ビアンエッセイ♪

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■15987 / inTopicNo.41)  Distance
  
□投稿者/ エビ ちょと常連(84回)-(2006/08/17(Thu) 21:56:56)
    私達─


    会いたいのに、
    見えなかったね。



    「なんか、照れるね」

    「………ふふ」



    でもあなたの為なら、特別な人だから、
    私は多少無理してみてもいいの。



    「私今挙動不審かも」


    「手出して」


    「え」


    「手汗かいてるよ」


    「いや、その」



    縮めたかった距離は、
    お互いの住む場所ではなくて。
    もっと違うものだったんだよね。


    それを埋める唯一の、切実な方法は。
    言葉やあなたの変わらない笑顔以上に、




    「…………」




    抱き寄せた温もり。
    それしかないの。




    言葉に、
    なるはずもないの。



    ああ言葉になんて、
    ならないよ。




    心が─
    震える。




    ずっとここに、
    還りたかったの。


    ずっとここに、
    還りたかったよ。




    柔らかい胸に頬を擦らせて。
    あなたの小さな手は私の頭を撫でていて。




    憂鬱も、
    意地も、
    とまどいも。



    何もかもが昇華されて行く。



    「…………」



    真実なの。
    真実だよ。


    今の二人が、
    ただそこにあるだけ。




    「好きだよ」


    「うん」


    「それだけだよ」


    「私もそう思う」


    好きなの。
    それだけなの。


    過去とか嘘とか、
    信じる信じないとか。


    どうでもいい事なの。




    傷付けあってたね。
    傷付けあってたの。


    お互いにヨーイドンで、別の方向を見てたはずなのに。

    本当はずっとずっと背中合わせになっていた事に気付かなかった。



    体温さえも、
    私はちっとも抜け切れてなかったのに。



    「……………」



    言葉にはならない。




    だから─


    二人の距離を最大限に縮めて。
    二人の距離を力一杯抱き締めよう。


    あなたの胸でしか、
    私は泣けない。


    弱さも戸惑いも、
    強がりも優しさも。


    あなたに教わった孤独も。



    ここに還らせて。



    切なさも暖かさも、
    あなたでなければ。



    感じられない。



    I love you.
    and I love you.



    何度もその胸で叫ぶから。



    今の私はただただ。


    I wanna be with you.




    過去も憂鬱も戸惑いも、痛みも涙も未来も。










    軽くしてくれるのは、
    あなただけ。



    “Distance”
    “and I love you”




    (携帯)
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■15988 / inTopicNo.42)  SEXY
□投稿者/ エビ ちょと常連(85回)-(2006/08/17(Thu) 22:26:28)
    今私には─



    “どうしても欲しい”



    そんなモノがある。




    それは─


    車でも家でも、
    アローズの服でも、
    可愛い彼女でも無い。


    金はある。
    一応私も、
    堅実に働く25over。


    では金では手に入らない私がどうしても欲しいものとは何か?




    ズバリ、




    “色気”




    これだ…(遠)




    そろそろ出てきても?
    醸し出されても?


    いーんじゃないかと思う最近なのだ。




    まず─
    それには見た目が大きく左右する事位、私にもわかっている。


    自慢じゃないが、
    私は自分のスタイル維持に努力は欠かさない。


    胸には自信は無いが、ケツには自信がある。
    食べ過ぎたらshape.
    努力でslimup.




    だが─


    その方向性が、
    どうも定まらない。


    「すごーい腹筋触らせてー」


    「………。」


    大好きなハニーは。
    それなりに(多分)


    私の体を気に入ってくれているのはわかる。



    だが、
    違うのだ。



    「裸になってもヤらしくない体だよね」


    「…………。」



    “脱いだらスゴい”
    一度でいいから。
    言われてみたい。
    (字余り)


    因みに言っておくが。
    私は筋トレバカではない、身長も低い。


    けど─


    ハニーに腹筋を触られて満足するような、
    そんな女ではいけないのだ。


    そう─



    「歯磨いてくるねー」



    お風呂上がりに。
    ホルターネック一枚で、部屋を歩くハニーの背中から醸し出された、



    「……ぶ(鼻血)」



    あんな色気が欲しい。


    普段は見えなくても。


    好きな人の前で、それだけでいいから。


    我慢出来なくて背中に舌を這わせたくなるような…。


    プラス─


    私の上に乗る時の、
    不敵で小悪魔な表情。


    私のハニーのベースは、色気で一杯だから。




    私も、
    是非とも手に入れたい。



    それにはどうする?


    服の趣味でも変えるか?


