ビアンエッセイ♪

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■17471 / inTopicNo.41)  りょうさんへ
  
□投稿者/ mama' 一般♪(6回)-(2006/12/15(Fri) 00:00:03)
    コメントありがとうございます。
    四月から半年以上放棄してたお話なので・・コメント頂いてオドオドしてます。
    でも、もちろん嬉しいです。
    続きも少しずつですが書いていきたいと思いますので
    よろしくお願いします。


    (携帯)
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■17609 / inTopicNo.42)  スマイルストリップ 26
□投稿者/ mama' 一般♪(7回)-(2007/01/05(Fri) 21:32:33)
    言葉も出せず、私は固まったまま。

    しばらくそうしていると、なんとか落ち着いたみたいで
    腕の中の理子が静かな声で私に尋ねてきた。

    「ねぇ
    未樹にはきょうだいっている?」

    「・・姉が一匹いるよ」

    「何よ、一匹って」

    理子はくすくす笑い出して、
    抱きしめた腕から小刻みに振動が伝わってきた。

    「仲良し?」

    「ほぼメイドかなぁ」

    義理だとは言わなかった。
    チホ姉のこと。

    「未樹がメイド?」

    「うん

    ジュース持ってきてとか
    おなかへったとか
    アイロンかけてとか
    朝六時に起こしてとか
    宇多田ヒカルのモノマネしてとか
    芸人ネタやってとか

    ・・?

    んっ?

    そんなに笑える??!」

    泣いているからじゃない背中の揺れ。

    あ・・ほっとする。

    「うん
    だって、だって
    モノマネって〜

    似てるの?」

    「らしいよ」

    「え〜
    やってやって」

    「絶対イヤ」

    「やってよ〜」


    声が明るくなったから
    嬉しかった。



    私が何かしら言って、それで元気になってくれるなら

    それでいいじゃない。


    それだけで

    いい

    反応が嬉しい。



    満たされてく感覚。

    与える快感。


    もっともっと

    笑ってよ


    (携帯)
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■17610 / inTopicNo.43)  スマイルストリップ 27
□投稿者/ mama' 一般♪(8回)-(2007/01/05(Fri) 21:35:24)
    そして補修日程は順調に過ぎ・・。私は約束通り、さぼらないで夏休みの学校に通った。

    でもね。
    ただ、理子との約束だからってだけじゃなくて・・、
    授業はマジメに受けてたと思う。

    ニコリとも笑わない杉鉄

    冗談も脱線もない授業

    なのに何故か
    「英語理解できたら楽しいんじゃ?」
    と思わせるような、説得力に満ちてて・・

    「今、英語理解出来てるじゃん」と、そんな興奮すら湧いてきて・・
    驚いた。

    杉鉄に感じてたお固さとか近寄り難い壁みたいなものは、薄くなってた。
    馬鹿にすらしてて、からかう対象でしかなくて、
    理子が好きだと知って正直
    「どこがいいの?」
    なんて思ったのに。

    授業に関しては、
    あくまで誠実でストイックな杉鉄。


    理子が惚れるのもちょっとわかって、
    軽く凹んで

    「マジメな自分」っていうキャラもこそばゆくて、

    相変わらず軽口叩いてはいたけどさ・・・。


    補修を受けて良かった。
    あのまま及第スレスレの一夜漬けばかりしてたら、こんな楽しみには

    きっときっと

    気付かなかった。





    (携帯)
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■17611 / inTopicNo.44)  スマイルストリップ 28
□投稿者/ mama' 一般♪(9回)-(2007/01/05(Fri) 21:40:50)
    授業後、
    解らないトコロを教えてって言ったら、理子は目をまるくして固まった。

