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■16050 / inTopicNo.61)  僕の居場所38
  
□投稿者/ チョビ ちょと常連(56回)-(2006/08/21(Mon) 04:24:57)
    僕はうつむいて、肩で息をしてたから、
    道場の入り口から誰かが入ってきたのに気がつかなかった。

    「強いやつがいるって言うから来てみれば、こんなやつが相手か?
    こんなやつ、お前らだけで何とかなるだろ。」
    はぁっ・・はぁっ・・・悪かったな、こんなやつで。
    顔をあげると、僕と同じくらいの身長の、気の強そうな女の子が立っていた。
    髪の毛赤い・・・地毛なのかな・・・と僕は関係のないことを考えてしまった。

    「まあ、そういうな。これでもうちの部員達を大勢相手にしたんだから。」
    部長がその子に説明する。
    「一年の白川だ。今度はこいつがお前の相手だよ。」
    ニヤニヤしながら、部長は僕に言った。

    「さっさと終わらせて、帰らせてもらうからな。約束の件は忘れるなよ。」
    そういって、その子は僕の前に立つ。
    この子の相手をしたら終わりかな・・・

    その子は無造作に近づいてくる。えっ・・・なに?
    と、その瞬間、右足での上段蹴り。
    何とか、腕で受けたけど、胃に衝撃がはしる。
    うっぐっ・・・膝蹴りか・・。
    思わず、床に膝をつくと、顔面に蹴りが飛んでくる。
    くっ、受けられない。
    とっさに、床を転がって距離をとった。
    「ふぅ〜ん・・・逃げるのはうまいんだ。」

    やばいな・・・この子強い・・・
    鳩尾にもらった膝蹴りで、吐き気がこみあげる。
    躊躇なく蹴りが落とされる。
    上段、中段、下段、急所を狙った蹴りと、突き。
    受けようとする腕をとって、関節を極めようとしてくるから、
    思うようにガードもできない。
    半端なガードの上から、何発ももらって、後退する。
    腕がしびれて、感覚がない・・・

    痛い・・・怖い・・・
    なんで僕はこんなことしてるんだろう・・・
    甘くなったガードを吹き飛ばして、
    中断蹴りが入り、僕は壁際まで吹き飛ばされた。
    だんっ、と壁に叩きつけられ、僕はその場にうずくまってしまう。

    ううっ・・・なんだよ、この子・・・
    こんな危ない子、相手にできないよ・・・

    近づいてくる・・・僕は必死で立ち上がった。
    相手は構えて、たんったんっとリズムをとりながら、
    恐怖心をあおるように、僕に届かない距離で、蹴りをだしてみせる。
    怖い・・・
    あんな蹴りは受けられないよ・・・
    僕はじりじりと後ろへ下がる。
    背中が、道場の壁に触れた。

    「もう逃げ場はないよ〜、なにかしてごらんよ。」
    怖い・・・怖いよ・・・
    近づいてくる相手が怖くて、たまらなくなり、
    両手で相手の足元にすがりつくようしにて突っ込んだ。

    「このっ、邪魔だっ!」
    一瞬頭の中が真っ白になって、吹き飛ばされた。
    すがりついた僕の側頭部を相手の突きがとらえたんだ。
    そのまま蹴りももらって、口の中が血の味がした。サビの味がする・・・。
    ぬぐった袖口に、血の染みができた。
    頭がぼーっとする。

    血だ・・・
    真っ赤だ・・・

    僕、何でここにいるんだっけ?
    なんだっけ?
    何か・・・理由があった気がする・・・
    大事な・・・
    顔を上げると、周りには道着を着た人が大勢いた。

    ・・・そっか、空手部の見学に来て・・・

    悠稀のところにいかなくちゃいけなくて・・・

    彼女の役に立ちたくて・・・

    そばにいるのにふさわしい人になりたくて・・・

    それで、僕は・・・

    意識がはっきりとしてくる。

    「つまらないね、そんな情けない戦い方しかできないんなら、
    さっさと終わりにしよう。」
    赤髪の子がそう言いながら近づいてきた。
    僕は立ち上がってぐっと、拳に力を込める。

    大丈夫だ・・・、手も足も動く。
    顔を上げて、相手を見据える。
    そこに立っていたのは、僕より少し幼い感じの、赤い髪の女の子だった。
    今までこわばっていた全身から、すっと、力が抜けていくのがわかる。

    僕には、目指すものがあって・・・
    あの人にふさわしいやつになりたいから・・・

    こんなところで、止まれない。


    頭を狙って、こめかみ、顎と突きが入ってくる。
    ガードしたまま、わざと一歩踏み込み、ヒットポイントをずらす。
    相手が息をつくために引いたその瞬間、右の掌底を胸へ叩き込む。
    一瞬、相手の動きがとまる。
    そのまま懐へ入ると、袖を掴み、一本背負いで投げる。

    だんっ・・・と大きな音が道場中に響く。
    そのまま相手は動かなくなった。

    掌底自体には、そんなにダメージはなかったかもしれないけど、
    あのタイミングで入れると・・・
    一瞬息が止まって、動けなくなるんだよね・・・
    そんな状態で投げられたら、受身も取れないし、
    全身に衝撃がはしって、しばらくは起き上がれないだろう。


    あとは、部長か・・・
    僕は、部長の前に立つ。
    そしてそのまま膝をつき、床に両手をつける。
    「ご指導ありがとうござしました。」
    頭をさげる。
    「とても、ハードな練習で、やっぱり僕にはやっていけそうにはありません。
    今日はこれで失礼します。」

    部長は唖然としたみたいで、固まったまま何も言わずにいる。
    そのまま立ち上がり、道場を出ることにした。
    他の部員達も、遠巻きに僕を見ているだけで、何もしてこなかった。

