ビアンエッセイ♪

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■14028 / inTopicNo.1)  僕の居場所1
  
□投稿者/ チョビ 一般♪(1回)-(2006/03/30(Thu) 12:45:50)
    僕の名前は神崎天、高校2年生。
    今日からこの聖クリストファー女子学園に転入になったんだ。

    僕?一応女だよ。
    髪短いし、スカートは滅多にはかないから、男の子に間違われることも多いけど。

    それにしてもすごいな〜・・・ここ・・・
    なんでこんなに広いんだ?でかい噴水まである。
    これがお嬢様学校ってやつなのかな。
    今まで公立の共学にいたから全然わかんないや。

    ん?なんでこんな学校に転校になったかって?
    僕の両親は自然科学の研究者なんだけど、
    今度オーストラリアの研究施設に転勤になったんだ。
    それで最初は僕もオーストラリアの方に行く予定だったんだけど、
    契約が一年限定だったっし、
    親の仕事の都合で子供を振り回したくないってことで、
    僕は日本に残ることになったんだ。
    まあ、うちの親のことだから、
    夫婦二人で二度目の新婚旅行気分を味わいたかったのもあるかもしれないけどね。
    それでも、僕一人を日本に残しておくのが心配だったらしくて、
    遠い親戚の叔父さんが理事長をやってるこの学校に転校になったってわけ。
    僕が小さいときに一度会ったことがあるらしいけど、全然覚えてないや。

    にしても、広い敷地だな〜・・・
    校門入ってだいぶたつけど、まだ校舎に着かない。

    転校も面白そうって簡単に返事したけど、こんだけ広い学校で、生徒もお嬢様ばっかりなのかな〜・・・なじむのが難しそうだ・・・。

    あっ、ようやく校舎が見えてきた。よかった。

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■14029 / inTopicNo.2)   僕の居場所2
□投稿者/ チョビ 一般♪(2回)-(2006/03/30(Thu) 12:51:39)
    校舎に入ったはいいけど、、職員室・・・どこだろ(汗)

    母さんは、最初に職員室に行けば良いって言ってたけど、、
    職員室がわかんないよ、

    こんなことなら職員室までの地図書いてもらえばよかった(涙)
    今の時間は授業中だろうから、生徒も一人も見当たらないし・・・
    これじゃあ挙動不審なやつだよ。

    あっ・・・あそこに誰かいる!よかった〜、職員室聞いてみよう。

    「あの〜、すいません。」
    声をかけた僕に、その女性が振り向いた。
    「なにかしら?」
    「・・・・・・」
    うわ〜・・・すごい綺麗な人・・・

    「どうかなさったの?」
    軽くウェーブのかかった肩までの髪、整った顔立ち、
    穏やかな物腰の中に見える意思の強そうな瞳・・・
    そして何より、身にまとったオーラに圧倒されてしまった。
    「・・・」
    「あなた転校生?」
    すっかり彼女に見とれていた僕は、固まってしまっていた。

    「あっ・・あの・・はい・・・」
    なぜだか赤面してしまう。これじゃあますます怪しいやつだよ〜。
    「ぼっ、ぼく、今日、転校してきて・・・」
    「そう。じゃあ職員室へ案内するわ。」
    微笑みながら、彼女はゆっくりと歩き出す。

    硬直していた僕は、慌てて彼女の後を追う。
    「あのっ、なんで転校生ってわかったんですか?」
    「あらっ、だって、あなたとこの学園でお会いしたことないもの。それに・・・」
    彼女は振り返って立ち止まると、僕の制服の襟元にふれる。
    そのまま顔が近づいていって、えっえっ、、何?

    「こんな時間に制服をきて構内をうろうろしていたら、
    初めて学園に来た転校生か、不審者かのどちらかでしょ?」
    彼女の言うことはもっともだったけど、
    息がかかりそうなくらい近くで話された僕は、それどころじゃなくて・・・

    「身だしなみはしっかりね、神崎天さん。」
    そういうと、彼女は僕の襟元をなおして、踵を返して歩き出した。

    なっ、なんだ・・・襟が曲がってたのか・・・びっくりした・・・
    慌てて彼女を追いかける。

    って、僕、なんでこんなにドキドキしてるんだろ。
    あまりに綺麗な人だから、緊張してるのかな。

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■14030 / inTopicNo.3)  僕の居場所3
□投稿者/ チョビ 一般♪(3回)-(2006/03/30(Thu) 12:58:41)
    「ここが職員室よ。先に校長室に行った方がいいわね。」
    隣の校長室に案内される。
    「失礼します。校長先生、転校生の神崎天さんをお連れしましたわ。」

    校長室には、とても校長先生とは思えないほど若い女性が立っていた。
    校長先生っていうより、やり手のキャリアウーマンみたいだ・・・。

    微笑みながら、校長先生が言った。
    「ようこそ、聖クリストファー学園へ。
    この学園は、生徒の自主性を大切にして、
    一般的な高校とはかけ離れた自由が許されています。
    さまざまな分野の才能を磨くことのできるよう、
    授業はもちろん、部活動にも力を入れているわ。
    あなたが今までいた学校とは違うことも多くて、驚くとは思うけれど、
    あなたもこの学園で、自分の能力を見つけ出せるよう祈っているわ。」
    「あっ、はい・・・。ありがとうございます。」