    「別に中学まではマジメに授業受けてたんだよ?」

    「知ってるけどさぁ。
    いきなりどうしたの?」

    ぐっと言葉に詰まる。
    まさか、杉鉄の授業きいてたら英語に興味わいてきた・・なんて恥ずかしくて言えない。

    にまにま笑う理子に問題を突きつけたら、そのまま再び、
    でも別の意味で固まってた。

    「あっ。これ、

    私もわからない・・」

    「んっ」

    「atの前で区切るでしょ・・agonyが苦痛だから・・えっと・・」

    「ん〜理子もわからない?」

    困ってるのが楽しくなってきた。

    「じゃぁ、質問行こっかぁ〜」

    「えっ、それって」

    「杉山センセのとこだよ、もちろん」

    ニマニマ笑うのは今度は私。

    「いや。いいよ、いいよ。
    私、家で調べてくるし。
    多分、似た構文載ってる参考書あるはずだからっ。」

    慌て始めてる。
    一気に形勢逆転。

    「今聞いちゃえば早いよ」

    「いや、マジ勘弁〜」

    私の言葉が移った理子。
    優等生はマジ勘弁なんて言わないよ?

    じゃぁ、私、一人で行ってくるよ〜って言ったら
    慌ててついてきた。


    自分自身に対してすら鈍感な私。



    「個人同士の壁を越えた理解が苦痛であり、それを意識すらできないなら、
    自分に対する理解も困難になる。」

    丁寧に解説してもらったテキストに、
    私はまだ

    なんの感想もなかった。



    (携帯)
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■17612 / inTopicNo.45)  
□投稿者/ miya 一般♪(5回)-(2007/01/05(Fri) 23:14:22)
    一度に沢山の更新、ありがとうございます。
    飛びついて読んじゃいました。
    無理をせずに続けてくださいね。

    「個人同士の壁を越えた理解が苦痛であり、それを意識すらできないなら、
    自分に対する理解も困難になる。」

    う〜ん・・・含蓄のある言葉だわぁ〜
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■18149 / inTopicNo.46)  スマイルストリップ 29
□投稿者/ mama' 一般♪(1回)-(2007/02/25(Sun) 22:42:58)
    机に向かう習慣がついた。
    単語帳も始めてみた。

    それは、受験生の夏にしては遅すぎるスタートライン。

    夏期講習なんて行ってみたりさ。
    (普通は夏前に予約するんだろうけど)


    チューターという便利な存在がいて、自習室にこもって勉強にいそしんだ。

    理子とは、たまにマックでお茶をして、一緒にその日の復習をする仲になった。
    まぁ、難易度が段違いなんだけど。

    そんな日が続くんだと、漠然と思うとも思わず・・いた。
    まったくの大きな勘違いだ。



    いつものように自習室で勉強して、解らないトコロをチューターに聞きに行く・・


    途中まではすべて、いつも通りだった。


    「仲田さんって、聖泉でしょ?
    杉山先生って知ってる?」

    そいつが、そんな質問をするまでは。

    (携帯)
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■18150 / inTopicNo.47)  スマイルストリップ 30
□投稿者/ mama' 一般♪(2回)-(2007/02/25(Sun) 22:44:49)

    「杉鉄のこと、知ってるんですかぁ」

    気の抜けた返事をして、テキストをめくった。
    目の前のチューターは20半ば位のお固そうな男で、顔を上げて話す気にもなれない。

    「知ってるも何も、元々ここのチューターだったからね。
    懐かしいな〜。
    鉄壁の杉山ってさ、講師より人気あったから。合格は堅いってね。」

    あだ名・・最初はそんな意味だったんだ・・。
    私も、今となっては納得できた。

    補修でさえ手抜きせずに、授業分と自宅学習分のプリントを用意してた杉山先生。

    勉強するきっかけをくれた杉山先生。

    昔の理子を変えた、杉山先生。


    理子の好きな

    杉山先生。


    なんでだろう。
    なんだか急にイライラしてきた。

    席を立ちかけた私に、慌てて引き止めるように男が口を開く。

    「っそういえばさあ」

    しつこいな・・
    だから、もてないんだよ
    これみよがしに眉根を寄せて振り返る。



    「杉山先生、夏休みで辞めて

    イギリス行くんでしょ?」




    ・・・え?



