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■16964 / inTopicNo.21)  海鏡の月-14-
  
□投稿者/ 金丸 ベテラン(209回)-(2006/10/18(Wed) 02:55:33)

    飴作りはやってみるとなかなか面白いものだった。

    でも店員以外の人間がやることに対してお客さんが知ったら嫌だろうし

    巻く飴の量のことも、これでいいのか と迷って

    あまり手を出さないようにしていた。


    やる時は四季がトイレに行く時位。


    トロい手つきで無くなった飴を補充する。


    お客さんが来ない間はたわいもない話をしていた。


    『ふーんふーん。他人の前じゃノロケるのに本人の前じゃノロケないんだぁ〜。』

    「ノロケませんっ。」

    『ふーん』

    「…


    本人の前でノロケられる人は積極的な人。」

    『あそぉ。(笑)』





    『お前だってキャスター大好きな癖に。』

    「…キャスターが好きな訳じゃねぇよ。…」

    『あーあー四季ちゃんが吸ってるから好きなのね。(笑)』


    「うっせぇっ。(笑)」




    青い飴にミカンが乗って星型の砂糖菓子が乗っているのを指し

    ぼーっとしていた私は何を思ったか

    「…ねぇ」

    『あん?』

    「これ夜空?」

    『へ?』

    「ぬぁっ!!!!いやいや忘れて!!!!」

    柄にもない発言を後悔してたのに


    『かわいいこと言うね〜(笑)』

    「いやいやいやいや忘れて!!!なかったことにして!!!!」

    『かわいいかわいいね〜(笑)』

    「うるせぇ!!!!!!!(笑)」



    もう外も暗くなり

    気温も低くなる


    上着を羽織る四季をみて



    赤く染まった四季の手をみたら

    冷え性の四季の手が

    余計に冷えてるように思えた


    でも

    私には

    四季の手を握る勇気はなくて




    「椅子動かして。」

    『あん?』

    「だから…」

    ガタガタと四季の座っていた椅子を動かし座らせ

    肩揉みを始めた


    『んぁー。』


    「…」


    『いででででっ』


    「この位?」


    『んー。』




    私が近づいて

    肩揉みして

    少しでも

    温かくなってほしかった

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16965 / inTopicNo.22)  海鏡の月-15-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(210回)-(2006/10/18(Wed) 03:22:23)

