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■9967 / inTopicNo.81)  つちふまずさんへ。
  
□投稿者/ 秋 一般♪(10回)-(2005/06/04(Sat) 12:49:01)
    待ち望む。
    嬉しいお言葉、ありがとうございます。
    私が綴るのは非現実でも、まして不可思議でもなく、起こり得る日常のワンシーンです。言葉を介してそこに何かを見い出したと言うのなら、それはあなたのセンサーが敏感に感知したのでしょう。言葉を繰り出し、そして受け止められる人は皆、繊細なアンテナを巡らせているのだと思いますよ。
    次回はあまりお待たせしない内に更新しようと思いますので、あなたの時間をほんの一時でも委ねて頂けたら、と。再びつちふまずさんの目を楽しませられますように。


    (携帯)
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■10018 / inTopicNo.82)  ─Cold And Warm
□投稿者/ 秋 一般♪(11回)-(2005/06/07(Tue) 10:15:04)
    二学期もそろそろ終業式が迫った、十二月の半ば。
    他学年より一足早く期末試験を終わらせて、やって来ました修学旅行。
    これぞ二年生の、いや高校生活最大のイベントっ!
    例え行き先が定番中の定番・京都と言えど、気心の知れた友人達との旅行は楽しみなわけで。
    しかも、元来のイベント好きな私の性格。
    こりゃあもうはしゃぐしかないってゆーか、必然的にそうなるってゆーか、テンションは鰻登りってものだ。
    先週まで必死になってテスト勉強をしていたけれど、今となっては遠い過去。
    思いっ切り楽しもう!
    ……と、思っていました。今朝までは。



    「うー…だるいぃ…」
    旅行二日目の今日。
    班別の自由行動日である今日。
    市内観光である今日に。
    私は宿にてお留守番。ひとり、布団を引っ被ってがらんとした部屋でふて寝している。
    イベント好きという子供のような私の性格が、見事に裏目に出たらしい。
    出発日の前日は興奮して眠れなかった。
    当日になって睡眠不足による体調不良、現地に到着してからの気温の変化で完璧にノックアウト。
    昨晩から寝込んでいるというわけ。
    普段は自他共に認める程の健康体なのに、悪い事は重なるものだ。
    「ちくしょーっ私が何をしたぁ!」
    叫んだ傍からごほごほと咳き込む。
    こんな情けない姿は少なくとも川瀬には見せられない。
    あーぁと一つ大きく息を吐いた時、枕元の携帯がメールの着信を告げた。

    ─ちゃんと寝てる〜?

    見ると、差出人は皐月から。
    嫌味か、このやろ。
    思いながら、返信せずに携帯を放り投げる。
    予定だと今頃皆、金閣寺辺りかなぁ。
    木造の天井板の節目ををぼうっと眺めながら、中学の頃に見た金ピカな寺を思い浮かべて。
    私、どちらかと言えば銀閣寺みたいな質素な雰囲気の方が好きなんだよね。なんて。
    独りごちていると。
    静かに静かに襖が開いた。

    「あ…起こしちゃった?」

    物音を立てないようにそっと部屋へと入って来た人物は、事態が飲み込めずにいる私に申し訳なさそうな声を掛ける。

    「笹木〜。茜の様子どう?」

    少しの心配りも感じられず、ずかずかと入って来たのは勿論皐月。

    「皐月。茜は具合悪いんだから少し静かに、ね?」
    「だいじょーぶ、だいじょーぶ、茜だもん」

    何を根拠にそう言っているのか、笹木の後ろからひょっこり顔を出した陽子の、静かにする気が微塵もない無遠慮さに呆れる私は閉口して。
    ぞろぞろと、次から次へと顔を覗かせるのは現在市内観光中であるはずの我が班員達。

    「茜ぇ、大丈夫ー?」
    「茜ちゃん、具合は良くなった?」
    「そろそろ平気そう?」

    郁に比奈、弥生、そして…川瀬。
    どうして。
    「ほら、抹茶プリン。これなら具合悪くても食べられるんじゃないかなーって」
    皐月はそう言うと、持っていた袋から箱を取り出し、その中から一つを差し出した。
    「八橋も買って来たけど、消化に悪いかな」
    どうだろ?と、陽子が笹木に尋ねている。
    無言で川瀬が差し出したレモンティーのパックを、私はごく自然に、あまりにも素直に受け取った。
    目の前でお土産を広げ始める友人達を見つめ、
    「皆…観光は?」
    訝しげに訊ねる私に、
    「あー、その事ね。私らさ、中学の時にも修学旅行で京都行ってんの」
    八橋を摘みながら陽子はあっさり言った。
    それに笹木が頷く。
    「皆で話して全員一致で決まったの。一度行った事があるなら行かなくてもいいよね、って。自由時間は好きな場所に行っていいでしょう?だからね──」
    「ここってわけ!」
    笹木が言い終える前に床を指差しながら皐月が声を上げた。
    「だけど、行った事なかったとしても戻って来たよ」
    と、郁が言う。
    うんうんと大袈裟に首を縦に振る陽子を見ながら、疑問符を浮かべている私に、
    「やっぱり茜がいなきゃだめでしょ、あたしら皆揃ってこその班なんだから」
    一人でも欠けてちゃ意味ないよ、と。
    皐月はにかっと笑った。
    だよねー、そう頷き合う友人六人に悪友一人。
    …ちくしょう。こいつら。
    こみ上げてくる何かが何だか無性に悔しくて、私はがばっと布団に潜った。
    「あれー?どうしたの、茜」
    「私達、うるさかった?具合、悪化しちゃった?」
    「調子に乗って騒ぎ過ぎたかな…」
    口々に囁き合う優しい声の数々が、分厚い布団を通してくすぐったく響く。
    すると陽子は、
    「あぁ、違う違う」
    けらけらと笑って。

    「感動して泣いてんだよ、きっと」

    茶化すように言った。

    ぽんぽんと叩かれるのを布団越しに感じながら、
    「うるさぁ〜いっ」
    私は陽子のその手を内側から蹴っ飛ばし、低く唸った。


    …勿論、それは鼻声で。



    -Thanks to friend's warm hearts, bring tears to my eyes.-




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■10019 / inTopicNo.83)  ─Turn the light out!
□投稿者/ 秋 一般♪(12回)-(2005/06/07(Tue) 10:16:28)
    団体行動が苦手なあたしには、やはり行事というものは苦痛でしかない。
    それは修学旅行も例外ではなく。
    最終日となった今日。
    残すところは今夜だけで、明日になれば家へ帰れると思うと、あたしは大いに安堵していた。