    んー…。
    何か違う気がする。





    でもま─


    私が上の時に腕がプルプルしちゃったらちょっとカッコ悪いし?




    「安心する。愛されてる感じするよ」




    コトが終わった後に、私の鍛え抜かれた(鍛えてはいないが)腕で、


    ベッドで後ろから抱いている時。









    とてつもなく幸せだから。




    んー…。







    ま、いっか(笑)



    (携帯)
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■16029 / inTopicNo.43)  皆さんへ─
□投稿者/ エビ ちょと常連(86回)-(2006/08/20(Sun) 14:00:10)
    愛浬さん─

    その節はどうも!
    想い想われ、
    フりフられって続くんですよね(海烏さんも書いてらっしゃいましたが)
    私は昔からずーっと、おデコにニキビ畑作ってます。モテなさ満開(笑)
    ×10シリーズはハイスクールな感じで続きました。
    次はどうなるのやら、はて…。
    訊いてみようかな(ん?)

    ありがとうございました〜。


    海烏さん─

    こんつは。
    頬にも顎にも出来ないけどデコニキビのエビです(笑)
    暇人、
    肥満児、
    あらやだ似てる(*_*)
    busyでsharpな大人でいたいもんです(笑)

    ヌ(ニ)ン♪


    ちびさん─

    ふ。
    ふふん。
    怪しいよアナタ(笑)
    どもありがとうございました。
    またお会いできまして嬉しい限りです。
    では♪




    (携帯)
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■16030 / inTopicNo.44)  関白宣言
□投稿者/ エビ ちょと常連(87回)-(2006/08/20(Sun) 14:03:43)
    mission,



    mission 神田川─




    昭和な女でいくのも悪くないかと気付いた。


    小さな石鹸カタカタ鳴らして、銭湯先に出てもちゃんと待っててあげる。
    10畳ひと間のあなたの部屋で、そうね今ならクーラーもつけずに待ってるわ。


    あなたが帰ってきたら、汗をふきふき小動物みたいな目してこう言うの。


    “おかえりなさい”


    もしあなたが仕事辞めてミュージッシャンになりたいなんて言い出しても全然OK、昭和の女の本領発揮ってとこよ。


    “あなたの夢は私の夢だから”
    (内職始めちゃう)


    あなたにギュっと抱きしめられた時は、
    軽ーく涙浮かべてこれで決まりね。


    “あなたの優しさが恐くて…。泣いてゴメンね、えへ”




    えへ。



    えへ。








    げへ(やっぱ無理)







    アンアンで読んだ“小悪魔”をやってみたところでただの横暴な女になっちゃったし。
    “癒し系”やろうには色気と胸が足らん。
    “クールなお姉さん”やろうには童顔が致命的ときた…。




    うーん(困)



    んーむむ、
    んーむむむ…。








    ポス─



    ん?


    私の頭に乗せられたあなたの手。


    くしゃ─


    いたずらに撫でられる髪。



    「やっぱ可愛いなぁ」


    ケラケラ笑うあなたの声。





    ……バカたり。




    そうゆうのが嬉しいから。めちゃくちゃ嬉しいから。



    頑張りたくなるんじゃん。







    あなたが帰ってきた時は?


    「腹減った」


    あなたがもしミュージッシャンを目指し出したら?


    「…バカ?」



    そう言う私だろうし。




    「頑張ってるね」
    「偉いよ」



    肩の力がスーっと抜けてしまう位に嬉しい、
    あなたの言葉にも。




    「…分かっとる」



    口を尖らせて悪態つくしかできない私だけど、
    けど本当は。







    ありがとう。







    なんだな。








    あなたが抱きしめてくれる時には、
    私も抱きしめ返そうと思うよ。


    同じサイズの身体、
    ふたつ重なれば。


    強くなれるような幸せな勘違い。


    見せてあげる。




    ずっと見せてあげるね。







    そうそう私さ。


    こうせつより拓郎のが好きなんだよねー…。



    ってことでミッチョン変更。






    mission,










    関白宣言(笑)





    (携帯)
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■16031 / inTopicNo.45)  ムービースター
□投稿者/ エビ ちょと常連(88回)-(2006/08/20(Sun) 14:06:34)
    ムカつくのよ─


