ビアンエッセイ♪

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■19787 / inTopicNo.41)  - 92 -
  
□投稿者/ Y 常連♪(117回)-(2007/08/18(Sat) 00:19:55)
    『あんた、気持ちの整理がつくまでココにこのままおってもえーねんで。

    ココはいずれあんたが住む家として売らずに残しておくつもりやったから。

    それに学校もこっちの家からの方が断然近いしな。

    たまに私達とご飯食べたり、どっか行ったりしながら慣れてけばいい。

    どう?』


    うん、ベスト。


    『そうするわ。』


    独り暮らし…
    みたいなもんか。




    まぁ、あんまり今までと変わらんようで




    端から、帰って来る人がいないというのは




    なんか…




    なんかな。




    あとうかいでゆーとこの




    なんだかなぁ。




    うわ…




    さぶっ。




    ベランダに出て、煙草を吸いながら




    何となく…しんみりしていたら




    手元で携帯が鳴る




    知らない番号…




    誰やろう




    『はい。』


    「あ、もしもし?」


    『はい。』


    「おいら!ゆうやけど!分かるかいな?」


    『あぁ、ゆう先輩ですか。
    こんばんは。』


    「突然ごめんね〜?
    ねーちゃんに勝手に連絡先聞いちゃった!」


    『いえ、全然いいですよ。
    どうしました?』


    「ん〜…あのさ、電話しといて何なんやけど。。

    明日の昼休み、時間もらえんかいな?
    ちょっと話したい事があるっちゃん!」


    『………?
    いいですけど。

    急ぎじゃないんですか?』


    「あ、全然♪

    じゃあ明日昼休みに中庭で席取っとくから宜しく!」


    『分かりました。
    …じゃあ、明日。』


    「うん、おやすみ〜。」


    『おやすみなさい。』


    なんやろう?




    まなみ先輩の事かな…




    電話でせぇへんって事は…良くない話なんかな。




    まぁ、今気にしても仕方ないか。




    ただ
    なんとなく、不安やったから




    まなみにメールをしてみた




    【送信メール】
    宛名:早川 まなみ
    件名:無題

    本文:寝てますかね?
    夜遅くにごめんなさい。

    早く、会いたいです。




    時間はもう夜中だから




    寝ていて当然やねんけど




    返事がなかったから




    なかなか寝付けなかった。




    朝起きても、まなみからの返信メールはなくて




    朝練中も上の空だった。




    奏音が心配して
    何度も寄ってきては
    いつもより多くかいている汗を拭ってくれる




    胸さわぎが止まらない




    なんでやろう…






    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19788 / inTopicNo.42)  - 93 -
□投稿者/ Y 常連♪(118回)-(2007/08/18(Sat) 01:24:47)
    今日の1限目は
    キクちゃんの授業やった。




    授業が終わって、席までキクちゃんが寄ってきたかと思うと


    『今日の部活終わったら、進路の事で少し話したいんやけどいい?』


    と声をかけてきた。




    何日か前




    進路希望調査があって




    私は、第一希望〜第三希望の欄全てに


    【就職】


    と書いていた。




    進学するつもりはない




    というのも
    おかんと約束してるから…




    高校卒業したら、おかんの仕事を手伝うって。




    でも本当は……




    本当の本当は




    進学したい。




    つか…




    小さい頃から
    医者になるのが夢だったりも…する。




    でも、珍しくおかんが私に強く望む事やから




    それがおかんへの恩返しになるんやったら




    それは受け入れてあげたいと思ってる。


    『分かりました。』


    そう答えると


    『あ、颯ちゃん。
    毎日まなみのお見舞いに行きよるんよね?
    じゃあ、今日私も行こうかいな♪
    行きながら話そう?』

    と返ってきた。


    ぶっちゃけ




    返事がない事が気になっていて
    早く病院に行きたかったから助かった。




    部活が終わった頃に
    職員専用の駐車場で待ち合わせする事にした




    まなみからの連絡は




    まだない…




    お昼休み




    いつも一緒にお昼を食べる奏音と美帆に断りを入れて、中庭に向かうと


    『颯ちゃ〜ん!』


    と両手を大きく振ってピョンピョン飛跳ねている結希がいた




    私はペコっと頭を下げて、小走りでゆう先輩の所まで行く。


    『こんにちは。』


    「ごめんね〜?
    呼び出したりして。」


    『いいえ。
    どうしたんですか?』


    「ん?…うん。
    まぁ座ってよ。」


    そう言って椅子を指し示す。


    席につくと


    『なんか…颯ちゃん痩せんかった?』


    と言われた。


    『そうですか?