    …しかし、それも間違い。
    最終日だからこそ、その夜は盛り上がるというものらしい。
    三泊四日の疲れは出ないのだろうか、今宵の宿の一室はいつも以上に騒がしかった。
    しかも、だ。
    旅行初日から寝込んでいた氷野が回復してしまったから、余計手に負えない事態となっている。
    大人しくしていた分の憂さを吐き出すかのように、このはしゃぎ具合は始末が悪い。
    ずっと倒れてりゃ良かったのに、胸中で毒づいていると、目の前に座っていた笹木と目が合った。
    にっこりと笑って、敷かれた布団に寝転がっているあたしの横へと移動する。
    「ね、川瀬。こんな時くらい楽しもう?」
    そしてまたふわりと笑う。
    こいつには、敵わない。
    あたしの考えてる事なんてお見通しなんだ。
    はぁ、と。
    溜め息をつく。
    「じゃあ次は王様ゲーム〜!」
    その声を聞いて。
    はぁ?と。
    悪態をつく。
    「定番だよねー」
    言いながら、既にゲームの為のくじを作り始めている皐月。
    「あ、当然全員参加。拒否権無効。川瀬もだからねっ」
    にんまりと笑う陽子。
    あたしはげんなりしながら、
    「くだらない。やるか、そんなの」
    立ち上がり、部屋を出て行こうとした。
    それは、あたしのTシャツの裾を掴んだ誰かの手によって阻まれたけれど。
    「たまには、ね。いいじゃない」
    笹木は笑った。
    やろうよ川瀬、と。
    こんな事でごねるのも何だかとても子供じみているように思えたので、あたしは何も言わずにそのままそこに腰を下ろした。


    けれど、すぐにあたしは後悔した。
    その場に留まった事を。
    元々テンションが半端じゃないこの連中。
    連日の疲労と夜の興奮からか、いつにも増して異常な弾けっぷり。
    幸い大した被害は被ってはいないものの、この馬鹿げた雰囲気にはついていけない。
    布団の上でごろりと寝返りを打った時。
    「次はぁ……2番が5番にちゅー!」
    今一番ノリに乗ってる大馬鹿野郎、もとい陽子が叫ぶ。
    アルコールは入っているはずがないのに、何々だこの酔っぱらいのようなテンションは。
    「2番は誰ぇ?」
    訊ねる陽子に、
    「はーい。私〜」
    どこかのほほんとした笹木の声。
    「じゃあ5番は?5番はっ?!」
    興奮気味な陽子。
    嫌な予感がして。
    ついさっき引かされたくじに目をやる。
    「あ、川瀬じゃん。5番」
    寝そべっているあたしの頭上から、あたしの手元を覗き込む皐月の声が降ってきた。
    「えっ?まじっ?川瀬っ?!」
    陽子が、これは面白い組み合わせだと、笑う。
    ……この野郎。
    「それじゃあ笹木さんと川瀬さん、お願いしま〜す」
    頬でも口でもお好きにどうぞと、陽子はにやにやと下品な笑みを口元に添えてあたしと笹木を交互に見た。
    氷野が何だか不機嫌そうな気がするけれど、そんな事はどうでもいい。
    「馬鹿馬鹿しい。付き合ってられないね」
    あたしは手元のくじを投げ捨てて、「寝る」布団を被った。
    「川瀬ぇ、そーゆーのルール違反だよ。盛り下がるなぁ」
    ぶーぶーと文句を言う陽子。
    そのままあたしがくるまる布団へと飛び乗る。
    「キースッ、キースッ」
    その鬱陶しさに声を荒げて。
    「するかっ」
    がばっと身を起こし、馬乗りになる陽子を払った。
    「おかしいだろ、女同士でそんなの」
    どうかしてる、と陽子を睨みつけてやったけれど、やはりこいつもなかなか引かない。
    「たかがゲームじゃん〜」
    あっけらかんと笑う。
    …何を言っても無駄なのか?
    目眩すらしそうになってきたあたしは、
    「笹木。ほら、あんたからも何か言えって」
    すぐ側にいた、同じく被害者である笹木に助けを求めた。
    求めた…ものの。
    にっこりと、柔らかないつもの笑顔を見せるだけなので。
    だから何でそう楽しそうなんだ…脱力して、思わず問おうとすると、


    「川瀬はそんなに私とキスするのが嫌?」



    ───…は?

    はぁぁぁぁ?!

    おいおい、まさか連中の空気に中てられでもしたのか?
    今日はあんたも何かおかしい。
    何も言う事が出来ずにいるあたし。
    笹木は少しずつ少しずつ、近付いてくる。
    距離が、ゆっくりと縮まる。
    「嫌?」
    笑みはそのまま。
    「嫌とか、そうじゃなくて……」
    笹木があたしの頬に手を添える。
    もう陽子の野次は聞こえない。
    真っ直ぐにあたしの目を覗き込む笹木の瞳から顔を逸らす事も出来ず。
    顔が近い。
    息遣いまでも生々しい程に感じ取れる。
    笹木が瞼を閉じて──

    「ちょっ、待っ…」

    最後の抵抗を試みて、けれど多分あたしは完全に拒み切れないだろう、そう思った瞬間。

    「消灯の見回り来たよ!」
    皐月が叫んだ。

    「え?!やばい!」
    陽子達はばたばたとトランプやらくじやらお菓子やらを片付け始め、
    「そんなの後でもいいじゃんっ。どこでもいいから適当に布団潜って!電気消すよっ!」
    そう氷野が叫んだと同時に─パチリ、と。
    スイッチが落とされた。
    部屋の外で見回りの担当だろう教師の足音がする。
    ガチャリとドアが開かれ、全員が床に就いているのを確認すると、再びドアは閉じられた。
    遠ざかる足音に、潜めていた息を解放して。
    ふぅと大きく息を吐いたら、すぐ目の前には普段から見慣れているルームメイトの笹木の顔。
    いくら適当にって言ったって人がいるとこに潜り込んでくるなよっ、そう言ってやろうとしたら。
    笹木の唇があたしの口を塞いだ。
    柔らかな感触が優しく伝わり。
    余韻を残して離れた瞬間、やっぱり笹木は笑っていた。


    「先生もう行ったよね」
    氷野のその声と共に再び電気が点けられた。
    ごそごそと布団から這い出る音がし始める。
    まだ身動きが取れずにいるあたしの布団は、共に潜んでいた笹木によって剥がされた。
    「あれ?笹木と川瀬、おんなじとこに潜ってたの?」
    「うん、急だったから近い布団に入っちゃった」
    「…川瀬?顔赤くない?」
    「息苦しかったんじゃない?」

