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■15293
/ ResNo.40)
僕の居場所27
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□投稿者/ チョビ
一般♪(38回)-(2006/07/12(Wed) 14:23:58)
大きな病院だった。
状況を聞いてくる看護師に、ナイフで刺されたとだけ告げた。
出血性ショック・・・緊急手術になった。
彼女がストレッチャーで手術室へ運び込まれるのを、僕は呆然と見ていた・・・
手術室の近くの待合から少し離れたところで、
僕は手術が終わるのを、待っていた。
病院の床が、やけに白く見えて、僕の頭の中も真っ白だった・・・
悠稀・・・
手術は何時間かかったのか覚えていない。
もしかしたら、そんなに時間はたっていなかったのかもしれない。
真っ白な病院の床・・・なに・・・やってんだ・・・僕・・・。
手術が終わったと声がかかるまで、僕には永久にも思える時間が続いた。
「終わりました、もう面会できますよ。」
看護婦さんにそういわれて、僕は悠稀の病室に入った。
手術が終わった後の悠稀は、青白い顔をして、ベットに休んでいた。
僕が部屋へ入ると、ゆっくりと目をあけて、僕を見上げる。
青白い顔で、それでも微笑もうとする彼女に、
僕は糸が切れたように怒鳴りつけていた。
「なんでっ、なんであんなことしたんだっ!
こんな怪我して・・・僕のために死んじゃうとこだったじゃないか・・・
何考えてるんだっ!」
彼女はうっすらと微笑みながら、枕元に立つ僕の手に、自分の手を重ねる。
「あなたのことが好きなの」
・・・えっ。
一瞬意味がわからなかった・・・。
僕のことが好き?なに・・・それ・・・
立ち尽くしている僕を、彼女が悲しそうに見上げている。
「天・・・」
名前を呼ばれて、僕はなんていって良いのかわからず、
病室から逃げ出してしまった。
彼女になんて言って良いのかわからなかった。
悲しそうな目をしているのに、
それでも微笑もうとする彼女の視線に、耐えられなかった。
病院から逃げ出した僕は、行く場所もなくて、コテージへ戻った。
戻ると、いつも通りデュークが迎えてくれた。
クゥ〜ンと鼻をならして近づいてくるデュークを
僕は膝をついて抱きしめる。
悠稀に大怪我をさせちゃった・・・
僕のせいだ。
血がいっぱい出てて・・・
死んじゃったらどうしようかと思った・・・デューク・・・
ほんとはわかってたんだ。
悠稀が寝ている僕に毛布をかけてくれたり、
僕がいないときはデュークの世話をしてくれたり・・・。
なのに僕は、彼女を憎むことしか・・・
彼女に対して、怒りをぶつけることが、
父さんや母さんを亡くした悲しみを取り除く方法だと思ってた。
彼女に怒りをぶつけて、
ひどい言葉を投げつけて、
そして悲しみから逃げてたんだ。
認めなくちゃいけない現実や、悲しみを、
彼女に八つ当たることでごまかしてた・・・
ほんとはそんなこと・・・わかってた・・・。
でも、そうでもしないと・・・
父さん・・・母さん・・・
僕は、僕のこと心配してくれる人まで、なくすところだった・・・
怖かった・・・
僕は・・・馬鹿者だ。
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■15294
/ ResNo.41)
僕の居場所28 side悠稀
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□投稿者/ チョビ
一般♪(40回)-(2006/07/12(Wed) 14:38:53)
あなたが好きなの・・・
病室で立ちすくんでいるあなたに、言った言葉。
言ってはいけなかった言葉。
怪我をしたのはあなたのせいじゃないわ。
あなたなら、よけられたのかもしれない。
あなたの腕に抱かれて、あのまま死んでもいいと思ったのに・・・
どうして・・・。
あなたが好きなの。
告白するつもりのなかった言葉。
こんなこと言ったら、優しいあなたは、私を避けられない。
あなたの弱みに付け込んで、私はまだあなたのそばにいたいと思ってしまう。
こんなことをしても、あの子を縛り付けるだけなのに。
あの子の優しさを利用して、私のそばに縛り付けようとしている。
それでも、どうしても出てしまった言葉。
あの子はどうするのだろう。
トントン・・・ドアをノックする音がして、40頃の男が入ってくる。
「お嬢様、お体の方は?」
「大丈夫よ、10日くらいで退院できるそうだわ。
それよりも、今回の件の処理は・・・」
「お嬢様に怪我を負わせたやつらは、警察に引き渡しました。
暴力団ともつながりのある、暴走族の下っ端だったようで。」
「仕返しとかに来たりしない?」
「組の方に話を通してきましたので、やつらが出てきたとしても、
どこにも行くところはありませんよ。
今度お嬢様の前に現れたら、二度目はないといっておきましたから。」
「そう、それなら安心ね、ありがとう、増田。」
彼は宮嶋家の執事をしている。
おじい様からも信頼が厚い。
詳しくは知らないが、彼も若い頃暴力団と関係していたらしいけれど、
おじい様と知り合ってから、おじいさまに仕えるようになったとか。
