ビアンエッセイ♪

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■22296 / ResNo.30)  すこしづつ…U-28
  
□投稿者/ 桃子 一般♪(11回)-(2018/07/20(Fri) 12:37:26)
    「駐車場…満車だったので ちょっと歩きます」

    「うん」

    2人とも無言だった。

    駐車場から出て マンションに向かった。

    まっすぐ部屋に帰る気になれなかった。

    「コウちゃん…」

    「ん?」

    「寄り道したい」

    「何処へ?」

    「何処でもいい」

    「ホントに何処でもいいですか?(笑)」

    「うん」

    明日は 休みだ。急いで帰る必要は無い。

    「了解しました(^^♪」


    走ること30分

    コウちゃんが 車を止めた。
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■22297 / ResNo.31)  すこしづつ…U-29
□投稿者/ 桃子 一般♪(12回)-(2018/07/20(Fri) 12:41:46)
    「着きました!」

    「琵琶湖?」

    「はい(^^♪ 降りますか? それとも このまま?(笑)」

    「降りる!(笑)」

    車から降りて 2人で遊覧船乗り場の桟橋に立った。

    「ホントは 海に行こう思ったんですが さすがに…で 近場にしました(笑)
      今日は 水の音の方がいいと思って…」

    「うん…」

    寄せる波の音の他は 何も聞こえない。

    時々 対岸の道路を行き交う車のヘッドライトが見える。

    コウちゃんが 私の体を抱き寄せる。

    「コウちゃん ごめんね」

    「何が?」

    「急に呼び出して…あんなに 根掘り葉掘りになるなんて…知ってたら 電話なんかしなかったのに…」

    「大丈夫ですよ(笑) 少しだけ 覚悟して行きましたもん(笑)
     『あんたなんか 恭子の相手として認めない』って言われなくてよかったです(笑) 」

    「私が選んだ人に そんなこと言わせるわけないじゃない…」

    「恭子さん 長女だもんね(笑)」

    「そうよ(笑)」

    「自分のことは後回しにする…(笑)」

    「そうそう(笑) でも コウちゃんには 押しの一手で突き進んでる(笑)」

    「なんで?」

    「だって…待ってたら いつまで経っても 何も起こらないでしょ(笑)」

    コウちゃんは 声をあげて笑った。

    「お友達は こんな強気の恭子さん しらないんだろうなぁ(笑)」

    「多分…けど…もしかしたら 啓子は 気付いているかも…」

    「そっか…啓子さんに 謝っといてください。せっかくのお食事会に しゃしゃり出てしまって…」

    「気にしないで! 彼女も コウちゃんを呼び出すことに乗り気だったんだから…(笑)」

    「だったらいいんですけど…」

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■22298 / ResNo.32)  すこしづつ…U-30
□投稿者/ 桃子 一般♪(13回)-(2018/07/20(Fri) 12:45:32)
    「ここにはよく来るの?」

    「最近は 全然ですけど… モヤモヤしてた頃はよく来てました(笑)」

    「モヤモヤって?…」

    「『佐々木さんが好きだ〜』って…(笑)」

    「大声で叫んでた?(笑)」

    「まさか…(笑) 心の中で です(^^♪」

    「…直接ぶつけてくれたらよかったのに…」

    「ぶつけるだけじゃ済まなくて 押し倒してたかもしれません(笑)」

    「押し倒されたかったなぁ(笑)」

    「すみません…自分 チキンなんで…」

    「バカ…ホントのチキンは 友だちの呼び出しになんか応じないよ(笑) 」

    「それだけ みんな 恭子さんが大好きで 大切に思ってる ってことじゃないですか」

    「そうかなぁ…」

    「だと思います」

    コウちゃんに言われると 本当にそうなのかも…と思えてくるから不思議だ。

    湖岸に寄せる波の音を聞いている内に 気持ちが落ち着いてきた。
     
    「そろそろ帰ります?」

    「うん」


    コウちゃんは 運転の時 いつも以上に無口になる。

    赤信号で止まった時 左の太腿に そっと手を置いてみた。

    コウちゃんは 何も言わず 自分の左手を重ねてくれた。

    信号が青に変わった。

    「夜道は スピード出すから(笑)」

    「うん」

    コウちゃんは 左手をハンドルに戻した。

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■22299 / ResNo.33)  すこしづつ…U-31
□投稿者/ 桃子 一般♪(14回)-(2018/07/20(Fri) 12:50:13)
    部屋に戻ったのは 日付が変わる頃だった。