    すぐにお客さんが来て

    心のどこかで少し

    落胆していた。


    お客さんの波が過ぎて

    二人で別々に座っていると

    姉から電話がかかってきた


    <もしもし?いつ頃帰ってくる?>


    四季の顔を見る


    「ん〜10時位に終わるらしいから片付けしてから帰るよ。」

    <帰りにタバコ買ってきて〜>

    「あぃよ。じゃぁね。」


    携帯を閉じると四季が

    『大丈夫だよ。帰っていいよ。』

    「ううん。」

    『あそぉ。』










    「いいじゃんね。」

    『ん?』


    「1ヶ月ぶりなんだからいいじゃんねぇっ。」

    『あそぉ。ははっ(笑)』



    言っておきながら心の中は恥ずかしさでいっぱいだった。


    お客さんも子供からカップルが多くなり

    片手に日本酒の入った升を持ったお客さんも来るようになった時間

    少しずつ片付けを始めた。


    けど何をどうしたらいいかわからず

    ぼーっと眺めることしか出来なくて

    歯がゆかった。


    『アイツにこれどうすんのか聞いてきて』

    「ん。」


    チョコバナナの出店に向かって

    しゃがみ込む


    「久しぶり。」


    と笑顔で言う


    「…おー!!!久しぶり!!!わかんなかった!!!(笑)」


    相変わらず可愛いアコちゃんは

    髪が伸びていて


    「あははっ。あ、ねぇねぇ四季があれどうすんのかってさ。」

    「あーあーあー、全部紅白の中に入れるように言っておいて。」

    「わかった。じゃねっ。」

    「うんっ」


    小走りで四季の店に戻り

    「紅白んなか入れるんだって。」

    『そかそか。』


    ガタガタと片付ける姿をみて

    何か手伝うことはないかと探してみるけど

    勝手がわからない…


    『下に箱があるから取って。口あいてるやつ。』

    「なんか乗ってるよ。」

    『適当にどかして。』

    「んっ」



    結局ほとんど手伝うことが出来ずに

    パパさんが来て片付け終わってしまった。


    「四季」

    『ん?』

    四季の腕と私の腕を組み

    「ほっ」と

    昔授業でやったストレッチを始めた

    『あ゛〜っ帽子脱げる帽子脱げるっ』


    四季を下ろして

    「手。」

    今度は脇腹を伸ばした。

    『あででででっ』


    「ほいっ。じゃぁあれに座って。」

    『ん』


    しまわれた店の影で肩揉みを始める



    その肩がかたくて

    ちゃんとほぐしてあげたいと

    むしろ全身ほぐしてやりたいなぁと

    心の中で思っていた

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16966 / inTopicNo.23)  海鏡の月-16-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(211回)-(2006/10/18(Wed) 03:33:47)

    駅までアコちゃんを含め数人で歩き

    私だけは少し離れた駅に向かう為

    軽く挨拶をして

    別々になった。


    繁華街はギャルやB-boyやギャル男、ホストやキャバ嬢、ちらほらと店をしまう人で

    賑わっていた。



    なぁんも出来なかったなぁと少し落ち込みながら

    疲れて早く帰りたいと早足で歩く


    三人でたむろしていたギャルがでかい声で話していた

    「ねぇ〜声かけられた?!
    私一回も声かけられなかったんだけど!!
    最近マジかけられないんだけど!!



    お気の毒に…


    私はナンパされたよ。



    パンチパーマのおじちゃんに。



    うれしくねー



    と心の中で呟いた。


    混みもしていない電車に乗り

    地元の駅に着く


    自転車で来なかったことに後悔しながら

    暗い夜道を

    空と星を見ながら歩き出した

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16967 / inTopicNo.24)  海鏡の月-17-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(212回)-(2006/10/18(Wed) 03:46:52)

    御陰様で地元はとんでもない田舎で

    月を眺めながら

    歌っていた。



    疲れた体の


    心の中



    四季の温もりを思い出す




    少しは役に立ったのだろうか



    赤く染まった手は かじかんでいたのだろうか




    四季は楽しかったかな



    疲れた体

    もっとちゃんとマッサージしてやりたかったな



    傍に居たいなぁ



    口ずさむのは


    スタンド バイ ミー。



    明日早いのかな



    月が



    綺麗だ




    吐く息が白いことに気づく



    四季が


    風邪ひかないといいな




    隣で


    寝たいなぁ




    私は




    私は





    いつか



    キス出来る時がくるんだろうか

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16968 / inTopicNo.25)  海鏡の月-18-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(213回)-(2006/10/18(Wed) 04:01:09)

    だいぶ怖くはなくなった


    けど


    だけど




    あいにく根性がないんだよなぁ(笑)



    いつになることやら…



    歌は終わって


    静かに考えだした。




    もし


    キスができた時


    私は


    泣くかもしれない。


    拭えなかった恐怖と

    嬉しさと


    戸惑い



    色々なものが押し寄せて


    泣くかもしれない。


    はははっ


    困るだろうなあいつは。(笑)




    でも



    キスしなくても幸せだよな


    ただ逢えるだけで


    ただ喋るだけで


    ただ隣で眠るだけで。



    家に着く直前



    最近体の調子が悪いと言っていたことに


    私に出来ることはあるだろうかと考えていた。



    それは眠りに落ちる直前まで続いた。




    夕方

    店で

    四季が顔を上げた時

    海が驚きとっさに出した言葉



    「こわい」



    それは



    拭えなかった恐怖から生まれた言葉だと


    海が気づくのは



    翌日




    その時の四季の表情を


    海は見逃していた


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16997 / inTopicNo.26)  海鏡の月-19-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(214回)-(2006/10/21(Sat) 13:09:47)