    押し倒し方も、


    その慣れたキス。
    奪うタイミングも。


    舌の絡め方も。


    唇に意識を集中してるはずなのに、


    あなたの指はさっきから背中に腰にまとわり付いてくるの。


    私は追い付いて行くのに精一杯なのに、




    「────」




    ムカつくのよ、
    そんなタイミングで。


    名前を呼ばないで。


    空いた手に強く指を絡めないで。



    誰にどれだけ奉仕して来たのか良く知らないけど─


    その舌引っこ抜いてやりたいわ。


    その指へし折ってやりたいわ。


    その声潰してしまいたいわ。



    ああ何だかもう─


    シナリオは出来損ないでいいから。


    気分はB級ホラー。
    ぐちゃぐちゃに、



    あなたをスプラッター。



    出来るなら息の音を止めてしまいたい。






    ムカつくんだよ─


    さっきっから、
    可愛い声出しちゃってさ。


    止まらなくなる。
    窒息しそうだよ。



    「さわって」


    「やめないで」


    「もう少し」



    そんな声出さないで。


    そんな目で見ないで。


    私の指をくわえないで。


    誰にどれだけお願いして来たか知らないけど─


    ムカつくんだよ。


    指でこの穴を完全に塞いでしまいたい。


    溢れる何かを全部吸い取ってやりたい。


    言葉さえも封じてしまいたい。



    これもあれも、
    ここもあそこも。


    全部噛みついて。
    何も感じさせなくしてしまいたい。


    願わくば誰にも触れられないように─



    ああ何だかもう、
    シナリオは出来損ないでいいから。



    気分はB級官能映画。


    出来るなら─


    欲にまみれて、
    あなたを情婦に変えてしまいたい。


    私だけの情婦に変えてしまいたい。








    ムカつくのよ。


    ムカつくんだよ。




    大嫌いよ。


    大嫌いだよ。









    …でも。









    やめられないわ。


    やめられないよ。







    「結局好き」


    「私も」


    「ふふ」


    「はは」







    2つの笑いが重なれば─



    割と普通の恋愛映画。


    ベタベタなコメディー。






    私達は─
    割とオールジャンルで、かなりB級な。







    ムービースター。








    互いの舞台でしか踊れない、










    大根なムービースター。





    (携帯)
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■16035 / inTopicNo.46)  あなたへ─
□投稿者/ 大エビ(笑) 一般♪(1回)-(2006/08/20(Sun) 15:01:55)
    簡単に言います─




    「あなたバカだよ」


    「……」


    「おかしいよ」


    「かな。はは」





    彼女が言うには、ここは『今さら何で?』と私が言う場面らしいです。




    だから、
    そういう反応でない私はバカなんだと。


    そういう事らしいです。



    「好きでいなくてもいいの」



    「………」



    「私は好きでいるんだから」




    「………」




    「あなたに彼女がいようといまいと関係ないの」



    「………」




    「私が好きなの。それだけなの」





    “心から”な言葉だと感じるのは、
    前向き過ぎる私の性格のせいでしょうか。




    「ありがとう」



    ありがとう。




    負けない勝負はしない人だと重々知ってます。


    だからこそ、
    逢いに来てくれた事の切実さに気付いて。






    私は─


    ひっそり潜めていた感情は間違いではなかったと何だか“許された”感じがしたんです。





    離れてる間─


    友達のフリをすればせめて繋がれる唯一の手段で、やけに滑稽だった私の行動にあなたは気付いていたでしょうか。




    …割とバカでした。




    憎む事も出来なくて、
    いつかは傷付け合った記憶は時間に浄化されて、本当に友達になれたらいいなーなんて。









    …っていうのは、
    かなりタテマエです。






    簡単に言います─




    久しぶりに会ったあなたは、小さくてやっぱり可愛くて。




    ポツリポツリと俯きがちに話す姿も相変わらずで。




    柔らかい髪も、
    綺麗な横顔も。
    小さな手も。


    はにかむような笑顔も。そのままでした。


    何もかもが。
    一年前と同じでした。







    あれから─
    一年が経ちました。









    伝えます。


    私さ、結局カッコつけてばっかだったじゃない?



    あれ、やめる。



    責められても。
    情けなくても、
    誰にも渡したくないから精一杯恋愛したい。



    見栄も、愛想も、
    高過ぎるプライドも。
    立場もいらない。



    今とにかく、
    一緒にいたいの。



    だって私めちゃくちゃ嬉しいんだもん!








    だから一緒に、
    いようね。








    …ね。








    ね♪












    やっぱり好きです。











    once again,
    darling.










    (携帯)
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■16040 / inTopicNo.47)  おっ!
□投稿者/ とくめい 一般♪(1回)-(2006/08/20(Sun) 18:29:46)
    おっ!もしや・・

    祝!復縁!!

