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■6194 / 親階層)  牢屋の中で
□投稿者/ kyo-ko 一般人(1回)-(2010/01/21(Thu) 21:53:13)
    桐原朱音は夜、女性の囚人のみが入れられる女性専用の牢屋の見回りを行っていた。
    なぜ女性専用の牢屋なんかがあるのかというと、囚人の間で色々男女関係の問題などがあったためだ。
    外国でも、こうやって男女別々の牢屋に囚人たちを閉じ込める刑務所が多々ある。





    今夜は朱音が当番だった。脱走者が居た場合や緊急時などに備えて明るくしてある廊下を、革靴の音を響かせて歩く。
    カーキ色の軍服のようなブレザーのような上に同じ色のタイトスカート、膝まである黒い革のブーツ。それが職員の制服だ。
    職員も全員女性が勤めており、男性がここに入ってくる時といえば、何かが壊れて修理を頼んだ時のみだった。
    その場合は数km離れて建てられている男性専用の刑務所から、そこの男性職員が来てくれるという事になっている。
    また、ここは女性達に気を遣って冷暖房も完備しており、食堂もメニューが豊富で美味しく、浴室もまるで新品のように綺麗だ。




















    左右にずっと廊下の端から端まで続く鉄の格子の向こう側では、刑務所にしては綺麗な設備の中、大抵の人が眠っている。
    もう時間は夜遅く、さっき深夜の2時を過ぎた所だ。日中は奉仕作業をする彼女達は疲れを取らなければならない。
    朱音はいつもと変わらないその静まり返った情景に安心感を抱きつつも、警戒心は少しも解かずに次々と見回っていく。
    1階を見回り終わり、2階に続く階段を上って今度は2階の見回りをする。ここは3階建ての刑務所で、面積は結構広い所だ。
    やっぱり1階と変わらず大抵の人が毛布に包まって眠っているのを確認しながら、朱音は次々と見回っていく。
    しかし、朱音が2階の見回りを終えて3階に行こうとした時、ふいに朱音の左側の格子の向こう側から声が聞こえた。






    「ちょっと・・・・桐原朱音だっけ?アンタ」






    首だけを向けて足を止めると、朱音を呼び止めたのは数ヶ月前から服役している女性、中条希枝だった。
    その女性は確か数十件にも及ぶ強盗事件の犯人のチームのうちの1人で、警察が苦労して逮捕した女性だったと思う。
    犯罪を起こした理由を朱音は知らないのだが、ショートカットの黒髪ときりっとした顔は整っており、モテそうな外見をしている。
    奉仕作業では時々サボる事があるらしく、朱音の上司の女性に怒られている場面を何度か朱音は見た事があった。
    今はその華奢な背が高い身体で牢の白い壁に寄りかかって腕を組み、こっちを微笑みながら見ていた。
    服はここの規則によって決められている、他の女性も着用している明るいオレンジ色のつなぎを着ている。
    だが、希枝は上半身は着ずに腰の辺りでつなぎの袖を結び、上に来た白いタンクトップを露出していた。規則違反だ。






    「はい・・・・?何か御用でしょうか?その前にその乱れた服装を整えてくれませんか?」






    ちょっと不機嫌な顔と声で朱音がそうやって注意をしても、希枝はハハハッ、と笑って受け流しただけで、直そうとはしなかった。
    ますます眉間に皺を寄せて不機嫌な顔になる朱音を見て、美人が台無しだよ、とこれまた真面目な朱音の精神を逆撫でする。
    朱音は溜息を吐いて黒い自分の顔の両側の垂れた髪を耳に掛けると、希枝を睨みつけてもう1度言いつけた。






    「規則で決まっているので、ちゃんとつなぎを正しく着て下さい。これは命令ですよ!」






    そう言われても尚、朱音の命令を全く聞き入れようとはしない態度を取る希枝に、ますます不機嫌になって更に苛つく。
    朱音はカツカツと低いヒールの音を響かせながら、さびが少ししかない鉄の格子の前、希枝の目の前に立った。
    175cmぐらいもあるほど身長が高い希枝と、160cmぐらいしかない朱音とでは、並んでみると結構身長差がある。
    それでも怯まずに朱音は、自分よりも15cmも高い位置にある、微笑を浮かべた整った綺麗な顔を、鋭く睨みつけた。
    朱音が不機嫌なのは明らかに分かるだろうに、希枝は余裕の表情と態度で朱音に接する。それがまた朱音の苛つきを増幅させる。






    「全く本当にいい加減にして下さいよ!!こんな事をしてると出所の日が延期されますから!!」





    「別に〜?ウチはそれでも構わないけどね。一生ここから出られなくなったとしても、アンタがいればね。アンタ結構好みだし」






    ニッコリと満面の笑みを浮かべた希枝は、今度はとんでもない発言をした。
    しばらく固まっていたが、その意味を理解してしまうと、そういう事を滅多に言われない朱音は顔を真っ赤にした。
    職場に異性がいないため、こうやって愛を囁かれる事はまずない。ここでは同性同士での恋愛も、決して珍しくは無いのだが。
    朱音も何度か同性である女性に告白をされた事があるが、付き合おうとか関係を持とうとか、そういう思いは全く考え付かなかった。






    「ありえません、こんな時に不謹慎ですよ!?」





    「ウチはアンタに対する正直な気持ちを述べてあげただけだけど?てかそんな大声を出したら、他の奴に迷惑でしょ」






    怒りがふつふつと込み上げてきて声を荒げた朱音に、まだ余裕の表情を浮かべたままの希枝が冷静に指摘した。
    うっ、と注意していたはずなのに逆に確かに正しい事を指摘されてしまった朱音は、言葉を詰まらせてしまった。
    その姿を見て可愛いな、と呟くように、囁くように小声で洩らした希枝は、格子の間から腕を伸ばすと、朱音の首筋を撫でた。
    白い首筋をじっくりと味わうかのように撫でられた朱音は、突然だった事もあり、身体をびくんと跳ねさせた。
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