    誰も居ない

    ガランとした空間


    白い壁

    間接照明のように薄暗い光

    だけど優しくはない


    冷たく硬い床


    一つ小さな鏡がある

    窓はとても高い場所に


    背伸びをして腕を伸ばしやっと指先が触れる程度



    落ちる影はゆらゆらと

    ぼやけるように私の分身を床に映す



    血の通わないこの部屋に


    どんどん体温は奪われる



    冷たくなり始めた指先



    縮こまることなく

    ただ海は突っ立っている




    探すこともせず


    ただ何かを見つめる



    やがて

    部屋の隅に

    膝を抱えて座り込む


    ただ己の呼吸に耳を澄ませ


    一点を見つめる




    寒さはもうない




    高い窓からは


    夕空が見えた



    部屋がオレンジに染まる



    ふっと



    あのお香が薫る




    静かに目を瞑り


    海は立ち上がり


    部屋を出る

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16998 / inTopicNo.27)  海鏡の月-20-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(215回)-(2006/10/21(Sat) 14:16:25)


    「一緒に


    歩こうか。」


    「うん。」



    手を繋ぎ


    同じ歩幅で歩く



    細い路を


    同じ背中が並んで


    月灯りに影が落ちる



    「早くない?大丈夫?」


    「うん。」


    「そっか。」



    「下弦だっけあの月…」


    「多分。」


    「綺麗だね。」


    「うん。」


    強く手を握りしめられた


    「ん?」


    ただ

    見つめてくるだけ



    「んん?どした?」


    手が緩む


    「ううん。」



    「んん?」



    軽く握られた手は

    離れることなく

    温かさが伝わる



    「少し

    寒いね。」


    「うん。」




    薄くだけど

    息が白い



    空を見上げる


    「お弁当箱に梅干しみっつ♪」


    「え?」


    「ん?あぁオリオン座。」


    「?」


    空を指差し

    「ほら。あれ。」


    「……あっ。」


    「めっかった?」

    「うん。」


    二人でニヒヒと笑った



    「あれしかわかんないんだよね。」


    「充分じゃない?」

    「そうかな?」


    「うん。」


    「そっかそっか。」



    心の中


    会話する




    二人の私






    小さな海と

    普段の海



    二人手を繋ぎ


    寒空を歩く



    繋いだ手は

    離れることなく



    月灯りに照らされる

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17019 / inTopicNo.28)  海鏡の月-21-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(216回)-(2006/10/23(Mon) 02:22:04)

    私の


    甘い香りに


    アナタは気づいているだろうか


    儚く香る


    僅かな匂い―





    「…」

    無言でつつく


    同じように手をあげて と仕草する


    引き上げられた手を引き寄せ


    袖をくんくんと嗅ぐ


    「よし。」と手を放す


    『なにがや(笑)』

    くんくんと嗅いで

    『なんの匂いもせん。』


    「するよ。」

    『あたしにゃわからん。』


    「お香の匂いと…ね。」


    『ふ〜ん。』




    一つしか無い香り



    そんな匂いが


    私にも僅かにある


    タバコや

    香水

    シャンプーの匂いに消されている


    ココナッツに似た匂い



    気づいているだろうか


    知らないだろう





    「あっ…海の匂いがする。」


    後ろを歩く同級生が言った


    「えぇ?!クサイ?!」

    「ううん。
    なんか…
    少し甘いってゆうか…
    なんていうか…
    とにかく海の匂いっ。」


    「えぇ?!わけわからん!!!臭くはないの?」


    「うん。」



    どれだけ鼻が良いんだか。



    匂いに気づいたのは


    その時から4年後




    この匂いに気づいた人は



    どれだけ居るんだろうか



    男口調の


    こんな私の


    甘い香りに

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17063 / inTopicNo.29)  海鏡の月-22-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(217回)-(2006/10/25(Wed) 03:24:09)
    どこからか