    かな??
    いいね〜、いいね〜、復縁(私は…切実)
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■16167 / inTopicNo.48)  26th
□投稿者/ ヤキハマグリ 一般♪(1回)-(2006/08/27(Sun) 22:12:04)
    去年は確か─



    「行ったことあらへんもん」



    ネズミーランド。
    とても暑い2日間だったのを良く覚えています。


    オークラのバスルーム、広かったなぁ…(遠)



    「綺麗やなぁ…」


    「ミッキーさんや!」



    パレードで踊るパークの主役に心奪われて目をキラキラにさせていた25歳直前のあなたも、


    良く覚えています。


    (ピアスがお尻にささったっけね 痛)





    あれから一年経って─


    私達の何が変わって何が失われたのかと考えると…、実はそんなに変化していないのかなと。




    とは言え─



    『早く逢いたいー』
    『あと〜日だー!』
    『わくわくしてきた!』


    こんな子どもみたいなメールばかりを送信していたのは…。





    あ、私か(ゴホン)




    やっぱり変化した部分もあるのかもしれないや。




    でも何より今は─



    『おはよう』
    『疲れてない?』
    『ずっと応援してるで』
    『また明日ね』



    好きも愛してるも勿論嬉しいけれど、
    柔らかく尊重してくれるやり取りが。
    とても嬉しい。






    でもやっぱりカッコつけの私なので、
    特別なこの日だけは人と違う何かを見せつけたい所…。



    「行きたい所とかある?」


    「んー普通でいい」




    む。
    むむむ…。
    普通、とは。
    一体どんな…(謎)



    見栄っぱりな私に、
    響く優しい一言─


    「部屋がいい」


    「うち?」


    「うん、おうち。…一番好きだし」




    欲の無い人なのは─
    もう知ってます。


    小さな事でも、
    いつも照れ臭そうに笑って心から喜んでくれる。


    そういう所、
    やっぱり好きだなと思えるので。




    私も─
    素直に。
    普通に。
    強がらずに。


    歳を重ねて行ければいいなと思います。






    26歳の誕生日─


    一緒に過ごせてとても嬉しかったです。







    「デレデレしたらアカン」




    「ぐふ。だって可愛いんだもん」





    「当たり前や」





    「ぐふふふ」





    「そんなして見たらアカン」





    「いーじゃんかー。つんつん」





    「勝手に触ったらアカン!」





    ずっとバカみたいに笑っていられたらなって。


    そういう二人でいたいなって思います。









    誕生日おめでとう。











    誕生日をありがとう。



    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16168 / inTopicNo.49)  はじめまして
□投稿者/ 葉っぱ 一般♪(2回)-(2006/08/27(Sun) 22:23:04)
    はじめまして・・

    と言っても随分前から読んでました。
    今日がバースディの人ってきっと沢山いますよね

    私も今日です
    私の憧れのひとマザーテレサも今日かな・・(関係ないか・・)

    ハッピーな年になるといいですね(^^


引用返信/返信 削除キー/
■16169 / inTopicNo.50)  エビさんへ。
□投稿者/ 海烏 一般♪(6回)-(2006/08/27(Sun) 22:37:37)
    こんばんは。
    お誕生日おめでとうございます!

    晩ご飯にエビフライを揚げて、山陰でひっそりと祝っていましたら。
    こちらで祝ってらっしゃいましたねー。
    さすが、焼きモロコシさん、もといヤキハマグリさん!

    あなたの誕生日を祝えることが出来て嬉しいです。
    おめでとうございます。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16170 / inTopicNo.51)   エビさんへ。はっぴぃーばぁーすぅでぃーなんですか☆おめでとうございます☆
□投稿者/ ゆらら 一般♪(30回)-(2006/08/27(Sun) 23:45:59)
    どさくさにまぎれまして、こんばんは☆

    なんもエビさんの事は
    小説として書かれた作品でしか知らない・そんな者ですが
    ショートショートの「OLとデブ猫」「タコ」
    「パンダと虎」「道交法改正」等が
    ストーリー展開もオチも大好きな感じでした。

    お題小説では「寝顔」の主人公さん、切なかったですね・・。

    可愛くてユーモアーがあり誰にでも読みやすい作品作り、大変かと思いますが

    これからもエビさんペースでエビさんワールドを繰り広げて下さいね。

    (突然やって来て生意気言って、すいませんでした☆)ではおめでとう☆
引用返信/返信 削除キー/
■16282 / inTopicNo.52)  emergency1
□投稿者/ エビ ちょと常連(90回)-(2006/09/02(Sat) 13:00:42)
    彼女の手は不気味な位に細く骨ばっていて。