引用返信/返信 削除キー/
■16051 / inTopicNo.62)  駄犬のつぶやき
□投稿者/ チョビ ちょと常連(57回)-(2006/08/21(Mon) 04:37:09)
    や、やっぱり・・・戦闘シーンは無理でした〜(T-T)
    話の都合上、あったらいいな〜と思ってたのですが、
    自分の力不足を再認識・・・
    やっぱ駄目です(=_=;)
    できることなら一行で終了にしたかったです(=_=;)

    読んでくださる方がいらしたら・・・
    意味不明で本当に申し訳ありませんm(_ _)m
引用返信/返信 削除キー/
■16052 / inTopicNo.63)  僕の居場所39
□投稿者/ チョビ ちょと常連(58回)-(2006/08/21(Mon) 04:44:40)
    う〜・・・蹴られたお腹が痛い・・・切った口の中も痛い・・・

    それにしても、怖い子だった・・・
    上手く投げたつもりだけど、大丈夫だったかな・・・
    できることなら、もう相手にしたくないかも・・・。

    今日は悠稀が退院だから迎えにいくつもりだったのに、
    これじゃあどっちが病人だかわかんないや・・・。
    この時間じゃ、もうコテージに帰ってきちゃってるよね、きっと・・・。

    考えことをしながら、フラフラとコテージに向かって歩いていたら、
    後ろから呼び止められた。
    「おいっ、待て。」
    げっ・・・さっきの子じゃないか・・・ま、まだやろうっていうのかな・・・。

    「なんで、手を出さなかったんだ。
    あんな部長、あんたなら簡単に叩きのめせたじゃないか。」
    いらついた口調で、僕をにらみつけてくる。

    よかった〜、続きをしようって感じじゃなさそうだ。
    ダッシュで逃げる必要はなさそうだ。
    それにしても、ちゃんと歩けるようで、よかった。
    「あっ、大丈夫だった?頭とかふらつかない?」
    怪我させるつもりはなかったけど、
    この子は強かったから、たぶん本気で相手しちゃっただろうし、
    怪我させないようにとか考えてる余裕なかったからな〜。

    「質問に答えろっ!」
    近づく僕を振り払って、その子が言う。
    「えっ、あ〜・・・」
    部長と組み手をしなかった理由か・・・ん〜・・・
    「だってさ・・・殴られたら痛いだろ。」
    当たり前のことだけど、言ってみた。

    「はぁ?」
    その子はきょとんとした顔をしている。
    僕、変なこと言ったかな?
    だって殴られたら痛いし、
    好き好んで痛い思いはしたくないと思うんだけど。
    だから別に、僕が部長を殴る必要はないじゃん?

    立ち止まって考えてるその子をあとに、僕は悠稀のいるコテージへ向かった。
    きっともう、帰ってきちゃってるだろうから、急いで帰らないと。
    空手部ちょっとのぞいたら、
    荷物とか運びに悠稀を迎えにいくつもりだったのにな〜。

    「あっ、そうだ。」
    振り返ってその子に言う。
    「めまいとか頭痛とかしたら、病院行った方が良いよ、じゃあねっ!」

    さて、コテージに帰ろう。

引用返信/返信 削除キー/
■16053 / inTopicNo.64)  僕の居場所40
□投稿者/ チョビ ちょと常連(59回)-(2006/08/21(Mon) 05:01:15)
    コテージに戻ると、思ったとおり、悠稀は帰ってきていた。

    「あの、ごめん。
    せっかく今日退院なのに、行けなくて・・・荷物とか大変だったでしょ?」
    荷物もちくらいしか役に立たないのに、申し訳ない。
    僕はひたすら頭を下げた。

    「いいのよ、江利子さんが手伝ってくださったから。」
    悠稀はそういってくれたけど・・・
    「それより天、あなたこそどうしたの?怪我、してるんじゃないの?」

    「あっ、へっ?」
    確かに服はボロボロで、汚れてるし、
    鏡を見てないからわからないけど、顔もはれてるかもな・・・

    「いや、これはちょっと慌てて、土手から落っこちて・・・
    ちょっとぶつけたりすりむいたりしただけで・・・」
    無理があるかな〜・・・上手く言い訳できないし。
    でも空手部であったことなんて言ったら、
    きっと悠稀に余計な仕事が増えるだけだろうから・・・

    「天・・・」
    悠稀は納得いかない顔をしていたけど、ここは押し切るしかない!

    「大丈夫!大丈夫!全然大丈夫だから。どじだよね〜僕、はははっ〜。」
    無理やり笑って見せると、悠稀は諦めたようにため息をついた。

    「そう・・・でも、傷の手当てくらいした方がいいわ。」
    そういって、僕が断るのも聞かず、消毒をしてくれた。
    やっぱり迷惑かけちゃってるや・・・

引用返信/返信 削除キー/
■16054 / inTopicNo.65)  僕の居場所41
□投稿者/ チョビ ちょと常連(60回)-(2006/08/21(Mon) 05:16:01)
    次の日、体中が痛くて、朝早く目が覚めた。
    うう〜・・やっぱり無理したんだ。
    昨日寝る前に悠稀がくれたアイスノンのおかげで、
    顔の腫れはほとんどひいてるみたいだけど、
    体の芯がぎしぎしいってる・・・。

    やっぱり少し、普段から鍛えておかないと駄目だな・・・
    今日は学校休んで部屋で寝ていたい気分だけど、そうも行かないし・・・
    う〜ん、こうなったらさっさと学校へ行こう。

    そのまま身支度を整える。
    悠稀と一緒に行ってもよかったけど、
    また余計な迷惑かけなくないから、やっぱり先に行こう。
    僕は一足先に学校へ出かけることにした。


    「おはようございます、神崎さん!」
    コテージから学校へ続く道で、昨日のあの子が立っていた。
    「えっ、あっ、おはよう。昨日は大丈夫だった?」
    そう問いかけると、いきなりあの子は僕の目の前で膝をついて・・・
    えっえっ・・・これって土下座じゃないのか・・・

    「昨日は自分の身の程もわきまえず、神崎さんには大変失礼をしました。
    申し訳ありません。」
    深々と頭を下げてくるあの子。
    えっえっ・・・何やってるんだよ。

    「えっ、ちょっと、なにやってんだよ、立って立って・・・」
    うわ〜・・・誰も見てないからいいけど、
    こんなとこ見られたらまたどんな噂が立つか・・・。

    「じゃあ舎弟にしていただけるんでしょうか?」
    立ち上がったあの子が嬉しそうに僕を見つめて言う。
    しゃてい・・・舎弟?
    「いや、あの・・・舎弟って、やくざさんじゃないんだから・・・」
    この子って一体・・・ここはお嬢様学校じゃなかったっけ?

