| しばらく真澄と話していたせいで、随分と遅くなってしまった。 「あっ!やっと来た!和沙、お〜そ〜い」 いつもはのんびりしている希実も、腕組しながら仁王立ちしていた。 「ごめっ…」 「謝るのは後っ!ほら、早く上を脱いで。 あとは和沙だけだよ」 言われるままに高速スピードで服を脱がされ、 あっという間に測定を済ませた。
「はぁ〜。バストも去年より小さくなってる…」 ボソッと和沙が独り言しているところに 「ちょっと良い?」 と呼びかけながら希実が近づいてきた。 はい飲み物、と角に備え付けの紙コップを手渡しながら、 それは突然発せられた。 「真澄先輩に何て言い寄られたの?」 「ぶっ」 幸い中に入っていたのが水だったから、 和沙が口に含んだばかりでも惨事を免れた。
ゴホッゴホッゴホッ… ただ、運悪く気管に詰まらせたようで、 和沙はしばらくむせ続けていた。 しかし…何て言われたの、ならまだ分かるが 何て言い寄られたの、だ。 似ているようで、醸しだすニュアンスは全然違ってくる。 「ねぇ、教えてよ!」 やけに真剣に問いつめる希実には悪いが、 和沙は真澄に言い寄られてなんかいない。 「希実、何言っているの? 私はただ高柳会長と話してただけだよ」 「怪しい…」 疑いの目を向けてくる希実は、 その後もしつこいくらいに食い下がった。 「もういいよ!和沙の馬鹿っ」 仮にも学年主席である和沙に対してその言葉はあんまりだが、 希実は何事もなかったようにスタスタと教室に向かって歩いていった。
…何を怒っているんだろ?
「待ってよ〜!希実」 今は友のご機嫌とりに専念しなくては。 あっちに気を配ったり、こっちに配慮したり… 生徒会の手伝いをしていくうちに、 こうやって板ばさみになる経験が増えたことを 和沙は改めて感じた。
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