    長い指の先には。
    ヒステリックな癖が生んだ深爪がちょんと乗っている。





    本日はご来店頂きまして─


    平日まっ昼間の百貨店。
    “夏休み”の免罪符を掲げて歩く私と彼女。



    ………♪♪



    小さく聞こえる口笛は、エスカレーターで前に立つ彼女が鳴らしているものだ。



    1階、2階、34…。
    6階。
    “紳士用品売場”
    の案内板が見えた時。


    カエルのキャップを被る彼女の目が薄く光った。



    「…………」


    エスカレーターを降りた彼女に続く。



    “大丈夫”



    ここに来る前、
    彼女に言われたのはその言葉だけ。




    “大丈夫”



    その言葉を反芻し、
    口から飛び出しそうな心臓を飲み込む。



    腕と同様、異常に細い足を短パンからのぞかせ歩く彼女。
    歩みは早い。



    「…………」


    「…………」


    無言のまましばらく歩きたどり着いた先。


    “紳士小物”売場。



    私達ふたりの姿を見て─


    「いらっしゃいませ」


    声をかける店員。
    若干訝しい表情。


    すかさず彼女。


    「お父さんのプレゼント何がいいかなぁ。お姉ちゃん」


    私に笑顔を向けた。



    お、ね、えちゃ…。



    華奢で極めて小柄な彼女。
    ワンピースを着た私。


    “姉妹”



    …今日私が同行させられた理由を知る。



    “お父さん”の単語を聞いてから。
    店員の声は手の平を返し柔らかくなった。


    「ごゆっくりどうぞ」



    …………。


    キャップのツバから時折のぞく彼女の目の冷たさに。



    何故大人は気付かないんだろう?





    ……♪、…♪


    彼女の口笛が止み。
    私達はあるショーケースの前に立っていた。


    ライター。
    万年筆。
    定期入れ…。


    そのブランドの小物達に付けられた値札には、瞬時では読みとれない数のゼロ。



    「んー何がいいかなぁ。お姉ちゃん」


    彼女がわざとらしく出した幼い声に。




    寒気を覚える。






    「何かお探し?」


    ニコニコと笑みをたたえ近付いてきた店員が“姉”である私に近付く。



    「誕生日か何か?」



    「は、い」



    「そう。じゃあこれなんて…」









    仕事は鮮やか─






    私の方を向いた店員の真後ろで万年筆が一本。







    彼女のポケットに吸い込まれた。






    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16283 / inTopicNo.53)  emergency2
□投稿者/ エビ ちょと常連(91回)-(2006/09/02(Sat) 13:03:12)
    「こんな可愛い娘さんふたりにプレゼントなんて、お父さん泣いちゃうわね」


    「…はい」


    「お仕事の時に使えるものがいいわね。ふふ」



    微笑ましい“姉妹”に、店員は優しく語りかけ続ける。


    店員の丸い顔で埋まったはずの私の視界の端に、
    小さな動きで仕事を続ける彼女が映る。



    万年筆に続き。
    キーケース。


    …タイピン。



    「さぁどれがいいかしら」


    “後ろ”の出来事に何も気付いていない店員が、満面の笑みで迫ってくる。


    「……………」



    私は。



    恐くて。



    恐くて恐くて─





    唇が引きつり、
    瞼が震え出した。




    「……私……」




    何で大人は気付かないの─






    「お姉ちゃん!」



    空気を破ったのは彼女の声。


    ……………。


    “叱咤”とも“安堵”とも取れる目を私に向けていた。



    「お姉ちゃん。お母さんが下で待ってるって!」


    無邪気な声で私に近付き腕を取った。




    「あ、…うん」



    渡りに舟。
    彼女の声で冷静に帰った私。




    「後でお母さんときます」


    店員に元気いっぱい伝えた彼女。






    現場を離れる私達。
    隣を歩く彼女のポケットからは微かに。
    ほんの微かに。



    金属音が聞こえてきた。








    「ねえ」



    「…………」



    心が異常に高揚していた。



    「ねえ…」



    恐怖が安堵に代わり。
    残った達成感。



    「ねえ」




    話しかける私を。





    「今は黙って」






    彼女は制した。







    フロアを歩き、
    下りのエスカレーターに差し掛かる。




    “大丈夫”



