ビアンエッセイ♪

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■15876 / inTopicNo.21)  KTK
  
□投稿者/ エビ ちょと常連(67回)-(2006/08/14(Mon) 09:35:23)
    最近彼女の態度が─




    「聴いてる?」


    「……ん?あーごめん。何?」




    変わり始めている。




    洒落たカフェでも、夕陽が沈み行く海でも。


    それこそ彼女が住む一つ屋根の下であっても。




    「…………。」




    ハッキリ言って上の空。



    元々無口な人なのはわかっているけど…。




    “ごめん、来週の週末、仕事が入ったから”




    どこかおかしい。



    手帳に付けたハートのマークがやけに虚しいよ。




    けど─



    「ねー…」


    「……ん?」


    「なんでもなーい」



    その理由を聞けない私がとにかく一番虚しい。





    なにげなーく。
    “好きな人でも出来た?”


    それか。
    “キーっ!浮気してるんでしょー!”




    聞けたのなら。
    どんなにいいだろう。




    my勘違い?


    realすれ違い?




    ああもう分からなくなる。



    「ねー…」



    でも、


    もし聞けたなら─




    お願いだから笑って誤魔化して。




    そんな器用な事出来る人じゃないのは、


    わかってるけど。




    「んー?」




    最初はネガティブな事なんて考えないの。




    めくられる小説の終わりなんて想像しないの。



    ねぇ。



    あの頃の二人は、
    どこにあるの?





    勘違いでも─


    すれ違いでも─




    もうどっちでもいいから。



    「あのさー…」




    ああやっぱり笑って誤魔化さないで。



    かなり大切な人なんだから。



    私がまだ、
    あなたの中から消えていないのなら。




    「何?」




    ちゃんと聴かせてよ。




    早く抱きしめてよ。




    続きを読ませてよ。




    思い出になんかしたくないんだから。






    私はもう、




    心に嘘がつけないの。









    fin.




    “ktk”
    music by.
    Chrystal kay






    (携帯)
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■15877 / inTopicNo.22)  Rain
□投稿者/ エビ ちょと常連(68回)-(2006/08/14(Mon) 09:37:29)
    今私を襲う沈黙が、
    あなたはもう帰って来ないと教えてくれる。




    “あなたのせいではないから”




    そんな最後の言葉は出来れば聴きたくなかった。




    せめて私が悪者なら。
    せめて嫌われれば。
    罵り最低だと言われれば少しは。







    この雨も惨めではないはずなのに。










    雨に濡れて─




    あなたの事を忘れてしまおう。




    雨に濡れて─




    あなたとの思い出を流してしまおう。




    雨上がる時─




    産まれ変われればいい。









    あれから強引に時間は進んで二年が経ち。


    私は駆け足で何度か恋をしてみたけど。




    ふと思い出す。


    あなたは新しい場所で、新しい人と。


    幸せなんだろうか。










    雨に濡れれば─




    私は口がきけなくなる。




    雨に濡れるたび─




    あなたを思い出してしまう。





    雨に濡れると─





    性懲りもなく愛を綴る。









    ああ。
    雨に濡れてしまおう。










    雨に濡れてしまおう。










    また雨が上がる時。











    産まれ変われればいい。











    fin.







    “Rain”
    music by Aki Angela




    (携帯)
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■15878 / inTopicNo.23)  願いが叶う頃
□投稿者/ エビ ちょと常連(69回)-(2006/08/14(Mon) 09:40:09)
    今さえあれば─


    と思っていたけれど。


    そうじゃなかったみたい。




    あなたとこうしてベッドの中で─



    「……っ」


    「んー…」



    何もかもを脱ぎ捨てて、吐息を絡ませて、全てを重ねている頃。




    あなたが大切にしている─



    あの子はどうしているだろう。




    優しいあなたからの連絡を待ってる?


    それとも嘘に安心に七変化して伝わり済み?



    眠れない夜を越えている真っ最中?




    それとも─




    携帯を握り締めて枕を濡らしてるの?







    でもごめんね。


    私はやっぱり─






    「…離したくない」


    「…………。」






    離したくないの。


    この腕を失いたくないの。私を見つめる優しい瞳、熱い舌何もかも全て。






    だって─


    自分の幸せを願う事は、悪い事ではないでしょ?






    「…もっと強く。痛くしてもいいから」


    「…………。」






    膨張する独占欲。


    あなたに対してのワガママが増えて行く。


    テクニックじゃなくて、ハートで伝えて欲しい。





    例えばあなたが、
    私から離れようとすれば。




    私はあなたを引き止める。


    いつだってそう。





    「……ああ、もう」


    「…愛してるよ。」






    もし私が離れようとするなら。



    あなたも私を引き止める。


    いつだってそう。






    あの子の願いが叶う時。




    私はきっと泣くかな。




    私の願いが叶う時。




    あの子はきっと泣くだろう。








    でももう、全然何も聴こえない─




    だってみんなに必要とされるあなたのたった一人。




    癒せる存在でいいと思っていたけど。




    もう私は我慢出来そうにないの。






    自分の幸せを願う事。


    ワガママではないでしょ?