    (携帯)
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■18151 / inTopicNo.48)  miyaさんへ
□投稿者/ mama' 一般♪(3回)-(2007/02/25(Sun) 22:54:23)
    いつもコメント、ありがとうございます。原動力です。

    遅すぎてダメダメですが、もうクライマックスです。
    しばしお付き合い下さったら嬉しいです。
    次はさほどお待たせせずにすむかと。

    親ばかですが、理子の「泣かせてよ」・・ここが書けて良かった〜。

    (携帯)
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■18153 / inTopicNo.49)  スマイルストリップ 31
□投稿者/ mama' 一般♪(4回)-(2007/02/25(Sun) 23:48:21)
    「本当は切りよく春の予定だったらしいけど、後任がみつからなかったみたいだよ。

    ウチの主任が向こうの仕事紹介しててさぁ、この前挨拶に来てたから。」


    辞める・・

    しかも、イギリスって・・

    理子は知ってるの・・?


    「まぁ、優秀な人はひっぱりダコだから。
    僕もね、弁護士の勉強しててね〜。」

    途中からは彼の自慢話へと脱線し、私が呆然と立ちすくんでるのをいいことに、チューターは話し続けた。


    私は上の空。




    「行きたいってのは知ってたよ。
    カテキョに来てたときから聞いてたもん。」


    マックシェイクをすすりながら、理子は言った。


    「冷たくないと不味いわ〜

    甘すぎだし・・」


    シェイクがぬるくなる程の長い沈黙の中で、何を思っていたのか
    私には聞けなかった。


    どんなに勉強したって、こんな時にふさわしい言葉なんて
    きっと思いつかない。


    英語も数学も歴史も

    私自身も、


    ホントに役立たずだ。



    (携帯)
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■18155 / inTopicNo.50)  ありがとうございます。
□投稿者/ miya 一般♪(1回)-(2007/02/26(Mon) 00:18:53)
    更新、ありがとうございます。
    もうクライマックスなんですね、動きも出てきたし。
    杉鉄と理子、美樹はどうなっていくんでしょう〜
    楽しみにしています・・・p(^^)q

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■18185 / inTopicNo.51)  スマイルストリップ 32
□投稿者/ mama' 一般♪(5回)-(2007/02/28(Wed) 00:18:00)
    お店を出たのは夕方で、
    そこからの理子の行動は早かった。

    「みんなで送別の色紙を書くので、早めに登校」

    そんな内容の連絡網が、クラスメートから回ってきたのが九時位だった。

    理子が話をまとめたんだろう。



    「連絡網、ちゃんと回ってきたから。」


    「ん。ありがとう。」


    連絡網の並び。

    末尾の私。
    先頭の理子。

    どんな顔、してるの?
    私、何を言えばいい?


    「色紙、理子が買い行ったん?」

    もう、こんなことしか思い浮かばない。

    「山っちが行ってくれたよ」

    学級委員の名前を挙げて。

    「本屋でバイトしてるから、社割きくらしいよ。」

    「え〜、この時期にバイト?」

    「最近まで塾すら行ってなかった未樹がいうの?」

    「いやぁ、クラスメートの心配でもと・・」

    「そんなに仲良しだとは知らなかったわ〜」

    「いや、実は顔も思い浮かばない・・」

    「まったくもう。いい加減なんだから〜」

    くすくす笑い声が受話器から震えて伝わった。
    いつもは「いい加減」だと怒るのに、かすかな声で笑ってた。

    だから、余計。
    私はその日、馬鹿なことばかり言ってたと思う。

    その度に笑ってツッコミを入れる理子と、


    初めての長電話だった。


    沈黙が怖いのも初めてで。

    今まで、誰と付き合ってても
    どんなシチュエーションでも

    こんな緊張なんてなかった。


    「じゃぁ明日」

    そう言って電話を切ったら、手にじっとり汗をかいてた・・。
    手って、毛穴もないのに汗かくんだ・・。



    じゃぁ、明日ね


    小さな当たり前の言葉がこだまする。



    先生、

    明日が別れの日になるの?


    当たり前の、ささやかな言葉さえ

    もう、理子は言えないの?