    彼女の言う通りだった。


    少し大人になれた気がして。


    毎日「勉強しろ」って怒鳴るお母さんに秘密を持てた事が嬉しくて。



    嬉しくて誇らしくて。





    彼女と一緒にいると、いつもの弱虫の私じゃない気がした。









    だけど─











    「その二人捕まえて!」







    大人の目には敵わなかったみたい。







    肝心なものは何も見えやしないくせに─








    ちっ、と小さく舌を打ち。








    「走るよ」







    派手な音を立て、
    彼女はエスカレーターを駆け降り始めた。





    (携帯)
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■16284 / inTopicNo.54)  emergency3
□投稿者/ エビ ちょと常連(92回)-(2006/09/02(Sat) 13:05:29)
    「やっ…」



    “待って”の叫びはとても声にならず。


    ゆったり流れる百貨店のBGMの何万倍もの速さで、景色が過ぎてゆく。


    逃げ。
    ただ逃げた。


    彼女は私の手を繋いでなんてくれないから。
    私も必死に走った。
    必死で着いていった。


    彼女に取り残されないように。



    「待ちなさい!」


    追っ手に加わった警備員の姿を見ても彼女はひるむことはなかった。



    小さな身を右に左に、
    棚の脇をかすめ婦人服の下をくぐり…。


    まるで─


    静かな店内はスタジアム。
    振り返る客は彼女の走りを盛り上げるオーディエンス。




    待って─





    待っ…て。





    6階からこの2階までを全力疾走で駆け抜け。
    次第に自分の息が上がり始めるのが分かる。


    体が…。
    追いついてくれない。



    待っ─





    不格好な音を鳴らし、私はつまづき床に倒れた。



    「早く立って!」



    彼女がこちらを見て叫ぶ。


    すりむいた膝を立て必死に立ち上がろうとすると。
    足の裏が冷たい。


    履いていたミュールが片方脱げて後方に転がっていた。


    …………。



    「待ちなさい!」


    近付いてくる警備員。


    「靴なんていいから早く!」


    叫ぶ彼女。



    …………。


    私はミュールを取りに、少し後ろに引き返した。



    血が滲む膝以上に。



    心が痛くて涙が出る。




    「靴なんて放っておけよ!」




    ダメだよ。
    ダメなんだよ…。



    だってあのミュール。










    お母さんが買ってくれたんだもん。







    裸足の足どりはままならず。
    正面から向かってくる警備員との距離は縮まるばかり。



    はは…。
    ごめんね。



    彼女に申し訳なくて。



    ごめんね。
    私やっぱり。





    ただの弱虫だよ。










    その時だった。


    後ろから聞こえてくる足音。
    彼女がこちらに戻ってきて、私より先にミュールを掴んだ。



    何…。




    「何してん…」



    先に逃げてよ。




    「そこにいなさい!」




    警備員はもうすぐそこ。





    私なんて放って先に行ってよ!






    ミュールを取り戻した彼女は私の肩に触れ。


    こう囁いた。











    “大丈夫”









    (携帯)
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■16285 / inTopicNo.55)  emergency4
□投稿者/ エビ ちょと常連(93回)-(2006/09/02(Sat) 13:08:06)
    はぁ…。



    はぁ…。
    はぁ……。







    “大丈夫”


    優しく囁かれ。



    きゃ…っ─


    腕がちぎれそうな程の力で、彼女に引っ張られた。


    あるだけの力を振り絞って走り。
    数メートルまで迫っていた警備員を撒いた私達が。


    辿り着いた先。




    “非常階段”



    バタン─


    重いドアを開け、
    無機質なシルバーの狭い階段に立つ。






    はぁ……。




    はぁ、はぁ…。




    二人共アゴを上げ、必死で酸素を吸い込む。




    「も、う…追って…こないかな」


    とても恐いのに。


    「ん…。大丈夫。完全に撒いたから」


    不思議。


    彼女といると。
    もっと恐い事をしたくなる。





    「はい」


    持っていたミュールを階段に置き。
    私の汚れた左足を手で拭いてくれる彼女。



    …………。




    「大丈夫?」



    私よりずっと小さな背丈で、低い声で、冷たい目でそう言われ。




    「ごめん…」



    足引っ張っちゃって。



    「ごめ……」







    トン─



    壁に押し付けられ。



    ……んっ…。



    唇を塞がれた。




    病的に細い腕が、
    恐い程の力で私を抱きしめ。
    ヒステリックな指先が私の腰を這う。




    長い舌は。



    ………っ。



    はぁ……。
    は……っ。



    私の咥内を乱暴に責め続けた。







    「し」



    舌を交じらせたままで彼女が話す。



    ………?