    みんなの願いは、
    同時には叶わない。













    叶わないんだよ。









    fin.










    “誰かの願いが叶う頃”
    music by.
    Hikaru Utada




    (携帯)
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■15893 / inTopicNo.24)  皆さんへ─
□投稿者/ エビ ちょと常連(70回)-(2006/08/14(Mon) 16:28:38)
    海烏さん─

    いつもありがとうございます。
    このお盆はいかがお過ごしでしょう?
    私、最近気付きましたです。
    読んでるより書いてる方が遙かに暇人じゃねえの疑惑(笑)
    噂の海烏HPできたんですねー。
    お邪魔させて頂きます。
    ってあ、
    ゴホン…。

    ニンニン(笑)


    イクさん─

    お久しぶりで…、
    もありませんね。
    意外に早く現れてしまいました(笑)
    またお会いできて光栄ですイクさん。
    今回は、10話シリーズ+αでもって始めてみました。
    10コ一気に読むとダレちゃいませんか?
    ちと心配ですが…(*_*)
    どうぞ宜しくお付き合いください。

    と…。

    ニーン♪(笑)


    リトルくん─

    ウス!
    鷲掴み?告?
    わーお…。
    相変わらず言葉が軽いなー(笑)
    小説書いてるですか?
    そう言ったからにゃ貼ってもらわねば。
    読ませてもらわねば(笑)
    ちょっと想像がつきませんが、
    我楽再見♪


    アリスさん─

    おっと、もじもじニン発見!
    ありがとうございます。
    ペース…。
    無理はしとりませんよ。
    暇人のなせる行為に他ならないので(笑)
    お楽しみ頂ければ幸いです。

    ニン♪


    のんさん─

    お久しぶりですのんさん。
    ピンポイントで誉めて頂くと嬉しいもんデヘ(笑)
    あれ、重いテーマでは決してなく。
    私の好きな唄からペチったの(ん?)
    大切なフレーズです。
    ありがとうございました。


    ひとみさん─

    夏なのに暑くない??
    …( ̄口 ̄)
    びっくり関西人。
    めちゃめちゃ暑いです、こちらもう大変(笑)
    実家へ帰省、
    そんな方も多い時分ですよね。
    だらっと羽を伸ばしてくださいね♪
    ほいで盆明けの出勤日に大変な思いしちゃってね♪(悪)
    本とですね、
    もうすぐ2●(ピー)歳になってしまいます(笑)
    ありがとうございました。


    ニンニキニ♪




    (携帯)
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■15894 / inTopicNo.25)  想い想われ1
□投稿者/ エビ ちょと常連(71回)-(2006/08/14(Mon) 16:31:20)
    あ。


    あああーー!!!!



    また、
    また。


    また増えてる…。



    がーん(驚愕)




    朝─


    顔を洗いに立った洗面台の鏡の前。


    前髪をピンでとめた私が気付いた悲しい事実。



    また増えてた…、
    のは。



    でこニキビ。



    サーサーと、
    勢いよく蛇口から流れる水。


    私はビオレを手に取り。


    ふわふわふわ…。


    目一杯に泡立てる。


    小鼻、口周り、頬に、そしてデコ。


    クリーミーな泡を肌に滑らせ、優しく包むように洗い。


    (ゴシゴシ洗いはNGだってセブンティーンに書いてた)



    いざ退治。



    消えろアクネ菌めぇぇぇ!



    バシャーン─
    (水かける)




    ふぅ…。


    ナメるなよアクネ菌。


    私のオデコで増殖を続けようなんざそう簡単に許されると思ってもらっちゃ困るってもんで…、



    「ちょっとお姉ちゃん」



    ん?



    弟(小3)が、
    飽きれた顔で立っていた。


    「ぼく歯みがきたいからはやくどいて」



    タオルで顔の水分を拭き取り…。


    去り際。




    「ぎゃうっ!」


    生意気…、否。
    可愛い可愛い弟の急所を攻撃してやった。


    ふ。


    まだまだ小さいのう(意味深)





    朝食が用意されているダイニングへ向かう。



    なぬ!?


    “ごめんなさぁい。今日の12位は天秤座さんですぅ”


    がーん(落)


    謝るくらいなら言わないでよアヤぱん…(ちょっと好き)


    いや別に?
    別に別に?


    全然信じちゃないけど?
    占いなんて?


    “そんな天秤座さんのラッキーアイテムは青いハンカチ”





    …あったかな。



    青いハンカチ。





    「おはよーう」


    起きてきたお父さん、
    新聞を広げながら席へつき。


    「ハイ目玉焼き」


    お母さんがお皿を運ぶ。


    「ありがと」


    私と目が合った母は。



    「あらあら千夏。またオデコにニキビつくったのね」


    便乗してお父さんまで。


    「お、千夏。オデコに花が咲いてるなぁ」


    ガハハと笑う。



    …むー。



    「おねえちゃん気にしてるんだよ〜二ヒヒ」


    む!


