| 「球技大会?」 昼休み、生徒会の仕事を手伝うってことで、 生徒会室で食事をしているときに、悠稀に話しかけられた。
「ええっ、生徒会主催での催し物はいくつかあるのだけれど、 毎年この時期は球技大会をするの。」 そっか〜、いろんなイベントがあるんだね。
「へえ〜、球技大会って、バスケとか?」 「バスケもそうだし、バレーや卓球、ソフトボールやサッカーなんかもあるわ。」 サッカーもあるんだ〜、いろいろやるんだな〜。 「ふぅ〜ん・・・、でもそうしたら、 同じ部活やってる人が強いんじゃないのかな?」 「そうなのだけれど、各チーム、 自分が所属している部活の種目に参加できるのは一人だけなの。」 悠稀が説明してくれる。
「じゃあ、一人だけバスケ部で、 ほかの4人は違う部活じゃないと駄目ってこと?」 「そうなの、やっぱり全員バスケ部でバスケチームを組んだから、 簡単に優勝できてしまうでしょ?」 確かに・・・
「それもそうだね。で、球技大会の仕事を手伝えばいいのかな?」 僕にできる事なら、どんな雑用でも手伝って、役に立たないと。
「準備もだけれど、是非あなたにも種目に参加して欲しいの。 大勢の人が参加することが生徒会活動としては重要なの。」 意外な申し出に、僕はちょっと驚いた。
「ふぅ〜ん・・・そっか、どの種目でもいいの? じゃあバスケにしようかな〜。」 スポーツするのは結構好きだし、デュークと一緒にやったっけ。 あっ、もちろんデュークはシュートはできないけど、 なかなかディフェンス上手いんだよ。
「そしたらメンバー5人誘わないといけないんだね。」 「そうね、できるだけ大勢の人に参加して欲しいのだけれど。」 悠稀の役に立つなら、何でもしたい。 「うん、じゃあ、声かけてみるね。」
ちょうどそこに江利子さんが入ってきた。 「失礼します。お食事中お邪魔して申し訳ありません。」
僕らが昼休みに生徒会室にいると、 ときどき江利子さんが書類とか報告をしに来るけど、 いつもすぐに帰っちゃうんだ。 生徒会の仕事できてるんだから、邪魔なのは僕のほうなのに・・・。
あっ、そうだ。 「江利子さん、球技大会一緒にバスケやりませんか?」 「えっ、私がですか?」 江利子さんは驚いたような顔をしている。
「しかし、私は執行部としていろいろとやることが・・・」 そういって遠慮がちが江利子さんに、悠稀が声をかける。 「良いじゃない、江利子さん。 事前に準備を確認しておけば、当日は各種目の責任者に任せても。」 ニコニコと、悠稀は楽しそうだ。
「それは・・・不可能ではありませんが・・・」 う〜ん・・駄目かな〜? 「たまには参加する側になってみるもの必要だわ。」 悠稀がもう一押ししてくれた。
「わかりました。やらせていただきます。」 江利子さんが承諾してくれた。 「やった!じゃあ、まず一人目ね〜。」
昼休み終了の予鈴がなったので、僕と悠稀は教室に戻ることにした。 廊下で晶とすれ違う。 なんだか荷物を抱えている。
「あれっ、晶、午後は?」 「あっ、神崎さん。午後は美術で外で絵を書くらしいです。 まったく、こんな良い天気なのに写生だなんて、ふけちまおうかな。」 何かと理由をつけて晶はすぐ授業をサボろうとする。
「こらこら、ちゃんと授業に出なさい。」 「神崎さんがそういうなら、出ますけど。」 こういうところが、子供というか、素直だなって思う。 本当に嫌なら、無理に出ろとは言わない。 「そうだ、晶。お願いがあるんだけど。」 「はいっ、わかりました。」 返事早いな〜。
「って、まだ言ってないけど・・・」 「神崎さんの命令なら、聞くまでもありません。」 だから、こいつは〜・・・命令じゃなくて、頼みごとなんだけどな〜
「球技大会、僕と一緒にバスケに参加しない?」 「・・・バスケ・・・ですか・・・」 あれっ、黙っちゃった。バスケ嫌いなのかな。
「あっ、別に、無理にとはいわないから、他に予定があれば良いんだけど・・・」 「いえ、神崎さんがおっしゃるのなら、よろこんでやらせてもらいます。」 承諾してくれたけど、あの一瞬の沈黙はなんだったんだろう?
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