    そんな会話をどこか遠くに聞きながら。



    もう一度──
    電気が消えはしないだろうか。




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■10020 / inTopicNo.84)  ─Merry Merry
□投稿者/ 秋 一般♪(13回)-(2005/06/07(Tue) 10:17:40)
    さくさく、と。
    降り積もった雪を踏みしめながら、歩く。
    昨夜から降り始めた雪は一晩で街中を白銀に染めていた。
    もう雪を見てはしゃぐような歳でもない。
    ただ学校の行き帰りが辛くなるだけだ。
    と、今現在、部活からの帰り道真っ只中の私は思うわけなのです。
    ざっくざっくと次第に足並みも荒々しくなってゆく。
    いつもの道が倍以上に感じられてしまうからこの季節の雪は嫌なのだ。
    …ただ、私の場合。
    理由はそれだけではないのだけれど。
    奇しくも世間は十二月二十五日。
    俗に言う、クリスマスである。
    ホワイト・クリスマスだなんて、神様も随分粋な真似をしてくれるじゃないか。
    皮肉たっぷりに胸中で呟いてみる。
    クリスマスムード高まる中、こんな風に雪が降ってみろ。
    益々浮かれた人々のお祭り気分はヒートアップするに決まっている。
    これだからクリスマスは、もう一度呟いた時。
    雪に足下を取られた私はずるりと見事にひっくり返った。
    あー…何やってんだろ、私。
    起き上がる意欲さえ湧かず、仰向けのまま、すっかり雪が止み晴天を取り戻した青空を眺める。
    陽射しで顔は暖かいものの、背中がじんわりと冷えてゆくのがわかる。
    冷たい、でも起きるのめんどい、そんな事を考えていると、ふっと頭上が陰った。
    「聖奈?何やってんの?」
    見れば、怪訝な顔をした久美が私の顔を覗き込んでいた。
    ほら、と差し出された彼女の手を借りて起き上がる。
    「転んだのはわかったけど、寝っ転がって何してたの?」
    風邪引くじゃないのと、再び怪訝な顔で訊ねる久美に、「起きるのめんどくて」短く答えると心底呆れた顔をされた。
    そのまま何となく、ふたり並んで帰路を行く。
    あ、と思い出したように久美が声を上げたので私は彼女の方を振り向いた。
    「そう言えば今日クリスマスだよ、クリスマス!しかもホワイト・クリスマスになったね!」
    にこにこと嬉しそうな顔。
    私はクリスマスなんてそんなものにはお構いなしに、ころころ表情が変わるなー、久美を見ながらそんな事しか考えてはいなかった。
    「聖奈…つまんなそう」
    反応が希薄な私が不満だったのだろうか、久美は拗ねたような眼差しを私に向けた。
    そんな事を言われても…私も少しばかり困ってしまう。
    そして。
    「…嫌いなの、クリスマス」
    ぼそっと呟いてみる。
    すると彼女は不思議そうに首を傾げた。
    何で?その目はそう言っていたから、
    「今日誕生日なんだ、私」
    応えてみせる。
    久美はくりくりと目を丸くさせた。
    「え?今日?」
    「そう、今日。クリスマスムードに皆浮かれてるからさ、毎年私は誕生日だって事忘れられるんだよね」
    やれやれと諦めにも似た溜め息を吐く。
    だから嫌いなの。わかった?
    そう言おうとすると突然、
    「おめでとうっ!」
    満面の笑みで彼女は言った。
    「この場合、Happy Merry BirthDay、かな?」
    うんうんと首を縦に振って一人納得している彼女。
    そしてまた、思い出したように言う。
    「プレゼント、何が欲しい?」
    予期せぬ問いに、ただただ面食らう私。
    「誕生日だって知ってれば何か用意しといたんだけど。ほら、知ったの今じゃない?」
    だから、と続けて。
    「今すぐには無理だけど用意するね。ちゃんとプレゼントしたいから」
    ね?と、彼女は優しく微笑んだ。

    「何が欲しい?」

    再び問われて。




    ─あなたを。



    …なんて。
    言えるわけないじゃない。
    代わりに彼女の片手を両手できゅっと包んで、暖を取る仕草をした。
    「寒い」
    一言呟くと、一瞬きょとんとし、すぐさま「こんなのでいいの?」と笑った。
    「寒がりだもんねー、聖奈」
    空いているもう片方の手をふわっと添えて。
    「そうだ。じゃあ手袋を買ってあげようっ」
    名案だとばかりに瞳を輝かせた。

    「だから今日は、これで我慢してね」

    そう言って力強く握られた私の手。
    ほんのりと暖かい。
    私達は互いの手を繋ぎながら帰り道を辿った。
    踏みしめられた白に残る足跡を見て、ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけだけど、この日が好きだと思えるような気がして。

    …メリークリスマス。

    小さな囁きに彼女はかすかに笑った。



    今はまだ、この温もりだけで。




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■10053 / inTopicNo.85)  はまった・・・
□投稿者/ ごんべぇ 一般♪(1回)-(2005/06/09(Thu) 11:22:11)
    やばいです・・・(==)・・・
    はまってしまった!すごく素敵です!!
    登場人物一人一人の気持ちがはっきりと・・・くはぁ(≧▽≦)
    最初から一気に読んでしまいました。。。
    笹木がんばれ!(笑)
    久しぶりの感動をありがとうございます☆
    続きも楽しみにしてますよっ♪
引用返信/返信 削除キー/
■10152 / inTopicNo.86)  おもしろぃ!!
□投稿者/ なぁ坊 一般♪(1回)-(2005/06/13(Mon) 22:33:59)
    文章が読みやすくて面白いです(*>∀<)/笹木と川瀬のコンビが大好きです!!2人には早く上手いこといってほしぃですね〜(●^ω^●)
    楽しみにしてます♪

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10213 / inTopicNo.87)  ごんべぇさんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(14回)-(2005/06/16(Thu) 10:05:39)
    はじめまして。
    最初から読んでくださったという事で、感謝の念が尽きません。
    残すところは冬から春にかけて。ようやく季節が一年巡ります。最後までお付き合い頂ければ幸いです。

引用返信/返信 削除キー/
■10214 / inTopicNo.88)  なぁ坊さんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(15回)-(2005/06/16(Thu) 10:06:54)
    感想、ありがとうございます。
    おもしろいという言葉はとても嬉しいもので、それだけで原動力に繋がります。
    笹木と川瀬。二人共鈍く、その上不器用なので、どうなるのでしょうか。今後も見守って頂けたらと思います。

引用返信/返信 削除キー/
■10744 / inTopicNo.89)  ─年の瀬に逢瀬を重ね《have a reunion with…》
□投稿者/ 秋 一般♪(26回)-(2005/07/07(Thu) 09:57:43)
    あぁ、もうすぐ今年も終わる。
    雪がちらつく中、商店街を抜けるメインストリートを歩いていると、それぞれの店先はお飾りやら何やらですっかり年の暮れのムードが漂っていた。
    あと数日で門松が立ち並び、正月のおめでたい雰囲気で賑わう事は想像に難くない。
    つい最近まではクリスマス一色だったろうに、と。
    商店街の浮かれた空気に呆れつつ、やはり私もわくわくを隠せない。
    寮生である私は、冬休みを利用して実家へと帰省してきた。

    「天野さんとこの美和ちゃん?久しぶりだねぇ。いつ帰ってきたんだい?」

    「あれ、美和ちゃんかい?お盆以来じゃないか。もっとちょくちょく帰っといでよ」

    昔ながらの商店街は、小中学校時代から通い慣れた通学路であり、今も変わらず旧い顔がちらほら見られる。
    掛けられた声に笑ってお辞儀し、私は中通りの中心に位置する蕎麦屋の暖簾をくぐった。