    「お風呂…シャワーでいい?」

    「はい」


    寝室に入ったら…コウちゃんは 寝息を立てていた。

    ベッドに腰かけて 寝顔に向かって

    「バカ…」

    「誰がバカですか?(笑)」

    「起きてたの?」

    「起きてますよ〜(笑)」

    コウちゃんは 腕を伸ばして 私を自分の方に引き寄せた。

    力を抜いていた私は そのままコウちゃんの胸に倒れこんでしまった。

    「この場合 押し倒されたのは どっちになるんですかねぇ…」

    「バカ…」

    コウちゃんは 黙って 私の髪を撫でている。

    コウちゃんの心臓の音を聞きながら

    「ねぇ…コウちゃんって 私の過去の恋愛 気にしたことある?」と 訊いてみた。

    「何をいまさら…(笑)」

    「だって…一度も訊かれたことないし…」

    「訊かないのは 気にしてないからです。年齢差を考えると…恋愛の ひとつやふたつ みっつやよっつはあったと思います。
    そういうのがあって 今 こうして一緒にいられるんだから…
     恭子さんの中で “いい思い出” になってたら それでいいんです。
     あっ でも…今も続いている人がいる ってことなら 話し合わなくちゃいけませんね(笑)」

    「バカ…そんな人いるわけないじゃないっ! それに…みっつもよっつも無いから!」

    「だったら…問題ナシです(笑)」

    「うん…それと…今日 嬉しかった…」

    「えっ?」

    「啓子に『お任せください』って言い切ってくれた時…」

    「ちょっとカッコつけちゃいました(笑) でも…マンションの件は…カッコ悪かったですね(^^;」

    「ううん そんなことないっ! 惚れ直しちゃった(笑)」

    「あとで「こんなハズじゃなかった」になったりして…(笑)」

    「フフフ…そうなったらどする?」

    「ふたりで どうしたいかを考えましょ(笑)」

    「うん…」
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■22300 / ResNo.34)  すこしづつ…U-32
□投稿者/ 桃子 一般♪(15回)-(2018/07/20(Fri) 12:54:12)
    髪を撫でるコウちゃんの手が止まった。

    コウちゃんの顔を見た。

    「恭子さん…」

    「なに?」

    「キスしましょうか?(笑)」

    「わざわざ訊く?(笑)」

    「そこは 一応…(笑) 『今日は そんな気分じゃない!』 だったら 申し訳ないんで…(笑)」

    「バカ…そんな日 あるわけないじゃない! いつも…待ってるんだから…さっきの琵琶湖でだって…」

    「あそこは めっちゃガマンしました(笑)」

    「えっ? なんで?」

    「恭子さん…イライラしてたでしょ(笑)」

    確かに…コウちゃんへの和美や聡美の質問攻めには 腹を立てたが…顔には出ていなかったハズだ…

    「気が付いてたの?」

    「うん…うまく言えないんですけどね…あそこでキスしちゃうと なんか 誤魔化すカンジがして…イライラは ちゃんと解消しないと…(笑)」

    波の音を聞いている内に 気持ちが落ち着いてきたことを思い出した。

    だから コウちゃんは 余計なことは言わなかったんだ…

    この子は 本当に年下なのだろうか…時々 分からなくなる(笑)

    「でも…そろそろ限界です…」

    限界は 私も同じだ。

    黙って コウちゃんに被さって唇を重ねた。

    コウちゃんの舌が 私を誘った。

    そこから先は お互い ノンストップだった…

    心も体も充実した夜だった。
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■22301 / ResNo.35)  すこしづつ…U-33
□投稿者/ 桃子 一般♪(16回)-(2018/07/20(Fri) 13:46:24)
    「来週の木曜日から ゼミ合宿です」