    学園の敷地の広さに、すでに十分びっくりしてるんですけど・・・。
    「神崎さんをクラスへ案内してもらえるかしら。」
    「ええっ、わかりました、校長先生。行きましょ、神崎さん。」
    「あっ、はい。」
    あいさつって、あんなに簡単で良いのかな。
    相変わらず挙動不審な僕は、彼女のあとについて歩く。

    「この学園は、中高一環で広いから、迷子になりやすいかしら、気をつけてね。
    あなたは2年1組よ。」
    「えっ、はい・・・」
    それにしても、校長室へ案内してくれたり、
    僕のクラスまで知ってたり・・・って、
    そういえば、僕の名前も知ってたな・・・あっ、そっか。

    「そうそう、自己紹介が遅れてしまってごめんなさい。
    あとで改めてあるとは思うけれど、私、宮嶋悠稀といいます。
    あなたと同じクラスよ、一年間よろしく。」
    彼女は急に立ち止まると、にっこりと微笑んで振り向く。
    うわ〜・・・笑顔も強烈だ・・・
    なんていうんだろう、綺麗というより、まぶしいっていうのかな・・・。

    「あっ、あの、よろしくお願いします、神崎天と言います。宮嶋先生。」
    すると、彼女がきょとんとした顔で、僕の顔を眺めている。
    えっ、僕なにか失礼なこと言ったかな・・・。
    「えっ、あの、先生・・・」
    彼女は口元を押さえて、えっ・・・なんだ、笑いをこらえてるのか。
    「ごめんなさい、なんでもないわ、神埼さん」
    そいうと、彼女はきびすを返して、歩き出す。

    なんなんだろ・・・なんだか僕、彼女の顔を見るたびに、ドキドキして、顔が赤くなってる気がする。

    2年1組とかかれた扉の前で、先生が立ち止まる。
    「今、ホームルーム中だから、あなたを皆さんに紹介するわね。」
    そういって、先生は扉を開ける。
    うわ〜・・やっぱり最初は緊張するな。

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■14031 / inTopicNo.4)  僕の居場所4
□投稿者/ チョビ 一般♪(4回)-(2006/03/30(Thu) 13:04:29)
    「あらっ、宮嶋さん。それとあなたは・・・神崎さん、かしら?」
    教卓の前には、白髪の上品そうな女性が立っていた。

    「はい、神崎天です。」
    そういうと、僕は座っているほかの生徒の方に向かっていった。
    「両親の仕事の都合で、転入させていただくこととなりました。
    すごく綺麗で設備の整った学校で驚いています。
    わからないことも多いと思いますので、皆さんよろしくお願いします。」

    人前で話をするのは苦手じゃない。
    それに、早く学校になじむためにも、自分から積極的に話をした方がいいだろう。にしても、女子校だから、本当に女しかいないんだな。
    今まで共学だったから、なんだか不思議な感じだ。
    それに、高そうっていうか、高級そうっていうか、みんなお嬢様って感じだ。

    「ごめんなさいね、宮嶋さん。
    今、神崎さんを迎えに行こうと思っていたところなの。」
    白髪の女性が宮嶋先生に言う。

    ん?この人が担任の先生なのかな?じゃあ宮嶋先生は?
    「いいえ、偶然お会いしたものですから。」
    「神崎さんも、ごめんなさいね、迷わなかったかしら。
    私が担当教師の藤野あやめです。席は、そうね、宮嶋さんの隣でいいかしら。」

    ???
    僕はわけのわからないうちに、宮嶋先生の隣の席に座ることになった。
    って、えっ?
    宮嶋先生って生徒なのか?
    「隣の席ね、よろしく。」
    席に座ると、さっきまで僕が先生だと思っていた人が、
    目配せしながら、小声でささやいてくる。

    あれっ、意外に幼い顔もするんだ・・・
    じゃないっ!なんだ、僕が担任の先生だと思ってたのに、からかわれたんだ。
    だからさっきあんなに笑いをこらえていたのか・・・
    性格悪いんじゃないか〜、この人。

    「君、転校生をからかって、楽しいかい?」
    僕は少しむっとして、彼女に訴える。
    すると、途端に彼女は悲しそうな顔をして、
    「ごめんなさい・・・そんなつもりじゃなかったの。」
    「あっ、いや、別に、勘違いした僕も悪いんだし。
    君は先生だなんて言ってなかったし。」

    そんなに悲しい顔をされるとは思わなかった、僕の方が焦っちゃうよ。
    「ごめんなさい、お詫びに放課後校内を案内させて。」
    「うっ、うん。よろしくお願いします。」

    悪気はなかったみたいだし、校内を案内してもらえるのは大歓迎だった。
    こんなに広い学校だもん、
    明日一人でこのクラスへたどり着けるか、自信ないし(汗)

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■14050 / inTopicNo.5)  NO TITLE
□投稿者/ きょう 一般♪(1回)-(2006/03/31(Fri) 10:08:27)
    学園もの好きだし、チョビさんの表現が結構好きで気に入ってるので頑張ってくださいp(^^)q
    僕も戻れるなら女子校行きたかった(笑)

    (携帯)
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■14052 / inTopicNo.6)  ありがとうございます
□投稿者/ チョビ 一般♪(5回)-(2006/03/31(Fri) 16:48:52)
    感想がいただけるなんて光栄です。
    学園物といえる展開になるかは自信がありませんが、
    現実離れした設定を目指します(笑)
    性格的に、まめに更新できませんが(断言)
    お気に入りましたらどうぞお付き合い下さい。

    にしても、私も戻れるなら女子校に行きたいですね〜(笑)

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■14053 / inTopicNo.7)  僕の居場所5
□投稿者/ チョビ 一般♪(6回)-(2006/03/31(Fri) 17:00:25)
    ホームルームは、今日から新学期ということもあって、
    僕の自己紹介と、簡単な連絡事項が済むと、すぐに終わった。

    「少し用があるから、教室で待っていてもらえるかしら。」
    ホームルームが終わると、宮嶋さんがそういった。
    「うん、待ってるね、ありがとう。」

    彼女が教室を出ると、他の生徒が話しかけてきた。
    さて、どんな人たちなんだろう?

