ビアンエッセイ♪

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■18672 / 1階層)  10年間 -19の夏-
□投稿者/ sakura 一般♪(3回)-(2007/04/17(Tue) 22:59:46)
    −19の夏−

    桜庭病院のデイケアにアタシがボランティアとして通うようになって3ヶ月。
    さすがに北海道といっても、やっぱし夏は暑いんだなぁ〜〜
    駅から病院への道をテクテク歩いていく間にも、汗がつ〜っと流れていく。

    「こ〜んにちわっ☆」
    リースがかかった白いドアを開けると、いつものメンバーが黙々と作業をしている。
    「あっ!!亜紀チャンだ〜!こんにちわ〜〜!」
    最初は、「相手は『患者さん』なんだ」と思って、怖いやら緊張するわでオロオロしてたけど、もうだいぶ慣れてきた。
    「ん〜っと・・・今日はコッチ、手伝いますねっ」

    デイケアのことも、いろいろわかってきた。
    ん〜・・・まぁ、ヒトコトでいうと「リハビリ」みたいなもん?
    料理とか、工芸とか、みんなで運動したり、話し合いをしたり・・・
    とにかく、いろんなことをやって、「社会生活」というものに慣れるのが目的だそうだ。
    ・・・やっぱアタシ、わかってないかも・・・。

    メンバーさんたちと一緒に皮細工をしていると、背後から聴きなれた声。
    「・・・今日は私はこっちにいるから。」
    でたっ!永野先生だ!!

    永野先生は、ここの担当のドクターなんだけど、とにかくコワイ。
    何かわかんないことを聞こうとしても「そんなのも知らないの?」的な目でジ〜〜っとこっちを見るだけ。
    ・・・ううぅ・・・やっぱりこの先生、苦手だぁ。
    極力、話さないようにしよう・・・アタラズサワラズっていうし・・・

    「さん・・・斉藤さん・・・ちょっと!斉藤さん!」
    え?アタシ?ちょっとぼ〜っとしてたっ。。。
    「はいっ?!何ですか??」・・・振り向いてギョっとした。
    「・・・斉藤・・・さんでいいのよね?」
    永野先生だった。
    「は・・・はははっ・・・はいっ!そうででです!」
    「・・・ちょっとこっち手伝ってほしいんだけど」
    おわ〜〜〜!よりによって永野先生・・・まさか「イヤです」なんて言えるわけもなく(ToT)
    「はいっ!わ、わ、わかりましたっ!」あわてて奥の部屋へ向かう永野先生を追いかける。
    ・・・どうしてこんなに胃がいたいんだ?・・・はぁ。

    デイケア室の奥に、小さな部屋があって、机と椅子が二つ、二人くらい座れそうなソファー、本棚が置いてある。
    う〜ん・・・診察室みたいなカンジ?そういえば、ここ入るの初めてかも・・・
    キョロキョロしていると、永野先生が「ちょっと!このダンボールおろすの手伝ってちょうだい!」と本棚の前に脚立を置いて登っている。
    ・・・アタシ、「ちょっとっ」って名前じゃないんですけど・・・(−−;)

    それから1時間くらい、書類やらファイルやらの整理を手伝わされた。
    なんかおしゃべりするわけでもなく、ただ黙々と。。。
    汗はタラタラ出てくるし、なんか気まずい空気だし・・・最悪。

    「これで終わり。もう、あっちに戻っていいわよ」
    そ、それだけですかいっ!ちょっと〜・・・
    「ありがと☆」とか「ごくろうさま♪」とか言えないのか?この人!

    なんだか妙にぐったりしてデイケア室に戻ると、みんなでお茶を飲んで休憩中だった。
    「むっちゃん先生にコキ使われた?」ナースの根本さんがクッキーをくれた。
    「むっちゃんセンセイ??あ。永野先生ですかぁ?・・・・・」
    「相当働かされたな。」メンバーさんたちが『かわいそうに』という目で同情してくれる。
    「むっちゃん先生、学生にはホントに厳しいもんねぇ・・・。何人が去っていったことか・・・」
    「ええぇ??学生キラーですかっ?!ど、ど〜しよ・・・」
    「大丈夫だよ〜。亜紀ちゃんと先生は、案外気があうかもよっ☆」
    メンバーさんたちもニコニコしながらうなづいている。
    ・・・んなわけないじゃんよぉ・・・吉野教授の命令(?)じゃなかったら、とっくに逃げ出してるよぉ・・・
    麦茶をゴクっと飲んだら、また胃がキリキリした。

    「斉藤さんっ!来週、朝早くからこられるかしら?」
    背後で永野先生の声がした。
    「うわわっ!あ、あさですか??た、たぶん、だいじょうぶだとおも・・・」
    「じゃ、8時半に。カギはもう開いてる時間だから。」
    永野先生はそういうと、デイケア室の白いドアから勢いよく出て行く。

    「・・・・・」あたしは口をポカーンと開けてただそのドアを見つめていた。
    「ぷっ。亜紀ちゃん、すっかり気に入られたなっ」根本ナースがアタシの方をポンポンと叩く。
    そ・・・そんなぁ・・・。
    アタシが教授から頼まれたのって、実は永野先生の助手?秘書?お手伝いサン?

    頭がクラクラしてきた。
    この胃が痛い日々、いったいいつまで続くんだろ〜〜!
    暑さと緊張感と、胃の痛みと・・・なんだかいろいろで、疲れた。。。

    やっぱ、あの先生、苦手だぁ・・・
    つ〜か、ちょっとばかし美人だかなんだかしらないけど、何様なのよ!学生だからって、バイトできてるわけじゃないんだからっ!アゴで使うのやめてよね〜!

    んも〜〜〜!!!なんなの!あの人!
    いつまでこの「コキ使われ」が続くのか・・・と思うと、気が遠くなりそうだった。。。

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