    「ただいまー」

    正面から入ってすぐのカウンターに、ちょうど昼の営業時間が終わった所なのか、エプロンを外した父が座って新聞を広げていた。
    顔を上げて私を見据えると、
    「おう、帰ったか」
    がさがさとした声でぶっきらぼうに答える。
    すぐまた新聞に目を落としてしまったけれど、わずかに持ち上がった口の端に、私はしっかり気付いていた。

    「あらあら、美和。おかえりなさい。今来たの?」
    奥からぱたぱたと母が来る。
    腰に巻いたエプロンで手を拭いながら、
    「今お茶でも煎れようね」
    カウンターの中へと入っていくので、私も父の隣へと腰掛けた。
    「そろそろ大晦日でしょう?予約がいっぱいで大忙しよ」
    お父さんにはたくさん打ってもらわなきゃと、急須を動かす手は休めずに笑いながら言う。
    「私も出前手伝うよ」
    冬休み中はこっちいるし、カウンター越しに母が差し出す湯呑みを受け取って言った。
    「あら、ほんと?助かるわぁ」
    母の目元の笑い皺がますます深まる。
    「美和が出前行ってくれるって。良かったわね、お父さん」
    渡された湯呑みにずずっと口を付けて、父は「ん」と小さく返した。
    帰ってきたなぁと、思うのはこんな時。
    何の変哲もない一場面が、帰省の時に一番求めているものだ。
    両親のやりとりを横目に、私はお茶を口に含む。
    「あ。そう言えばさ、ちいちゃん今年受験生じゃなかった?どこの高校行くの?」
    私の言葉に、
    「酒屋さんの千佳子ちゃん?あぁ、あの子ももう中学三年生なのねぇ」
    母は過去を懐かしむように遠くを見つめた。
    「あんた達、小さい頃はいつも一緒だったわねぇ。千佳子ちゃんはいっつも美和ちゃん美和ちゃんってくっついて歩いて。この辺じゃ子供も少ないから、あんたも年下の千佳子ちゃんの面倒良く見てたものね」
    懐かしいわと、母が目を細めて話すのを私は静かに聞いていた。

    「そうそう、その千佳子ちゃん。あの子ね───」
    「お邪魔しまーすっ」

    何かを言い掛けた母の声は、勢いよく開かれた手動の扉の音によって遮られた。
    先程の声の主は黒髪を両脇でちょこんと二つに結わえた少女。
    彼女はピシャリと扉を閉め、こちらへ向かってきた。
    「お店まだ準備中なのにごめんね、おばさん」
    申し訳なさそうに両のの手の平を自身の顔の前で合わせ、
    「あのね、ぎりぎりになっちゃったけど大晦日のお蕎麦の予約、六人前頼めるかなぁ?」
    ちらりと上目遣いで母を見る。
    母は大きく頷いて、
    「承りました」
    常連さんだものね、と笑った。
    母の言葉に少女は顔を緩ませる。
    「良かったぁ〜」
    綻ばせた口元からは八重歯が覗き、あどけない笑顔は幼さをまだまだ残していた。
    子犬みたいでちょっと可愛い。
    私より四つ、いや五つは下だろうか。
    あれこれ考えていると、
    「あんた何ぼーっとしてるの。ほら、挨拶しなさい」
    あぁ、さっきの会話だとお得意様らしいしね。
    相手が子供とはいえ、確かに黙っているのは失礼だ。
    母に促された私は、
    「初めまして、娘の美和です。いつもご贔屓にして頂き、ありがとうございます」
    立ち上がって恭しく頭を下げた。
    どうだ。
    商売人の娘としてなかなかの挨拶でしょう?
    得意げに母の方を見やると、「何を言ってるのかね、この子は」と苦笑していた。
    「美和…ちゃん?」
    目線を移した先の少女も何やらぽかんと口を開いている。
    「美和ですけど?」
    訝しげに首を傾げると、
    「あんたほんとに気付いてないのねぇ。ほら、千佳子ちゃん。さっき話してたでしょうに」
    横から口を出す母。
    今度は私がぽかんと口を開けた。
    「ちい、ちゃん──…?」
    え?
    だってさ?ちいちゃんは今年で中学三年生のはず。
    この子はどう見たって中一くらい…。
    けれど確かに、目の前の顔は私がよく知っている顔だった。
    …てゆーかね。
    最後に会った時から三年経ってるんだよ?
    私の中のちいちゃん像はそれなりに成長していて。
    まさかそのままの姿でいるなんて、思うわけがなくて。
    むしろわかりづらいわっ!
    「あの…美和ちゃん?」
    いつの間にか私は彼女をまじまじと見つめていた。
    「あ、ごめん」
    視線をぱっと逸らすと、ふふふと含んだ笑みが耳に届いた。
    「美和ちゃん、大人っぽくなったね〜。気付けなかったよぉ」
    綺麗になった、そんな風に八重歯を見せて笑う。
    あんたは、変わらな過ぎだ…。
    私達のやりとりを、母は微笑ましそうに眺めている。
    「あんた達久し振りなんだから美和の部屋で話したら?」
    時計をちらりと見て、そろそろ店も開けるしねぇ、そう言うので、
    「行く?」
    天井を指差して訊ねた。
    ちいちゃんがこくりと頷いたのを確認して、私達二人は住居となっている店の二階に続く階段を上った。
    「後でお部屋にお蕎麦持ってってあげるからねー」
    そんな母の声を背中に受けて。




引用返信/返信 削除キー/
■10745 / inTopicNo.90)  ─年の瀬に逢瀬を重ね《ナキムシ》
□投稿者/ 秋 一般♪(27回)-(2005/07/07(Thu) 09:59:33)
    「三年振り、かな?」
    離れていた時間を埋めるように、幼馴染み二人は互いの話をし合った。
    ふと漏らした彼女の呟きに私はうんと答える。
    「まさか美和ちゃんが寮入るなんて思わないもん」
    「だってここからは遠過ぎて通えないから」
    「そうじゃなくてぇ…そんな遠い高校に行くなんて、って事!ほんと全く会わなくなるんだもんなぁ」
    今までも春休みや夏休み、そういった長期休暇中には帰っていた。
    けれど毎回、ちいちゃんの部活の合宿と私の帰省とが被ってしまって顔を合わせるに至らなかったのだ。
    本当に久し──
    「久し振りだね、美和ちゃん」
    そちらに顔を向けると、真っ直ぐこちらを見つめる幼い笑顔のちいちゃん。
    その瞳に何だか照れてしまって、懐かしさで泣きそうになってしまって、
    「そう言えば今年ちいちゃん受験生でしょ?」
    私は無理矢理誤魔化した。
    ちょっと強引だったかなと思いつつ、私は彼女に笑顔を向ける。
    「どこ受けるの?やっぱり地元?」
    待ってましたとばかりに彼女は妙に含みのある笑みを浮かべた。
    「…何?」
    私はわずかに眉をひそめる。
    「実は…──美和ちゃんと同じ高校でーっす!」
    推薦だから来月なの、と彼女は私の目の前でVサインを作ってみせて。
    「それでね?あたしも寮に入るからいっぱい一緒にいられるよ」
    言った後にはにかんだ。
    小さい頃から一緒の幼馴染みは、私を追い掛けてきたと、なんて可愛い事を言う。
    「あ…美和ちゃん?嫌だった、かな…?」
    黙っている私に不安を感じたのか、顔色を変えて訊ねるちいちゃん。
    私はふっと笑って。
    「ううん、嬉しい」
    そう言うと、ちいちゃんはぱっと顔を輝かせた。
    そして私は声のトーンを落としてもう一言。
    「でもね、ちいちゃん…私、今高三なんだけど」
    「──へ?」
    間の抜けた声を発して凍りつくちいちゃん。
    「だからね、ちいちゃんが入学してきた頃には私は卒業していなくなってるの」
    人差し指で自分とちいちゃん、交互に指差す。
    「……そんなぁ〜」
    みるみる内にちいちゃんは目の淵に涙を溜めてゆく。
    こればっかりはしょうがないよね、と私はわざとらしく溜め息をついてみせた。
    「お蕎麦持ってきたわよぉ。──…千佳子ちゃんどうしたの?」
    「おばさぁ〜んっ」
    二階へと上がってきた母にちいちゃんは泣きついた。
    母は「あらあら」と困ったように笑っている。
    私は心の中で密かに舌を出していた。