そこになにがあったのかはわからないけれど、
私が物心ついたときには、彼は宮嶋家の執事となって、屋敷を取り仕切っていた。
敵をつくることも多い宮嶋グループで、貴重な信用できる使用人だった。
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■15295
/ ResNo.42)
面白いです
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□投稿者/ れい
ちょと常連(51回)-(2006/07/12(Wed) 15:36:50)
わたし、こういうの結構好きです。
ちょっとフィクション色強い、学園モノ。
執筆、大変だと思いますが頑張ってくださいね♪
(携帯)
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■15299
/ ResNo.43)
れいさん
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□投稿者/ チョビ
一般♪(41回)-(2006/07/13(Thu) 00:34:52)
感想ありがとうございますっ!
ちょっとフィクション色強い、学園モノ。
なんて、なんかカッコいい表現ですね、私の駄文なのに(^^;)
私も学園モノは好きなんです。妄想しやすいし(笑)
今後も現実離れした展開になると思いますが、
楽しんで読んでいたいただけたら光栄です。
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■15304
/ ResNo.44)
待ってました♪
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□投稿者/ T
一般♪(3回)-(2006/07/13(Thu) 15:27:10)
やっぱりいいですね〜♪
ちょっと意外な展開になってるけど、この意外性があるからおもしろいんですよね^^
天と悠稀がこれからどんな展開を繰り広げるのか楽しみにしてます!
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■15361
/ ResNo.45)
Tさん
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□投稿者/ チョビ
一般♪(43回)-(2006/07/19(Wed) 00:25:04)
いらっしゃいませ〜(笑)
レスが遅くて申し訳ないです。
い、意外な展開でしょうか(^^;)
できることならさっさとハッピーエンドにしてしまいたいところですが、
主人公がヘタレでお子様なので、急展開は望めないかと(^^;)
こうして何度もコメントをいただけるのは、
私の駄文を待っていてくださっているようで、とても嬉しいです。
早く次のステージにいけるよう、精進いたします(^人^)
引用返信
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■15362
/ ResNo.46)
僕の居場所29
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□投稿者/ チョビ
一般♪(44回)-(2006/07/19(Wed) 00:31:55)
デュークを抱きしめたまま、一晩考えた。
やっぱりちゃんと悠稀に謝りに行こう。
僕のせいで怪我をさせてしまったんだし。
翌日、一睡もできないまま、学校へ行った。
授業中は、寝不足なのと、悠稀になんて言ったら良いのか考えていて
先生の声はほどんと頭に入ってこなかったけど。
「悠稀様がお休みになられたなんて、どうされたのかしら?」
「昨日までは学園にいらしていたのに・・・」
「神崎さんなにか聞いてない?」
「お見舞いに行かなくちゃ。」
「でも具合が悪いのだったら大勢でお邪魔したらご迷惑になるわ。」
休み時間は悠稀の話題で持ちきりだった。
僕も悠稀の具合を聞かれたけど、なんて答えて良いのかわからなくて黙っていた。
「やっぱり神崎さんもショックよね、ごめんなさいね。」
どうやら僕がショックで話ができないと思ったみたいだ。
そう思ってくれたほうが今はありがたい。
ホームルームで連絡事項があり、プリントをもらったけど、
それを誰が悠稀に届けるかで周りは騒いでいた。
みんな自分が行きたいみたいだったけど、一人では気が引けるみたいだ。
「僕が届けてくるよ」
そういった僕に、クラスメイトはうらやましそうな視線を向けたけど、
代わりに自分が行くって言い出したやつは誰もいなかった。
引用返信
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■15406
/ ResNo.47)
僕の居場所30
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□投稿者/ チョビ
一般♪(45回)-(2006/07/21(Fri) 05:02:28)
プリントを握り締めて、悠稀の病室の入り口に立つ。
部屋に入ったら、体の具合を聞いて・・・
傷の方はどうですか?