    「あんまり声出すと見つかっちゃうよ?」




    ニヤっと笑って言い終えると同時─




    スカートが捲くり上げられ。










    深爪の指が侵入してきた。













    「お腹空いたでしょ?」


    彼女に言われ、
    人間として当たり前の欲求を思い出す。


    「うん」



    「何か食べに行こうよ」



    「うん」



    「コレで」



    ポケットにしまった戦利品を指さす。



    「…え?」






    「コレで、一番いいもの食べさせてあげるね」



    「…………」





    「ロイホにしようか」




    「…ちょっと贅沢だね」





    「でしょ?」








    私達の夏休みも残り僅か。







    非常階段からは。








    私たちの通う中学が見えた。











    fin.







    (携帯)
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■16286 / inTopicNo.56)  皆さんへ─
□投稿者/ エビ ちょと常連(94回)-(2006/09/02(Sat) 13:25:46)
    葉っぱさん─

    初めまして。
    ご感想&お祝いの言葉嬉しかったです。
    しかも覚えにくいと評判のこの日にご一緒の誕生日…。
    びっくり(笑)
    確か宮沢賢治も同じ日だったような。
    ありがとうございました♪


    海烏さん─

    どーうーもー♪
    エビフライ食べてくだすったんですか?
    ホンマに?(笑)
    私はあの日、釜上げしらす丼食べてました。
    んま♪
    昨年に続きありがとうございました!


    ゆららさん─

    初めましてこんにちは。
    お名前は存じ上げておりました、エビです。
    可愛くてユーモア…。
    今回は黒々してましてすんません(笑)
    今後とも宜しくお付き合いください。
    お祝いの言葉も、とってもありがとうございました♪




    (携帯)
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■16289 / inTopicNo.57)  おりょ!
□投稿者/ ちび 一般♪(3回)-(2006/09/02(Sat) 16:22:49)
    遅ればせながら、エビ誕おめでとう♪


    釜上げしらす丼かぁ!いいねぇ♪

    ちびは、たたみイワシが好き☆



    今回のブラックタイガーな感じも良かったっ★


    『賞味期限』も♪

    (携帯)
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■16296 / inTopicNo.58)  皆さんへ─
□投稿者/ つちふまず ファミリー(165回)-(2006/09/03(Sun) 11:54:16)
    (し。失礼しまーす)


    えー…と。




    とてとて。



    とてとて。


    (あ、椅子みっけ)



    ドス。(重)



    ふう…。


    あ、すみません(笑)


    皆さんお元気ですか?


    つちふまずです。


    季節はすっかり秋めいて来ましたね…。


    朝晩のひんやりとした空気に季節の移り変わりを感じる今日この頃。



    私にしてみれば─


    『夏が終わっちまったぜ…(哀愁)』


    問答無用に取り壊される海の家を眺めながらそんな事を思う次第です。


    今年の夏は…。
    皆さん如何お過ごしでしたか?


    私の方はというと。
    割と仕事が忙しくてですね…(涙)


    とは言いつつもやっぱり黒いです。
    夏になると自然と黒くなるようになってるみたいです。


    ゴホン─
    そんな事はよしとして。


    エビちゃんの板に何回かお邪魔していた私ですが…。


    気付いていた方もいらっしゃったみたいで(笑)


    ありがとうございます。


    因みに、私が書いた小説は…。


    『ktk』
    『rain』
    『犬になりたい』
    『願いが叶う頃』
    『デヘ』
    『よく晴れた日に』
    『Distance』
    『sexy』
    『あなたへ』
    『ムービースター』
    『26th』
    (何故かヤキハマグリ)


    でした♪


    どれが私かわかりましたか?
    割と沢山ありましたね(笑)


    エビちゃんのリクエストで書いたものもありますが…。


    ほぼ私が勝手に書かせて貰ったものがほとんどです(笑)
    エビちゃんありがとう♪


    さてさて─



    「100話になるまで一緒に遊んでやー」



    と、彼女から嬉しいお誘いを貰っているので。


    挨拶が遅れましたが…。私もヒマな時は、
    つちふまずとして。


    たまに簡単にお邪魔させてもらおうかと思います。(10話でまとめる力量は無いので)


    エビちゃんファン様のお目汚しになってしまうのは申し訳ないですが。


    そんな時は私の小説は飛ばして読んで下さい(笑)


    ではでは。




    ガタガタ─




    ………お??





    「何勝手に座っとる」



    おわっ!