    甘い香りがした


    あの匂い


    あのタバコの

    あの頃の匂い



    キョロキョロと探してみたけど

    君は居る筈もなく


    タバコの姿も無かった。



    恋しいのだろうか。



    手を握った


    首筋を撫でた


    頬を撫でた




    恋しいのだろうか。



    唇に触れた指先が冷たくて


    窓の外は雨が降る。


    うざったい程長くなった髪を手グシを通した



    あの日の

    この髪に触れた君の手が


    恋しくなる。



    君の


    あの柔らかいほっぺたが


    またおでこに感じられないかなぁと

    目を瞑る。



    体の力が抜ける。



    夕方

    落書きをして


    気づけば君の眼を描いていた


    睫が多くて

    長くて

    少し垂れ目で

    二重の幅が広くて


    あぁ濃いな


    眉毛は少しキツくて


    あぁこれこれ。



    君の眼を思い出す


    君の肩を思い出す


    君の手を思い出す




    デコルテ

    背中



    優しく笑う口元




    この想いが届けなどとは思わない


    私のことを考えてほしいなどとも思わない


    ただ


    ただ


    ただなんだろう



    ただ…



    もう今は


    君の胸の中で眠りたい



    ただ


    恋しい



    君の隣で


    無垢に笑いたい

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17073 / inTopicNo.30)  海鏡の月-23-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(218回)-(2006/10/25(Wed) 21:21:25)
    海は極端に嫉妬をしないし、束縛もしない。


    四季が彼氏を作ろうと

    海が抱くのは

    四季の周りに居る人々への嫉妬


    ―すぐに逢える―


    それだけだ。


    海は四季とゆう彼女が居る。

    海は幸せで四季をとても好きだ。

    四季には海とゆう彼女が居る。

    とても真っ直ぐに愛してくれる不器用な奴。


    四季には彼氏がいる。

    とても自然を愛している優しい

    子供みたいな人。



    三角関係というものなのだろう。



    海は四季に彼氏が居ることを知っている。


    海は願っている


    彼氏を大切にしてほしい と


    自分のことはいいから彼氏を優先させてほしい と


    なるべくうまくいってほしい と。



    海は四季を愛している。

    それは変わらず昔も今も。


    海はただ


    たまに四季に逢い


    笑って

    温もりを感じて

    小さな幸せを一つもらうだけで


    本当に満足している。



    これを話すと

    「うーん…」や

    「本当にいいの?」や

    「すごいね」と言われる。


    みんな眉間にシワを寄せて首をもたげたり、傾げたり。


    「幸せだよ。」と言うとみんな不思議がりながらも

    「海が幸せならいいか。」と言う。



    愛に定義がないのなら

    不思議はない。

    そこに愛があるのなら

    不思議はない。


    幸せは

    柔らかくて

    どの形にもなる。


    心の中にある受け止める器さえしっかりしていれば

    幸せは

    愛は


    その形になり

    温かさとなる。



    今日もまた

    笑う海が居る


    笑う四季が居る


    笑う彼がいる。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17088 / inTopicNo.31)  海鏡の月-24-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(219回)-(2006/10/28(Sat) 00:24:38)
    「元気かー」