    『付属の大学に進学が決まってるから、校舎は違っても同じ敷地内にいるんだよ』ってね。

    母にしがみつきピーピー泣いているちいちゃんを傍観し、変わらないなぁとぼんやり考える。
    いつも私に騙されたりからかわれたり。
    そして母へと助けを求める。
    小さくて泣き虫で甘えん坊なちいちゃん。
    一人っ子の私は、そんなちいちゃんが妹のように思えて、それはもう可愛くて可愛くてついつい意地悪してしまうんだ。
    姿も幼いままのちいちゃんなので、昔へと引き戻されるような錯覚をしてしまう。
    目の前で泣きじゃくる、15歳。
    うわぁ子供がいる…呆れた声を上げそうになった時、

    「──決めたっ。せっかく久し振りに会えたんだもん。美和ちゃんが帰るまでここに泊まる!」

    ちいちゃんは目の端の涙を袖でごしごしと拭き取り、「いいよね?おばさん」と訊ねてから私の方へと顔を向け──

    「一緒の時間を過ごしたいじゃない?それが限られてても」
    にっこり笑った。

    その笑顔に不覚にもドキリとさせられ。
    幼い容姿から変わっていないと思ったけれど、やはり彼女の中の時は確実に流れていた。
    私にくっついて歩いていた小さいままのちいちゃんではないようだ。
    春になって再会したら、私に綺麗と言ったように、今度はあなたがそうなっているかもしれないね?
    ただ、口から覗く八重歯は変わらずにあって欲しいと願うけれど。


    冬休みはまだまだ長い。
    離れた時を埋めるように、
    年が暮れるまで、
    年が明けてからも、
    一緒にいようよ。



    真実は、いつ話そうか?



    気が抜けて再び涙するだろう幼馴染みの姿が目に浮かぶ、年の暮れ。


    あぁ。
    春の足音が聴こえてきた。
    すぐそこまで。




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■10810 / inTopicNo.91)  うれしいです☆
□投稿者/ 幸 一般♪(1回)-(2005/07/11(Mon) 16:26:14)
    お久しぶりですp(^^)q
    最近また秋さんの作品が読めて本当に嬉しいです☆
    これからも応援しているので、頑張って下さい!!

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■11286 / inTopicNo.92)  お元気ですか?
□投稿者/ 幸 一般♪(3回)-(2005/07/25(Mon) 03:54:52)
    私は夏休みに入りました☆
    私の片思いも8ヵ月。いい加減あきらめなきゃいけないなと思ってます。けどなかなか、引きずりますね。
    恋は恋でないと忘れられないんですかね。。

    秋さんの世界で元気もらって、新しい恋に前向きになろうかななんて考えてる、最近の私ですp(^^)q



    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■11421 / inTopicNo.93)  尊敬します!!
□投稿者/ ココ 一般♪(1回)-(2005/07/28(Thu) 12:10:02)
    秋さん、はじめまして(^-^)

    最近この作品を読みはじめて、読み終わったら秋さんの他の小説も読破してしまいました。

    日常的な風景をリアルに描く文才、独特の世界観。

    切ないけれど爽やかさが残る読後感。

    次も読まずにはいられないと、すっかりあなたの言葉に心を掴まれています(^-^;)

    洗練された文章を何本も書くのは大変だと思いますが、秋さんの描き出す世界を楽しみにしています。

引用返信/返信 削除キー/
■11619 / inTopicNo.94)  幸さんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(28回)-(2005/08/02(Tue) 15:09:37)
    恋は恋で。
    そうとも限らないと思います。ありがちですが、何か打ち込めるものがあれば。もちろん恋でも。ただ、諦める事を辛いと感じるならば、それは適した方法ではないのではないでしょうか。想い続ける事と諦める事。きっとどちらも苦しいのでしょうけど。
    私が書く物が幸さんの元気に少しでも加わればと、そう思います。
    最近は夏らしくなってきたので、暑さが苦手な私は少しバテ気味ですが、幸さんからの感想で元気を頂いていますよ。
    ありがとうございます。


引用返信/返信 削除キー/
■11620 / inTopicNo.95)  ココさんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(29回)-(2005/08/02(Tue) 15:10:29)
    嬉しい言葉の数々、ありがとうございます。昔の物まで読んでくださったようで、有り難い気持ちが溢れてきました。
    私の書き方にはムラがあるので更新ペースもまちまちですが、新たに投稿した際にはまた目を通して頂けたら幸いです。
    感想、ありがとうございました。


引用返信/返信 削除キー/
■12278 / inTopicNo.96)  NO TITLE
□投稿者/ カルピス 一般♪(3回)-(2005/08/23(Tue) 00:22:58)
    こんにちは、いつも楽しく読ませてもらってます(^^♪
    個人的に川瀬が大好きです。
    早く笹木とラブラブになってほしいです(#^.^#)
    お忙しいとは思いますが、続きが早くみたいです(●^o^●)
    これからもがんばってくださいね。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■12808 / inTopicNo.97)  カルピスさんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(1回)-(2005/09/12(Mon) 15:50:09)
    返事をするのが遅くなってしまい、すみませんm(__)m
    気付けば、一話目を書いた時から一年が過ぎていました。小説の中の時間ももうすぐ一年が経とうとしています。そろそろラストスパート、といったところでしょうか。
    川瀬を好きだと言ってくださって、ありがとうございました。
    スローペースではありますが、もうしばらく彼女達のこの先にお付き合い頂けたら幸いです。


引用返信/返信 削除キー/
■12809 / inTopicNo.98)  ─新たな年に想いを馳せて
□投稿者/ 秋 一般♪(2回)-(2005/09/12(Mon) 15:52:15)
    「今年こそあいつに勝てますようにっ」