    でもめっちゃ食べてますよ。』


    「そっか、なら良いっちゃけどね!」


    『それで…?』


    「あぁ、うん。

    いやさ…ねーちゃんの事なんやけど。」


    『もしかして昨日の夜、なんかあったんですか!?』


    「え…なんで?」


    『昨日の夜から、メールが返ってきてないので。

    こんな事、初めてなんです。』


    「あぁ…そっか。

    うん、実はさ…
    昨日の夜病院から電話があってさ。

    発作が起きたらしいんよ。」

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19792 / inTopicNo.43)  - 94 -
□投稿者/ Y 常連♪(119回)-(2007/08/18(Sat) 10:30:44)
    予感的中。




    昔から、嫌な予感は大体当たる…


    『なんで、昨日の電話の時ゆーてくれなかったんですか?』


    「ねーちゃんに言われとったんよ。

    軽い発作やったら颯ちゃんには言わんどって、って。

    まぁその言葉の通り、昨日の発作は軽いもんやったし…すぐに落ち着いたみたいやけん、今は大丈夫やと思うっちゃけど、清水ちゃんから伝えてほしいって言われて。

    明日からの外泊許可は、取り消しになるって。

    なんか、清水ちゃん携帯なくしちゃったみたいで颯ちゃんの連絡先が分からんらしくてさ。」


    『あぁ……。』


    「ごめんね。
    昨日言わんで…。」


    『いえ…。』


    「外泊できるって、ねーちゃんは知っとったと?」


    『いや、知らないと思います。
    当日まで教えずに、驚かそうとしてたんで。』


    「そっか…。

    あ…ねぇ、颯ちゃん。」


    『はい?』


    「じゃあ、逆に
    病院に颯ちゃんが泊まらせてもらうのはどう?

    おいら先生に掛け合ってみてあげよっか?」


    『え…本当ですか?』


    「うん、本当♪
    多分それなら大丈夫やと思うばい!」


    『ありがとうございます。』


    「こっちこそ。
    さ、食べよ!」


    そして、二人でご飯を食べながら




    亜也とのノロケ話を延々と聞かされて




    ぶっちゃけ
    話は半分しか聞いてなかったけど…




    幸せそうに話す結希の顔を眺めていたら、私も心配で張裂けそうだった心が少し和んだ。




    あっという間に昼休みは終わって




    午後の授業が始まった




    ぼーっと外を眺めていると




    ポケットで携帯のバイブが鳴った




    【受信メール】
    差出人:早川 まなみ
    件名 :ゴメン!!

    本文 :返事が遅れてごめんね(;_;)

    私も早く颯に会いたいよ…!




    まなみの口から理由を教えてもらえないのは…




    なんか寂しかった。




    心配をかけまいと思っての事だろうが




    私は全て知りたいのにな…




    何て返せばいいか分からなかったから




    そのまま携帯を閉じた。




    部活をこなして
    キクちゃんとの待ち合わせ場所に行くと




    キクちゃんはもう既に車に乗ってスタンバイしていた。




    助手席に乗込むと
    ドリンクホルダーにミルクティーが置いてあって


    『良かったら飲んでね?』


    と言って、車を走らせ始めた。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19793 / inTopicNo.44)  - 95 -
□投稿者/ Y 常連♪(120回)-(2007/08/18(Sat) 11:13:23)
    『お疲れ様!』


    「あ、いや。

    お待たせしてしまってすみませんでした。」


    『なん言いよーと?
    全っ然よかよ!

    こっちこそ突然ごめんね。』


    「いいえ。」


    『ねぇ…颯ちゃん。

    颯ちゃんとまなみって、今…その……そういう関係なん?』


    「はい。」


    『あ…そうなんや!
    じゃあお邪魔になっちゃうね!