    (携帯)
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■18187 / inTopicNo.52)  スマイルストリップ 33
□投稿者/ mama' 一般♪(6回)-(2007/02/28(Wed) 00:20:45)
    あの日、私が白紙の答案さえ出さなければ、なんてことはない。
    ただの夏休みの登校日。


    最後に講堂に集まって、そのまま避難訓練がてら解散・・

    多分、そこで最後の挨拶がある。


    回ってきた色紙に、なんて書けばいいか分からず、
    「お元気で。」
    と、隣の言葉をそのまま書き込んだ。


    最後の方だったのに、どんなに探しても
    理子のコメントは見つからなかった。


    「ずいぶん考えてたじゃ〜ん」

    「授業、寝てたしなぁ」

    クラスメートの言葉に笑って答えながら、講堂に向かった。

    我ながら、無駄な笑いだ。

    どうでもいい会話を交しながら歩く。


    理子と一言も交さず。


    でも、自然と



    気配と声を追ってしまった。





    (携帯)
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■18188 / inTopicNo.53)  スマイルストリップ 34
□投稿者/ mama' 一般♪(7回)-(2007/02/28(Wed) 00:23:52)
    2007/02/28(Wed) 00:48:43 編集(投稿者)

    「続きまして・・突然ではありますが、杉山先生はこの度・・」

    長々と、残り夏休みの訓示をたれて、教頭がマイクを杉鉄に手渡した。

    簡単な形通りの挨拶の後で、それぞれのクラス委員から色紙と花束を受けとり、

    杉山はちょっとそれを見つめ
    考えこんだ後で
    一息に言った。

    「イギリスに行きます。」


    わぁっと黄色い声が、講堂に響いた。


    恋人に会いに行くの?
    先生、駆け落ちだ〜
    パツキン?
    かっこい〜

    そんなヤジが行き交う。

    「仕事です。」

    一喝。

    見事に、ホントに見事にしんとなった後、笑った。

    あの、鉄の杉山が、

    完璧冷静な杉山先生がにっこり笑って、

    「ですが、会いたい人はいます。」

    言い切った。


    今度こそ、割れるような歓声。


    私は、泣きそうだった。

    壇上、花束に囲まれ
    一人で立つ杉鉄が揺らめいた。


    止まない歓声。


    なんだかんだ、好かれてた証なんだろう。


    「静粛にっ」

    杉鉄の言葉にしんとなる。


    「If you ・・・」


    ゆっくりした英語が、マイクを通じて講堂に響く。

    あっけに取られる雰囲気には構わず、言葉を続けた。


    綺麗な発音



    聞き憶えのあるフレーズ。



    それは、あの日。
    私と理子が質問に行った文章だった。


    他人を理解するのが怖いなんて言ってたら、
    自分を理解することだって難しい。

    意訳すると、こんな感じかな〜


    あの日、遠い昔じゃないのに
    懐かしい感じがした。


    受験のための英文集だからね。
    一部分の抜粋で、多分ここで終わりじゃないのよ。
    これだけだと、確かに訳しづらいわね。


    そんな風に言ってた。



    あの日、質問した英文をそらんじ終えて、

    そこから、杉山は更にスピードを落とした。


    言葉は簡単で、私にもヒアリングできた。



    だから、自分に言いきかせる。
    自分や相手と向き合うのを恐れちゃだめだと。


    私はあの人が好きだから。

    きっと、もっと好きになるから。


    「以上。最後の課題です。

    分からなかったら、いつでも質問すること。

    私は、いつまでも


    ずっとあなたの先生です。」



    多分、最後の「I love you」に反応したんだろうみんなの、大きな歓声と冷やかし。

    収拾がつかないと判断した学年主任のダミ声が、投げ遣りに避難訓練という名の解散を告げた。


    目の前が更に霞んで

    気付いたら腕を強く引かれてた。


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■18444 / inTopicNo.54)  楽しいです
□投稿者/ テキーラ 一般♪(1回)-(2007/03/28(Wed) 18:16:48)
    なんか学生時代を

