| 植物の栽培方法のことにはほとんど無知の和沙でも、 百合は球根類の一種、という知識くらいは持ち合わせている。 その中でも、ユリ科は鱗茎と呼ばれているらしい。
「やっぱり…」 何がやっぱりなのかは全く分からなかったが、 真澄の手元を覗けばすぐに理解できた。
あれ、石…?
彼女が言うには球根類はより深く植えた方がよく育つらしいのだが、 この百合の場合、球根のさらに下にある小石が成長を阻害しているそうだ。 小石といってもかなり硬い。 地に根ざしているかと思えるくらい頑丈なようだった。
「せぇの。一二の三、よいしょ」 真澄の指示に従って作業すること約十分、 二人で協力してようやく石の除去に成功した。 普段は肉体労働なんてほとんどしない和沙は、 もう手足が痺れてヘトヘトになっていた。 すぐ横に座っている真澄も同様だ。
「先輩、お顔に泥がついてますよ」 「あなたもね」 してやったとばかりに、真澄は片目を閉じて微笑んでいる。 その姿は、やっぱり女神のように美しかった。
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