| パラパラとページを捲る音だけが響く、
@静かな部屋。
「あ。ねー…これ」
んー…?
ウトウトしかけた目を開けて頭を向けると、
細い人差し指が一点を示している。
「………なに?」
「寝てるし。えい」
「いて。…寝てないよ、何?」
気だるい腕を伸ばして、額に唇を当てた。
ひんやりして気持ちいい。
「…これ観たい」
「どれ?」
体を反転させて、彼女の指の先を目で追う。
頬を寄せて、小さく並んだ文字を見ると。
“劇場スケジュール”
映画…。
おや!
「ヨコハマメリーだ」
「うん。ふふ」
「観たいんだよねーこれ…」
「行こうよ。ね♪」
……。
「随分とレアな映画の趣味が合うんだね…」
「なんか嬉しいね♪」
「本当に観たいの?」
「んー…好きそうかなーと思って…」
実は調べといた、と。 照れくさそうに笑った。
むー…。
腰に手を伸ばして抱き寄せると、
くすぐったそうに笑う。
「可愛い。ありがとう」
愛しさに任せて─
強く抱き締めて白い首筋に舌を這わせると、
「んー…?んーん。ふふ」
吐息が入り混じった声が聴こえる。
「…もっかいしよう」
耳元で囁くと─
一瞬体が小さく跳ねた後、私の後頭部を指が撫でていく。
雑誌がパサリと音を立てて落ちる。
「…ね、今から行こうよ♪」
え?
「…今から?」
唇を離して、顔を覗き込むと。
「うん♪レイトショーやってるみたいだし」
ニッと無邪気に笑った。
夢中だったせいか─
行為の最中も、したままだった腕時計を覗く。
よーっし。
「行っちゃいますか?」
「はい♪行っちゃいましょう。」
体を離して、 服に手を伸ばすと。
「だーい好き♪」
暖かい胸の中に私の頭が包み込まれて、
何だか照れくさかった。
そうやって簡単に─
人を元気にさせる魔法をかけるから。
いい事なんて一つも無かったここ数ヶ月に終わりを迎えて。
まるで─
心に淡い花が咲いたみたいです。
お次、 「第一印象」
で(^O^)☆
(携帯)
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