    そんな文章からメールが始まる。

    「元気だよー」

    そんな文章で終わるメールが多い。


    この数ヶ月電話をした回数は

    待ち合わせの確認を除けば二回だ。

    一度目は四季から。

    二度目は海から。


    二度目の電話はなんとなく。

    特に理由はないが

    たまにはカップルらしいこともしてみようか とゆう思いつきだった。


    まぁ、そんな理由でかけた電話が続く筈も無く

    20分もしないうちに

    『じゃぁまたメールする。』

    いつもの言葉。

    「うん。あんがと。」

    『じゃぁね。』

    「オヤスミ。」


    電話を切った海は

    「やっぱり慣れない事はしないほうがいいな

    それに

    やっぱりうちらは

    逢って話すのが一番いい」


    思い返すのは

    四季の声と

    あの優しい笑顔。




    電話の向こうの君は

    あの笑顔だったのだろうか



    そうだといい



    優しい笑顔を思い出し

    心が温かくなる。



    君は

    何をしたら喜ぶだろうか


    どんな時幸せだと思うのだろうか


    辛い時私の顔は浮かぶだろうか


    あの小さな手は冷たくなっていないだろうか



    元気かな


    また焼酎飲んでんのかな

    弱くなったって言ってたけど

    少しは控えてんだろうかアイツは。




    収入も少しは安定して


    ある程度貯金も貯まってきて


    恋もして


    充実してきたのか

    少しだけ変わってきた



    部屋を綺麗にして

    模様替えもして

    出費は出したくないから工夫して


    喋り方も少し変わった気がする


    髪ものびて

    不器用ながらもセットして

    不慣れながらも化粧をして

    よく笑っている私の顔は

    少しは痩せたんだろうか…

    まぁいいや。


引用返信/返信 削除キー/
■17090 / inTopicNo.32)  海鏡の月-25-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(220回)-(2006/10/28(Sat) 01:57:15)
    傍で

    まだ首の据わらない赤ん坊が居る。

    こいつの目の前で二度泣いた。

    悲しい涙と

    愛情が湧いた涙。


    止め処なく溢れる涙と

    ホロホロと静かに落ちた涙。


    不安と

    安堵。


    愛しく想う


    無垢な笑顔に


    何故だか

    居場所を感じた。




    誰かの笑顔に私の居場所はある

    それに気づいた時

    私の笑顔も誰かの居場所になることに気づいた。


    大好き がいっぱい溢れた笑顔には

    『居場所』が生まれる

    たとえそれが

    忘れ去られる運命だったとしても

    そこに『居場所』があったことは消えない。


    身の回りには

    優しい歌が沢山溢れてる

    その中の幾つかしか

    触れられていない


    だけど

    触れられた時の優しさや温かさは

    消え去りはしない。


    たとえそれが

    忘れ去られる運命だとしても

    消えはしない


    たとえそれが

    置いてけぼりにされる運命でも

    また手を差し伸べれば優しく包んでくれる。


    たとえあなたが

    過去の人になろうとも

    今に続く想いがある。


    たとえあなたが

    独りでも

    孤独という温もりがある。



    不幸だと

    嘆く足元には

    ちいさな幸せが咲いている

    沢山の幸せを見逃してきた

    沢山の幸せを抱いてきた

    取り残された幸せは

    どこ行くこともなく

    あのときの自分の傍で咲いている

    今の自分の傍にも

    ちいさな幸せは咲いている。



    どうすればいいかわからない時

    その時はそれでいい

    何かを見て

    何かに気づくときが来る。


    少なくとも私はそうだ

    あなたは違うと思うかもしれないし

    実際そうなのかもしれない

    ただ

    ひとつ

    そうゆうことも有り得ることなのだということを

    頭の隅においておいてください

    ただの

    一例として




    私は

    幸せです


    苦しいときも沢山あります

    迷いも沢山あります

    不安も少しあります

    だから

    私は

    幸せです


    孤独や

    寂しさを感じたとき

    あなたを浮かべて

    自分の力の見直しをします


    そのとき

    あなたの優しさが

    温かく感じられます



引用返信/返信 削除キー/
■17143 / inTopicNo.33)  海鏡の月-26-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(221回)-(2006/11/01(Wed) 02:20:57)