    私、顔見たらすぐ帰るけん!』


    「いや、私は毎日会ってますし、ゆっくり先輩と話して下さい。」


    『ありがとう。

    じゃあ颯ちゃんは、まなみの妹って知ってる?』


    「ゆう先輩ですか?」


    『うん…そう。

    病院で、会ったりする?』


    「たまに。
    でも、今日はゆう先輩、部活終わってから用事があるって言ってたんで来ないと思いますよ。」


    『…そうなんだ。』


    「会いたいですか?

    それとも…まだ
    会いたくないですか?」


    『え…颯ちゃん。。

    知っとーと?!』


    「はい、大まかな話は聞きました。」


    『そうやったんや。

    もしかして、この間お茶した時も知っとった?』


    「はい…すみません。」


    『ううん!
    こっちこそゴメンね?!
    気使わせてしまったね…。』


    「いえ、とんでもないです。」


    『今…亜也と結希は

    付き合っとるんよね?』


    「はい。」


    『そっか…それなら、良かった。。かな。』


    「なんでですか?」


    『お互いが傷付け合って別れちゃったから…

    私だけが幸せなのはズルイやろ?

    私ね、大人気ないのは分かっとるんやけど…
    結希が亜也の事を好きなのかもって分かった時に、不安で仕方なくなって…今の旦那と浮気しちゃったの。

    すぐに妊娠が分かって、おろす事もできたはずなのに…私は楽な方に逃げたんよ。

    同性同士の将来を考えると、漠然とした不安がどうしても拭えなくて。

    結希が卒業したら一緒に住む事も、いずれ渡米して籍を入れる事も本気で考えてたけど…

    逃げちゃった。

    やっぱ教師やけん…とか、年上やけん…って、いっぱい無理してる所があったんよね。

    果たして自分は
    この子の人生に一生責任を持てるんかな…とかね。

    愛しとったし、大切やったけど…寄り掛かる事は最後まで出来んやった。

    だから、最後に別れた時…
    結希が私に未練が残ったりしない様に、最悪ついでにとびっきり傷付ける言葉を吐き捨てたの。

    もう飽きちゃったから遊びの時間は終わり。…て。

    最低やろ。』


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19851 / inTopicNo.45)  ずっと
□投稿者/ 慌 一般♪(1回)-(2007/08/22(Wed) 06:38:45)
    毎日、毎時間、毎分、更新待ってます(o>ωω
    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19852 / inTopicNo.46)  慌さん
□投稿者/ 通りすがり 一般♪(1回)-(2007/08/22(Wed) 11:09:04)
    そのコメントはYさんに失礼な気がします。
    ただひたすらに小説を書くロボットではないので、
    Yさんのペースで無理をせず書いて貰いたいですね。
    楽しい小説を読ませて貰ってると意識して貰いたいです。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19855 / inTopicNo.47)  慌サン♪
□投稿者/ Y 常連♪(121回)-(2007/08/22(Wed) 16:59:29)
    待っていていただいてありがとうございます\(≧▽≦)丿☆

    最近更新できてなくてすみません…↓↓

    また今日あたりからぼちぼち再開できるようになると思うので、是非ぜひ読んでやって下さいね♪

    すごく嬉しかったです!
    本当にありがとう☆

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19856 / inTopicNo.48)  通りすがりサン♪
□投稿者/ Y 常連♪(122回)-(2007/08/22(Wed) 17:01:46)
    お気遣いいただいてありがとうございました(*^_^*)

    でも失礼だなんてとんでもないです(笑)

    私こそ読んでいただけているだけですごく幸せだと思っています!
    良かったら通りすがりさんも最後までお付き合い下さい♪

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19859 / inTopicNo.49)  - 96 -
□投稿者/ Y 常連♪(123回)-(2007/08/22(Wed) 17:42:55)
    まっすぐに前だけを見据えて、そう淡々と話すキクちゃんが




