ビアンエッセイ♪

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■19294 / ResNo.10)  第一章 さくらいろ (10)
  
□投稿者/ 琉 一般♪(11回)-(2007/06/21(Thu) 01:17:08)
    「ごきげんよう、澤崎和沙さん」
    うっすらとした微笑を浮かべながら廊下に立っていたのは、
    先ほど挨拶をしていた高柳真澄生徒会長だった。
    真澄の姿を認めた他のクラスメイトはどよめき、
    教室の外だというのにその声はとてもよく聞こえた。

    忘れていたけど、この人は人気会長サマだっけ…

    「お呼び出しして悪いわね」
    言葉とは反対に、真澄はちっとも悪そびれているようには見えなかった。
    「何か…ご用でしょうか?」
    朝のこともある手前、ついつい嫌味っぽい言い方をしてしまう。
    「ええ、忘れ物を届けに来たの。あなた、
    今朝急いでいてハンカチを落としたようだから」
    「え…」
    差し出された白いハンカチは紛れもなく和沙のものだった。
    「あ、ありがとうございます」

    わざわざ届けに来てくれたのか…

    和沙は見直して素直にハンカチを受け取ろうと手を伸ばしたが、
    何故かその手は空振りした。
    「今朝の借りを覚えていて?」
    「…はい?」

    まただ…

    和沙はこのニヤリとした大胆不敵な笑みに見覚えがあった。
    しかも、こんな時は決まって悪い予感がする。
    「まさか忘れたとは言わせないわよ?」
    「はあ…」
    威圧感たっぷりの詰問は、まさに女王のようだ。
    彼女が一瞬でも女神のように映ったのは、
    どうやら和沙の勘違いだったらしい。
    「そうね…あなた、生徒会を手伝ってもらえないかしら?」
    「えぇっ!?私がですか?」
    「そう。今ちょうど人手が足りなかったのよ。
    どうせ、あなたはまだ部活動には入っていないんでしょう?」

    ええ、入っていませんが、ナニカ?

    和沙は思わず心の中で悪態をついた。
    そうでもしないとやっていられないのだ。
    だって結局、歯切れの悪い返事をしているうちに、
    真澄は和沙の手をとり生徒会室に引っ張っていってしまったのだから。

    前言撤回!やっぱりこの人、大っ嫌い!
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■19298 / ResNo.11)  NO TITLE
□投稿者/ hiro 一般♪(1回)-(2007/06/21(Thu) 14:00:20)
    早く続きがみたいです(=゜ω゜)ノ

    (携帯)
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■19303 / ResNo.12)  hiro様
□投稿者/ 琉 一般♪(12回)-(2007/06/22(Fri) 10:45:10)
    初めまして。
    ご期待にそえるように、なるべく早めの更新を頑張ります!
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■19304 / ResNo.13)  第一章 さくらいろ (11)
□投稿者/ 琉 一般♪(13回)-(2007/06/22(Fri) 11:27:56)
    お嬢様学校の生徒会室というのは、こんなにも豪華なものなのだろうか…

    和沙はぼんやりとそんなことを考えていた。
    もちろん、この学校自体もとてもお金をかけて建てられた印象は随所で感じる。
    しかし、この部屋は壁紙や内装がまるで外とは別世界のようだった。

    ちょっと優遇されすぎなのでは…?

    「なぁに〜?そんなに珍しいかしら?」
    和沙があまりにもキョロキョロしているからか、
    真澄はそう声をかけた。
    同時に、おそらく上級生らしき役員の人が和沙の目の前に
    淹れたての紅茶と焼きたてのパウンドケーキを差し出した。
    「あ…恐れ入ります」
    そう。
    忘れていたけど和沙はまさに檻に入れられた子猫。
    果たして先に居たのはライオンかネズミか。
    ここでは慎重に対応しないと今後の学園生活に大きく関わりそうだ。

    「単刀直入に言うけど、澤崎さん。あなた生徒会候補生にならない?」
    「…は?」
    さっきもそんなことを口走っていたけど…この人は何を言っているのだ。
    きょとんとした和沙には目もくれないで、
    真澄は延々と自分の話を続けた。
    彼女が言うには、今年の生徒会役員はみな例年に比べてとても人数が少なく、
    会長職はともかくとして、書記や会計などの役職までも
    それぞれ一人ずつの…計四人しかいないらしい。
    そこで外部から手伝ってくれる人材を登用する必要があるのだが、
    会長である真澄は自分が気に入った人物でなければイヤ、と
    つまりはそういうことらしい。

    …おいおい、それって違うんじゃない?