    仕事でたらふく呑んで

    寒空の中を自転車で走った。


    風が冷たくて


    君が恋しくなる。


    逢いたいと

    言葉で伝えられない代わりに

    逢いたいと

    行動にできない代わりに


    私は月を探した。


    あいにく曇り空で

    夕方見た月を思い出し

    君に教えてもらった月の名前を思い出した



    「か…げん。」


    曇り夜空に呟いた



    吐く息が白くて


    ハンドルを握り締めた。


    「下弦…」



    君の名前を呟くように


    月を呼ぶ



    強く目を閉じて


    また強く目を開ける


    優しい唄に包まれた。


    月の姿はないけど


    私は名前を覚えた。


    君が隣に寄り添い

    月を指差し教えてくれた。


    君の名前を呼べない代わりに

    月の名前をそっと


    曇り夜空に投げて



    還らぬ声に


    耳を澄ませた

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17151 / inTopicNo.34)  こんばんは!
□投稿者/ よっしー 一般♪(3回)-(2006/11/02(Thu) 00:45:43)
    本当にお久しぶりです
    こうやって感想を書くのは久しぶりですが、更新されるたびいつもチェックしています(´∀`)
    感想は色々あるけれど、金丸さんの「お話」が一列に並べられているのを見るのが好きだったので、ロムってばかりいました(笑)


    「君が恋しくなる」

    この言葉っていいですね。
    なんだかすごく気に入って、好きな人のことを思いだし、「恋しく」なってしまいました

    長々とすみません。
    「海鏡の月」とてもおもしろいので、更新楽しみにしていますね
    最近寒くなってきているので、風邪などひかれぬようお気を付けください
    それでは失礼します


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17176 / inTopicNo.35)  よっしー様
□投稿者/ 金丸 ベテラン(223回)-(2006/11/05(Sun) 20:06:19)
    お久しぶりです。お元気でしょうか?

    いつも見てくれて本当に嬉しいです。(*´ω`)
    ズラッと並んでるのが好きなんですか(笑
    なかなか更新しなくてズラッとはいかないですが(笑


    その中で気に入った一言があった事嬉しく思っています。

    色々有難うございます。

    頭の中をまとめるのが苦手で返事が遅くなって申し訳ないです。すみません。


    多分更新は遅いでしょうがどうか気が向くだけお付き合いください。


    金丸


    あ、ちなみに何とかは風邪引かないので全くもって健康です。御配慮ありがとうございます。(*´ω`)

    (携帯)
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■17177 / inTopicNo.36)  海鏡の月-27-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(224回)-(2006/11/05(Sun) 20:21:23)
    携帯の画面に[新着メール受信]の文字

    送り主は四季だった。


    『今日忙しい?』



    「バイトだよ〜。」

    逢いたいのかな



    『あ〜そっか』

    「なんで?」

    『行こうかなと思ったけどやっぱいいや』

    「這這這這這這這這這這這這這這(゚Д゚)

    んなら私が行くわ」


    『明日あるけ〜いいよ』


    「お前が逢いたいと思った時逢いたいよ」


    『かっこいい〜』


    「ばかかっ(笑

    遅刻すりゃいい話だしな」


    『そこまでせんでえぇよ〜』


    「そこまでする価値があるのよ私には。

    で逢うのか逢わないのか」

    『どこで逢う?』


    「お前んちでいいんじゃない?」



    そのメールを送ってから私は

    マッハで家事を終わらせ

    マッハで風呂に入り

    生理が来たことに落胆しつつも、そんなことに構っている暇はなく


    自転車を走らせた。


    化粧より時間が優先で


    その理由は


    化粧なんざどうでもよくて、要は逢っている時間を少しでも長くしたいからだった。



    電車の中で走りたい衝動に駆られながらも


    一番早く進めるルートに陣取るしか出来なかった


    『鍵あいとるけ〜』

    「あいよ」



    生理痛はどんどん酷くなるけど


    それより四季だった

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17183 / inTopicNo.37)  海鏡の月-28-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(225回)-(2006/11/06(Mon) 03:49:42)
    生理痛と時間を相手に戦う海はメガネの奥で睨みをきかせながら早足で