    私には、自分を責め立てているようにしか見えなかった。




    私は二人の間にあった事をこと細かく知ってるわけでもない。




    むしろ
    事実関係を知っていたとしても、当事者同士の間にしか分からないものを私がどうこう言う資格もない。




    何て答えていいのかなんて分からないけど




    私の見解を述べた所で、キクちゃんだって
    分かったような事言わないで…
    って思うやろう。




    だから
    きっと今のキクちゃんが他人に求める言葉はたった一つだろう…


    『キクちゃんは間違えたわけじゃないと思う…

    答えがあるとは思わないけど。

    きっとゆう先輩だって分かってくれていますよ。
    キクちゃんの優しさだったり、弱さだったり、強さだったり。

    後悔したくないのなら

    キクちゃんは、その分お腹の子と旦那さんを大事に想ってあげたらいいんちゃいますかね。

    幸せになる事や
    終わってしまう事を怖がってちゃ、永遠に満たされる事なんてないと思う。

    大丈夫です

    キクちゃんは幸せになるべき人なんですから。』


    キクちゃんは




    やっぱり前を向いたまま


    『颯ちゃん、涙で前が見えんよ。
    事故ったらごめんね(笑)


    ……ありがとう。』


    と鼻を啜りながら笑っていた。




    病院に着くと




    そこにはいつもと変わらない笑顔のまなみがいて




    珍しいお客さんに喜んでいた。


    『キクちゃん!』


    「まーなーみー!
    大丈夫なんね!?」


    『うん☆
    元気そうやろ!?』


    「まぁ…元気そうやね(笑)
    でもちょっと痩せたんやない??」


    『…そうかな?

    だって病院食まずいんやも〜ん…!!

    やけんいつも夜は颯のお弁当っちゃん♪

    …あ!これ内緒ね(笑)』


    「あ〜!!
    じゃあ弱味握ったって事で、早く治して退院してこな病院の先生に言うけんね!(笑)」


    『学校の先生が生徒脅しよる〜!!(笑)』


    まるで女子高生同士のようにキャッキャ言い合ってる2人をしばらく見ていると




    一瞬だけど




    まなみの顔が苦痛に歪むのが見えた。




    すぐにまた笑顔に戻してはいたが




    いつも見ている私には
    その笑顔に無理がある事がすぐに分かった。

    『キクちゃん、ゆっくりどうぞって言っといて何なんですが、私先輩とイチャつきたいんでそろそろ帰って下さい。笑』



    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19863 / inTopicNo.50)  - 97 -
□投稿者/ Y 常連♪(124回)-(2007/08/23(Thu) 03:23:10)
    ベットの端に座り
    まなみの肩を抱いてキクちゃんに言う。




    まなみは
    普段絶対に人前でこんな事言ったりしたりする事のない私をビックリしたような目で横から見上げている




    キクちゃんはニヤニヤしながら


    『はいは〜い、ごめんね♪

    ごゆっくり〜(笑)』


    そう言って、さっき病院の売店で買ってきた大量のお菓子やプリンが入った袋を置き、ひらひらと手を振って病室を後にしようとして




    扉に手をかけた所で
    動きを止めて振り向き


    『そーだ、颯ちゃん!
    進路の事話すの忘れてたね(笑)

    ん〜まぁ…また明日ね(笑)』


    と言った。


    「はい、でも進路変えるつもりはないんで。」


    そう返すと
    困ったような笑顔を残して部屋を出ていった。




    いつもの様に2人きりの病室に戻って




    私は抱いていた肩から手を離し、まなみと向き合った。




    不思議そうな顔をして


    『颯、今日どうしたと?
    あんな事言って…?

    あ、分かった〜!
    キクちゃんとあまりに楽しく話しよったけんヤキモチ妬いたんやろ♪(笑)』


    「………。」


    『………颯?
    なんで黙っ………痛っ…!?』


    私はまなみのおでこを軽くはじいて言葉を制した。


    『先輩。

    なんで辛い時に無理するんですか?』


    「…え?」


    『私、そない頼りないですか?』


    「いや…ちがっ……。」


    『心配かけたくないから?