    和沙は思わず心の中でツッコミを入れた。
    人手が欲しいのは分かったけど、自分が気に入らない人間はイヤって
    単なる我が侭ではないか。
    無関係の和沙を引っ張ってくるよりも先に、
    そっちのを我慢すれば解決する問題ではないのか。
    こんな独断的なやり方、他の役員は到底納得しているとは思えない。
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■19307 / ResNo.14)   NO TITLE
□投稿者/ ねね 一般♪(1回)-(2007/06/23(Sat) 02:59:50)
    いいですねー★
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■19310 / ResNo.15)  ねね様
□投稿者/ 琉 一般♪(14回)-(2007/06/23(Sat) 05:37:09)
    初めまして。
    ものすごい長編ですが、よろしければどうかこれからもお付き合いください。
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■19312 / ResNo.16)  第一章 さくらいろ (12)
□投稿者/ 琉 一般♪(15回)-(2007/06/23(Sat) 06:06:48)
    「生徒会役員候補生っていうのはね…」
    いろいろな思考を巡らせて和沙がそういう結論に達したと同時に、
    横から声がかかった。
    「毎年、一・二年生を対象として選抜するんだけど…
    その方法には二種類あるんだ」
    ダージリンのストレートを優雅に飲みながら
    話す彼女は…確か生徒会副会長の二階堂斎。
    クラスメイトが噂していたもう一人、である。
    斎は、女性にしてはとても背が高く、男性の平均身長よりも若干高いほどだ。
    もっともこの学校の場合、平均して身長が高い生徒が多いから
    世間一般では標準くらいである和沙は小さい方らしいが、
    それでもこの人は他を超越している。
    加えて、短い髪に彫りの深い顔立ち…ときたら女子校では
    憧れの的になるのも無理はない。
    ボーイッシュな出で立ちの彼女は、紛れもなく学園の王子様だった。

    しかし、こういうルックスの人も本当に居るんだ…

    女子校に免疫がない和沙にとって、百合園の校風というのは
    イメージでしかなかったわけだが、それでもこういう王子様って
    一人は存在するものなのかな、と思っていた。
    「四月に役員が直接申し込むか、五月の選抜会で選ばれるかの
    二通りあるわけだけど…今年は来月まで待っている余裕がなくてね」
    斎の話はまだ続いているけど、和沙には云おうとしていることが
    だいたい理解できた。
    けれど、どうにも納得はできない。
    「それなら、別に私以外でも…」
    和沙が渋っていると、真澄が口をはさむ。
    「だから、それじゃダメなのよ。
    あなたみたいな性格の子じゃないと」
    そう言われても褒められている気がしない。
    むしろ性格ブスを裏づけされているような…
    でも、確かに。
    斎以外の生徒会役員にしても、メンバーはとても華やかな人たちだった。

    もしかしたら、百合園の生徒会は学園のスターが結集しているのかもしれない…

    生徒会候補生として手伝いを公募すれば、間違いなくパニックになる。
    役員の人たちは、本人に自覚がなくともミーハー癖のある生徒を
    候補生として迎えるといろいろと支障が出るため、
    どうにかそれを阻止したいと考えているようだった。
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■19317 / ResNo.17)  おぉ
□投稿者/ 肉食うさぎ 一般♪(1回)-(2007/06/24(Sun) 10:01:11)
    面白いです。
    おもわず一気に読んでしまった
    お金持ちの女子校というシチュエーションがすごくわくわくします(´∀`)
    いろいろ先を妄想してニヤニヤしてしまいますね(´Д`*)

    頑張って下さい!

    (携帯)
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■19327 / ResNo.18)  肉食うさぎ様
□投稿者/ 琉 一般♪(16回)-(2007/06/25(Mon) 05:27:13)
    初めまして。
    面白いと言っていただき、とても嬉しいです。
    いろんな意味でベタな設定かと迷いましたが、
    内容で返上していきたいです。

    コミカルに時にはシリアスに…これから展開していく予定なので、
    よろしければどうかお付き合いください。

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■19328 / ResNo.19)  第一章 さくらいろ (13)
□投稿者/ 琉 一般♪(17回)-(2007/06/25(Mon) 06:12:33)
    「じゃ、また明日いらっしゃい」
    「気をつけて帰るのよ」
    畏れ多くも、生徒会役員が総出で見送ってくれた。

    …あの後、ひとしきり役員候補生について説明された和沙は、
    反論をとなえることもできず勝手にリストに組み込まれていた。
    今年度の役員は、みんな仕事がデキル有能な人材なのだろう。
    作業をこなすスピードが速い、速い。
    和沙の抗議など取り合うことなく、どんどん次の仕事へと移っていった。
    すっかり置いていきぼりにされた和沙は、一人ぽつんとすることもなく、
    時計の針が三時半を告げていたので帰宅することにしたのだった。

    他の役員が笑顔で口々に声をかける中、
    真澄だけは腕組みして無言でこちらを見ていた。

    な、なに…?

    よく喋る印象の人が急に黙り込んだら、
    不気味に思うのは自分だけではないはずだ。
    何を勘違いしたか、斎は二人だけで話したいことがあると思ったらしく、
    役員を引きつれて部屋の中に戻ってしまった。
    しかし、それは和沙の不安を募らせるだけだった。
    廊下に居るのはすでに和沙と真澄だけ。
    聞こえてくるのは、吹奏楽部の音色と運動部のかけ声。
    …何とも居心地が悪い空間である。

    「あ、あの…」
    私はこれで失礼します、と和沙が続けようとした瞬間…
    急に真澄がこちら側に歩きはじめた。
    もう少しのところでぶつかる…という距離まで接近した彼女は、
    和沙の顔を覗き見るようにしてからこう言った。
    「可愛らしいわね…」

    …なにが?

    そう返そうとする間もなく、和沙はすぐに答えを知ることになった。
    「クマさんのパンツ」
    「…なっ!?」
    こっそりと耳打ちして囁いた真澄は、ヒラヒラと手を振り、
    あっという間に扉の向こうへと消えていった。
    一方で和沙はというと…過去最悪な間抜け面をして
    未だ動けずに佇んでいた。

    まさか…
    まさか、朝に見られていたなんて!
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