    「ねえねえ、神崎さんって悠稀様とお知り合いなの?」
    女の子の集団から、ちょっとぽっちゃりした感じの子が話しかけてくる。
    「あら、まゆ子さん、いきなりそんな質問失礼じゃない。」
    「あっ、ごめんなさい、私ったら。私は渡辺まゆ子って言うの。」
    「水島香苗です。よろしくね」
    まゆ子さんの隣の、小柄な子が自己紹介してくれる。
    「佐野雪江です。」
    今度は痩せ型で長身の子が話しかけてくる。
    仲良し3人組ってやつなのかな、この子たち。

    「よろしく」
    せっかく話しかけてくれてるんだし、笑顔で挨拶しなくちゃ。

    「で、さっきの話なんだけど、悠稀様とはお知り合いなの?」
    まゆ子さんが身を乗り出して聞いてくる。

    「悠稀様・・・あっ、宮嶋さんのこと?
    いや、偶然校内で会って、職員室に案内してもらったんだけど・・・」
    「まあっ!そうなの!てっきり悠稀様のお知り合いの方なのかと・・・。」
    今度は香苗さんが声をあげる。
    「うん、今日はじめて会ったんだ。それにしても、なんで悠稀様って呼ぶの?」
    3人は顔を見合わせる。

    えっ、僕、変なこと聞いちゃったかな?
    「そうね、転校してきたばかりで、神崎さんは知らないのかもしれないけど、」
    雪江さんが小声でおずおずと説明してくれる。
    「悠稀様って言ったら、あの宮嶋グループのお孫さんで、
    叔父様がこの学園の理事長をされているわ。
    悠稀様が、学園内のことを把握されて叔父様に相談されていることもあるそうだし。」

    へえ〜、宮嶋グループなら僕も知ってる。
    国内外にいくつも会社を持ってる大きなグループだ。
    僕の父さん母さんも、宮嶋グループの子会社からの援助で、
    オーストラリアへ転勤になったんだし。
    理事長の孫なのか〜、すごいね〜。

    「そうそう、それに悠稀様後援会っていうのもあって、
    3年生から中等部の子たちまで参加して、すごい人気なの。
    もちろん、私も参加しているわ。」
    まゆ子さんが笑顔でいう。

    後援会・・・なんだか、アイドルみたいだね(汗)
    「へっ、へえ〜・・・そうなんだ。」
    「でも良いわね〜、職員室からここまで、
    悠稀様と二人っきりで歩けたなんて〜。」
    「あっ、そうなんだ・・・」

    なんだこの学校(汗)
    確かに、宮嶋グループの孫っていうのはすごいけど、
    クラスメイトじゃないか、ついていけるかな。

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■14054 / inTopicNo.8)  僕の居場所6
□投稿者/ チョビ 一般♪(8回)-(2006/04/01(Sat) 02:10:28)
    彼女達と雑談しているうちに、宮嶋さんが戻ってきた。

    「お待たせ。じゃあ、行きましょ、神崎さん。」
    「あっ、じゃあ、これから校内を案内してもらうことになってるから、
    行ってくるね。」

    「ええっ!悠稀様に案内してもらうの・・・?」
    まゆこさんが驚いたように言う。

    「ええっ、そうなの。お先に失礼しますわ。」
    宮嶋さんがまゆこさんにそういうと、彼女は顔を真っ赤にしている。

    「それじゃあ、神崎さん行きましょう。ごきげんよう、皆さん。」
    教室では仲良し三人組が羨望のまなざしで僕を見送ってくれた。

    うわ〜・・・ごきげんようなんて、どこの世界だろ。初めて聞いた・・・(汗)
    やっぱりこの学校って普通じゃないかも・・・。

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■14085 / inTopicNo.9)  僕の居場所7
□投稿者/ チョビ 一般♪(9回)-(2006/04/02(Sun) 22:39:04)
    「この校舎は主に高等部の教室になっているわ。
    じゃあまず体育館から案内するわね。」
    体育館までは、高等部の校舎をでてすぐだった。
    これなら僕にもわかりそうだ。
    外観から見ても、かなりでかいな・・・一体何面のコートがあるんだろう。

    「ここが体育館よ。今の時間は部活中かしら。」
    体育館に入ってびっくりした。
    広さもだけど・・・観客席がある・・・。

    「ふっ、ふつうに、体育の授業とかもここでやるの?」
    ・・・観客席があるけど?
    「ええっ、そうよ。」
    宮嶋さんが当然のように言った。
    そうですか・・・そうですか・・・
    お嬢様学校だもんね、観客席なんて普通だよね、はははっ・・・
    こんなとこで部活ができるっていうのは、贅沢なんだろうな〜。

    体育館には、バスケ部とバレー部が活動していたけれど、
    僕らがコートに近づくと、周りの動きがいっせいに止まった。
    僕らに視線が注がれる。えっ、なんなんだ?