    先輩のその優しさは嬉しいですけど、余計に寂しいです。』


    「ごめん…なさい。」


    『私に、全て知ってほしいって言ってくれましたよね?』


    「うん…。」


    『私も、先輩の全てを知りたいです。

    それがどんな現実でも、必ず受け入れます。

    せやから、約束して下さい…

    何も言えなくたっていいですから、苦しい時に笑わないって。

    私を信じる、って
    約束して下さい。』


    「…はい…っ。」


    『分かってもらえたなら良いんです。』


    そう言ってまなみの小さな頭を撫でると




    まなみは抱き付いてきて
    私の首に顔をうずめたままで


    『絶対…死にたくない。

    誰にも、颯をあげたくない。』


    そう呟いた。


    『誰のものにもなりませんよ。
    私の人生は、先輩にあげたでしょう?』


    そう言って
    まなみの左腕にはめられている腕時計を触ると




    まなみはそれを自分の耳元に当てて
    静かに刻む秒針の音を聞いて微笑んでいた。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19871 / inTopicNo.51)  - 98 -
□投稿者/ Y 常連♪(125回)-(2007/08/23(Thu) 20:00:24)
    穏やかな時間が流れる




    私は抱き合ったままで、色んな話をした。




    おかんが妊娠した事




    独り暮らしをする事




    ハワイの美味しいドーナツショップや、綺麗な海の話




    インターハイでレギュラーに選ばれた事




    奏音が異常な量の卵を食べる事




    他にも、色々……




    まなみはどれも真剣に聞いてくれて
    大袈裟な程のリアクションを見せながら


    『じゃあ、私が退院したら颯のお嫁さんになって2人で一緒に暮らしたいなぁ…♪』


    なんて冗談めかしながらぼやいている。


    『そうしましょう。』


    「え?」


    『一緒に暮らしましょう、先輩。』


    「……それ、プロポーズ?」


    『言葉にするのなら、そうかもしれません。

    でも
    籍なんて、そんな紙一枚の誓約なんて私達には必要ないでしょう?

    先輩がいて、私がいて。

    それが大事な事でしょう?』


    「……ん。そやね。。

    ありがとう…。」


    『今度、指輪見に行きましょうね。』


    「うん…っ!!」


    果たして




    この日の事が、まなみの生きる力になったのか




    逆に傷付けてしまったのか




    それはまなみにしか分からない。




    だけど
    幸せそうに笑うまなみの笑顔は




    今日で一番輝いて見えたのは確かだった。




    今日のまなみは
    良く咳込んでいる




    その度に私は
    華奢な背中を擦りながら抱き締める力を少しだけ強める。




    まなみの心が
    小刻みに震えているのが伝わってきたから…




    無言の空間に




    溢れんばかりの愛情が漂っている




    何故か泣きそうになったのは




    愛しくて




    愛しくて




    たまらなかったから。


    『先輩、どこにも行かないで下さい。

    お願いです…

    独りにしないで下さい。』


    口をついて出た言葉は
    初めて吐いた弱音だった。




    私が弱気でいちゃいけない、って




    不安にさせちゃいけない、って




    抑えてたものが
    堪えきれなくなってしまったんだ。




    まなみは
    私の頭を胸に抱き寄せて


    「どっこも行かんよ。

    颯のそばで生きる。

    約束するけん…。」


    そう言って
    私の髪を撫でる。




    私は無償にまなみをより近くに感じたくなって




    頭を上げ
    まなみの小さな顔を両手で包んでキスをした




    深く、熱く
    長いキスだった。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19875 / inTopicNo.52)  - 99 -
□投稿者/ Y 常連♪(126回)-(2007/08/23(Thu) 23:51:34)
    温かい時間の中