    「殴られたら痛いなんて教えていただけたのは、神崎さんが初めてです。
    惚れました、お願いします!」
    立ったままで、今度は90度の最敬礼をしてくる。

    うわ〜・・・やめてくれよ〜・・・
    ぽつぽつと、ほかの生徒が登校しだす時間で、遠くのほうに人影が見える。

    「いや、そんなこと言われても・・・」
    「お願いします、神崎さんの下で使ってやってください。なんでもします!」
    再びあの子は土下座をしようとする。
    だぁ〜!!!だから、そういうことは、目立つからやめろって言ってるのに!

    「わっ、わかった、わかったから、ちょっと立って。」
    「ありがとうございます!」
    嬉しそうにあの子が立ち上がる。
    って・・・僕はどうしたら良いんだ?

    「とりあえずさ、やくざさんじゃないんだから、舎弟はやめようよ。」
    僕の提案に相手は不満そうだ。
    「でも・・・」
    相手の声をさえぎって言う。
    「だって、舎弟って具体的に何するの?」
    「それは・・・神崎さんの下で使っていただいて、
    神崎さんの言われたことなら何でもします!」
    う〜ん・・・なんでもって言われても・・・困った・・・

    「それならさ、先輩後輩とかでも良いだろ?ねっ?」
    まだ納得のいかなそうな顔をしているあの子に、
    僕はなんとか早く話題にけりをつけようと話し出した。

    「ねっ、じゃあ、今日から君は僕の後輩、よろしく。
    そういえば、まだ名前も聞いてなかったね、君の名前は・・」
    僕が名前を聞こうとすると、その子は慌てたように、
    今度は片膝をついて話し出した。
    「これは大変失礼いたしました。
    自分は白川晶と申します。生まれは京都で・・・」

    延々と・・・
    ホームルームの予鈴がなるまで、
    僕はそのまま白川晶さんの自己紹介に付き合わされてしまった・・・

    もちろん、登校する大勢の生徒の注目を浴びて・・・。

引用返信/返信 削除キー/
■16094 / inTopicNo.66)   僕の居場所41 チョビさんへ☆
□投稿者/ ゆらら 一般♪(24回)-(2006/08/23(Wed) 15:38:55)
    更新される度に読んでます☆

    なんか舎弟も出来ちゃって一瞬、武闘派物?(漢字合ってるかな?)
    かと錯覚しちゃいそうになりました(笑)☆「僕」と「悠稀」の関係の
    なかなか進まない空回りぶりが、もどかしくて切なくて可愛くて
    つい応援したくなっちゃってます☆

引用返信/返信 削除キー/
■16117 / inTopicNo.67)  ゆららさん
□投稿者/ チョビ ちょと常連(61回)-(2006/08/25(Fri) 09:22:57)
    嬉しい感想ありがとうございます。

    武闘派物・・・読むのは好きなんですが、書くのは・・・難しいです。
    個性的なキャラクターをいろいろ出せたらいいな〜と思っているのですが、
    そのせいか、肝心の天と悠稀の関係が、ちっとも進みません(汗)
    大体、主な登場人物もそろってきたので、
    少しずつ関係を進めていきたいと思います。

    でも、あと一人出したいキャラが・・・(^^;)

    楽しい小説が書けるように精進しますので、今後ともよろしくお願いします。


引用返信/返信 削除キー/
■16312 / inTopicNo.68)  チョビさんへ☆
□投稿者/ みぃ 一般♪(10回)-(2006/09/04(Mon) 00:44:31)
    更新楽しみにしてます
    忙しいとは思いますが、頑張ってくださいm(__)m

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16320 / inTopicNo.69)  みぃさん
□投稿者/ チョビ ちょと常連(62回)-(2006/09/05(Tue) 12:47:25)
    レスありがとうございます。

    前回の更新で、天と悠稀の二人の出番があまりに少なかったので、
    今度こそ!と思ってはいるのですが・・・
    なかなか区切りの良いところまで出来上がりません(^^;)
    ぼつぼつ書いてはいるので、呆れずにお待ち下さい。

    久しぶりに覗いたら、自分の板が上がってて、びっくり。嬉しかったです。
引用返信/返信 削除キー/
■16359 / inTopicNo.70)  僕の居場所42
□投稿者/ チョビ ちょと常連(65回)-(2006/09/10(Sun) 07:59:44)
    「ごきげんよう、神崎さん。」
    昼休み、廊下を歩いていると、見知らぬ上級生らしい人から声をかけられる。

    「天君、生徒会室行くの?頑張ってね〜。」
    クラスメイト・・・?じゃないよね、誰だろう?