    バスケ部とバレー部から一人ずつ誰かが走ってくる。
    「こんにちは、悠稀様、今日はどうされたのですか?」
    バスケ部の人がいう。
    「バレー部に何か御用でしょうか?悠稀様。」
    今度はバレー部の人が宮嶋さんに話しかける。
    うわっ、すごいな。宮嶋さんて本当に人気があるんだな。
    この人たちも後援会ってやつに入ってるのかな。

    「ごめんなさいね、中断させてしまったようで。
    今日は転校生の方に校内を案内しているの。」
    さっきから、体育館全員の視線が僕らにむけられて、
    ちょっと微妙なんだけど・・・。

    「そうですか、それではゆっくりご覧になってください。
    私たちは練習にもどります。」
    バレー部の人はそういうとコートへ戻っていた。
    「それでは、失礼します。」
    バスケ部の人も、コートへ走り出す。
    そして、ようやく体育館の中にいる人たちが動き出す。

    あ〜、なんだか、緊張したな。
    宮嶋さんと一緒だと僕まで目立つんだろうな。
    「ごめんなさいね、驚かせてしまったかしら。」
    宮嶋さんが少し申し訳なさそうに言ってくる。
    「いや、ちょっと驚いたけど、宮嶋さんってすごい人気なんだね。」
    彼女がうっすらと微笑んだ顔が、少し切なそうに見えた。
    ん〜、きっとさ、注目も浴びるっていうのも、大変なんだろうね。

    「さっきここにみえた方が、バスケ部とバレー部の部長さんなの。
    それに、後援会の役員さんだから。」
    へえ〜、部長さんなのか。後援会って・・・宮嶋さんのだろうな。
    そう思ったけど、なんとなく確認するのが悪いような気がして、黙っていた。

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■14087 / inTopicNo.10)  僕の居場所8
□投稿者/ チョビ 一般♪(10回)-(2006/04/02(Sun) 22:43:57)
    体育館からでて、グランド、ブールと案内してもらう。
    プールは、室内ブールだった。
    そしてなぜか、飛び込み競技に使う飛び込み台まである。
    「シンクロをやることもあるよの。」
    宮嶋さんはそういったけど、今の時期は誰も使ってないみたいで、
    もったいないな〜。

    プールのちょうど裏側の方にもなにか建物があった。
    「あれはっ?」
    宮嶋さんに尋ねる。
    「あれは道場なの。空手部が活動しているわ。」
    へえ〜、空手部なんてあるんだ。
    こんなお嬢様学校にそんな部活があるなんて不思議な感じ。

    「空手部あるんだね、ちょっと覗いて良いかな?」
    実は僕も、格闘技を少しやってるんだ。
    護身術みたいなもんだけど、昔、じいちゃんが道場やってたから、
    いろいろ教わった。

    「空手、興味あるの?」
    「ん〜、ちょっと。昔、護身術をやってたから。」
    「そう・・・それじゃあ行ってみましょうか。」
    少し考え込むようにして、宮嶋さんが言った。
    ん?どうしたんだろ?
    とりあえず、道場に連れて行ってくれるみたいだし、ついていこう。

    う〜ん、道場もやっぱり立派だね。じいちゃんとこよりよっぽど立派だ。
    道場に入ると、体育館と同様、全員の視線が僕らに注がれる。
    僕らというより宮嶋さんなんだろうな〜。

    そして、部長らしき人が近づいてくる。
    へえ〜、意外・・・この学校こんな人もいるんだ、僕より髪短いや。
    えっ、なんか一瞬にらまれたような気がしたけど・・・。

    「こんにちは、操さん。転校生の方の案内をしているの。少し拝見いいかしら。」
    宮嶋さんがそういうと、部長さんは僕を一瞥した後言った。
    「それなら、私が説明しますから、悠稀様はここでごらんになっていてください。
    あなた、ちょっといい?」
    部長はそういうと、僕を道場の端にある部室へ連れて行った。

    二人っきりになると、いきなり襟元を掴まれる。
    「たかが転校生の分際で、
    悠稀様に校内の案内をさせるなんてどういうつもりっ!」
    えっ、なに怒ってるんだこの人。

    「あ、あの、宮嶋さんが案内してくれるって言ったから・・・」
    僕の説明は、どうやら火に油を注いだみたいだ。
    部長の顔がいっそう険しくなると、下腹に衝撃がはしった。

    「っ・・・」
    いきなり殴ってくるなんて、どういうつもりだよ。
    「警告しておく。
    今度悠稀様に迷惑をかけてみろ、こんなものではすまないからな。」
    お腹をおさえて、座り込む僕に、吐き捨てるように言う。
    そのまま部長は部室を出て行った。

    一人取り残された僕は・・・あ〜、なんだよ、ほんとに・・・。
    そんなに宮嶋さんと僕が一緒にいるのが気に入らないのか。
    ってか、すぐに暴力振るうってどうなんだろ。
    とっさに、受けをとれたからいいものの、
    まったくの素人だったら大怪我するかもしれないじゃないか。

    立ち上がり、制服をなおす。
    さて、どうしたもんか・・・。
    今から部長を殴り返してもいいけど・・・、
    転校初日からこれ以上目立ちたくないし、問題起こすのもまずいだろう。
    それにここで騒いで、宮島さんに迷惑かけたくないし。