    まなみが
    突然激しく咳込みだす。




    私の首に回していた手は
    苦しそうな自分の胸を抑えて




    息はどんどん上がり




    私の腕の中に倒れ込むまなみ…




    『先輩っ…!?』


    突然の事で一瞬動揺してしまったが




    ここは病院。




    無理矢理
    自分を冷静ぶらせて




    枕元にあるナースコールを激しく何度も押した




    【はーい?
    早川さんどうしましたー?】




    その看護師に対して
    私が何て答えたのかは覚えていない。




    とにかく私は
    苦しくてのた打ち回るまなみの名前を呼び続けて




    私の腕を物凄い力で
    必死に掴むまなみの左手を上から握りしめていた。


    『先輩、大丈夫ですからね。

    すぐに楽になりますから。

    私もここにいますから。

    大丈夫ですよ。』


    まなみからの返答はない




    その代わりに




    苦しそうな息と
    小さい悲鳴の様な声だけが、狭い病室にこだまする。




    駆け込んできた医師と看護師が
    手際良くまなみに酸素マスクをつけたかと思うと




    色々な機械にまなみを繋いでいく




    私は
    自分の心臓の音が頭に響いてきて




    『ちょっと離れていて下さい!』


    と、看護師さんが軽く私の肩を引いただけで




    そのまま床に座り込んでしまった。




    医師や看護師が何度もまなみに呼び掛ける声も




    注射を打ったり血圧を計る姿も




    全てスローモーションの様に聞こえたり見えたりする




    何もできないまま
    その場から動く事すらできない。




    次に病室に駆け込んできたのは




    大急ぎでストレッチャーを運び込んできた清水ナースだった。


    『櫻井さん!?
    どうしたの?大丈夫?!』


    そう言って私の肩を持ち、ベット脇の丸椅子に座らせて


    『大丈夫やけんね。

    ここで待っとってあげてくれる?』


    私の両肩に手を乗せて
    同じ目線までしゃがんでそう言う清水さん




    言葉さえ出せない私は
    首を縦に振るのが精一杯だった。




    ナース2人がかりで
    まなみをベットからストレッチャーに乗せ替え、部屋を出る




    運ばれていくまなみは




    もう激しく息をするでも、何かを必死に掴むでもなく




    ただ
    ぐったりとしていた。




    しばらく
    心臓は高鳴ったままで




    おさまってきたかと思うと、体中が震えてきた。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19877 / inTopicNo.53)  - 100 -
□投稿者/ Y 常連♪(127回)-(2007/08/24(Fri) 02:04:31)
    私は
    まなみからもらった時計を握りしめて




    ついさっきまで見ていたまなみのあどけない笑顔を思い浮かべていた。




    その度にさっきの悶絶した表情がかき消していったけど




    何度も




    何度でも




    私は必死に思い出した。




    大丈夫や。。
    落ち着け、私……




    まなみがどこに連れて行かれたのかも




    あれからどの位の時間が経っているのかも




    私が今
    何を考えているのかも




    何も分からない。




    ふと




    看護師が外していった、まなみの腕についていた時計が目に入る。




    ベットの上に放り出されるようにあったそれが




    すごく無機質に見えて
    心がまたざわついた。




    それを手に取って




    二つ並べるように私の腕につけた。




    そんなに変わらないはずなのに




    一気に腕がズシっと重くなり




    これが命の尊さなのかな、とすら思えてくる。




    まさに神頼み




    まったく
    こんな時にだけ存在を思い出して頼ろうとするなんて




    都合がいいにも程がある……




    そんな事は分かっている。




    だけど
    今の私にはそれ位しか出来ない…




    ほんま、情けない。




    でも
    今はそんな自分を嘆くより他に、なんとかまなみの無事を祈る事が先決だ。




    その為なら
    何だってする




    いや
    何だってさせてほしい




    しばらくすると
    病院から連絡がいったのか




    息を切らした結希が入って来た。


    『ゆう先輩…。』


    まなみがベットにいない事が分かり
    結希の顔から、一瞬にして血の気が引いていくのが分かった。


    『ねーちゃんは!?』


    「どこかへ運ばれて行きました。

    清水さんにここで待つよう言われて……。」


    『………そっか。』


    結希は大きく静かに深呼吸をして
    ゆっくり私の方に近付いてくる


    『一人で怖かったやろう……。』


    そう言って
    私の肩に乗せられた結希の手も震えていた。




    少しすると
    また違う女性が入ってきて


    『ゆう!まなは?!』


    「落ち着いて、お母さん。
    ねーちゃんは今処置してもらっとるみたいやけん。」


    まなみのお母さん…




    初めて会った。




    若くて、可愛らしくて
    まるで少女か人形のような人




    小さくて、華奢で、色白な所はまなみそっくりだ。






    (携帯)
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■19878 / inTopicNo.54)  一回お休み♪
□投稿者/ Y 常連♪(128回)-(2007/08/24(Fri) 02:45:38)
    いやぁ〜……

    最近アップできてなかったので…
    以前読んで下さってた方がもう見てくれていないかもしれないですね……m(_ _)m

    しかもマンネリ化していないか心配ですっ…;;

    まさか自分でもこんなに長編になるとは思っていませんでした。°・(>_<)・°。

    ですが…まだまだ終わりそうもありません(笑)

    どうか、最後まで暖かく見守って頂ければ幸いです(;_;)!!