    賽銭箱の前でパンパンと柏手を打ち鳴らし、思いっきり両の手の平を合わせる。
    周りの人垣なんて気にするものか、神様に聞こえるように大きく声を張り上げた。
    拝むこと5分余り。
    よしっ、声には出さず気を引き締めて、参拝客の長蛇の列を抜けた。

    今年こそは絶対─

    先程の願いを、もう一度胸中で反芻する。
    そう、あたしには勝たなきゃならないやつがいる。

    …まぁ結局は自分の実力次第なんだけどさ。
    けれど毎年の願掛けは身も心も引き締めてくれるから。
    一年の初めのこの必勝祈願を、あたしは欠かす事なく続けていた。

    用事も済んだし、帰ろうかな。
    どうせ昼ご飯も朝と同じでおせちだろうけど。
    容易に想像できる食卓の風景に少しだけ苦笑して、あたしは境内を後にした。
    社から離れ、鳥居をくぐって石段を下ろうとすると─

    「あ、ニナ」

    あたしより一足早く、石段を登って鳥居をくぐり抜けてきたのは。
    そう、ヤツ─イチコだった。


    「もう初詣終わったの?」
    てくてくと近付いてくるイチコにあたしは露骨に嫌な顔。
    「初詣なんてちゃらけたもんじゃありません」
    つーんと顔を背けて言い放つ。
    それを聞いたイチコは、
    「あぁ、必勝祈願だっけ」
    面白がるように笑った。
    「今年は叶うといいねー」
    そんな思ってもない事まで付け加えて。
    …相変わらず嫌なやつ。
    あたしはぽつりと毒づいた。

    イチコとは家が近所で、幼稚園も一緒で、だから必然的に小学校も中学校も一緒で。…選んだ高校までも何故か一緒で。
    所謂幼馴染み。というより腐れ縁。
    小さい頃から勉強も運動も人並み以上に出来たあたしが、何をやってもこいつにだけは敵わなくて。
    いつしかイチコはあたしの最大のライバルになった。
    全くもって相手にされていないけれど、それがまたあたしの闘争心に火を着ける。
    そんな風にすかしていられるのも今の内だ。
    当初の目的とは大きくずれて、イチコの目に映る事に躍起になっているあたし。
    それに気付いてしまって、悔しさが込み上げてきたあたしはいつものように減らず口を叩いてみた。
    「寮で四六時中あんたの顔見てんのに、実家に帰ってきてまでその顔見なきゃなんないなんてね」
    あーぁとわざとらしく溜め息を吐く。
    けれどイチコは相変わらず飄々としていて、
    「地元同じなんだからしょうがないじゃん」
    へらへら笑ってさらりと交わした。
    「じゃあ帰ってくんな!寮に籠もってろ!」
    更に食ってかかるあたしを、
    「だって長期休暇中の寮生は帰省するのが原則でしょー?」
    あっさり避ける。

    む…。
    これではまるっきり三流脇役の突っかかり方だ。
    所詮あたしはこいつの引き立て役に過ぎないのか…?

    眉根を寄せて自問自答するあたし。
    目の前のヤツには、さぞ滑稽に映っている事だろう。
    やがてイチコは口を開いた。
    「ねー。元旦から怖い顔してないでさ、新年の挨拶がまだなんじゃないの?」
    にっこり笑う。

    …こっちは正月早々あんたなんかと遭遇したんだ。
    そんな晴れやかな心持ちでいられるかっ!

    そのままくるりと背を向けて、無言でヤツから遠ざかってやろうとして。
    それを思いとどまる。

    良い事を考えた。

    漏れそうになる笑みを必死で堪えながら、イチコの目を見つめる。
    いつもの様子と異なるからか、イチコは怪訝そうに首を傾げた。

    その一瞬の隙を、あたしは見逃さなかった。

    イチコのコートの襟をぐいっと掴み、自身の方へと引っ張る。
    体勢を崩したイチコの顔が目前に迫った時。
    ほんの一瞬、あたしの唇がヤツの唇を捕らえた。

    ゆっくりと顔を離して、
    「今年もよろしく」
    ニヤリと笑う。

    目の前のイチコは、思わぬ奇襲に言葉を失い、頬を軽く赤らめている。
    ──はずだった。
    なのに。

    あたしが言い終わらぬ内に、ヤツによってマフラーが手繰られて。
    「へ?」
    間抜けな声を発するあたしは、イチコに唇を塞がれた。
    ほんの一時の静寂の後、先程よりもゆっくりと顔が離れる。
    「──しっ…舌っ!今あんた、舌っ…──」
    慌てるあたしに、イチコは余裕の表情で。

    「こちらこそよろしく」

    不敵に笑った。



    一年の計は元旦にあり、と云うけれど。
    どうやらあたしは、今年もヤツに勝てそうにありません。

    そうでしょ?神様─



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■12810 / inTopicNo.99)  ─私達、付き合ってます。
□投稿者/ 秋 一般♪(3回)-(2005/09/12(Mon) 15:54:10)
    何となく始まったこの関係。
    ルームメイトから、それは特別な存在となって。
    ただ、この場合"恋人"と呼んでいいのだろうか、とか。
    いまいち不透明な、あたし達のこの関係。
    それはふたりが、同性だからに他ならない。



    相原は。
    元々人にくっつくのが好きな性質だけど、この頃特に激しい気がする。
    例えばそれは。
    下校中の道端だったり、あるいは買い物しに来た街の中、寮のちょうど死角になっている階段脇。
    手を繋いだり、腕を組んだり、ふざけが過ぎると頬に軽く口付けたりもする。
    あたしは人前での気恥ずかしさからか、あるいは「女同士」であるという後ろめたさか、その手を払い、腕を振り解き、距離を取る。
    そうした後の相原は少しだけ頬を膨らませるけれど、すぐにいつも通りふわふわと笑うから、あたしも大して気に留めず日々を過ごしていた。

    だけど、この日は違った。

    冬休みも終わりを告げて数日。
    学校がある日常がすっかり戻りつつある寮への帰り道、まだ陽は高く帰宅途中の生徒達の姿もちらほら見られたから。
    不意に繋がれそうになった手を、あたしは拒んだ。
    そのままペースを落とさず歩いていると、さっきまで隣を歩いていたはずの相原がいない。
    あれ、と思って。
    振り返ると、あたしの数歩後ろ、相原は俯き加減で立ち止まっていた。
    すぐさま彼女に駆け寄る。
    「相原?」
    反応はない。
    「どした?」
    言いながら、あたしより少しばかり背の低い相原の顔を覗き込もうとしたら、
    「……帰る」
    彼女はぼそっと呟いてそのまま足早に行ってしまった。
    残されたあたしはただぽかんとしていて。
    立ち尽くすあたしを不審そうに見やる人の視線に気付き、慌てて相原の背を追った。