    よしっ、今のはなかったことにしよう。
    僕はそう決めると、部室を出て、宮嶋さんのそばに戻った。
    「・・・何かいわれなかったかしら?」
    心配そうに宮嶋さんが言う。う〜ん、あんな部長みたいな人がいたら、宮嶋さんと仲良くなる人は大変だろうな。
    「いや、大丈夫。活動内容とかを少し説明してもらっただけだから。」
    今日一番の笑顔を向ける。部室でのことを、いちいち話して、心配させたくないと思った。
    「そう。彼女は私の後援会の会長をしてくれている方で、良い方なのだけど、少し強引なところがあるの。」
    安心したように、宮嶋さんが表情を和らげる。
    少し強引ね・・・少しどころか、かなりいっちゃってる人みたいだけど。僕は心の中で苦笑いを浮かべた。
    さて、気を取り直して、次に行きますか。

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■14088 / inTopicNo.11)  僕の居場所9
□投稿者/ チョビ 一般♪(11回)-(2006/04/02(Sun) 22:48:19)
    「それじゃあ、あとは校舎の中を案内するわね。」
    その時、僕のお腹がぐぅ〜って音をたてた。
    うわっ、恥ずかしいな。朝ごはん食べたの早かったからな。
    だって、今日は初登校だから緊張して、早く起きちゃったから、
    朝ごはんも早かったんだ。

    「くすっ、食堂から案内するわね。」
    宮嶋さんに笑われた。うわ〜・・・今僕、顔赤いだろうな〜。

    食堂はまだ昼には少し早い時間だったせいか、人はまばらだった。
    よかった〜、食事中まで注目されたらどうしようかと思った。

    食事はセルフサービスで、好きなものをカウンターからとるみたいだ。
    メニューもいっぱいあるな〜。
    和食、洋食、中華、イタリアン、いろいろある。
    ホテルのバイキングみたいだね。
    ついつい、目移りして、結局僕のトレイに乗ったものは・・・
    ハンバーグとご飯、菜の花のおひたし、ひじきの煮付け、ラーメンだった。
    食べ合わせ的に変かな?
    前の学校にいたときは、友達と食事に行くと、よく笑われたっけ。

    宮嶋さんをみると、野菜のサンドイッチとスープをとっていた。
    「あれっ、お金ってどこではらうの?」
    レジってないのかな?
    「お金?ああっ、お金はかからないわ?」
    はっ?
    「食堂での食事は、学費に含まれるから、
    食事ごとに代金を支払う必要はないの。」
    ええっ〜・・・じゃあ、これ全部ただってこと?なんてうらやましいんだろう。
    「じゃ、じゃあ、納豆ももらっていいかな?」
    ついつい、貧乏くさいことを言ってしまう。

    「朝7時から夜八時までやっているから、ここで食事をとる生徒も多いのよ。」
    へえ〜、三食付か〜、すごいな。コンビに弁当とか買わなくて済みそうだ。
    僕らは窓際のテーブルに座ると、食事を始めた。

    「んっ、おいしいね。なんだかちょっとおふくろの味って感じで。
    ちょっと意外だけど。」
    「そうね、理事長の趣味なのよ。」
    宮嶋さんが穏やかな視線をむけて僕を眺めている。
    なんだか恥ずかしくなって、僕は一気に話し出す。

    「それにしても安心した〜、毎食自分で作るのって大変だろうし。
    料理はあんまり得意じゃないから。
    僕の両親も、今朝それを心配して、空港に出発して行ったんだ。
    母さん仕事で遅くなるときは、
    デュークと二人でコンビニ弁当って日もあったし。」

    「デューク?」
    宮嶋さんが尋ねる。
    「あっ、デュークってのは犬だよ。
    アラスカンマラミュートっていうんだけど、ハスキー犬みたいな感じの。
    両親と一緒にオーストラリアへ行ったけど、僕の大事な家族だよ。」

    「そう、素敵なご家族ね。」
    宮嶋さんが微笑んでそう言う。
    うわっ、やっぱり綺麗な人だ。
    つい目が合ってしまい、僕は食事に集中することにした。

     食事が済むと、校内のほかの施設を案内してくれた。
    これで移動教室のときも、苦労しなくてすみそうだ。
    朝たどり着けなかった職員室ももう一回(汗)今度はちゃんと覚えたぞ。

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■14089 / inTopicNo.12)   僕の居場所10
□投稿者/ チョビ 一般♪(12回)-(2006/04/02(Sun) 22:53:10)
    「ここが音楽室なのだけど、少しここで待っていてもらえるかしら。」
    宮嶋さんがそういうので、僕は廊下で待っていることにした。
    彼女は音楽室の中に入っていく。
    中に入って、また注目されるよりは、廊下で待っている方がいいや。

    窓の外を眺めてぼーっとしていると、急に知らない生徒に、話しかけられた。
    「こんにちは、神前天さん。」
    振り向くと、ポニーテールの活発そうな女の子が立っている。
    「私、2年2組の朝日麻衣子っていうの、よろしくね。」
    元気そうな笑顔がすごく似合っていて、僕は好感をもった。
    「あっ、よろしく。転校初日だから、校内を案内してもらっていたんだ。」
    笑顔で返す。

    「それにしてすごい設備だね、お金かかってるんだろうな。」
    あっ、しまった。お嬢様相手に、こんなこと言ったら失礼だったかな。
    「そうね、お金持ちの考えることは庶民には理解できないことが多いわ。
    まったく。」
    あれっ?なんだかとっても共感してくれた。

