| 第一話 仁美の目が覚めたのは、広いベッドの上だった。 さらわれた時の事は、朦朧としていて覚えていない。 何か、薬を使われて眠らされていたらしい。 不安な気持ちで自分の体を検める。 恐ろしい事に、犬の様に首輪をつけられていた。 首輪は天井から、吊るされたロープに繋がっていて自分で外す事ができない。 服装に乱れはなさそうで、お気に入りのワンピースを着ているが、下半身に心もとない感じがする。 手をスカートの中に入れて、その訳が分かった。 下着が脱がされている。 恥ずかしさで顔が赤らみ、不安な気持ちが強くなる。 寝ている間に乱暴されたのでは、と頭が真っ白になるが、女性の部分に痛みや傷はなさそうだ。 天井には大きな照明が備えつけられていて、不気味な部屋を明るく照らしている。 ベッドの傍に大きな棚があって、鞭や大きな注射器などが置かれている。 床には婦人科の診察台や十字架の形をした金属の台、ポータブルトイレ、ビニールシート、大きな鏡、平均台、マットなどが整然と置かれている。 ここはどこ?私はどうなるの? 恐怖と不安で、仁美は涙ぐみ始めた。 しばらくして、部屋のドアが重々しい音をたてて開いた。 レイプされるの?緊張して、入って来る人影を見つめる。 男ではなく、身なりのきちんとした女性二人が、部屋に入って来た。 助けに来てくれたのかもしれない。 二人は、まっすぐに仁美に近づいてきた。 「助けて、助けて下さい」 泣き声で呼びかけたが、二人とも平然とした顔をしている。 ひとりは、まだ若い女性でスーツを着ている。上背があり、鋭い眼光をしている。 もう一人は、年配の太った女性で高価なブランドのドレスを着て、指にはダイヤの指輪が光っている。 「最近捕獲した中では、一番の美形でございます」 「いいわね。肌もきれいじゃない」 「処女膜も確認済みです」 「気は弱そうね。もう泣いているじゃない」 「闘犬には向きませんが、愛玩用には最適かと存じます」 仁美の泣き声を無視して、商談しているようなやり取りが続いた。 「お願いです。教えてください。どういう事ですか?」 思い気って、二人に大きな声をかけると、若い方の女が睨み付けた。 「うるさい犬で、申し訳ありません」 年配の女に、頭を下げてから、壁のスイッチを押す。 すると、首輪に吊るされた、ロープが上に上がり始めた。 引っ張られて、仁美はつま先立ちになる。 首が絞まる、ぎりぎりのところでロープは止められた。 呼吸するのがやっとの状態で、声を出すことも出来ない。 「あとで、ゆっくりしつけてあげるから、黙って立っていなさい」 冷たい声で言うと、年配の婦人との商談を再開した。
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