□投稿者/ 響 一般人(2回)-(2010/03/08(Mon) 00:00:54)
| 「ッ、ふぅッ・・・・もっとッ・・・・あきぃ・・・ッ!!」
「うっさい、煽んな馬鹿」
そう言われてガリッと噛み付かれたのは、再び亜希に組み敷かれている自分の鎖骨。 首の後ろに両手を回しているせいで、鎖骨が通常よりも浮き上がっているから。 容赦なく熱を持った熱い口内で噛み付かれて舐められた鎖骨は、他の場所よりも熱を灯す。 赤い歯形を付けた亜希は満足そうににやりと唇を吊り上げて、更に奥の方へと指を侵食させた。 亜希にじっと見つめられるだけで感じる身体は、嬉しそうに指を3本も飲み込む。
「ハッ、とんだ淫乱だね」
「あ、きにだけっ・・・・・あああああッ!!!!!」
軽蔑されたような、身体と心とは反対に冷たい目で見下ろされて、呆気なく果てる。 果てて、また犯されて侵食されて刻まれて、また果てて、犯されて侵食されて刻まれて。 繰り返し続ける、別に子供が出来るわけでも何もない無意味で無駄なその行為。 これが男と女なら子供が出来るだろうけど、生憎女と女では子供を残せない。 それでも2人で夜中に、朝を迎えるまで貪るように貪欲に求め合って続けていく。 いつの間にか気を失ったのか寝てしまったのか、目を覚ますと朝になっていた。 親切に毛布が掛けられた隣には、既に出掛けて行ったらしく亜希はいない。
「・・・・亜希」
亜希と同棲し始めてもう1年以上、もうすぐ確か2年目ぐらいになってしまうと思う。 付き合い始めてならもう3年はなるのに、未だに亜希が昼間何をしているのか分からない。 絶対主婦や浮気ではないんだろうけど、帰りが夜遅くなったりするのもしばしば。 そんな亜希を仕事をしていない自分が昼間にじっと1人で待つのが、恋人としての役割的なこと。 掃除や洗濯をして、自分の昼食を作って、買い物をして、亜希の分と2人分の夕食を作って。 亜希が帰ってくれば一緒に夕食を食べたり、テレビを見たり、一緒にお風呂に入ったり。 それでまた夜に昨日と一緒なように愛し合ったりすることが、週に約5回はある。
起き上がって身体中痛みを感じながらもダイニングに行けば、朝食があった。 朝食はいつも早く出て行く亜希が作ってくれるのが、自然と当たり前になっていた。 ラップの中で冷め切ったテーブルの上の洋風の朝食を食べている、着物を着た和風の女。 自分でもすごく可笑しくて変な光景だろうとは思うけど、変える気は全く皆無。 食べ終わって汚れた皿をキッチンで洗うと、ぼうっと雨が降る外を眺めた。 しとしとと鬱陶しい、じめじめする細い雨を眺めていると、こっちまで何だか暗い気分になる。 視線を慌てたように外すと、窓から離れてすることもなく何となくでテレビを付けた。
『今朝5時半過ぎ、南座総合病院で女優の今井桃香さんが28歳という若さで亡くなりました・・・・・』
難病だったか何だったか忘れたけど、病気で長い間入院していた女優が亡くなったらしい。 写真や出演していたドラマや映画の映像が流れるテレビを眺めながら、亜希を想った。 リビングのテーブルの上には、忘れたらしい亜希がいつも吸っている銘柄の煙草の長方形の箱。 その上に置かれた一緒に忘れられたらしい銀のZIPPOを手に取って、何度も火を点ける。 真っ赤に揺らめく炎を見つめながら、煙草を吸って煙を吐き出す亜希の姿が浮かんでくる。 そんな頭の中が亜希だらけ、亜希しかいない自分は相当惚れ込んでいるんだと思う。
「・・・・ありえない」
自分に呆れながら、まだ眠たくてソファーに寝転がってそっと目をきつく瞑った。
『続いてのニュースは、人気モデルの中条絵里さんが入籍していたニュースです・・・』
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