    すかさず、
    (可愛い)弟の足をテーブル下でコツいてやった。






    「千夏は今好きな人がいるのね?」





    ぶー!!



    お母さんが突然変なこと言うもんだから。




    鼻から牛乳。






    (携帯)
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■15895 / inTopicNo.26)  想い想われ2
□投稿者/ エビ ちょと常連(72回)-(2006/08/14(Mon) 16:33:50)
    「だってほら、言うわよね?」


    私が吹いた牛乳を拭きながらお母さんは。


    「オデコのニキビは、想いニキビ」


    そう言って額を指さした。


    「じゃあアゴのニキビはー?」


    弟が甲高い声を上げる。


    「ふふ、アゴのニキビはね?想われニキビなのよ」


    「へえ、ぼく知らなかったー」



    へえ…。



    私も知らなかったぞ弟よ。



    オデコ→想い
    アゴ→想われ


    ニキビなのか…。



    「ま、待ちなさい!」


    お父さんが新聞を閉じて目を丸くしていた。


    「あ、あれか。千夏は今、す、好きな人がいたりするのか?」



    ……………。




    あ。


    時間だ。



    「いってきまーす」




    「ちち千夏〜」




    お父さんの力ない声に見送られ、
    玄関のドアを開けた。





    高校まではチャリ通で30分─


    海に沿ったまっすぐな道をひたすらこぐ。



    お〜、
    今日は風が強い。


    ニキビのオデコに潮風が当たる。



    想い、
    想われ。




    想い、
    想われ…。




    今朝聴いたお母さんの話が頭を巡る。



    オデコに頻発する私のニキビだけど。


    アゴ、口周りにはちっともできていない現状。


    果たしてこれは。



    幸か不幸か?



    うーむむむ…。





    想われニキビも欲しいよ〜!!




    「お、千夏。朝から飛ばしてるね〜」



    チャリ通の友人達をゴボウ抜き。



    海を見下ろす学校に着いた始業10分前。









    「する」の未然形はですね─



    カンカンと、
    チョークの音が響く4限古文。


    窓際の一番後ろ。


    先週の席替えでついに巡ってきた特等席で板書を取る。


    …………ん。


    傾いてきた太陽が眩しくて。


    一瞬、目の前に星が舞った。


    窓にかかる薄手のカーテンを引こうかと視線を変えた時。



    あ。




    見っけ。



    窓の下に見えるグラウンドにあるモノを見つけ。


    思わずシャーペンを。


    コトリ─


    置いた。



    見つけたモノとは。



    “B組女子体育の授業風景”
    (今日はテニスらしい)


    の中で。



    ヒトキワ跳ね飛んでいるジャージ姿の彼女。




    端正な私の顔(イヤ誰にも言われたことないけど)


    私の顔にできたニキビ、
    この想いニキビの原因は。









    アイツだ。





    (携帯)
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■15896 / inTopicNo.27)  想い想われ3
□投稿者/ エビ ちょと常連(73回)-(2006/08/14(Mon) 16:36:13)
    出逢いは一年前─


    体育祭委員の集まり。


    各クラスから1名ずつが集った教室で。


    「1年C組…、遠藤冬美さん来てますかー?」


    ほーい、と。


    私の後ろから聞こえたきた声。


    振り返った私、
    目に映った彼女を見て。



    …………ほう。



    ここにもいたか。


    体育バカ。



    「勉強はちょっと苦手、体育なら任せてねん。部活には命かけてます!」


    そんな体育バカは。


    私はひと目で見抜けてしまう。
    (何故なら私がそうだから)



    「1年D組…、近藤千夏さん来てますかー?」



    へーい、と。
    私が手を上げて立った時。


    初対面の彼女は私を見てこう思ったという。




    「あん時さぁ、体育バカを見つけた感じで嬉しくなったんだよね〜」


    (やっぱり)





    それから一年。


    彼女、遠藤はバスケ部のエースとして。


    私、近藤はバレー部のエースとして。


    互いに部活で汗を流しながら。



    「あんた英語何点?」


    「…18」


    「私17…」


    「日本史は24あったもんね」


    「私は30点取ったし!」


    「…………」


    「…………」



    「補修行くべか」



    「……行くべ」



    五教科でもし烈な争いを繰り広げている。




    いつからだろう私が─



    彼女、遠藤を。



    目で追いかけるようになったのは。



    いつからだろう。







    4限が終わり─


    「千夏〜、学食行く?」


    「あ、今日体育祭の委員会なの」


    今年もこの季節がやってきた。


    昼食を兼ねた実行委員会議。


    「失礼しまーす」


    ガラガラ〜。



    そこは一年前。


    遠藤と初めて出逢った場所で。


    …………。


    思わずキュンときた私は。



    ああ乙女…。



    「あぢ〜!!」



    お。



    「あ、近藤じゃん。何ボーっとしてんの?」



    やはりこいつも体育バカ。


    “祭”と聴いて血が騒がない訳がないらしい。



    今年も遠藤と。



    遠藤と一緒だ!(えへ)