    最近僕の周りが騒がしくなった気がする。
    転校して時間が経ったっていうのもあるのかもしれないけど、
    休み時間や放課後に話しかけられることが多い。
    クラスの人以外にも、他のクラスや学年の全然知らない人からも声をかけられる。

    悠稀や晶と話してることが多いからかな〜。
    あの二人に比べれば、僕の方が話しかけやすいだろうし。
    良いことなのかもしれないけど、
    知らない人から親しそうに話しかけられて戸惑うことも多い。


    あの日、朝の舎弟宣言から何とか逃げ出した僕は、
    白川晶さんのことを麻衣子に聞いてみた。
    それまで全然知らない子だったから、どんな子なのかな〜と思って。

    麻衣子が言うには、う〜ん・・・庶民で言うところの、不良ってやつらしい。
    エスカレーター式のこの学園に、高等部から編入してきたらしいけど、
    授業とかもあまり出てないって。
    「中等部までは京都校にいたらしいけど、なんか傷害事件を起こして、
    こっちに転校してきたって噂もあるわ。
    だから、周りからは怖がられて、一目置かれてる。
    まあ、よくいる不良っていう部類なのかもしれないけど、
    うちみたいなお嬢様学校じゃ浮いてる存在ね。」
    そんなふうに麻衣子は教えてくれた。
    僕が知らなかっただけで、かなりの有名人らしい。

    そんな白川さんを舎弟にしたって噂は、瞬く間に学校中に広まって、
    ことあるごとに白川さんのことを聞かれる。
    でも、噂ほど怖い子じゃなかった。
    確かに、本気で喧嘩はしたくないな〜とは思う相手だけど、結構素直だと思う。
    晶って言う呼び方は、最初は白川さんって呼んでたけど、
    舎弟をそんな呼び方しないって白川さんに怒られて、晶になった。
    変なところで頑固な子だ。

    さて、早く行かないと昼食の時間がなくなってしまう。
引用返信/返信 削除キー/
■16360 / inTopicNo.71)  僕の居場所43
□投稿者/ チョビ ちょと常連(66回)-(2006/09/10(Sun) 08:25:37)
    「球技大会?」
    昼休み、生徒会の仕事を手伝うってことで、
    生徒会室で食事をしているときに、悠稀に話しかけられた。

    「ええっ、生徒会主催での催し物はいくつかあるのだけれど、
    毎年この時期は球技大会をするの。」
    そっか〜、いろんなイベントがあるんだね。

    「へえ〜、球技大会って、バスケとか?」
    「バスケもそうだし、バレーや卓球、ソフトボールやサッカーなんかもあるわ。」
    サッカーもあるんだ〜、いろいろやるんだな〜。
    「ふぅ〜ん・・・、でもそうしたら、
    同じ部活やってる人が強いんじゃないのかな?」
    「そうなのだけれど、各チーム、
    自分が所属している部活の種目に参加できるのは一人だけなの。」
    悠稀が説明してくれる。

    「じゃあ、一人だけバスケ部で、
    ほかの4人は違う部活じゃないと駄目ってこと?」
    「そうなの、やっぱり全員バスケ部でバスケチームを組んだから、
    簡単に優勝できてしまうでしょ?」
    確かに・・・

    「それもそうだね。で、球技大会の仕事を手伝えばいいのかな?」
    僕にできる事なら、どんな雑用でも手伝って、役に立たないと。

    「準備もだけれど、是非あなたにも種目に参加して欲しいの。
    大勢の人が参加することが生徒会活動としては重要なの。」
    意外な申し出に、僕はちょっと驚いた。

    「ふぅ〜ん・・・そっか、どの種目でもいいの?
    じゃあバスケにしようかな〜。」
    スポーツするのは結構好きだし、デュークと一緒にやったっけ。
    あっ、もちろんデュークはシュートはできないけど、
    なかなかディフェンス上手いんだよ。

    「そしたらメンバー5人誘わないといけないんだね。」
    「そうね、できるだけ大勢の人に参加して欲しいのだけれど。」
    悠稀の役に立つなら、何でもしたい。
    「うん、じゃあ、声かけてみるね。」

    ちょうどそこに江利子さんが入ってきた。
    「失礼します。お食事中お邪魔して申し訳ありません。」

    僕らが昼休みに生徒会室にいると、
    ときどき江利子さんが書類とか報告をしに来るけど、
    いつもすぐに帰っちゃうんだ。
    生徒会の仕事できてるんだから、邪魔なのは僕のほうなのに・・・。

    あっ、そうだ。
    「江利子さん、球技大会一緒にバスケやりませんか?」
    「えっ、私がですか?」
    江利子さんは驚いたような顔をしている。

    「しかし、私は執行部としていろいろとやることが・・・」
    そういって遠慮がちが江利子さんに、悠稀が声をかける。
    「良いじゃない、江利子さん。
    事前に準備を確認しておけば、当日は各種目の責任者に任せても。」
    ニコニコと、悠稀は楽しそうだ。

    「それは・・・不可能ではありませんが・・・」
    う〜ん・・駄目かな〜?
    「たまには参加する側になってみるもの必要だわ。」
    悠稀がもう一押ししてくれた。

    「わかりました。やらせていただきます。」
    江利子さんが承諾してくれた。
    「やった!じゃあ、まず一人目ね〜。」


    昼休み終了の予鈴がなったので、僕と悠稀は教室に戻ることにした。
    廊下で晶とすれ違う。
    なんだか荷物を抱えている。

    「あれっ、晶、午後は?」
    「あっ、神崎さん。午後は美術で外で絵を書くらしいです。
    まったく、こんな良い天気なのに写生だなんて、ふけちまおうかな。」
    何かと理由をつけて晶はすぐ授業をサボろうとする。

    「こらこら、ちゃんと授業に出なさい。」
    「神崎さんがそういうなら、出ますけど。」
    こういうところが、子供というか、素直だなって思う。
    本当に嫌なら、無理に出ろとは言わない。
    「そうだ、晶。お願いがあるんだけど。」
    「はいっ、わかりました。」
    返事早いな〜。

    「って、まだ言ってないけど・・・」
    「神崎さんの命令なら、聞くまでもありません。」
    だから、こいつは〜・・・命令じゃなくて、頼みごとなんだけどな〜

    「球技大会、僕と一緒にバスケに参加しない?」
    「・・・バスケ・・・ですか・・・」
    あれっ、黙っちゃった。バスケ嫌いなのかな。

    「あっ、別に、無理にとはいわないから、他に予定があれば良いんだけど・・・」
    「いえ、神崎さんがおっしゃるのなら、よろこんでやらせてもらいます。」
    承諾してくれたけど、あの一瞬の沈黙はなんだったんだろう?