    「君もその、お金持ちのお嬢様ってやつじゃないの?」
    「まさか、私は違うわよ。生粋の下町育ちだし。
    地方記者の父の元、日々修行中よっ!」
    胸をはって、自慢そうに答える彼女をみていると、嬉しくなった。

    「じゃあ、同じ庶民ってわけか。よろしく、朝日さん」
    「麻衣子で良いわ。」
    彼女はさらっと言う。嬉しいな、友達になれそうだ。
    「じゃあ、僕も天でいいよ。」
    「神崎って呼ばせてもらうわ。」
    えっ・・・なんで?(汗)
    「苗字で呼ぶのは記者の基本よっ!」
    ・・・よくわかんないけど、まあ、そう呼びたいならそれでもいいや。

    「新聞部なの?」
    僕が尋ねると、彼女はちょっと肩を落とす。
    「新聞部っていう部活はないの。私一人だけだし。」
    「あっ、そうなんだ。」
    「でも、有能な記者は一人でもスクープをものにして見せるわっ!」
    彼女はばしっと宣言する。あはは、面白いやつだ。

    「そっか、頑張ってな。応援するよ、麻衣子。」
    「ありがとう、それじゃあ私は取材にいってくるから。
    じゃあ、またね、神崎っ。」
    ちょうど宮嶋さんが音楽室から出てきた。僕は麻衣子に手を振って見送る。

    「用事済んだの?」
    宮嶋さんに尋ねると、走っていく麻衣子の後姿を見ている。
    「あっ、今廊下で仲良くなったんだ。隣のクラスの麻衣子。」
    笑顔で宮嶋さんに話しかける。

    「あらっ、もうそんなふうに呼びあう仲なの?」
    「うんっ、なんかフィーリングが合いそうな感じがして。」
    「そう・・・私のことは名前で呼んでくれないのかしら?」
    少し悲しそうに宮嶋さんが言う。えっ、名前でって・・・(汗)
    「あっ、え〜と・・・じゃ、じゃあ、悠稀・・・さま?」
    「様はいらないわ。」
    笑われた。
    そういわれても、みんな悠稀様って呼んでるしな・・・、
    僕はあんまり呼び捨てってしないし・・・、
    宮嶋さん、呼び捨てできるような雰囲気じゃないし・・・

    「・・・悠稀さん、でいいかな?」
    散々悩んだあげく、僕は言ってみた。
    彼女は少しがっかりしなような表情を浮かべたけど、
    呼び捨てなんてできないよ〜。

    「ええっ、お願いするわ、天さん。」
    よかった、さんづけは、なんとかセーフみたいだ。

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■14303 / inTopicNo.13)   僕の居場所11
□投稿者/ チョビ 一般♪(13回)-(2006/04/27(Thu) 07:29:09)
    「これで、校内はだいたい案内したつもりだけれど、
    少し寄り道をしてもいいかしら?」
    一通り案内してくれた後、彼女は言った。
    「うん、もちろん。」
    こんなに丁寧に案内してくれたんだから、僕もお礼をしなくちゃいけないかな。
    用事があるなら喜んでお供しよう。

    彼女についていった先は、生徒会室だった。
    「生徒会やってるの?」
    「ええっ、そうなの。
    この学園は生徒の自主性を大切にするところだから、
    生徒会といっても、
    学園行事や各委員会や部活動の予算を決めたり、校則を決めたりするの。」
    「へえ〜、すごいね。」
    そういうのって、先生とかが決めると思ってた。
    それじゃあこの学校では、生徒会ってかなり権力を持ってるんだろうな。

    「おじゃましま〜す。」
    そういって、悠稀さんに続いて部屋に入る。
    うわっ、すごいな・・・テレビに出てくる社長室みたいだ。
    っていうか、校長室と同じくらい豪華なんだけど・・・。
    高級そうなソファーの奥には、どっしりとした机が置かれている。
    生徒会長とかが座るのかな〜。

    「あっ、会長。」
    机の横のドアから、誰か入ってきた。茶色の眼鏡が印象的だ。
    それにしても、会長って・・・悠稀さんって生徒会長なのか?

    「ごきげんよう、増田さん。昨日の各部の予算案のことなのだけれど。」
    「その件でしたら、さっき部長が申請にきていました。こちらの書類です。」
    「ありがとう、見ておくわ。」
    うわ〜・・・会社の人みたいなやり取りだな・・・
    僕は実際会社で働いたことなんてないけど、こんな感じなのかな〜。

    「生徒会室の隣は、会議ができるスペースになっているの。
    委員会や部長会などをするの。」
    書類に目を通していた悠稀さんが僕に向かって言う。
    「へっ、へぇ〜・・・」
    ほんと、会社みたいだね。役員会議ってやつなんだろうな。
    容姿端麗なお嬢様で、ファンクラブ並みの後援会があって、生徒会長で、
    すごい人もいるもんだ。

    「こちら副会長の増田江利子さん。」
    悠稀さんが僕に振り向いて言う。
    「あっ、どうも、神崎天です。」
    「はじめまして。会長と二人なんですか?う〜ん・・・仲がよろしいんですね。」
    いきなり満面の笑顔に度惑ってしまう・・・。
    えと・・・なんて返事すればいいんだ・・・?