    体育の授業を終えたばかりの遠藤は。


    「ふひ〜」


    窓を開け細い髪を風に凪ぎ、
    額の汗をハンカチで拭う。


    その色は青。


    “ラッキーアイテムは…”


    彼女もまた天秤座。




    ………ふふ。




    私もバカ。


    こいつもバカ♪



    “一緒”が。








    嬉しい。




    (携帯)
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■15897 / inTopicNo.28)  想い想われ4
□投稿者/ エビ ちょと常連(74回)-(2006/08/14(Mon) 16:38:44)
    「じゃあ今年のスローガンは…」


    滞りなく進む会議の途中─



    「あ、またできてる」


    隣に座っていた遠藤が苦い顔。


    「どしたの遠藤?」


    「コレ」


    長い指でアゴを指した。


    あ。


    「ニキビ?」


    「そー。何でか最近アゴに頻発すんだよね」


    確かに、
    彼女のおでこや頬にはニキビの影はひとつもない。


    遠藤の肌は白く綺麗だ。
    (…むふ♪)



    「昨日ポテチ食ったからかなぁ」


    ふわふわと欠伸をかます遠藤。


    ………悪いね。


    悪いわね遠藤。



    あんたのそのアゴニキビ私のせいだわ。



    私のデコニキビと、
    彼女のアゴニキビ。


    因果関係は否めない。


    その秘密を遠藤が知ることはないんだけど…。





    「オース!遠藤に近藤!」


    その時遅れて入ってきたコイツ。


    「おー、アンタも実行委員?中田」


    「ったり前じゃーん。今年も一緒だなー遠藤に近藤」


    テニス部の体育バカ、中田。


    「隣座るよーん」


    ビニールの赤いジャージをしゃかしゃかと鳴らし、中田は私の隣へ座った。



    “じゃあ各自で今年のスローガン考えてくださーい”



    昼食を兼ねた会議、
    私達は…。


    バリっ。
    ペリペリ。
    カサカサ。
    ハムハム。
    ムシャムシャ。


    ガツガツ…。



    余りある10代の食欲を満たす為、
    パンにサンドイッチおにぎりを食べながら会話。



    「にしてもさー、遠藤に近藤?」


    『何?』


    「声かぶってるよ遠藤に近藤」


    ナハハ。


    「何?中田」


    「アンタ達って本と仲いいよね」


    そ、そう?(照)


    「…そうかね」


    ひどーい遠藤(涙)


    「アンタ達やたら後輩の女子にモテるじゃん?」


    確かに…。
    去年はバレンタインに貰うチョコの数を遠藤と競ったもんだ。


    「でもアンタ達いつもニコイチでくっついてるからさー。デキてんじゃないかってうちの後輩が悲しがってたよ」


    んが…ぐぐ…。
    (鼻から牛乳)


    中田…、
    そんな事言われたら照れんじゃん。


    でもちょっと嬉しい?(デヘ)


    遠藤は?



    嬉しい?






    「くだらない」




    ガーン…(斬)





    「そーいや遠藤、アンタ好きな人いるって言ってたよね?」




    …………え。





    そうなの?





    そうなの遠藤?










    「うん、いるよ」







    (携帯)
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■15898 / inTopicNo.29)  想い想われ5
□投稿者/ エビ ちょと常連(75回)-(2006/08/14(Mon) 16:44:34)
    「……つ〜」



    「……なつー!」



    「千夏ー!!」



    気がついたら。


    エプロン姿のお母さんが私の部屋の入り口に立っていた。



    「夕飯できたわよ?早く下におりてらっしゃい」



    学校から帰宅した私は、制服のままでベッドにごろーん…。


    カーテンを閉め忘れた窓の外は、すっかり暗くなっていた。


    夕飯か…。


    何か。



    「食欲ない」



    私のその言葉に。


    アンビリーバブルな表情であんぐり口を開ける母と。


    「おと、おとーさん!たいへんだよー!」


    いつの間に母の後ろにいたのか、
    弟が階段を駆け降りていく足音…。



    「おとうさん!おねえちゃんしょくよくないんだって!」


    「何っ?千夏が食欲がない!?」


    「なにかのビョーキだよきっと!」


    「そ、そうかもしれんな!千夏に限って食欲がないなんて…」



    ……………。



    あの弟とオヤジ。



    いつかシバかねば…。





    「千夏」


    お母さんがドアにもたれて私を見ている。


    「お腹空いたらいつでも降りてらっしゃいね」



    パタン─



    優しくドアが閉まり。


    枕に顔を埋めると。


    …………。


    じわっと。


    涙の味がした。





    「遠藤は好きな人いるんだよね?」



    知りたくなかった訳じゃない。


    けれど─




    「うん、いるよ」



    その答えは割と残酷だった。





    “好きな人いるって知って落ち込んだけど、その相手が実は自分だった”