    コウちゃんが そう言ったのは 梅雨が明けてすぐのことだった。

    「土曜日の午後に帰って来ます」

    「今年はどこに行くの?」

    「日本海のどっかだそうです(笑) 」

    「楽しそうだね(笑)」

    「毎年恒例 合宿という名の飲み会ですから(>_<) 」

    「学生の特権でしょ(^^♪ 」

    「ですね…帰ったら デートしましょ(笑) お店決めといてください(^^♪」

    「わかった!」



    金曜日の朝 Madamから電話がかかってきた。

    「急な話なんだけど…今夜 家に来れない?」

    コウちゃんが居ないことは Madamも知っている。

    「はい 大丈夫です」

    「よかった〜(^^♪ じゃ 今夜7時にね」



    「坂本クン帰るのって明日だよね? 今日 時間ある?」

    職場で お弁当を食べながらミカに訊かれた。

    「ごめん…今日はちょっと…」

    「合コン?(笑)」

    「まさか! それだったら ミカも一緒でしょ(笑)」

    「そりゃそうだ(^^♪ で ホントは何?」

    「Madamと…」

    「呼び出し?」

    「う〜ん…そうなるのかなぁ…仕事終わったら Madamんチに行くことになった…」

    「なんだろうね? 別れ話?…坂本クン 自分では言えないからって…Madam経由にしたとか?(笑)」

    「そんな情けない人じゃないよ…っていうか…ウチ ラブラブなんですけど?(笑)」

    「うん それは 言われなくても知ってる( *´艸`)」

    「まっ ここでアレコレ考えても仕方ないよね…(^^♪ さっ 仕事 仕事!」
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■22302 / ResNo.36)  すこしづつ…U-34
□投稿者/ 桃子 一般♪(17回)-(2018/07/20(Fri) 13:51:02)
    Madamのお宅には 7時丁度に着いた。

    リビングには 先客と思われる女性が居た。

    (うわっ 何事?)

    内心の焦りを隠しながら

    「遅くなりました」

    「ううん…急に呼び出してごめんね… 恭子さん…こちら…」

    「国木田と言います」

    「ヒロの母親」

    Madamが あまりにもアッサリと言ったので 聞き間違えたかと思った。

    (えっ?)

    すぐには言葉が出なかった。

    「ヒロが お世話になっています。 佐々木さんのことは りっちゃんから よく聞いています」

    (Madam りっちゃんって言うんだ…)


    「佐々木です。ご挨拶もせぬまま…」

    すっとこどっこいになってしまった…

    「驚いた?」

    Madamが いたずらっぽく笑いながら言った。

    「はい…初めて こちらにお邪魔した時よりも 驚いています…」

    「恭子さん 今 声 出なかったよね(笑)」

    「思考が停止するって ホントにあるんだなぁって…」

    「フフフ ごめんね(^^♪」

    「今日 私がご一緒すること りっちゃんからは…?」

    「ごめん 言わなかったんだ…」

    Madamが答えてくれた。

    「そうだったの?…びっくりさせて ごめんなさいね…」

    「いえ…」

    「とりあえず 食事にしよう!」

    Madamが言った。
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■22303 / ResNo.37)  すこしづつ…U-35
□投稿者/ 桃子 一般♪(18回)-(2018/07/20(Fri) 13:56:26)
    食事をしながら 国木田さんに

    「あの子がこちらに来たいきさつは…」

    と 訊かれた。

    「聞いていますが ご家族のことは 何も…訊けば 宏海さんは 教えてくれたかもしれませんが正直…そこまでは…」

    「知る必要ない?」

    「はい…そう思っています」

    「どうして? 気にならない?」

    「どうして…と言われても…宏海さんが経験してきたことで 今も苦しんでいるなら 話を聞いたり 自分に出来ることを考えるかもしれませんが…実際は…私が知る限り そうではありません。
     Madamやマスター・ミィさん・カイさんと いい関係を築いています。
     大学生活も 充実していますし…宏海さんが消化してきたことを ほじくり返すことは無いと…」

    「でも…好きな人のことは 全て知りたいって思わない?