    思い出させる気がします



    気長に続きを待ってます

    (携帯)
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■18521 / inTopicNo.55)  スマイルストリップ 35
□投稿者/ mama' 一般♪(1回)-(2007/04/05(Thu) 23:06:58)

    ただ、私は引っ張らるまま。


    理子の手の湿度と
    私の気持ちは

    同調してて。


    廊下のきしみさえ、違和感なく。
    走って。

    たどり着いたのは屋上。


    そこで、やっと顔を上げた。



    理子。

    霞んで、表情が見えない。


    暑い夏。
    汗をかいた私の手を、離さずに


    しっかりと握って


    からまる足には

    でも躊躇しないで



    理子。



    理子。



    校舎を駆けた後。


    涙でぐしゃぐしゃだった私を

    抱きしめてくれたね。



    役立たずでごめん。


    泣くことしかできなくて。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■18522 / inTopicNo.56)  スマイルストリップ 36
□投稿者/ mama' 一般♪(2回)-(2007/04/05(Thu) 23:08:27)
    しゃくり上げる私を
    抱きしめて

    どれ位たったろう。

    日陰ではあったけど、
    背中をつたう汗の玉が、何度となく感じられた。


    「私ね。
    参考書の出版社にね・・電話したの」

    理子はゆっくり話し始めた。

    「出典が知りたいって。
    未樹が質問したあの英文の。

    そしたらさ。

    その問い合わせは今日2件目です、って
    同じ電話があったから、すぐ答えられますよ、って。」


    杉山先生がかけたんだ。

    あの時
    理子が関心を示したから。

    続きがあるなら読んでみたいと言ってたから。

    別れは目前だったのに。


    だから、

    「いつまでも、あなたの先生です」

    あのセリフは本心から偽りのないもので。

    理子のために
    あのスピーチはあったんだ。

    そらんじられる位、暗記して・・。


    「ねぇ、未樹。

    私、もっと先生と話せば良かった。
    もっと、もっと知れば良かった。

    怖かったの。

    拒絶されたらどうしようって。

    一生懸命、勉強して
    優等生扱いされて・・

    せめて、嫌われないようにって。

    でも、話しかける勇気がだせなかったの。

    お姉ちゃんのこと、先生から聞くのも怖かったし・・

    でも・・
    私、

    私・・・


    本当は、もっと、前みたいに・・
    マコ先生と話したかった。」


    「うん」


    「訳してもらったテキストね、
    私、自分のこと言われたみたいな気持ちだったのよ」

    「うん」

    「先生が問い合わせてくれてたって分かって、
    すごく嬉しかったの」

    「ん・・」

    「嬉しかったのよ」

    「・・。」

    「調べてくれてたのは知ってたけど、
    まさか暗記してるなんて、びっくりだったな」

    声は、どこまでも静かだった。


    「ほら、いつまで泣いてるのよ」

    ギュッと力が入った。

    「だって・・だって・・
    理子、泣かないから
    代わりに泣いてるんだよっ」

    「うん
    分かってるよ

    分かってる

    ・・ありがとう」

    いつもの皮肉もなく、素直に言うから、
    びっくりして顔を上げた。


    「未樹、ありがとう」


    理子は、笑顔だった。



    胸が締め付けられる位の。




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■18523 / inTopicNo.57)  miyaさんへ
□投稿者/ mama' 一般♪(3回)-(2007/04/05(Thu) 23:17:10)
    お返事、誤ってけしてしまってたみたいで、遅くなってしまい失礼しました。

    書き込みありがとうございます。

    未樹、最初はモテキャラだったはずなのに。
    あらら・・です。

    また、読んでもらえてたら嬉しいです。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■18524 / inTopicNo.58)  テキーラさん
□投稿者/ mama' 一般♪(4回)-(2007/04/05(Thu) 23:24:13)
    書き込みありがとうございます。
    気長にお待ち頂けるとのこと、更にありがとうございます。