    夏も終わりに近付いていますが、まだまだ暑い日が続いています。
    皆様も体調にはくれぐれもお気をつけて、残り少ない夏を楽しんで下さい♪

    ではでは…(*^_^*)



    Y

    (携帯)
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■19882 / inTopicNo.55)  NO TITLE
□投稿者/ あ 一般♪(6回)-(2007/08/24(Fri) 05:20:59)
    更新されてないか、毎日見てますよ(^O^)
    こちらに何度も書くと邪魔してしまうと思って控えてましたが、
    いつも楽しみにしてます。
    続きの更新頑張ってくださいp(*^-^*)q

    (携帯)
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■19884 / inTopicNo.56)  NO TITLE
□投稿者/ れん 一般♪(7回)-(2007/08/24(Fri) 10:59:12)
    2007/08/24(Fri) 11:21:16 編集(投稿者)

    いやいや、毎日拝見させてもらってます(≧∇≦)
    なんせ、Yさんの一ファンですから!!

    っていっても、私の事分からないかも(ρ_;)


    体だけには気をつけて無理しないで下さいね。

    更新はゆっくりでも、してくれたら嬉しいですo(^-^)o

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■19885 / inTopicNo.57)  (^^)v
□投稿者/ 美紀 一般♪(2回)-(2007/08/24(Fri) 11:00:23)
    お久しぶりです
    毎日のように楽しみにしています♪♪
    読まないと一日が始まらないような気がして‥(笑)毎日読んでます(*^_^*)

    ゆっくりでいいので、またの更新を待ってます♪

    (携帯)
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■19887 / inTopicNo.58)  (*^_^*)
□投稿者/ Y 常連♪(129回)-(2007/08/24(Fri) 13:21:43)
    あサン♪

    ありがとうございます☆
    良かったです!!
    声を頂けるのはとても嬉しい事です♪
    駄文ですが、これからも宜しくお願いします!


    れんサン♪
    お久し振りです(^^)
    れんサンの事はもちろん覚えてますよ!
    一ファンだなんて…照れます(・_*)(笑)
    完結まで頑張って書き上げますので宜しくお願いします♪


    美紀サン♪

    ありがとうございます(*^_^*)♪
    見てもらえていると分かって、やる気はMAXです☆
    美紀サンの一日が始まるにふさわしいような文は書けていないかもしれませんが…(笑)
    最後まで頑張りますので宜しくお願いします☆



    Y

    (携帯)
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■19890 / inTopicNo.59)  - 101 -
□投稿者/ Y 常連♪(130回)-(2007/08/24(Fri) 14:12:37)
    私は立ち上がって
    深々と頭を下げた。


    『初めまして。

    まなみ先輩のバスケ部の後輩で、櫻井 颯と申します。

    いつも、まなみ先輩やゆう先輩にはお世話になっております。』


    そう言って顔を上げると




    まなみの母も頭を下げて


    『いえいえ、こちらこそいつもまなみがお世話になってます。

    颯ちゃんのお話は、まなみから良く聞いとったんやけど、なかなかすれ違いで会えんくて、お礼が遅れてごめんね…?