     ヒロも…全部話したいと思っているかもしれないのにあなたがそんな態度だから 話したくても 話せないで居る とは思わない?」

    「宏海さんのことは どんなことでも知りたいです」

    「だったら…」

    「でも…それは こちらから 問いかけることでしょうか?
     私は…宏海さんが 自分のタイミングで 話してくれたらいい と思っています」

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■22304 / ResNo.38)  すこしづつ…U-36
□投稿者/ 桃子 一般♪(19回)-(2018/07/20(Fri) 14:05:56)
    (あたし ケンカ売ってる?)と思った瞬間

    「恭子さん 嫌な思いさせちゃってごめんね…」

    Madamが声をかけてくれた。

    「この人 ヒロが大学卒業したら 手元に呼びたいって言いだして…」

    「えっ?」

    「でね…あの子には 生涯をかけてお付き合いしている人が居るから そっちには帰らないよって
     言っちゃったの( *´艸`)
     そしたら 今度は その人に会わせろって…(笑) とうとう根負けしちゃって…ホント ごめんね…」

    「いえ…」

    「あの子の中では 私たちのことは もう…無かったことになっているんですね」

    国木田さんは 大きなタメ息をついた。

    「あの…宏海さんは ご家族のこと 本当に 何も言っていませんが それは 恨みや憎しみからでは
     ありません」

    「どうして あなたが そんなこと言えるの?」

    「宏海さん 一度だけ言ったことがあるんです。
     こっちに来てすぐの頃 大切なことを教えてくれた人が居るって…」

    国木田さんだけでなく Madamも 私をみつめている。

    「色々な手続きが済むまで 学校に行けなかった時 毎日 昼休みに コーヒーを飲みに来るおじいさんの
     相手をするようになって…
     そのおじいさんは 宏海さんのことを『ボン』と 呼んで コーヒーを1杯 飲む間だけ 他愛ない話を
     して 仕事に戻られていたそうです。
     お店に来るようになって 1ヶ月が過ぎた頃 宏海さんに
     『おまえさんは 何もかも失くして この街に来たと思っているかも知れんが…
     ここに来たことで おまえさんは 自由に生きられるようになったんじゃないか?
     おまえさんを手放した家族・受け止めた家族…両方の家族から もらった自由を大切にしなさい』って
     おっしゃったそうです。
     そこで初めてそのおじいさんがマスターのお父さんだってことがわかって
     『道理で 自分のこと よく知ってるハズですよね』って…笑ってました…
     宏海さん 今でも おじい様の言葉を忘れていないから ご両親のこと何も言わないんだと思います…」

    そこから先は 言葉が続かなかった。
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■22305 / ResNo.39)  すこしづつ…U-37
□投稿者/ 桃子 一般♪(20回)-(2018/07/20(Fri) 14:09:20)
    「あの子は15歳で独立して 家を出て行ったって思えばいいかしら?」

    国木田さんが 前を向くカンジで言った。

    「ヒロは きっと いろいろ考えて 連絡を取らないって決めたんだと思うよ…
     親は死んだことにして 学校に行き始めたのも 余計な詮索を避けるためだったんだろうし…
     うちは あの子が決めたことは よほどのことが無い限り 口出しはしないって決めてるから…
     今でも ヒロの両親は 亡くなったままになってる(笑)」

    Madamが 続けてくれた。

    「今までに 口出したことあった?」

    少し元気になった国木田さんが Madamに訊いた。

    「1度だけね…」

    「訊いてもいい?」

    「お店のお客さんとお付き合いを始めたことについて いつ問いただそうかと思っていたら…
     先方のご両親に会いに行くことになったって…珍しく 自分から報告してくれたの…
     多分 あの子も 不安だったんじゃない?(笑)
     だから…親御さんには 何を言われても あなたの誠意を伝えなさいって…
     その覚悟が無いんだったら 今スグ別れちゃいなさいと言って送り出した…」

    「それでどうなった?」

    Madamが目で合図を送ってきた。

    「相手の両親は 娘に これからは 坂本君と2人で遊びに来るように…って…」

    「今の話 佐々木さんのこと?」

    「はい…両親は 宏海さんと出会えただけでも 私を育ててきて良かった…って言っています」

    「そう…あの子 そんな風に言ってもらえるんだ…」

    「はい…国木田さんが 手放してくれたおかげです」
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