    なんて結末は。



    マンガじゃなければ用意されない。





    「待って、中田」



    「んー?どしたの」



    実行委員がハネてから─


    教室へ戻る途中の中田を呼び止めた。



    「遠藤の好きな人って誰なの?」


    「え?知らないの?」


    「…知らない」


    遠藤とはそんな話をした事はなくて。



    「中学の時から片思いしてるらしいよ」



    「そ…なんだ」






    「ボクシング部なんだって」





    「そっか…」





    「遠藤も乙女なとこあるよねー。あ、私から聴いたって言っちゃダメだよ」







    「うん。アハハ」





    笑う事がこんなにしんどいなんて知らなかった。







    ボクシング、は…。







    女の子にはできないね。






    (携帯)
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■15900 / inTopicNo.30)  想い想われ6
□投稿者/ エビ ちょと常連(76回)-(2006/08/14(Mon) 16:46:48)
    サー─


    流れ落ちる水。


    前髪を上げたオデコは相変わらずのニキビ畑。


    だけど…。


    以前より赤みは引いた気がする。


    爆発しそうな膨らみもなくなって今は。


    今は─



    ビオレを手に取りふわふわと泡立てる。


    たくさんできたオデコのニキビ、
    今は。



    少しずつ小さくなり。


    赤から淡い色へと変化を遂げた。



    私の想いがそのまま反映されてるのかななんて感じながら。


    ゆっくりゆっくり。


    洗い落とす。


    泡と、


    まだ残った気持ちを。



    ゆっくりと洗い流す。







    「いってきまーす」









    「最近の千夏は元気がないなぁ」


    「ぼくもそうおもう」


    「何か聴いてるか?母さん」


    「ふふ」


    「ママしってるのー?」


    「色々あるのよ、千夏もきっと」


    「そうか…」


    「素直になれればいいんだけどね」


    「こ、今度焼き肉の食べ放題にでも連れてってやるか!」


    「きっとフラれるねパパ」


    「そうだろか…」


    「ふふ。大丈夫よ。あの子は大丈夫」








    あの日から─



    今まで通り遠藤と接する事ができなくなった。




    「集合ー」



    バレー部とバスケ部は同じ体育館を使うから。



    遠藤の姿は毎日イヤでも目に入る。



    「お疲れ様でした!」



    互いに部活が終わる7時頃。



    最後まで体育館に残っているのはいつも。



    私達ふたり。




    シュートの練習の後、体をほぐす遠藤。



    コートを片づけて、練習試合の予定を確認する私。



    互いにボールを片づける為。



    「お疲れ」



    「お疲れ」



    体育準備室で顔を合わせる。




    ポーンとカゴの中にボールが収まって。



    「この後ガスト行かねー?」


    遠藤が声をかけてくる。


    部活の後、
    夕食の前。


    甘いものを食べに行くのが私達の昔からのコース。


    だけど…。




    「今日はごめん」
    「ちょっと無理だ」
    「今度にしよう」





    これが最近の私。






    (携帯)
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■15901 / inTopicNo.31)  想い想われ7
□投稿者/ エビ ちょと常連(77回)-(2006/08/14(Mon) 16:49:29)
    「明日早いから」


    その日も私は下を向き、遠藤の誘いを断った。



    「…………」



    遠藤の表情が強ばっているのが分かる。



    「…お疲れ」



    私は首のタオルを取り準備室から出ていく。



    キュッキュッ─


    10歩、20歩。


    後ろは振り向けない。


    ごめん、遠藤。



    ちょっと苦しいんだ。



    キュッ─



    30歩。



    キュッ─



    40…歩。




    キュっ!



