| 桂子さんは
何を話すでもなく
泣くわけでもなく
ただ 東の空を眺めていた。
しばらくして
『よっし! ありがとう!
颯ちゃんはどうしたとか、なんでとか、聞かんったぃ(笑)』
「話したくない事やと申し訳ないんでね。」
『おっとな〜!
私の方が年下みたいやね。』
「いえいえ。
全然ですよ。」
『世界で大切な人が目の前で苦しんでるのに、な-んにも出来ないなんて…
不甲斐ないなぁ……。』
私は思い返していた。
まなみが発作を起こした時、私は何も出来なかった。
今の桂子さんの心境そのままだった。
以前、まなみに言われた言葉を思い出した。
「必要としてくれる人がそばにいてくれるから、頑張れる。」
『…え?』
桂子さんがうなだれていた頭を上げて聞き返す
「私の恋人はそう言ってくれました。
きっと桂子さんのお子さんもそうなんちゃいますかね。
お互いがお互いの為に、自分にできる精一杯で頑張ればそれでいいんやと思います。
桂子さんのお子さんも 私の恋人も 私達に求めているのは、病気を治す事じゃないんやと思います。
その代わり、心の苦しみを癒やす事は きっと私達にしか出来ない事やと思います。
私は、そう考える様にしました。」
しばらくの間があった後、桂子さんは目に涙をいっぱい溜めた目で笑ってみせた。
ちょうどてっぺんに上った太陽がその笑顔を照らして たまらずこぼれ落ちた涙が、キラキラ光っていた。
気付けばもう時間で
良い天気ですね、なんて言いながら 二人して大きく伸びをして 屋上を後にした。
『颯ちゃんの恋人さんは、まだまだ退院できそうもないと?』
「あ、実は来週の月曜日に退院できそうなんですよ。
しばらくは2日に一回通院が続きますけど。」
『そうなんや!
良かったねぇ〜! 颯ちゃんの看病のおかげやね!』
「何かしら力になれてたらいいんですけど。」
『ふふ…なってるよ、絶対。
幸せものやね〜、恋人さん。
じゃあ、退院する前に紹介してよ♪ 会ってみたいな、あんな素敵な事が言える恋人さん。』
「はい。
あ、じゃあ今一緒に病室行きます?」
『え?いいと?
うん!いくいく!』
「是非ぜひ。
きっと喜びます。」
(携帯)
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