昨日は本当にすみませんでした。
僕を助けてくれたせいで怪我をさせてしまって。
ありがとうございます。
怪我が治るまで、不便はことはお手伝いさせてください。と・・・
頭の中で、何度もセリフを繰り返す。
よしっ、覚悟をきめてドアをノックする。
「どうぞ」
中から声がして、僕はもう一度さっきのセリフを思いかえして、ドアを開けた。
「あら、天・・・」
彼女はベットの上で、まだ顔色はよくなかったけど、
昨日よりだいぶ良いみたいだ。
「きてくれたの?嬉しいわ」
本当に嬉しそうな顔をして、僕はそんな彼女と目が合った途端、
なんていって良いのかわからなくなってしまった。
「あっ・・・えっ・・と・・・ぷ、プリントが・・授業で・・・」
ガサガサと慌てて握り締めていたプリントのしわを伸ばす。
「わざわざ届けてくれたの?ありがとう。」
お礼を言ってくる彼女に、プリントを渡そうと手を伸ばす。
僕の手に、彼女の手がわずかに触れて、そのまま僕は固まってしまった。
なっ、なにやってんだ・・・僕・・・
「どうかして?」
そういって彼女が僕を見上げてくる・・・
えっと・・なんだっけ・・・そうだっ・・謝らないと。
「あっ、あの、ごめん。昨日は僕のせいであんな・・・怪我をさせて・・・」
言いながら、僕の体はがたがたと震えていた。
「そのことならもういいのよ、あれは私が勝手にやったことだから。」
彼女が穏やかに微笑む。
「いや、だって、僕が問題起こさなければ、
ゆっ、あっ・・・宮嶋さん・・が、怪我をすることだってなかったし・・・
本当にごめん。僕にできることならなんでもするから、言ってください。」
しまった、呼び捨てするところだった・・・。
「そう・・・ねっ・・・」
彼女は何か考えていたみただったけど、にっこり笑って僕に言った。
「じゃあ、生徒会の仕事を手伝ってくれないかしら。」
「うっ、うん、もちろん。」
「それからもうひとつ・・・」
「はいっ。」
僕はなんていわれるかと思って、全身に力が入った。
「あなたのこと、天って呼んでも良いかしら?」
脱力した・・・なんだ、そんなこと。
「うん、そんなことでよければ、いくらでも。」
「私のことも悠稀でいいわ。」
「えっ、だってそれは・・・」
命の恩人が僕のこと呼び捨てにするのはわかるけど、
僕が彼女のことを呼び捨てにするっていうのは・・・
「なんでもしてくれるんでしょ?」
彼女は、上目遣いに僕をみて、ちょっといたずらっぽい笑顔を見せる。
「あっ・・・うん、わかった・・・悠稀。」
ぼそっと返事をすると、
ものすごく嬉しそうな顔をされて、僕のほうがどぎまぎしてしまう。
「立っていないで座って。何か食べる?りんごでもむきましょうか。」
「えっ、あっ、ぼ、僕がやるよ。」
慌てて起き上がろうとする彼女をベットにもどし、
お見舞いにおかれた果物かごの中からりんごを一つ取る。
そういえば、今まで緊張して気がつかなかったけど、
花束やら果物かごやら、お見舞いの品がたくさんあるや。
僕は何にも持ってこなかったけど・・・
お見舞いに来るんだったら、なんかもってくるべきだったかな・・・。
でも、こんな高そうな果物かご買えないしな・・・
メロンが入ってるやつなんて初めて見た・・・。
じゃばじゃばと流れる水でりんごを洗う。
冷たい水のおかげで、少しだけ落ち着いた気がした。
「ナイフはそこの引き出しに・・・」
「あっ、うん。いいよ、僕がやるから。」
戸棚からナイフと皿を出す。
すごいな〜・・・ホテル並みの部屋だよね、ここ・・・。
ベットサイドの椅子腰掛けて、りんごの皮をむく・・・
半分普通にむき終わると、残りは皮を少し残して、うさぎにむいた。
「はいっ、どうぞ。」
「ありがとう・・・」
彼女は僕がむいたうさぎのりんごをひとつとると、じっと眺めている。
「あっ、皮ついてないほうがよかったかな・・・
なら、こっちのむけてる方を・・・」
「いえ、ごめんなさい、そうではないのよ。」
そういって、彼女はりんごを口に運ぶ。
シャリシャリという音が部屋に響く。
「おいしい・・・」
「そっ、そっか、よかった。」
別に僕が持ってきたわけでもないのに、なぜだか嬉しくなった。