    「転校初日だから、校内を案内していただけよ。
    最後にちょっと私の仕事に付き合わせて、生徒会室へ来てしまったけれど。」
    悠稀さんが助け舟を出してくれる。
    「あっ、そうなんです。悠稀さんにはお世話になってます。」
    僕がそういうと、一瞬増田さんはきょとんとした顔をした。
    けど、すぐにまた笑顔になると、
    「会長をよろしくお願いしますね。」
    といわれた。
    ・・・僕、なんか変なこと言ったかな?

    「それじゃあ、失礼するわ。」
    不思議に思ったけど、悠稀さんがそういうので、僕は生徒会室を後にした。
引用返信/返信 削除キー/
■14304 / inTopicNo.14)  僕の居場所12
□投稿者/ チョビ 一般♪(14回)-(2006/04/27(Thu) 07:38:45)
    校内を一通り案内してもらい、寮へ戻ってきた。
    この学校はいまどき珍しい全寮制なんだ。
    生徒の自主性を養うには、
    親元から離れて暮らしたほうが良いっていう学校の方針らしい。
    僕は学期半ばで転校してきたから、一人部屋だけど、
    通常一部屋に二人で生活するらしい。
    他人と共同生活を送るのも、教育になるんだって。
    でもな〜、普通に生活してたらそんなの自然に身につくと思うけど・・・
    やっぱりお金持ちの人の考えることってわからない。
    一流ホテル並みに立派な寮を眺めて、僕はため息をついた。

    「宮嶋さんもここに住んでるの?」
    僕が尋ねると
    「いいえ、私はコテージなの。」
    ・・・コテージ?なんだろう?

    「二人で相部屋っていうのは、この学校の方針だけれど、
    そうもいかない場合もあるのよね。
    部活や生徒会で生活リズムがずれたりしていると、
    お互いに迷惑がかかるし、ご家族の希望もあったりして。
    学園の方針だから、高等部1年間は必ず寮で過ごさなければならないけど、
    1年たったら、希望者はコテージといって・・・
    そうね学園の敷地内にある何箇所かにある、
    小さな家のようなところへ移ることができるの。」
    なるほど〜、確かに、
    後援会とかまである宮嶋さんが、誰かと相部屋なんて、想像できないな〜。

    寮には学生が集まれるようなホールがあって、
    そこのテレビからニュースが流れていた。
    『それでは次のニュースです。
    本日午後2時頃、シドニー行きの飛行機事故がおこりました。』

    えっ・・・・・・今なんて・・・
    シドニーって、今朝、僕の父さんと母さんが行ったところだよね・・・
    頭の中が真っ白になった・・・

    「神崎さん、電話がかかってきているわ。」寮監督をしている人に言われた。
    慌てて電話に駆け寄る。

    「はいっ・・・神崎ですが」
    「あっ、天ちゃんかい?
    私はご両親と一緒にオーストラリアで研究をすることになっている
    篠崎といいます。
    空港まで二人を迎えに行ったんだが、あんなことになってしまって・・・」

    ・・・なに言ってるんだ、この人・・・

    「本当にもう、なんと言っていいのか・・・ううっ・・
    墜落の衝撃で、とても助かる状態じゃなかった・・・」

    えっ・・・なに・・・それ・・・





    トウサントカアサンガシンダ・・・




    そこから先は覚えてない・・・。

引用返信/返信 削除キー/
■14616 / inTopicNo.15)  駄犬のつぶやき
□投稿者/ チョビ 一般♪(15回)-(2006/05/23(Tue) 11:30:43)
    う〜ん・・・自分で書きなぐっといてなんですが・・・
    こっから先どう続けようかわからなくて(汗)
    文章力のない私には、なかなか小説を書くのは難しいです(^^;)
引用返信/返信 削除キー/
■14617 / inTopicNo.16)  僕の居場所13 悠稀回想
□投稿者/ チョビ 一般♪(16回)-(2006/05/23(Tue) 11:39:27)
    2006/05/23(Tue) 11:40:40 編集(投稿者)
    2006/05/23(Tue) 11:40:34 編集(投稿者)

    初めてあなたに会ったのは、小学校の頃だった。

    祖父の仕事について、神奈川の山奥にある研究所へ行ったときだったわ。
    研究者と話をしている祖父を尻目に、私は研究所の裏にある花壇を眺めていた。

    家では、お嬢様と呼ばれ、いろいろな習い事をして、
    お嬢様らしくしなくてはいけない自分に、少し息切れしていたから。
    こうしておじい様と出かけるのが、唯一の楽しみだった。
    おじい様だけが、私を、一人の人間として扱い、愛してくれたわ。
    他の人はそう、、私が宮嶋グループの跡取りだから、お嬢様と呼び、
    私がなにをしても文句も言わず、笑顔でいたわ。
    習い事の先生は、どの先生も、私が完璧にできるよう必死だった。
    私が上手くできなければ、後で先生達が父に罵倒されていたわ。
    それを聞きたくなくて、あのころの私は、
    与えられたものを上手くやろうとしていた。

    花壇には、屋敷の庭では見たこともないような花たちが咲き乱れていた。
    うちの庭にも綺麗な花はたくさんあるけれど、その花たちは、綺麗というよりも、
    そう、強いといった方が良いのかもしれない・・輝いて見えた。

    おじい様に見せてあげようと、手折ろうとしたとき
    「駄目だよ〜、花を折ったら。」
    森の方から、一人の男の子が降りてきた。
    「これはね、ここにあるから綺麗なんだよ。」
    ニコニコしながら近づいてきた男の子にびっくりしてしまった。
    泥だらけになって伸びたTシャツを着てる。
    髪に木の葉がついてるし、森の中で遊んでたのかな。

