに、 ためらいを見せ そして、やっと口を開く。
「良くない噂聞いたんだけど…本当?」
なんか最近よく耳にするフレーズだな…。
あぁ…本題は
そっちか。
(携帯)
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