    バッシュがこすれる音が聞こえて。




    「近藤」




    静かな体育館に、

    遠藤の声が響いた。




    思わず肩が上がり立ち止まる。


    でも…。



    「お疲れ」


    私は後ろを見ずにもう一度伝えた。




    キュっ。


    キュっキュっ、
    キュっキュっ…。


    私達のシューズの音が重なり合う。



    「待ってよ近藤」


    「…………」


    私は歩みの速度を上げた。



    「近藤!」



    腕に触れられたから思わず。



    「やめて」


    振り払った。




    そこは広い体育館のど真ん中─



    「…………」



    「…………」



    西日が。



    長く静かな影を作り出していた。






    「何で避けんの?」



    「別に避けてない…」



    分かりきった嘘は。



    「そうゆうの嫌だ」



    嫌いな人だとは知っている。



    「ごめん…」



    色んな意味での謝罪が口をつく。



    「何で?」



    「…………」



    「何で避ける?理由が知りたい」



    そう訊かれるだろうとは分かっていたから。



    こんな態度は取りたくなかった。



    でも…。



    「近藤?」



    優しく呼ばないで欲しい。



    「どしたんだよー」



    茶化さないで欲しい。



    「……………」



    「……………」



    諦めるなら今だから─



    「近藤、」


    初めて聴く、
    遠藤のとても真剣な声。


    「あの、さ」


    遠藤の目が私をしっかり据えているのが分かる。




    『あのさ』



    発した言葉はふたり同じ。









    『ぐーきゅるる…』



    絶妙のタイミングで鳴った腹の虫の声の大きさも。


    ふたり同じで…。





    「…空気読め」



    「お互い様」





    体育バカの私達。



    深刻な場面には弱いんだなと。






    「ふ」







    どちらからともなく笑った。





    (携帯)
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■15903 / inTopicNo.32)  想い想われ8
□投稿者/ エビ ちょと常連(78回)-(2006/08/14(Mon) 16:52:11)
    その日は─


    久しぶりに遠藤と一緒に帰った。


    海沿いの道を、
    ふたり自転車を押しながら歩く。



    「遠藤、好きな人いるんだよね」



    面と向かっては恐くて聞けないと思ってたけど。


    今なら大丈夫だ。



    「うん、まぁ…」



    「どんな人?」



    「どんなって…、普通」



    「アハハ普通って何よ」



    「普通の…ボクシングバカ」



    「…バカなんだ?」



    「うん、バカだね」



    “バカだね”と言った時。



    その人の事を思い出したんだろうか?



    遠藤の目が細くなった。



    少し痛む胸は。



    「コクっちゃえよー」



    笑う事で誤魔化せる。



    「コクらないよ」



    「何で」



    「あり得ない」



    「気軽にコクっちゃっえばいいんだよ〜。ダメならそれまでじゃん」



    今、自分がたたいている軽口。



    後になって“バカだな”と思うことは分かってる。



    でも。



    バカは今に始まったことじゃない。



    私もバカ。



    遠藤もバカ。



    彼もまたバカ、
    らしい。



    走って投げるしか脳のないバカが三人揃ったら。



    賢くいる必要なんてない、もっとバカでいればいい。



    「もし付き合うとかなったらちゃんと紹介してよねー。アハ」



    「…………」



    「私も彼氏作ろうっと。遠藤だけに抜け駆けされちゃ悔しいもんね〜」



    「…………」




    遠藤は静かに笑って聴いていた。





    「じゃ」



    私の家に先に着く。



    あっという間の帰り道。



    ギイ─



    門扉を開け自転車の先を入れる。



    「お疲れー」



    私が遠藤に背中を向けた時。







    「分かってるから」





    「ちゃんと分かったから」





    遠藤は私の背中に向け、そう言った。






    「じゃ、また月曜」





    自転車をまたぎ、
    遠藤が去っていくのを。


    音だけで感じる。







    はは…。



    バカなくせに。



    赤点は私より多いバカなくせに。





    そんなとこだけは敏感なんだね。







    もっと。
    いつもみたいに。






    バカでいてくれたらいいのに─










    「めっちゃ好きなんだよ遠藤!!」






    バカでかい私の声が。






    遠藤に届いたかは、
    分からない。







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■15904 / inTopicNo.33)  想い想われ9
□投稿者/ エビ ちょと常連(79回)-(2006/08/14(Mon) 16:55:22)
    すうっと息を吸い込んで─




    「ただいまー!」






    「おかえり千夏」



    「おねーちゃんおかえり」



    「おう千夏、今日の部活はどうだった?」



    既に始まっている夕食の席につく。



    「はーもう超腹減ったー。今日はご飯何?」



    カバンを放り投げ。


    スカートの足をダイナミックに開いて戦闘(メシ)態勢。



    「エビフライよ。たくさん揚げたから」



    お母さんが運んでくれる。



    「ご飯大盛りね」



    「ハイハイ」






    「いただきまーす」










    「きょうのおねえちゃんげんきだったねー」



    「千夏の悩みも解決したんだろう。ハッハ」



    「はぁ。平和ね…。男の人は」



    「ど、どういう意味だい母さん」



    「さあね〜。でも少しは」




    素直になれたんじゃないかしら─










    サー。





    流れ落ちる水。






    泡立てたビオレ。







    私のオデコのニキビは…。






    相変わらず鎮座している。






    でも─






    「おはよー中田」





    変わらぬ朝。





    「おはよ〜。って、あ」





    でも少しは。






    「今日もデコ全開ですか〜」





    何かが変わった気がする今日この頃。






    消えるに消えないこのニキビ。



    消すに消せないこの想い。



    愛しくすら思えてきた私は。





    今までおろしていた前髪を上げるようにしている。







    “ピッカリン”



    なんてあだ名をつけられてはしまったけど…(涙)





    いいのだ。





    バカはバカらしく。




    考える事はやめて。







    このニキビを育てていこうと思ってる。










    「おはよ、遠藤」








    「おはよ、近藤」







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■15905 / inTopicNo.34)  想い想われ10
□投稿者/ エビ ちょと常連(80回)-(2006/08/14(Mon) 16:57:59)
    “騎馬戦に出場の皆さんは…”