    「あなた、誰?なにしてたの?」
    不思議に思ってたずねた。
    「ん〜、人に名前を聞くときは、自分から名乗るんだぞ。」
    なんだか、はじめて会ったのに、注意ばかりされている気がしたわ。
    「わたし・・・わたしは、・・・ゆうきっていうの。」
    宮嶋悠稀・・・それが私の名前だったけれど、
    なせだかそのとき、宮嶋という名を出したくなかった。

    「ふぅ〜ん、ゆうきっていうんだ。僕は天。よろしく。」
    相変わらずニコニコしながら、かがんで、手を差し出してくる。
    伸びたTシャツの首元から、肌が見えた。
    あれっ?もしかしてこの子、女の子なの?

    「ねえ、今ならもっと綺麗なものが見えるよ。
    ここじゃなきゃ見られないもの。おいでよ。」
    そういうと、その子は私の手を引っ張って、森の方へ歩き出した。
    「えっ、でも・・・」
    おじい様に何も言ってないし・・・。
    屋敷にいる私なら、そんなことはしなかったかもしれない。
    けれど、なぜかその時は、その子の笑顔と開放感から、ついていくことにした。
    強い緑の、森の中に入っていく。

    避暑に行ったときに、林の中を少し歩いたことはあるけど、
    こんな山の中なんて入るのは初めてで、必死であなたについていった。
    森の中は、見たことのない植物がたくさんあって、息をすると、少し冷たい。
    湿った、それでいて嫌でない、不思議が空気の味がした。

    「ねっ、もうすぐ着くよ。」
    ときどき私を振り返ってくれたあなたが、そう言った。
    少しひらけた場所にでると、そこにある大きな木に、あなたは登り始めた。

    「ねっ、おいでよ。」
    木の上からあなたが声をかける。
    木登りなんか初めてだったけど、初めてだらけのことにわくわくして、
    スカートを履いていることも気にせずに、あなたのまねをして木に登った。
    幹の中ほどになる大きな枝に二人で腰掛けると、周りにある大きな山々が見える。

    「そろそろだよ、ほらっ。」
    あなたがいうと、
    光が・・・太陽が山に沈んでいく。
    オレンジとも赤とも言えない、なんともいえない夕日だった。

    炎のよう・・・そう思った。

    「ねっ、綺麗だろ。」
    すごい・・・
    あたり一面が、オレンジ色に染まって、
    私のほうを見ているあの子の顔もうっすらと染まって見えた。
    スカートをはいて、泥だらけになって、木の上にいる自分が、
    森の一部のような気がした。

    「うん・・・」
    無言のまま、二人でじっと夕日を見つめた。
    その後は、日が落ちる前に、あなたと一緒に山を下りた。

    私の初めての冒険だった。
    山を降りたら、研究所の前で、
    血相を変えたおじい様に二人して叱られてしまったけど。

    「じゃあ、またね、ゆうき!」
    帰り際に、車が見えなくなるまで、あなたは手を振ってくれた。

    その日は、うちに帰っても興奮してなかなか寝付けなかった。
    見たこともないあの夕日と、不思議な子・・・。

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■14618 / inTopicNo.17)   僕の居場所14 悠稀回想2
□投稿者/ チョビ 一般♪(17回)-(2006/05/23(Tue) 11:47:20)
    それから、また、私の日常が戻ってきたけれど、
    あの日のことは忘れられずにいた。
    あの子のことも調べてもらって、私と同じ年で、
    研究所で両親が働いていることがわかった。

    神崎天・・・それがあの子の名前。
    もう一度会いたいと何度も思ったけれど、
    自由になる時間がないまま、中学生になった。
    宮嶋グループ主催のイベントやバーティーに出席せざるをえない機会が増え、
    ますます自分の時間が減っていく中、あの研究所へいくことはできなかった。
    一度だけパーティーであの子のご両親にお会いして、
    あの子の話が聞けたときは嬉しかったわ。
    無理を言ってあの子の写真ももらってしまったし。

    屋敷の窓から見える夕日を見ては、あの子のことを思い出した。

    高校生になり、あの子がこの学園へ転校してしてくると知ったとき、
    どんなに嬉しかったか。
    そのことを知ったときからずっと落ち着かなくて、
    あの子が転校してくる当日は、教室でじっとしていられなくて、
    ついつい校内を歩き回ってしまった。
    もしかしたらあの子に会えるかもしてないって淡い期待を持ちながら。

引用返信/返信 削除キー/
■14619 / inTopicNo.18)  更新めっちゃ嬉しいです☆
□投稿者/ 花 一般♪(2回)-(2006/05/23(Tue) 14:43:42)
    楽しみにしてるんで♪
    これからも頑張って下さい(*・・*)

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■14624 / inTopicNo.19)  面白い!
□投稿者/ ♪ 一般♪(1回)-(2006/05/23(Tue) 21:26:27)
    楽しみにしてます♪ 無理せず書いてくださいね♪

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■14634 / inTopicNo.20)  花さん
□投稿者/ チョビ 一般♪(18回)-(2006/05/24(Wed) 00:04:53)
    うわ〜・・・感想がもらえてる・・・
    嬉しいな〜。
    ありがとうございます!

    のろのろした更新になると思いますが、
    お付き合い願えれば光栄です。
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