「料理上手なのね。」
そう言われたけど・・・
「いや・・・料理って言うか、むいただけだし・・・。
小さい頃はよく山に遊びに行って、
とれたやつをナイフでむいたりしたから、それでかな・・・。
料理自体は嫌いじゃないけど、綺麗につくるのとかできないし・・・。」
ただ皮をむいただけなのにそんなこといわれて、
僕は恥ずかしくなって、りんごをひとつほおばった。
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■15514
/ ResNo.48)
僕の居場所31
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□投稿者/ チョビ
一般♪(46回)-(2006/07/30(Sun) 09:58:13)
もぐもぐとりんごをほおばりながら、
この後、一体なんてしゃべったらいいんだろう・・・
沈黙が続いていることに焦ってしまう。
トントンと、ノックの音がして、僕はほっとした。
「失礼します、お嬢様。」
そういって、制服を着た人が入ってきた。
茶色の眼鏡をかけて・・・あれっ・・・この人って・・・
「おや・・・これは・・・こんにちは、神崎さん。」
ゆっくりと挨拶をされる。
「あっ、どうも、お邪魔してます・・増田さん・・・」
「江利子でいいですよ、私も天さんと呼ばせていただきますから。」
江利子さん・・・確か、生徒会の副会長さんだっけ?
前に、悠稀と生徒会室に行ったときに会った人だ。
「会長、お加減はどうですか?」
「ええっ、だいぶよくなったわ。
すぐに退院することもできるみたいだけれど、
大事をとってしばらく入院することにしたの。」
「そうですか・・・
それでは会長、例の部活動の予算案について、
茶道部と華道部の部長たちから、直接に報告があったのですが・・・」
「あっ、あの、僕、外してた方がいいかな。」
なんだか生徒会の込み入った話になりそうだし・・・
「ごめんなさい、天。すぐ終わるから、少し待っていてくれないかしら。」
悠稀が申し訳なさそうにそういうので、僕は立ち上がった。
「じゃあ、ちょっと病院の中見てくるね。
ここの病院広いからいろいろありそうだし。」
「ごめんなさいね。」
悠稀は本当にすまなそうな顔をして、僕を送り出してくれた。
いきなり来て、邪魔をしているのは僕のほうなのに、
なんだか申し訳ないな・・・。
僕は病室からでると、病院の正面玄関の方へ行ってみることにした。
広いな〜・・・図書コーナーまであるんだ・・。
それにしても・・・
図書コーナーの椅子に座って、雑誌をパラパラとめくる。
入院中まで生徒会の仕事をしなくちゃいけないなんて、
やっぱり大変なんだな・・・
僕にできることがあったら、何でも手伝おう。
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■15515
/ ResNo.49)
僕の居場所32 side悠稀
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□投稿者/ チョビ
一般♪(47回)-(2006/07/30(Sun) 10:14:27)
天が出て行った後、江利子はしばらく黙っていた。
「お嬢様・・・心配したんですよ。」
「・・・ごめんなさい、迷惑をかけるわね。」
「そんなことはいいんです、ご無事で何よりでした・・・本当に・・・」
人前ではあまり表情を変えない江利子が、顔を歪めて、泣きそうになっている。
彼女が私を心配してくれていたことが、痛いほどわかった。
「今回の件に関して、学園の方はどう処理しましょう。」
少しの沈黙の後、顔をあげて江利子は切り出した。
そこには、いつも私を支えてくれる穏やかで冷静沈着な彼女の顔が戻っていた。
「私が暴漢に襲われたショックで入院しているということにして頂戴。」
「えっ・・・それでは妙な噂が立つのでは?」
江利子は少し困った顔をしている。
「そこはあなたが何とかしてくれるでしょう?」
「ええ・・・それはまあ、可能ですが・・・
天さんの件はどうします?