    頭の中は

    「一秒でも早く」

    それだけだった。


    何時間にも感じられた道のりはアパートの四季の部屋の前で

    現実に戻った。


    緊迫した自分を自由にしてやり

    鼻息をフンッと吐き出して

    いつもの海に戻る。


    そしてドアを開ける


    「おはよーございまーす。」


    『おー。』


    四季は洗濯物を干していた。


    ベッドの前に座り「あっつ…」と小声で言いながら

    重い方のタバコを取り出しマッチを擦った


    一口吸って吐いた白い息の先には


    頭が若干ボサボサのメガネをかけた四季だった。


    ボーっと見ている内に、洗濯物を干し終わった四季はクッションに座り

    同じようにタバコを吸い始めた



    『天気いいなぁ〜。どっか行くかぁ。』

    海はただ嬉しそうに四季を見つめるだけ


    『ん〜チャリか歩きか電車か…』


    そう言いながら四季は床を掃除し始める


    ハンディークリーナーは見る見る内に威力が弱まっていって


    『やべっ充電がねぇっ』と言いながら掃除機をかけ続ける四季


    海はその一言から長い間考え続けた悩みを打ち明けてしまおうと思った。


    部屋の中をウロウロと片付けをする四季のズボンの裾を引っ張っては

    『セクハラッ』

    「知ってる」

    と会話を繰り返す。


    本当は海は「知ってる」じゃなくて「ねぇ。」と言いたかった


    だけど


    言えなくて



    「ねぇ。」


    『あん?』


    「クリスマスプレゼント、掃除機とセルフどっちがいい?」


    『はっ?』


    「ずっと悩んでたんだよね。
    プレゼント。
    でも実用品か消耗品しか思いつかなくて。
    掃除機がいいかなって思ったんだけど、セルフと迷って。」


    『セルフ。んでまたお前は悩みすぎてブラシとか買うんだろ。』


    「いやいやセルフって一緒に買い物行って四季の好きなもの買うんだよ。」


    『はっ(笑)』


    「色んな人に相談したんだけど決まんなくて。
    そりゃ本人じゃないから当たり前なんだけど。
    うちら本当に何が欲しいとか話さないし。」


    『今更クリスマスっていってもね。』と四季はただ笑うだけだった。





    四季


    私はね


    クリスマスを2人で過ごしたいなんて思ってないよ


    本音を言うと

    クリスマスは彼氏と過ごしてほしい


    ただ


    恋人になれたから

    恋人としてプレゼントをしたいんだ

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17187 / inTopicNo.38)  海鏡の月-29-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(226回)-(2006/11/06(Mon) 12:20:57)
    『歩きか2ケツか電車どれがいい?』