引用返信/返信 削除キー/
■16361 / inTopicNo.72)  僕の居場所44
□投稿者/ チョビ ちょと常連(67回)-(2006/09/10(Sun) 08:51:58)
    次の日。
    今日は生徒会室には行かずに、昼食は屋上で麻衣子と。

    「ねえ、球技大会ってさ、大勢参加するの?」
    ハムサンドをほおばりながら僕が尋ねる。
    「球技大会?あっ、そっか、神崎は今年が始めてだもんね。」
    そういって、麻衣子は球技大会の説明をしてくれた。

    「生徒の自主性を高めるためと、
    スポーツ推進のために生徒会が毎年行ってるんだけど、
    ここ数年で、参加者が急増してるの。
    普段は交流のない他の生徒と知り合える機会でもあるし、
    なにより、優勝したチームには、特権があるの。」
    そこで、麻衣子は紙パックのイチゴ牛乳を一口飲む。

    「特権?」
    「そう。デート券。」
    「・・・は?・・・デート?」
    意味がわからず固まってしまった僕の方を見て、麻衣子は補足してくれた。

    「まあ、デートというには御幣があるのかもしれないけど。
    何年か前に、球技大会で優勝したチームの一人が、
    ずっと思っていた先輩にデートを申し込んで、
    両思いになったってことがあったの。
    それ以来、優勝チームは
    憧れの人なんかにデートを申し込むのが風習みたいになってるの。」
    特権がデートって、一体・・・

    「・・・はぁ。でも別に、優勝とかしなくたって、
    普通に声をかければいいんじゃないの?」
    僕はそう思うんだけど・・・。
    「まあ、お互い身近な存在だったら、声もかけやすいけど、
    クラスや学年が違ったりして、
    いつもはこっそり盗み見るしかない生徒にとっては、
    憧れの先輩に声をかける大義名分になるわけよ。」
    ん〜、芸能人に憧れる感覚とかなのかな〜

    「ふぅ〜ん・・・それでそんなに参加者が増えるの?」
    ハムサンドが終わったので、コーヒー牛乳を飲みながら聞いてみた。
    「生徒会も、公にはそんなことはかかげていないけど、、
    優勝者からデートを申し込まれて、生徒会で断った人はいないし。」
    「デートね〜」
    ほとんど面識ない人と、そういうことをして、上手くいくものなのかな〜。

    「まあ、デートといっても、必ずしも一日デートをするわけじゃないし、
    一緒に映画に行ったり、食事をしたりするのがほとんどだけど。」
    それくらいならなんとかなるのかな〜。
    二人して、フェンスによりかかって、
    紙パックのジュースを飲みながら、話を続ける。
    「ふぅ〜ん・・・憧れの先輩と遊びにいけるっていうわけか・・・」

    「ちなみに、去年は優勝者の8割が宮嶋さんにデートを申し込んでたから。」
    「は?悠稀に?」
    8割が悠稀にって・・・

    「多分今年もそうじゃないのかな〜」
    「でも、そんなに大勢に付き合うなんて、悠稀も大変だね。」
    一体何人とデートしたんだろう?

    「そうね、30人以上いたから。
    昼休みに一緒に昼食をとるってことで、一ヶ月くらいかかってたわ。」
    30人・・・悠稀も大変だろうけど、そんなに大勢希望する人がいるんだ・・・
    それじゃあ、優勝商品は悠稀とのランチ券ってことだよね。
    それで、参加者が増えるなんて・・・いろんな意味ですごいと思う・・・

    「昼休みに一緒に食事か・・・」
    そんなことなら、僕は何回も優勝しなくちゃいけないんだろうな。

    「ねえ、じゃあさ、麻衣子も球技大会に参加しない?
    僕と一緒にバスケやろうよ。」
    詳しく説明してくれた麻衣子に声をかけた。

    「えっ・・・う〜ん・・バスケか・・・そうね・・・」
    駄目かな〜?
    「勝算はあるの?」
    麻衣子が僕のほうを振り向いた。
    「勝算・・・わかんないけど、僕はバスケ好きなほうだし、
    あと江利子さんと晶も参加してくれるって。」
    「そう・・・いいわ。」
    やった!オッケーだ。
    「ありがとう、麻衣子」

    麻衣子はうつむいていた顔をぱっと上げて立ち上がった。
    「参加するからには、絶対優勝をいただくわっ!
    記者歴10年で培ったこの運動神経と情報網を駆使して、
    なんとしても優勝して見せる!
    早速偵察に行かないと!」
    そういうと、麻衣子は僕を置いて行ってしまった・・・。
    記者歴10年って麻衣子・・・

    なんだか・・・すごくやる気にさせちゃったみたいだけど・・・まっ、いいか。
    僕も残ったコーヒー牛乳を飲み終わると、立ち上がった。

    さて、バスケは5人だからあと一人、誰を誘おう。

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■16362 / inTopicNo.73)  僕の居場所45
□投稿者/ チョビ ちょと常連(68回)-(2006/09/10(Sun) 08:59:48)
    クラスに戻って、クラスメイトに声をかけてみたけど、
    他の種目に参加する人や、別にチームを組む人が決まってる人ばかりで、
    5人目が見つからなかった。

    そうだよな〜・・・
    大体こういうのって、仲が良い子同士が集まるんだろうし・・・。
    転校してまだそんなにたってないから、
    クラスの人以外に知ってる人ってあまりいないし・・・。