    寮に帰って来ても相原の機嫌は直らず、あたしと彼女のこの部屋は何だか重苦しい空気。
    ベッドの縁に背をもたれて床に座る相原の、その隣に腰を下ろして。
    ちらりちらりと表情を覗き見る。
    相原は唇を尖らせて、明らかに拗ねた顔。
    何をそんなに怒ってるわけ?
    あたしはわけがわからない。
    と、そこで。
    ちょっと芽生えた遊び心。
    部屋の中は二人っきりだし。
    人目も気にならないし。
    いつも相原がしてくる事を、今度はあたしがしてやれっ。
    そっぽを向いている彼女の顎に手を当ててあたしの方を向かせると、「何?」あからさまに不機嫌そうな顔をした。
    それに構わず、あたしはゆっくり顔を近付ける。
    あたしの唇は柔らかな相原の頬を捕らえ───っ?!
    バシっという小気味の良い音。
    どうやら捕らわれたのはあたしの方。
    相原の手の平が見事にあたしの頬に炸裂していた。
    じんじんと響く頬を手で押さえながら、「いきなり何っ?!」涙目で喚くあたしに。
    「それは夏目でしょっ」
    立ち上がった相原はあたしを見下ろす格好で声を浴びせた。
    むー…と彼女を見上げて、「いつもはそっちからしてくるくせに…」と、恨めしげな目を相原に向ける。
    相原は不機嫌そうな顔を更に険しくさせた。
    そして一言、ぼそぼそと呟く。
    「だって夏目…さっき手、振り払った…」
    へ?と、間抜けな声を上げるあたし。
    「それは人が見てたし…恥ずかしいじゃん」
    それにいつもの事じゃないかと続けようとするあたしの言葉は相原に遮られた。
    「そんなに人目が気になるの?夏目は恥ずかしいんだ?」
    そりゃあ人前でべたべたするのは。
    でもそれはあくまで人の視線が恥ずかしいというわけであって、相原にべたつかれるのはそれ程あたしは嫌じゃない。
    むしろ───…
    「夏目は私が好きでしょう?」
    ぼんやりと考え中の押し黙ったあたしに、苛立った様子で投げ掛けられた相原の言葉。
    「うん」
    それにあたしは、ひどく間抜けに答えを発する。
    「だったら何でっ…」
    目の前には今すぐにでも泣きそうな、ルームメイトの相原。
    あたしはひどく戸惑ってしまって、気の利いた言葉が思い浮かばない。
    じわじわと目の端に涙が溜まって、そろそろ落ちるぞって時。

    「そんなに恥ずかしい?女同士って事が」

    ──その問いに。
    答える暇を与えてはくれず、
    「夏目のばぁかっ」
    そんな罵声をあたしに浴びせて、ずかずかと部屋を出て行ってしまった。

    ──…そんなわけ、ないじゃないか。

    その日。
    一晩中電気を点けて待っていたけれど、誰かの所に泊まったのだろう、相原は結局部屋へは戻って来なかった。



    翌日も、朝から食堂で相原を見掛けたけれどものの見事に無視された。
    当然登校は別々に。
    クラスが違うあたし達は校内で滅多に顔を合わせる事はないから。
    …何々ですか、相原さん。
    こんな調子で朝からずっと塞ぎ込んでいるあたし。
    大体相原の怒りの理由がわからない。
    そうこうしている内に日は暮れて。
    もう放課後じゃないか。
    部活でもして発散しよっと!
    と、立ち直ってみるものの、今日は休みだって事をすっかり忘れていた。
    あーぁ。何か調子悪いな、あたし。
    そう思いつつ、校門をくぐる。
    一つ二つと歩を進めたところで、前方に見知った後ろ姿。

    ─相原。

    声を掛けようか迷ったものの、彼女の隣にもう一人の姿を見つけてしまったので出掛かった声を飲み込んだ。

    男、ね。

    校門を出たすぐ側で、相原と他校の制服を着た男が何やら話をしている。
    また相原が告られてでもいるんだろう。
    何食わぬ顔をしてその脇を通り抜けようとした。

    「なぁ話を聞いてくれよ。お前、今付き合ってるやついないんだろ?俺とやり直そう?」

    不意にあたしの耳を掠めた声は、十分すぎるほどの情報をあたしに与えて。
    一瞬、歩く速度が緩む。

    …相原の、元カレ?

    告白も何も、よりを戻すって話じゃないか。
    ふうん…。
    まぁあたしが懸念してもどうしようもない、か。
    構わずに、再び足を動かす。

    「痛っ」

    その声に少しばかり反応して。
    わずかにあたしの視界が捕らえたのは相原の手首を掴む元カレの姿。

    「黙ってないで何か言えって」
    でもあたしには関係ないし。
    むしろ部外者?

    「…離してよ」
    夫婦喧嘩は犬も食わない、ってね。

    「俺の質問に答えろ!より戻す気あるのかよ?」
    …けれど。

    「大声出さないで」
    この二人は既に別れているわけで。
    ただの元彼氏と元彼女なわけで。

    「答えになってねえよ!」
    つまりはもはや無関係。

    「痛いってば!」
    その場を通り過ぎたあたしはくるりと踵を返した。

    「あのさ」
    二人の横で立ち止まったあたし。
    あたしを見止めた相原が驚いたように目を見開いていたけれど、それを無視して元カレに声を掛けた。
    「あ?」
    誰だお前、そんな訝しげな目であたしを睨む。
    それに怯まず。
    「とりあえずその手離してもらえる?仮にも女子校の前だし、痴漢と間違われるよ」
    その言葉に、周りを見渡す元カレ。
    校門前を行き交う下校中の生徒達の注目を集めている事に気が付いたのか、相原の手首から渋々と自身の手を離した。
    相原はぱっと彼から距離を取ってあたしの背に隠れると、赤くなった手首をさすっていた。
    これでいいだろ?もうあっち行ってくれよ、そう言いたげにあたしを見る元カレ。
    あたしはがしがしと頭を掻いた。
    「あー…あとさ。こいつもう付き合ってるやついるから諦めてもらえない?」
    元カレは顔を不愉快そのものに歪めた。
    「は?誰だよそいつ」
    怪訝そうにあたしを見る元カレに、
    「あたし」
    人差し指で自分の顔を指差し、にっこり笑顔。
    しーんと静まるその場の空気。
    「……は?」
    彼は間の抜けた声を上げるので、
    「だからあたしだってば」
    再び、にっこり。
    呆れ顔の元カレ。
    くだらねー…と呟きながら彼は脱力したように去って行った。
    その後ろ姿を見送っていると。
    「付き合ってるんだ?私達」
    相原が呆れたようにあたしを見ていた。

    「だってあんた、あたしの事好きでしょ?」

    相原は。
    俯いてしまったので表情は見えなかったけれど。
    静かに右手を差し出した。
    空はまだ明るくて、人通りもまだまだ多かったけれど。
    あたしはその手にしっかりと指を絡めた。




    自分が好意を寄せる相手もあたしの事が好きだなんて、それはとても稀な事だ。
    そして側に居てくれるという事も。
    なんて嬉しい事だろう。
    女同士?
    それが何だ。
    恥ずべき事じゃない。


    あたし達、付き合ってます。
    文句ある?