    本当に毎日毎日ありがとう。』


    と、柔らかい物腰と笑顔で挨拶を返してくれた。




    全身から優しさが滲み出ているかのような人。




    今なんて特に
    笑顔を作れるような心境じゃないやろうに……


    『とんでもないです。』


    そう言うと
    丸椅子をもう一つ出して、私の隣に置き、座る様に仕草で誘導した。




    結希は
    靴を脱ぎ、ベットの上であぐらをかいている。




    沈黙が続く―




    『颯ちゃん…?』


    一番に口を開いたのはお母さんだった


    『はい…?』


    「二人が、お互いに好意を持ってる事は…

    まなみから聞いとるんやけど。

    颯ちゃんに、もしかしたら無理させてしまってるんじゃないかと思って…ずっと気にかかってたんよ。」


    『無理……?』


    「えぇ…。

    あの子の病気の事知って…傷付けないようにそばにいてくれとるんやないかな。って…。

    同性同士なわけだし、まなみの方から好きになったって聞いているから…。」


    『違います!』


    私があまりに大きな声を出したので
    お母さんも結希も目を丸めてビックリしてる。


    『あ…大きい声を出してごめんなさい。

    でも、それはあまりに的違いなご心配だったもので…

    私、先輩に対して同情の念で一緒にいる訳じゃありません。

    本当に…本気で
    先輩と向き合っていて、愛し合っていると…思っています。

    少なくとも、私は愛しています。

    同性同士であろうが、どちらから好きになろうが関係ありません。
    私が先輩のそばにいるのは、先輩を傷付けない為なんかじゃなくて、私が先輩のそばにいたいと思っているからです。

    だから、そんなご心配はなさらないで下さい。

    できれば…暖かく見守って下されば幸いです。』


    お母さんの目を見据えて、一言一言ちゃんと伝わるように話した。




    お母さんも、きちんと目を見て聞いてくれた。


    『ありがとう…。
    まなみを宜しくね。』




    (携帯)
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■19892 / inTopicNo.60)  - 102 -
□投稿者/ Y 常連♪(131回)-(2007/08/24(Fri) 23:51:24)
    『はい、こちらこそありがとうございます。』


    もう一度
    私達は頭を下げて、少しずつ微笑みあった


    『ねーちゃん。

    きっと頑張ってくれるよ。』


    結希はそう言って
    ベットに寝転がり


    『そうですね、信じましょう。』


    私はそう答えて
    二つの腕時計を見る




    お母さんが
    ぽつり、ぽつりと




    幼い頃のまなみの話をし始めた。




    おてんばだけど、変に昔からしっかりしていたと言う。




    3才の時にバレエを始めたいと言い出して、それからのまなみはバレエ一筋だったらしい




    小学校高学年ともなれば国内のコンクールの賞を総嘗めする程の実力を持ち、パリの有名なバレエ団からのスカウトを受けたのもその頃だそうだ。




    高校に入ったのとほぼ同時に初めて全幕通してプリマドンナをつとめる舞台が決まり
    更に練習に力を入れていた所で今の心臓病を患い、急な入院を余儀なくされて…




    その頃のまなみはひどく荒れたらしい。




    食べ物は口にせず
    水分も本当に必要最低限しか摂らずに




    家族とすら、ろくに口を聞かない毎日が続いたそうだ。




    体はどんどん痩せ細り、体調も急降下の状態……




    このままだと、余命は半年だとも言われ
    周りの人間もかなり神経を磨減らしていたそうだ。




    そんなまなみが変わったのは、入院して一年が経とうとした頃に起こったある出来事がきっかけだった―…




    いつも仕事帰りに
    四季折々の果物を持ってお見舞いに来ていたお父さん




    そのお父さんとの
    突然の別れだった。




    恥ずかしがり屋だったというお父さんは
    病院に来ると、まなみに背を向いて果物を剥きながら
    一日の出来事を話していたそうだ。




    その背中を見ながら
    まなみは、返事をするでもなくただ聞いている




    そんな光景をお母さんは良く見ていたという。




    ある日
    いつもの様にまなみの元へ向かう途中




    交通事故に遭い




    手にはお土産の苺が入っている袋を握ったまま




    残酷にも
    まなみが入院していた病院に運ばれた。




    それを聞いて
    泣く事も、笑う事も
    忘れていたまなみが




    父にすがりついて
    ごめんなさい、と泣き叫んでいた…と
    お母さんは清水さんから聞いたらしい。




    お母さんや結希が病院に着く頃には




    もう
    お父さんには息がなかったそうだ。

    (携帯)
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