| ベッド脇、 東向きの大きな窓。 白のブラインドから差し込む朝の光は割と眩しい。 いつも彼女の左、東側で眠る私は。 朝になると西側を向いている事が多い。 彼女はそんな私の頭を包むように、 東側を向いて眠っている。
実は。 実は彼女だって朝の光は眩しいんじゃないかと気付いたのは、 つい最近だ。
ちょっと変、 ちょっぴり不審者の匂いがするオジサンが電車で近くに立っていた時。 「こっちおいで」 ニコニコと笑って扉の端のスペースに私を引き入れた彼女。 「ん」 相変わらずニコニコと笑う彼女はさりげなく。 私と変なオジサンの間で壁になった。
実は。 実は彼女だって変なオジサンは気持ち悪いんじゃないかと気付いたのは、 ついさっきだ。
私が泣いた時は。 抱きしめ、少なくても的確な言葉をくれて、最後には必ず笑わせてくれる。
そんな彼女が。 私とそんなに背丈は変わらなくて、歳もひとつしか違わなくて。 感情任せに泣きたい時だってあるんじゃないかと気付いたのは。
やっと気付けたのは。
帰りの新幹線だ。
自分の小ささを受け止めそれを優しさに変えようとするには。
私は愛され過ぎている気がする。 彼女はカッコ良すぎる気がする。
私が彼女にもらう時間と空間、身体と心に満ち足りる優しさの中で。 幸せな、 幸せな時間のその中で。
彼女への愛しさを自分の強さに変えるのは…。
なかなかホネが折れるのだ。
彼女の為に何かしたい、 自分は何が出来るのだろう─
この気持ちは多分永遠に尽きない。
「ねー、今何か欲しいモノない?」
間抜けな質問にはやっぱり。
「ない」
あっさり答えられちゃったけど(あれま)
彼女が私にたったひとつ託してくれる、
「笑ってて?」
この願いを叶えることくらいは。
一介の会社員の私にも出来ると思う。
雨が空から舞い。 秋深まる夜。
「また来週」
ミラクルな約束を交わしてバイバイしたこの夜。
色んな想い溢れる、 この夜に。
ヘラヘラ笑顔で眠りについてみようと思う。
身を焦がす逢瀬の後─
あなたに降る夜が穏やかであるように。 明日へ続く今日が穏やかに過ぎゆくように。
ずっと愛してくれますように。
打算を込めて─
愛してる。
(携帯)
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