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イベント会場は大盛況だった
ショーも大成功

ステージの正面の、鏡張りに移る僕達の踊りは
付け焼刃とは思えない出来だった

まぁね…当然さ
風人くんが居るのだから

「風人〜決まってる〜」
「君も美しいよ」
「もう！そんな涼しい顔して美しいなんて言えるのは風人くらいだよ〜！」
「風人〜後で踊って〜」

そんなこんなで
盛り上がっている中を縫ってお仕事しながら
僕の目は確実に、ターゲット…澄怜を追っていた

ほっそりした調度いい身長
鏡に映っていたしなやかにくねり踊る身体
色白で紅い唇


どうしてもボーイがもう独り欲しかったから
元元々カノに紹介された子
二十歳で業界新人　セクは不明だけどタチなんじゃない？


晃の言葉通り、澄怜は素人っぽく、初々しくて可愛かった
セクが攻めでも関係ない
むしろそのほうが萌える

僕って
バリタチを受けにするのが趣味だったりしてね…


「ねぇ…ここ終ったら２人で打ち上げしない？」

調理場のカウンターで、料理を運ぶ澄怜の耳に低く囁く

「え…ホントですか？はい！」

大きな目で見詰める澄怜に、口説いたこっちが戸惑った程

いや…素直な子は好きだよ
でも、少し戸惑ってくれたほうがそそられるというもの…

でも
その大き過ぎる目で見詰められるとかなり効く



「風人くん、腕相撲しようよ」
突然、腕を強く掴まれたのはイベントも後半の時間

見るからにフェムタチというパンツスーツ姿の相手

「すみません〜仕事あるから」

「何？負けるのが怖いの？」

更に強く腕を掴んだその言葉に、最初の火が付いた

「３本勝負。私が負けたらドンペリ入れるよ
風人くんが負けたらテキーラ２ダブル一気飲み…どう？」

「もう腕相撲なんて面白くないじゃない〜」

彼女の連れている、いかにもネコの小柄な女の子らしい子が
困ったように僕を見る

さっき縋りつかれてホールで踊った子…
良く或る嫉妬って奴

「ごめんねカノとやって…体力温存の夜なの」
軽くいなし去ろうとした

「ホントなんだ〜身長は或るのに腕の力無いって」

せせら笑うような笑い声


自慢じゃないが
僕は腕の力が無い
握力が無いと言ったほうが正しいのか？

今迄、腕相撲には勝った試しが無い


それなのに挑んでしまった…
なんて負けず嫌いなんだ


初めに勝って…結局負けた
70度のテキーラＷを、２回一気飲みした


いつから記憶が無くなったのかも記憶に無い

これは怖い



「お待たせ。お粥だよ」

澄怜が笑顔で、お粥らしき見覚えの或る小鍋を乗せたトレーを持って来た

澄怜が、僕のオフ色のパジャマとガウンを着ているのに初めて気づいた


不思議な感じ…
記憶が無いのにいやに嬉しかったりして