    クラスメイト以外っていったら・・・空手部の部長・・・

    ・・・絶対却下だな。

    一瞬考えたけど、すぐに頭から振り払った。
    あの人が僕と同じチームでバスケしてくれるとは思えないし。
    他、誰かいないかな〜・・・


    放課後、生徒会の仕事少し手伝ったあと、
    デュークと一緒に夜の学校に散歩に来た。
    夜は人もほとんどいないし、静かだから、散歩するのにはちょうどいい。

    あれっ、体育館、まだ明かりがついてる。
    覗いてみると、いつか見かけたロングヘアのすらっとした女の子が、
    ボールをついていた。
    こんなに遅くまで、シュート練習してるんだ。

    「デューク、ちょっとここで待っててね。」
    僕はそういうと、靴を脱いで体育館に上がった。
    スリーポイントシュートをしようと、構えている子に話しかける。

    「こんばんは、こんなに遅くまで、練習熱心なんだね。」
    僕がそういうと、その子はびっくりしたように僕を振り返った。
    練習に集中してたみたいで、話しかけられるまで気がつかなかったみたいだ。

    「あっ、あの・・・このことは内緒にしててください。」
    急にその子は僕のそばに駆け寄ってくると必死の形相でそういった。

    「えっ、内緒って・・・
    こんなに遅くまで練習してるんだから、
    少しくらい部活の人に自慢しても良いと思うよ。シュートも上手いし。」
    僕がそういうと、その子は俯いてしまった。
    ?・・・僕何か悪いこといっちゃったかな。

    「私・・・バスケ部じゃないんです・・・」
    消え入りそうな声で、その子はつぶやく。

    ん〜・・・バスケ部じゃないのに、こんなに遅くまで練習してるんだ。
    上手なのにもったいないな〜。
    あっ、そうだ。

    「ねえ、君、もしよかったら球技大会、僕と一緒にバスケやらない?
    それとも、もう他のチームに決まっちゃったかな?」
    そういったら、その子は驚いたように顔をあげた。

    「いえ、そんなこと・・・でも、そんな・・・私がバスケなんて・・・」
    やった、まだ他のチームに決まってないみたいだ。

    「君、バスケ好きでしょ?僕もバスケ好きだから、一緒にやろうよ。」
    なぜだか彼女は顔を真っ赤にして、僕の方をじっと見つめてくる。
    ん〜・・・やっぱり嫌なのかな・・・。

    「あっ、あの、今すぐに決めなくてもいいから、
    ちょっと考えてみてくれれば・・・」
    無理やりはよくないよね、本当は嫌だけど、断れないのかもしれないし・・・

    「じゃあ、考えといて。」
    そういって僕は帰ろうと歩き出した。
    あんまりデュークを待たせると、怒っちゃうかもしれないし。

    「あっ・・あの・・・」
    後ろから呼び止められた。
    あれっ、なんだろう?

    「バスケ・・・やりたいです・・・。」
    彼女はやっぱり顔を真っ赤にしたまま、
    搾り出すような小さな声で、僕に言ってきた。
    これは、オッケーってことでいいのかな。

    「うん、じゃあ一緒にバスケやろ。楽しみだね。」
    そういって、僕は彼女に簡単な自己紹介をした。
    何度か見かけたけど、お互い名前も知らなかったしね。
    同じチームを組む仲間としては、いろいろ話さないと。
    それに、この子人見知りしてるみたいだから、早く慣れてもらわなくちゃ。
    そう思って話をしていたら、かなり時間が経っちゃったみたいだ。

    春日詩織か・・・よし、覚えたぞ。
    「じゃあ、しいちゃんね。」
    人見知りしてるから、愛称でもあったほうが良いかなと思って、
    そう呼ぶことにした。嫌そうな反応もないし、しいちゃんの方が、呼びやすい。

    「あっ、あの、よろしくお願いします、天先輩。」
    一年生の彼女は、僕のことをそう呼ぶ。
    普通に名前で呼んでくれても良いんだけど、
    下級生から呼び捨てなんて、こういう学校じゃ無理なんだろうな。

    体育館から出ると、デュークが体当たりきた。
    「ごめんごめん、かなり待たせちゃったね。」
    謝りながら、飛びついてきたデュークを抱きしめる。
    「でも、これで5人そろったぞ〜、よかった。」

    さて、早く帰って悠稀にメンバーがそろったことを伝えなくちゃ。

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■16363 / inTopicNo.74)  駄犬のつぶやき
□投稿者/ チョビ ちょと常連(69回)-(2006/09/10(Sun) 09:07:24)
    天と悠稀の出てくる、区切りの良いところまで・・・と思ったのですが、
    あまりに長くなりすぎて・・・無理?(汗)
    精進したいと思います。

    読者様がいらしたら・・・長らくお待ち下さい<(_ _)>
引用返信/返信 削除キー/
■16381 / inTopicNo.75)   駄犬のつぶやき    またぁ〜チョビさんはご謙遜さんですね・・☆
□投稿者/ ゆらら 一般♪(41回)-(2006/09/11(Mon) 08:57:25)
    ゆっくりと楽しみながら、次を待っていますので☆
    チョビさんのペースで天ちゃん&悠稀ちゃんを
    小説の中で好きなように遊ばせてあげて下さいねっ☆

    ん〜、天ちゃんのデートシーン、見たかったりして・・☆
引用返信/返信 削除キー/
■16717 / inTopicNo.76)  ひさしぶりw
□投稿者/ T 一般♪(1回)-(2006/10/04(Wed) 13:31:59)
    しばらく見てなかったけど、だいぶ前に更新してたんだね^^
    今回もまた楽しく読ませてもらったよ^^