    たいして長くもない話なのに、もう季節が一巡りしてしまいました。
    せめて、物語の季節も春にして終わらせたいと思ってます。

    えぇ。春のウチに完結させます。

    校舎イメージは、私の母校です。登校日の感じもそのままです。



    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■18560 / inTopicNo.59)  スマイルストリップ 37
□投稿者/ mama' 一般♪(5回)-(2007/04/09(Mon) 00:21:27)
    2007/04/09(Mon) 00:22:19 編集(投稿者)

    そして、私達は揃って、屋上のフェンス越しから先生を見送った。
    花束に埋もれた先生。

    校門に呼ばれたタクシーに乗り込む前、大きく校舎を振り返り、
    彩り鮮やかな花びら越しに
    目があった。

    ゆっくり手を振ってくれた。

    私達も振り返えした。


    静かなお別れ。


    「いいの?下降りなくて?」

    「うん。
    伝えたいこと、吐き出しちゃったから。」

    にっと笑った理子。
    怪訝な私に教えてくれた。



    「好きだって、叫んじゃったもん」


    「へっ?叫んだっ?
    いつ??」

    「体育館で♪
    みんな好き勝手ヤジ飛ばしてたから、私もまぎれちゃった〜」

    誰も気付かなかったよと、イタズラっ子みたいに言った。

    「マジで?」

    「マジで♪」


    顔を見合わせて笑った。


    「あっ、佐々先生っ」

    まずい。気付かれたっ。
    避難訓練を放棄した私達。

    慌てて、屋上を飛び出した。


    怒鳴り声は明らかに私の名前を叫んでて。

    日頃の行いが悪いからだと、「優等生」は笑った。
    最初の頃の、笑い方とは違う。

    楽しそうな笑いだった。


    私も一緒に笑った。


    ずっと、一緒に笑いたいと
    笑った顔を見ていたいと



    ふいにそう思って気が付いた。



    自分の気持ち





    理子が好き


    理子のことが好き




    まだ夏
引用返信/返信 削除キー/
■18561 / inTopicNo.60)  スマイルストリップ 38
□投稿者/ mama' 一般♪(6回)-(2007/04/09(Mon) 00:25:31)
    2007/04/09(Mon) 02:16:51 編集(投稿者)

    実際のところ、夏が終わらないどころか、気が付いたら春だった。
    いつ秋が来て、冬になったのかも分からない。
    確かに衣替えもしてたし、コートも着てたけど・・ふと我に返ってみたら、コートを脱ぐどころか制服に別れを告げる季節になってた。

    それ位に必死で勉強した。


    恋の力はすごい。
    私は見事に志望校に合格した。

    理子と同じ大学に。



    そして迎えた春、一通の絵はがきが理子の元に届いた。


    「理子ちゃんへ

    卒業&合格おめでとう。
    元気ですか?
    私は仕事にも慣れて、毎日英語と格闘してます。
    英文科にしたと聞きました。
    サマースクールでこちらへ来たら、ぜひ遊びに来てね。
    杉山眞子より

    理子へ
    友達と来れば?案内位ならしてあげる
    聡子」


    最後の二行の筆跡だけ違うのは、お姉ちゃんからのだという。


    「ね〜ね〜。一緒に来いって〜」

    「いや、一人で行くし」

    「私がいないと寂しくない?」

    「別にっ」

    「大学、結局同じとこにしたくせに〜」

    「共学やっぱりイヤだっただけだもん、未樹は関係ないし」

    「ひっど〜。
    これから一緒に住む人に、なんてこと言うのよ」

    「ウチの親が、一人暮らしするなら寮に入れるって言ったからじゃないっ」

    「まぁまぁ〜
    楽しみだね、夏。」


    手が伸びる。

    理子の髪に。

    頭をなでる。


    「髪がクシャクシャになるじゃないっ」

    真っ赤になるのは、怒ってるからじゃないって
    もう分かってる。


    もう、次の夏なんてあっという間だ。

    あの夏がくるんだよ。


    白紙の答案を出した夏。
    理子を好きになった夏。



    もっと、いろんな顔を見せて。

    ずっと追いかけるから。


    もっと知りたいから。



    〜完〜
完結!
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