    体育祭の日─




    「走れ走れ〜!」



    「あっ今ズルしなかった?アノヤロー」



    「表彰式の準備OKです」



    「応援団の衣装に着替えてくるねー」




    私と遠藤。



    体育バカが最も熱くなる一日。



    競技に準備に走り回っていた。



    汗をかき。



    笑いころげると。



    腹が減る。




    バカとして実に健全な一日。





    そのラストは─




    “クラブ対抗リレーに出場の皆さんはゲートにお集まりください”




    そうコレ。




    体育バカのプライドをかけた100m走。




    女子バレー部の代表、
    私が入場口に並んでいると。




    「よ」




    やってきた女子バスケ部代表。




    「よ。遠藤」





    ふたりしてリレーのメンバーを見渡す。





    『ぐふ』




    悪いね陸上部。




    今日は私と遠藤の一騎打ちになる。






    “スタートラインまでお進みください”


    オーディエンスの盛り上がりは最高潮で。



    3レーン、
    4レーン。



    並んだ私達。





    屈み。




    クラウチングスタートの足場を探していると。






    「近藤」




    不意に遠藤に話しかけられた。





    「何?」






    “位置について”







    「このリレーで私らのどっちかが勝ったらデートしよう」







    “よーい”







    …………あ。




    あ〜!!!





    「ちょ、あ、え、え、遠藤!!」





    「ななな何だよこんな時に!?」














    「オデコにニキビできてるよ♪」











    “よーいドン!”










    fin.







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■15907 / inTopicNo.35)  こんばんわ☆★
□投稿者/ 愛浬 一般♪(2回)-(2006/08/14(Mon) 17:57:13)
    メルではお世話になりました(*ゝωб)←って程会話もしてない(爆)

    どーしよーO(><;)(;><)O純粋な小説でドキドキしちゃう(ノ∇≦*)みたいな心境です(笑)

    想い想われニキビ……私もあったときに、母に言われました☆★


    懐かしいなぁ〜
    ま、私には近藤と遠藤みたいな素敵な恋物語はなかったんですけどね(ノ ̄▽ ̄)ノ

    小説、めっちゃ楽しかったです♪♪♪
    次も楽しみにしてますね(=゚ω゚)ノ

    (携帯)
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■15911 / inTopicNo.36)  嫌なニキビ(笑)
□投稿者/ 海烏 一般♪(5回)-(2006/08/14(Mon) 23:42:57)
    こんばんは。
    私が学生の頃は『左頬のニキビは自分からフる、右頬のニキビは相手にフられる』と言ってて。
    つまり、頬のニキビは失恋宣告(笑)

    唐突ですが、ここで一句。

    『ひまじん』を
    並び変えたら
    『ひまんじ』に

    こんな事を考えてる私が一番の肥満児もとい暇人だと(笑)
    ニン♪

    (携帯)
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■15916 / inTopicNo.37)  にゃは♪
□投稿者/ ちび 一般♪(2回)-(2006/08/15(Tue) 02:30:26)
    ニンニ〜ン♪

    (携帯)
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■15984 / inTopicNo.38)  デヘ
□投稿者/ エビ ちょと常連(81回)-(2006/08/17(Thu) 21:44:23)
    んー…眩しい…。


    8月の強い朝日は、
    寝起きの私の頭に響く。


    なかなか上がらない瞼をやれやれと開ける。




    冷たくなっていた自分の肩を撫でて、


    初めて何も身に付けていない事を知る。




    寝息を立てている隣に静かに頭を向けると、


    改めてあなたと夜を越えた事実を知る。





    ……………。





    デヘ(照)





    華奢な肩が寒くはないだろうかと布団を上げて、起きないようにと願う。


    小さな頭を覆う薄茶の柔らかい髪が癖になって跳ねているのを見て微笑む。





    ……………。






    デヘ(笑)







    ベッドがあまり沈まないように注意しながらフローリングに降りると。


    やけに冷たかった。


    時計を見ると二つの針が午前の8時過ぎを差していて。


    睡眠時間を計算した。





    ……………。






    デヘ(赤)





    タオルを巻いてテーブルの上の煙草に手を伸ばし、音がしないように火を点ける。


    煙が部屋に舞う。


    起き出したら何を作ろうかなと冷蔵庫にあるものを想像する。


    どうせなら喜ばせたい。





    …………。






    デヘ(謎)





    「…………んー…ふに。」




    あ、


    起きた。



    頭がこちらに振り返り、隣の存在を確認するかのようにポスポスと枕を叩く仕草を見て。




    ……………。




    デヘ(萌)←古





    煙草を消してベッドに戻ると、




    「んー…ん。」




    眩しいか。




    薄く目を開けて、上からのぞき込んでいた私を確認すると。




    「………………。」




    あれ、という表情の後に両手で小さな顔を覆った。





    ……………。






    デヘ(愛)