    やっと涼しくなってきたけど、温度差が激しいので風邪をひかないようにねー^^
    って・・・私はどうも鼻風邪ちゃんになったようです・・・ノフ○

    続きを楽しみにしてるよ〜♪
引用返信/返信 削除キー/
■17163 / inTopicNo.77)  駄犬のつぶやき
□投稿者/ チョビ 一般♪(1回)-(2006/11/04(Sat) 03:01:47)
    久しぶりすぎて・・・話が(爆)
    いろいろと忙しくてかなり放置してました。
    レス頂いたゆららさん、Tさんありがとうございます。
    途中までしか出来てませんが、
    このままだと書くのをわすれてしまいそうなので、
    とりあえず適等にアップです(^^;)

    ラブラブには程遠く、悠稀が出てきませんが・・・。
引用返信/返信 削除キー/
■17164 / inTopicNo.78)  僕の居場所46
□投稿者/ チョビ 一般♪(2回)-(2006/11/04(Sat) 03:10:17)
    球技大会当日、朝から生徒達はジャージに着替えて、がやがやしている。
    おそろいのハチマキなんかして、すごく気合の入ってる人たちもいる。
    クランドで開会式が行なわれたあと、僕らはバスケだから、体育館に向かった。

    まずは予選。
    「最初のチームは、バスケ部もいないし、
    単に仲良しグループがあつまっただけだから、楽勝で勝てるはずだわ。」
    麻衣子が自信満々にそういった。
    いや、でも、僕らもこのメンバーでバスケやるのって初めてなんだけど・・・。

    試合開始のホイッスルがなって、
    最初のジャンブボールは僕がすることになった。
    思いっきりジャンプして、麻衣子のほうへ落とす。
    麻衣子はそのままドリブルで切り込んで、レイアップシュート。
    おおっ、上手いじゃん。
    さすが優勝狙うと豪語するだけのことはあるな〜。

    そのあとも、麻衣子は大活躍だった。
    それに他のメンバーも。

    しいちゃんは思ったとおりスリーポイントシュートが上手で、
    前半だけで、21点もあげている。
    麻衣子はすばしっこい動きで相手を翻弄してるし、
    江利子さんは落ち着いたパス回しで、的確にチャンスを作ってくれる。

    なんとなく誘ったメンバーだけど・・・すごい、強いかも、このチーム。
    僕も2回シュートをきめた。

    「神崎っ!」
    センターライン上にいる麻衣子からバックパスをもらう。
    ええっと・・・、ここからじゃシュートには遠いし、
    そうだ、晶は?
    左サイドのゴール近くにいる。よしっ。

    「晶〜」
    ちょっと長いロングパスだったけど、無事に届いた。
    さあ、晶、そこからドリブルシュートだっ。

    晶はボールを握ったまま、一歩踏み出して
    ・・・二歩・・・三歩・・・えっ・・・。
    「ピィピィ〜!トラベリング!」
    審判のホイッスルが響き渡った。

    「ちょっとあんた何やってんのよ、せっかくのチャンスを!」
    麻衣子が晶に食って掛かっていた。
    晶はうつむいている。
    「ちょっと、麻衣子、いいじゃん。
    急にボールがきて、そういうことだってあるよ。」
    僕がなだめると、しぶしぶ麻衣子は引き下がった。

    相手ボールから始まったけど、リバンドをとると、もう一度晶へパス。
    さっきの汚名返上だっ。
    晶は受け取ったボールをドリブルしてゴールへ・・・ドリブル・・・

    「なぁ〜にやってんのよっ!」
    麻衣子の怒鳴り声が聞こえる。
    確かに、晶はボールをついて動いてはいるけど・・・
    あまりにスローというか・・・歩いているより遅くて、
    ボールも上手く定まってないし・・・
    あっ・・・自分の足にボールを当ててしまい、
    相手チームの足元に転がって行った。
    そのまま相手チームのゴール。

    「あんたねっ!いい加減にしなさいよっ!やる気あるの!」
    怒り狂った麻衣子が怒鳴り込んでいる。
    「何よ、今の。あんなの幼稚園児でもやらないわ!」

    「仕方ないだろっ!やったことないんだからっ!」
    晶が怒鳴り返している。えっ・・晶、バスケ初めてなのか・・・。
    「やったことないって、小学校でも中学でもバスケくらいやるでしょっ!
    まったくこんなに度下手なんて、みんなの足を引っ張らないでよ!」
    麻衣子、そこまで言わなくても・・・。
    「なんだと、お前!人が大人しくしてればいい気になりやがってっ・・・」
    晶が麻衣子に掴みかかる。

    「ちょっ、ちょっと待ってよ。晶も麻衣子も落ち着いて。」
    慌てて僕は間に入ると、二人を引き離した。
    「こんなに足を引っ張るやつと一緒に試合なんてできないわっ!」
    麻衣子が切り捨てるようにいう。
    「ちょっと待ってよ、麻衣子。バスケは5人でやるものなんだから・・・」
    僕がなだめると、麻衣子は少しだけ冷静さを取り戻してくれた。

    「いいわ、仕方ないからメンバーに入れてあげるけど、
    私達の邪魔にならないようにコートの隅にでも立っててよね。」
    そういって、麻衣子は試合に戻ろうと踵を返す。

    「いわれなくてもそうしてやるよっ!」
    晶は顔をしかめると、踵をかえして、コートの端の方へ行ってしまった。

    「さあ、あんなお荷物は置いといて、一気に攻めるわよ。」
    麻衣子がそういうと、試合が再開された。

引用返信/返信 削除キー/
■17165 / inTopicNo.79)  僕の居場所47
□投稿者/ チョビ 一般♪(3回)-(2006/11/04(Sat) 03:14:01)
    そのあとも麻衣子の活躍で、僕らのチームが勝ったけど、
    なんだか・・・後味の悪いゲームだった。
    試合終了と同時に、晶はどこかへ行っちゃったし。