    「あ、ごめん…椅子だと思ったよ」



    「私の殻の上に勝手に座っとるとは…いい根性しとるな?」



    「すみませんすみません(涙)」



    「ふん」





    つちふまずでした(笑)
    (^O^)★


    (携帯)
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■16297 / inTopicNo.59)  choice
□投稿者/ つちふまず ファミリー(166回)-(2006/09/03(Sun) 11:57:18)
    薄暗い店内で─




    二人の顔は、
    小さなキャンドルに照らされて。




    雰囲気は抜群。






    どんなのがタイプ?




    どんな人が、
    今あなたを独占してる?






    あなたに想われてるスペシャルなその人は─





    「普通な人だよ」





    無難なanswer─




    視線をグラスに落として肘を付いて困ったように笑う仕草は。




    誰を想像しながら?




    年上?年下?




    髪は長いの?
    それともショート?




    「怒ると怖いけど」




    歯を見せておどけて見せるけど。




    あんまり嬉しくないなぁ。




    常に私の前では穏やかに優しくて。決して波風なんて立ったりしない。




    そんなあなたは怒ったりするの?




    気になるけど─




    何だかおっかなくて。




    全然聴けない。




    「次は何飲む?」




    カウンターにあるメニューに手を伸ばす時。




    腕が私の体を掠める。




    クールな態度とは正反対な甘い匂いが私の鼻先から頭に届いて、




    脳の奥の奥が切なくなって。




    体の芯の芯が熱く熱くなった。




    「もう酔っちゃった?」



    見透かされてるのか。
    鈍感なのか、
    良く分からないけど。






    「全然」




    誤魔化すようにほんの少し残っていたマタドールを一気に飲み干す。




    テキーラの存在感のある香りが鼻に残った。







    友達?




    それ以上?




    確かめたくなる。




    「次は何にしようかな…」




    パラパラとメニューを捲る細くて長い指。





    酔いも手伝って、
    期待にも似た妄想が膨らんで行く。





    “次は”





    いつになるかは、
    分からない。





    “だから”





    勝負をかけるなら、
    きっとこんな夜だと。






    私は決意する。







    メニューを捲る指を、
    遮るように上から握る。





    「?」





    あまり驚いてない目が、ちょっと悔しいけれど。








    そう。




    いつもと同じじゃ、




    飽きるでしょ?










    「…たまには、違うものを選んで」









    どっちつかずな選び方は今夜は止めて。











    今夜は私が選んであげる。



    (携帯)
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■16298 / inTopicNo.60)  wave
□投稿者/ つちふまず ファミリー(167回)-(2006/09/03(Sun) 11:59:58)
    マズい─



    上半身にエアコンの冷気を受けているけれど。


    徐々に汗ばむ体に。


    マズいと思った。




    「…何かおしゃべりして」




    そう呟く彼女の頭は。
    さっきから私の下腹部に埋まっていて。




    舌で点と面を縦断中。





    あんな所にも、
    こんな所にも。




    「お、しゃべりって言っも…」




    声が掠れる。


    言葉にならない。


    おしゃべりなんて無理。




    さっきから小さな波はボチボチ現れてはいるけれど。


    まだ乗る訳には行かない。





    でもヤバいかも─




    意外にも早く来てしまいそうな大波に、




    ベッドカバーを強く掴む私の手を上から小さな手で包み込まれる。




    「…………っ。」




    自分の体が、
    おかしな程にしなるのがわかる。




    「…溢れて来た」




    わかってるよ。
    言わないでよ。



    恥ずかしいんだから。





    待って─


    そこは本当に。





    「ここでしょ?」




    そこは。




    「…………っ!」




    小さな顔のクセして長い舌を堅くして。


    ピンポイントで攻撃されると。


    息が出来ない。



    「………もう無理」



    無理。
    我慢出来ない。



    「もう?まだちょっとしか経ってないよ?」



    クスクスと笑いながら、私を上から見下ろす細くて綺麗な体。



    思わず唾を飲みたくなる。



    「…ダメ。」



    それなら、と。
    私の首に腕を回しながら、もう一方の手を。




    再び下へ下ろす。





    「つかまって」





    小さな体にしがみつくと。




    「…………んっ!」




    細い指が一気に侵入して来て。




    「遊ばせてね」




    余裕たっぷりに微笑みながら呟く。





    あの。


    探検してる場合じゃないから。




    こっちは必死なんだよ?




    「こっちに部屋があるね」


    「…………っ!」




    世紀の大発見?




    私にしてみれば、




    大波への最短距離?




    「…待って、待って」




    こんなのダメ。




    あっという間に、




    波に呑まれてしまう。




    「可愛い」




    私は悔しい。




    再び小さな体にしがみついて腕に力を込めると。








    肩越しに今日一番の波が見えた気がした。






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