| 写真を束ねる音。
鞄の中を整理する音。
立ち上がるときの衣擦れの音。
ドアに向かって遠ざかっていく、小さな足音。
そのすべてを、裕は背を向けたまま聞いた。
キィ、と聞きなれたドアの音がして、ゆっくりと静かに閉まる。
パタン。
無情な静寂。
・・・・・・終わった。
もう学校であっても話すことはないだろう。
役員としては、普通に接してくれると思うけど。
キツイな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ふと、気付いた。
謝ってねぇ。
どこまで間抜けなんだ。
ほとんどレイプしといて謝罪の言葉のひとつも出てこないとは。
謝って許されることでもないし、許してもらえるとも思ってない。
ただの自己満足かもしれない。かえって不愉快にさせるだけかも。
しかし、それでも、一言だけでも、謝っておきたかった。
追いかけるか否か、少しの逡巡ののち、裕は椅子を蹴って立ち上がった。
そこで。
ピーンポーン・・・
・・・だれだよ、こんなときに。
勢いをそがれて、居留守をつかってやろうかと一瞬考えるが、 そんなことをしているうちに涼子はどんどん遠ざかってしまう。
さっさと用事を済ませてもらって追いかけたほうが早い。
確認もせずにドアを開ける。
「はい?・・・・・・!?」
ドアの先に立っていたのは、直海涼子そのひとだった。
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