    「麻衣子・・・いくらなんでもああいう言い方はないんじゃないかな。
    仮にも同じチームなんだから・・・」
    試合後、麻衣子に話しかける。
    「私だって、多少バスケが下手なくらいじゃあそこまで腹が立ったりしないわ。
    でもあいつは、バスケやったことないとか言っちゃって・・・
    今まで生きてきたら、学校でバスケくらい何度もやるでしょ!
    そういう風に嘘ついてごまかすのが気に入らないの!」
    麻衣子も退く気はないみたいだ。

    「まあ・・・確かに・・・そうだけど・・・」
    でも晶をバスケに誘ったとき、
    そういえばすごく考え込んでる風だったし・・・。

    「あっ、あのっ・・・」
    遠慮がちに話しかけてきた方を振り向くと、しいちゃんだった。
    「ん?どうしたの?」
    僕が尋ねる。

    「こっ、これは、噂なんですけど・・・
    白川さんって京都校から転校してきて・・・その・・・
    前の学校では、あんまり授業とか出てなかったみたいで・・・
    だから、あの・・・もしかしたら本当に、バスケットやったことないのも・・・」
    しいちゃんの話に、僕はちょっと戸惑ってしまった。
    麻衣子の方を見ると、彼女もばつの悪そうな顔をしている。

    「僕ちょっと、晶を探してくるね。」

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■17166 / inTopicNo.80)  僕の居場所48
□投稿者/ チョビ 一般♪(4回)-(2006/11/04(Sat) 03:19:18)
    次の試合には一時間近くある。
    僕は体育館から飛び出すと、晶を探すことにした。

    どこにいるかな・・・
    ほんとにバスケやったことないんだったら、
    僕は無理やり晶を誘っちゃったんだろうな・・・
    どうして断らなかったんだろう・・・僕が頼んだせいかな・・・

    人の多いところにはいないだろうと思って、
    あまり人がいないようなところを探した。

    体育館裏の、ちょっとしたスペースがあるところに晶はいた。
    バスケ部が野外でシュート練習なんかができるように、
    ゴールも設置されてたりする。
    そこで晶は、シュートの練習をしてた・・・。

    ガンッ・・・
    ゴールから大きくはずれたボールが、僕のほうへ転がってくる。

    「ああっ、くっそ!やっぱり入らないな・・・あっ、神崎さん・・・」
    僕と目が合うと、気まずそうに晶は目をそらした。
    「晶・・・」
    僕はボールを拾い上げ、晶に近づく。
    「神崎さん・・・あの・・・すいませんでした。自分が足手まといなようなら、メンバーからはずしてください・・・。」
    うつむいたまま、晶が言う。
    いつもの活発な晶が、ひどく小さく見えた。

    バスケやったこともないのに、僕が頼んだから引き受けてくれたんだよね。
    麻衣子からなんなに罵倒されても、他の観客から笑われても、
    逃げ出さずにコートにいてくれたんだよね。

    「いや、僕の方こそごめん。
    確認もしないで無理やり晶に頼んじゃって・・・
    でも、晶と一緒にゲームに参加したいなと思って・・・」
    晶を少し考え込むように黙った後、口を開いた。
    「・・・わかりました。自分は何もできませんが、試合には参加します。」

    晶・・・
    晶はそういってくれたけど・・・
    何もできないで、コートに立っているっていうのは・・・
    チームメイト以上に、本人がきついはず・・・
    普段は暴れ者で、怖いって一目置かれてる晶が、
    バスケを知らないっていうだけで、
    心無いやつらに中傷されるのは、僕も辛い・・・。
    う〜ん・・・どうしよう・・・

    「そうだ、晶。ちょっと次の試合まで練習しよう。」
    そういって、僕は晶をゴール下まで連れて行く。
    「でっ、でも、神崎さん・・・今更練習したってすぐに上手くは・・・」
    晶はそう言う。
    確かに、ちょっと練習したくらいで、
    全部がすぐに上達するわけじゃないけど・・・

    「僕がボールを投げるから、落ちてきたボール、キャッチしてね。」
    そういって、ボールをバックボードにあてる。
    「はいっ、晶ジャンプしてキャッチ。」
    そう声をかけると、晶は飛び上がってボールとキャッチする。
    「3歩以内にパスして。」
    そういって、僕のほうへパスしてもらう。
    「じゃあ、もう一回ね。
    今度は僕もボールをとろうとするから、晶も僕に取られないようにね。」

    ばんっとバックボードにボールをぶつける。
    僕と晶が同時にジャンプする。
    「ああっ、とられた・・・」
    着地と同時に晶がつぶやく。
    「ジャンプするだけじゃなくて、ボールの位置を考えて。じゃ、もう一回。」
    「はい。」
    がんっ、リバウンドボールに二人してジャンプする。
    うん、晶、位置取りはいいぞ。

    「また僕の勝ち〜」
    ボールを拾えたのは、また僕だった。
    「ああっ〜、難しいっすね。」
    晶はちょっと悔しそうだ。
    「ジャンプする瞬間、体をさばいて、より良い位置取りをしないと。
    体全体で相手にプレッシャーをかけて。」

    再び、リバウンドめがけて二人でジャンプ。
    おおっ、いいぞ、晶がキャッチだ。
    「やったっ!あっ・・・」
    着地の瞬間、晶のボールを奪う。
    「とれても、パスするまで油断しちゃ駄目だよ。
    自分の体を使って、抱え込むようにガードしなくちゃ。」
    僕は晶から奪ったボールを手の上でくるくる回しながら声をかける。

    「くっそ〜、もう一回お願いします。」
    そのまま二人でリバウンドの取り合いをする。
    「そうそう、その調子。
    明らかな蹴りや突きはファールになっちゃうから駄目だよ。
    動作の中でつい接触しちゃうのは仕方ないけど。」

    だんっ・・だんっ・・・
    体育館裏で、バックボードに当たるボールの音が響く。

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