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■12811 / inTopicNo.100)  ─終着駅
□投稿者/ 秋 一般♪(4回)-(2005/09/12(Mon) 15:55:21)
    何となく、目が覚めた。
    カーテンの隙間から蒼白い月の光がわずかに漏れていて、中途半端な時間に目を覚ましてしまったと、小さく息を吐く。
    完全に意識は覚醒してしまって、強引に瞼を閉じても冴えわたるだけだから。
    寝癖のついた髪を撫でつけながら、ゆっくり体を起こした。
    と、隣で毛布にくるまっている小さな影がわずかに身動きする。
    「ごめん、起こした?」
    小声で問うと、彼女は毛布から顔を出して目をこすった。
    私を探すように腕を伸ばす。
    室内とはいえ、今は一月。
    暖房を入れていないとすぐに空気は冷えてしまう。
    私は起こした体をまた伏せて、彼女の毛布に潜り込んだ。
    「……冷たい」
    彼女は咎めるように唇を尖らせ、けれど伸ばした腕をそのまま私の首へと絡ませる。
    身に纏う一切を脱ぎ捨てている私達は直接肌を触れ合わせ、眠りに落ちる前の先刻のように、再び体を重ねた。
    薄暗い小さな部屋の中には、月明かりに照らされて、ゆらゆらと心許なくふたつの影が揺れていた。



    「先輩も、もうすぐ卒業ですね」
    まだ、夜は明けていなくて。
    行為の熱が冷め始めた頃、絡めた指を解きながら彼女がぽつりと呟いた。
    「あと二ヶ月で、いなくなっちゃうんですね」
    彼女の方へ目を向けると、ぼうっと天井を見つめている。
    私はゆっくり起き上がり、上から彼女の顔を覗き込んだ。
    ぼんやりと私を見つめる、彼女。
    伸ばされた手に応えて、私は身を屈めた。
    背中に回された腕は外気に晒されてひんやりとしていて。
    わずかに顔をしかめると、彼女は小さく微笑んだ。
    顔を寄せ、唇を寄せる。
    はぁ、と。
    互いの息が重なると。
    二人顔を見合わせて、笑ってしまった。
    そして。

    「終わらせましょう?わたし達」

    彼女は私の首筋に手の平を寄せ、囁くようにして言った。

    「この関係を、終わらせましょう?」

    今度は頬に触れながら。

    私は彼女の髪を指で梳き、こくりと小さく頷いてみせた。

    箱庭にいる間だけの、わずかな一時を共有する間だけに持った関係だ。
    私達は互いにそれをよくわかっていた。
    「──そろそろ…潮時だね」
    あまり長引かせてもいけない。
    清算するなら今だ。
    私はあと二月しか、ここにはいないのだから。

    「今日で、最後にしよう」

    彼女は。
    寂しそうに穏やかに、月の光を浴びながら微笑んだ。





    太陽が昇る前の、まだ眠ったままの街の中を、ふたり手を繋いで駆ける。
    薄暗い群青の空からこぼれる月は、ぼんやりとしていて。
    夜と朝との境界を示し始めていた。
    不安な気持ちで駆けていた私達は、息を切らせながら始発列車に飛び乗る。
    がたがたと走り出す電車に揺られて、大きく深呼吸をした。
    私達の他に乗客が見当たらない車内で、肩を寄せ合い寄り添う二人は、さぞかし奇妙だったに違いない。


    『先輩の今日を、わたしにください』
    最後のわがままを聞いてもらえますか、と。
    私の目を真っ直ぐに見つめながら、彼女は言った。
    私は無言で頷いた。
    彼女のわがままなんて、最初で最後だったから。

    布団から出て服を纏った私達は、互いの手を取り合って、寝静まる寮から抜け出した。
    早く、早く。
    遠く、遠く。
    目的地などなかったのに、向かう先などわからなかったのに、何故だか焦る気持ちで二人の足は急いていた。


    隣に腰掛ける彼女は、私の肩に頭を傾け規則正しい寝息を立てている。
    私も瞼が重くなり、そして甘い眠りに誘われた。



    目を開くと、隣の彼女が私の顔を見て微笑んでいた。
    すでに起きていたのかと、妙に恥ずかしい気持ちを覚えつつ、私は欠伸を噛み殺した。
    見慣れた街はとうに過ぎたらしい、窓の外は知らない顔をしていた。
    普段はあまり利用しない路線だったから、ここがどこだかさっぱり見当がつかない。
    どれだけ進んだのか、どこまで進むのか。
    けれど腕にはめた時計の針だけは容赦なく進んでいたから、相当な距離を経たのだという事は想像できた。
    そんな事を考えていると、
    「遠くまで…来ましたね」
    彼女が先に口を開いた。
    窓から射し込む陽の光で、空がすでに明るくなっていた事を知る。
    「どうしようか」
    適当なところで降りてみる?、訊ねると。
    彼女は小さい頭を左右に振った。
    「最後まで行ってみませんか」
    そう言って微笑む。
    「──そうしたいなら」
    私は小さく答え、彼女にもたれて目を瞑った。
    華奢な彼女の肩からは、確かな温かさが伝わった。



    小さな旅の終わりを告げる終着駅は、何ひとつないところで。
    明けきった空が、ただただ大きく広がっているだけだった。
    電車から降りた私達は、ゆっくりと地面を踏みしめて大きく伸びをする。
    私の後ろを歩いていた彼女のくしゃみを背中で聞いて。
    私はそちらを振り返る。
    向かい合う、ふたり。
    互いに白い息を吐き出した。
    「わがままを聞いてくれて、ありがとうございました」
    彼女が小さく笑む。
    「まだ今日は残ってるよ」
    吐き出すようにして言葉をこぼした私に、
    「線路の最後まで着いたら、わたし達も終わりにしようって思ってたんです」
    そうしなくちゃ気持ちの整理の仕方を間違えそうだから、風にさらわれる髪を手で押さえながら言った。

    「これで──…終わりです」

    はっきりとした声。

    「もう先輩の部屋には行きません。校内で会っても、わたし達はただの先輩と後輩ですよ?」

    答える代わりに私は彼女を抱き寄せた。
    私の腕の中でわずかに身じろいだ彼女は、
    「───……本当にこれが、最後になるんですね…」
    小さく小さく呟いて、ゆっくりゆっくり私を見上げた。



    そして私達は。
    終わりを告げるキスを交わした。







    線路はここで終わっているけど、終着駅の向こうには、まだまだ続く道があるのに。
    私達は互いにそれに気付いていて、けれどどちらも口にはしなかった。
    終着駅のその先を、見えない振りで誤魔化したんだ。
    進む事に、踏み込む事に、臆病だったのだと思う。
    この関係は、限られた時間の中でだけだと、思い込んでしまっていたから。









    ふたりの間には、繋がれた何かは存在しなかったけれど。


    それでも、この先─

    キスをする度、
    キズが疼くんだ。




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