    その手をよけて前髪を払って額にキスすると。




    「…………ん。」




    目は開けずに微笑む。






    ……………。







    デヘ(幸)





    改めてベッドに入り直すと、小さな体を私にしがみつくように寄せる。


    熱は冷めてない。




    ぴったり隙間が出来ないようにくっついて私も体に手を回すと。




    徐々に火照る体が夏みたいだった。









    「………おはよ」









    熱い夏の朝。










    醒めない夢の続きを─













    デヘデヘ(笑)




    (携帯)
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■15985 / inTopicNo.39)  良く晴れた日に
□投稿者/ エビ ちょと常連(82回)-(2006/08/17(Thu) 21:47:02)
    テレビも着けず、
    音楽も聴かずに。




    よく晴れた日曜日─




    あなたの事を思って、


    ベッドで膝を抱え込んで窓からの景色を眺めてた。





    “もう”


    どこから何が間違っていたのか私には分からない。



    「ごめんね」


    「………ううん」



    唯一分かり合えたのは、最後の瞬間。





    好きで好きで、
    あんなに流した涙も。




    好きで好きで、
    交わし合った笑顔も。





    時に流れる。





    いつかあなたは─




    違う恋をして。




    いつかあなたは─




    違うキスをして。




    “こんな恋もした”




    そう笑って誰かに話すのだろう。







    あなたの大好きなナンバーを何度もリピートする位ずっと一緒にいたのに。


    あなたの肘の傷も深爪の指も眉を上げるクセも。


    強く強く私を抱いていた安心も腕の温もりも。






    時に流れる。









    きっと私は─





    違う恋をして。





    きっと私は─





    愛してると、
    誰かに耳元で囁いて。





    “あんな恋もあった”





    いつか恋人の前で笑うのだろう。








    一つの嘘さえ、
    なかったよ。




    握った手にも、
    伝えた想いも。




    叫んでかすれた声も。





    どこにも─





    きっと二人、
    始まりの鼓動も忘れて。


    きっと二人、
    幸せな寝不足も忘れて。



    きっと二人、
    初めての喧嘩も忘れて。



    きっと二人、
    流した涙も忘れて。



    きっと二人、
    交わしたキスの数も忘れて。



    きっと二人、
    重ね合った温もりも忘れて。



    きっと二人、
    過ごした記念日も忘れて。








    きっと二人、
    さよならの痛みも忘れて。







    “こんな恋もした”









    そう笑って話すのだろう。







    今日みたいに晴れた日─








    空に向かって、
    語るんだろう。









    (携帯)
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■15986 / inTopicNo.40)  犬になりたい
□投稿者/ エビ ちょと常連(83回)-(2006/08/17(Thu) 21:49:30)
    犬でも猫でも─




    どっちでもいいんだけど。




    イーンジャン…



    「ほい」
    「ほい」



    グーで私が勝ちね。
    ってことは…、




    私が犬─




    彼女の上に覆い被さって、両手で頬を挟む。



    「…どうして欲しい?」



    犬は主人に忠実に。




    願いあらばその通りに。



    「…………優しく」




    出来るの?と、
    私の心を見透かす。




    「できるよ」




    犬は主人に忠実に。




    キスはゆっくり。




    舌もゆっくり。




    徐々に暴れ出す吐息。




    クールダウンさせるように首筋に唇を。




    ラインに沿って、
    長い散歩を。



    耳たぶまで辿り着いたなら、




    「喉がかわいた」




    お願いしよう。




    散歩の後は、
    喉が乾くから。




    「いいよ」




    再び強く唇を合わせたら、全部吸い取ろう。




    暖かい唾液で、
    喉を潤わせて。




    唇の端から愛が溢れたら、残らず拭き取る。




    喉が潤ったら、
    次は遊ばせてもらおう。



    「どっちがいい」


    「……こっちから」




    それは二つあるから。


    迷ったら、
    聴いてみよう。


    好きな方を、
    聴いてみよう。




    「…………っ」


    「……いい?」




    あくまでも、
    犬は主人に忠実に。




    感じる部分は、
    的確に。




    「………好きなようにしていいよ」




    主人から首輪を外されたら、




    その合図が出たら。




    自由に駆け回ろう。




    茂みにはまって、




    迷わないように。




    的確に探し当てよう。




    「…………っ」




    溢れ出したら、
    舌で掬い取ろう。




    犬は主人に忠実に。


    悦ぶ顔を見る為に。


    感じる声を聴く為に。




    「もう………。」




    願いあらばその通りに。




    「……入れるよ」


    「……うん」




    あなたの好きなように。



    「…………っ!」




    あなたの好きな場所に。



    「………ああ」




    あなたの悦ぶ顔を見る為に。




    「……んー……っ」




    あなたの果てる瞬間まで。




    「………もうすぐ…」




    犬は忠実であれ。




    犬は忠実であれ。





    あなたの為なら─









    私は犬になる。




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