救急車を呼んだときにあれだけ騒ぎになっていますから、
目撃されている可能性が高いと思われますが・・・。」
そう・・・ね。騒ぎになったら、またあの子が傷つくわ。
「天は私を助けてくれたのよ。」
そう言って、江利子の方を見る。
「ですがお嬢様、そうまでしてあの人をかばう必要があるのですか?
暴漢に襲われたというだけで、何もなくても不要な噂が立つのですよ。」
江利子は納得してくれない。
確かに、暴漢に襲われるというのは、根も葉もない噂が立つのかもしれない。
ましてや宮嶋グループの後継である私が、
そんな事件に巻き込まれたなんてことは、グループにとってもマイナスだろう。
でも・・・
「お願いよ、江利子。」
私はそういって、江利子の顔をじっと見る。
「・・・お嬢様・・・わかりました。」
彼女は私に何か言いたそうだったけれど、何も言わなかった。
江利子が心配してくれるのもわかるけれど、
事実が広がって、くだらない人たちの噂になったら、
あの子が心無い噂で傷つけられるだろう。
それだけは避けたかった。
「お嬢様はそれほどまでにあの方を気に入っていらっしゃるのですね。」
江利子はそういって、鞄から書類を出す。
「あなたにも、今回の件でも、迷惑をかけるわね。」
「いえ、好きでやっていることですから。お嬢様。」
そういって、江利子は穏やかな顔で、私を見つめてきた。
「それではこちらが、各委員会の予算案です。
入院中なのですからあまり無理をなさらないようにしてくださいね。」
「ありがとう、江利子。助かるわ。」
「いえ、それでは私はこれで失礼します。」
そういって彼女は帰っていった。
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■No15406に返信(チョビさんの記事) > プリントを握り締めて、悠稀の病室の入り口に立つ。 > > 部屋に入ったら、体の具合を聞いて・・・ > 傷の方はどうですか? > 昨日は本当にすみませんでした。 > 僕を助けてくれたせいで怪我をさせてしまって。 > ありがとうございます。 > 怪我が治るまで、不便はことはお手伝いさせてください。と・・・ > > 頭の中で、何度もセリフを繰り返す。 > よしっ、覚悟をきめてドアをノックする。 > 「どうぞ」 > 中から声がして、僕はもう一度さっきのセリフを思いかえして、ドアを開けた。 > > 「あら、天・・・」 > 彼女はベットの上で、まだ顔色はよくなかったけど、 > 昨日よりだいぶ良いみたいだ。 > 「きてくれたの?嬉しいわ」 > 本当に嬉しそうな顔をして、僕はそんな彼女と目が合った途端、 > なんていって良いのかわからなくなってしまった。 > > 「あっ・・・えっ・・と・・・ぷ、プリントが・・授業で・・・」 > ガサガサと慌てて握り締めていたプリントのしわを伸ばす。 > 「わざわざ届けてくれたの?ありがとう。」 > お礼を言ってくる彼女に、プリントを渡そうと手を伸ばす。 > 僕の手に、彼女の手がわずかに触れて、そのまま僕は固まってしまった。 > なっ、なにやってんだ・・・僕・・・ > > 「どうかして?」 > そういって彼女が僕を見上げてくる・・・ > えっと・・なんだっけ・・・そうだっ・・謝らないと。 > > 「あっ、あの、ごめん。昨日は僕のせいであんな・・・怪我をさせて・・・」 > 言いながら、僕の体はがたがたと震えていた。 > > 「そのことならもういいのよ、あれは私が勝手にやったことだから。」 > 彼女が穏やかに微笑む。 > 「いや、だって、僕が問題起こさなければ、 > ゆっ、あっ・・・宮嶋さん・・が、怪我をすることだってなかったし・・・ > 本当にごめん。僕にできることならなんでもするから、言ってください。」 > しまった、呼び捨てするところだった・・・。 > > 「そう・・・ねっ・・・」 > 彼女は何か考えていたみただったけど、にっこり笑って僕に言った。 > 「じゃあ、生徒会の仕事を手伝ってくれないかしら。」 > 「うっ、うん、もちろん。」 > 「それからもうひとつ・・・」 > 「はいっ。」 > 僕はなんていわれるかと思って、全身に力が入った。 > 「あなたのこと、天って呼んでも良いかしら?」 > 脱力した・・・なんだ、そんなこと。 > 「うん、そんなことでよければ、いくらでも。」 > 「私のことも悠稀でいいわ。」 > 「えっ、だってそれは・・・」 > 命の恩人が僕のこと呼び捨てにするのはわかるけど、 > 僕が彼女のことを呼び捨てにするっていうのは・・・ > > 「なんでもしてくれるんでしょ?」 > 彼女は、上目遣いに僕をみて、ちょっといたずらっぽい笑顔を見せる。 > 「あっ・・・うん、わかった・・・悠稀。」 > ぼそっと返事をすると、 > ものすごく嬉しそうな顔をされて、僕のほうがどぎまぎしてしまう。 > > 「立っていないで座って。何か食べる?りんごでもむきましょうか。」 > 「えっ、あっ、ぼ、僕がやるよ。」 > 慌てて起き上がろうとする彼女をベットにもどし、 > お見舞いにおかれた果物かごの中からりんごを一つ取る。 > > そういえば、今まで緊張して気がつかなかったけど、 > 花束やら果物かごやら、お見舞いの品がたくさんあるや。 > 僕は何にも持ってこなかったけど・・・ > お見舞いに来るんだったら、なんかもってくるべきだったかな・・・。 > でも、こんな高そうな果物かご買えないしな・・・ > メロンが入ってるやつなんて初めて見た・・・。 > > じゃばじゃばと流れる水でりんごを洗う。 > 冷たい水のおかげで、少しだけ落ち着いた気がした。 > > 「ナイフはそこの引き出しに・・・」 > 「あっ、うん。いいよ、僕がやるから。」 > 戸棚からナイフと皿を出す。 > すごいな〜・・・ホテル並みの部屋だよね、ここ・・・。 > > ベットサイドの椅子腰掛けて、りんごの皮をむく・・・ > 半分普通にむき終わると、残りは皮を少し残して、うさぎにむいた。 > 「はいっ、どうぞ。」 > 「ありがとう・・・」 > 彼女は僕がむいたうさぎのりんごをひとつとると、じっと眺めている。 > 「あっ、皮ついてないほうがよかったかな・・・ > なら、こっちのむけてる方を・・・」 > 「いえ、ごめんなさい、そうではないのよ。」 > そういって、彼女はりんごを口に運ぶ。 > シャリシャリという音が部屋に響く。 > > 「おいしい・・・」 > 「そっ、そっか、よかった。」 > 別に僕が持ってきたわけでもないのに、なぜだか嬉しくなった。 > 「料理上手なのね。」 > そう言われたけど・・・ > 「いや・・・料理って言うか、むいただけだし・・・。 > 小さい頃はよく山に遊びに行って、 > とれたやつをナイフでむいたりしたから、それでかな・・・。 > 料理自体は嫌いじゃないけど、綺麗につくるのとかできないし・・・。」 > ただ皮をむいただけなのにそんなこといわれて、 > 僕は恥ずかしくなって、りんごをひとつほおばった。 >
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