    海は時計を見て


    「歩き。」


    『歩きかぁ〜30分くらいかかるよ。』


    「靴にもよるよ。私のは長く歩けるけど、四季がブーツとかなら歩きじゃなくていいよ。」


    『いやあたしは大丈夫だけど。』


    「じゃぁ歩きで。」


    いそいそウロウロと四季は上着を羽織ったり用意をして


    玄関を出た。


    「今日雲が綺麗だよ。」

    『ほんとやなぁ〜。』


    てくてくと同じ速度で歩いて


    同じ景色を過ごした

    鳩や

    雀や

    カラスや

    猫や




    たわいもない話をしながらてくてく歩く


    『ん。』と出された手を

    躊躇わずに握った


    顔は相変わらずニヤけているけど


    少しだけ

    前よりは恥ずかしくなくなった。


    『本当天気えぇなぁ。あっつい』

    「あついねぇ。」

    『本当暑い。ってゆうかお前が熱いんだよ。(笑)』

    「あぁ。(笑)」と


    放していいよと手を開いた時の間は


    少し寂しくて


    少し自分の体温を恨んだ。


    コンビニでコーヒーとお茶を買って


    また歩き出す。



    生理痛が酷くなってきて


    靴の中の靴下は半分下がってマメができて


    痛いなぁと思いつつも


    2人歩くことが幸せで



    両足に結構な痛みが走っても


    海は四季と同じ速度で歩いていた。


    「…っ。」


    『どした?』


    「ねぇあとどれくらい?」


    『どれくらいっつーか目の前のあそこだよ。』


    「じゃぁ言う。実は足にマメが出来てまして痛くて若干内股になってる。」と海はニヘヘと笑い

    『はよ言えやっ。』と、たしなめられてしまった。


    公園に着くと

    親子連れやカップルの間をぬってビニールを敷いた


    腰を下ろすと海は靴を脱いで

    「ほら半分しか履けてない。」と笑った

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17188 / inTopicNo.39)  海鏡の月-30-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(227回)-(2006/11/06(Mon) 23:38:35)
    長い間

    ポツポツ話しながら

    家族連れや

    カップルや

    凧上げをしているお爺さん達を眺めていた。


    空の色が変わり始めた頃になると

    会話はなくなって


    海は時折、四季を見つめた


    『ぁん?』

    「睫多いなぁって思って。」

    『あぁ〜。これでも昔よりは減ったよ。』

    「何、もっとモッサリだったわけ?」

    『中学んときが一番濃かったんじゃない?まず隙間が無かった。』

    「はぁ。」


    濃い顔はさておき、睫なんて理由は後付けで


    ただ

    見ていたかっただけだった。


    『夕日が真っ赤っかや〜。』

    「ん?本当だ。綺麗だね。」

    『あぁ。』


    気付けば家族連れは少なくなって

    走り回っていた小さな子供達も少なくなっていた


    少し気温が下がって

    四季は『寒い。』が口数少ないこの時の口癖になっていた

    海が羽織っていた上着を脱ごうとすると

    『いいよ。』と間髪入れず四季が言ったのに対し、海は悔しそうな変顔をした。


    四季がゴソゴソし始めたと思ったら

    『寝る』と言い出し

    膝枕をした。


    組んで伸ばしていた足に頭を乗せ、かぶってきた帽子を顔の上に乗せた

    『ん〜高い。』と文句を言うので組んでいた足を解いた

    『ちょうどいい。肉厚だし。』

    鼻で笑って「うるせぇ。」と帽子が乗って見えないのをいいことに

    海は少し

    愛おしい目を四季に向けた


    今度こそ羽織っていた上着を四季にかぶせると

    『いいつってんだろ。』そう四季は言ったが海は無言だった。



    ふと気づくと

    サッカーをしていた外人さんが手を伸ばして写真を撮っていて

    なんのポーズだろうと海が後ろを振り返ると

    まんまるなお月様が居た。


    「ねぇねぇ見て。月が綺麗。」


    『んぁ?』と帽子をはいで四季も月を眺めた


    『本当やなぁ。』

    「ウサギが餅ついとる。」

    『ふっ(笑)。あ、こっちむいていいよ。月見たいだろ。』と頭を上げた


    「よぃせっ」と上体を少し上げ
    地面に着いていた手に付いた芝生を払い、反対を向いて また同じ姿勢をとる。


    しばらく月を眺めていた


    どんどん気温が下がって

    生理痛が酷くなる


    手も痺れてきた



    だけど


    この状態をやめるのは

    少しどころか大分惜しいと海は思う





    大好きな人が


    自分の膝枕で寝ていて


    周りには人が居なくて

    ほぼ二人きり


    月が綺麗で


    足から伝わる体温が温かい


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17189 / inTopicNo.40)  海鏡の月-31-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(228回)-(2006/11/07(Tue) 00:06:28)
    そんな幸せな状態は海からしたら自分の体なんて比べものにならない程

    どうでもよかった。


    四季が起き上がりトイレに行った後


    足の寂しさを感じながら海はタバコに火をつけた。


    遠いトイレから帰ってくると

    四季もタバコを吸い出した


    携帯を見て笑うと

    『まだ言ってねぇのかよっ。あんだけ背中押したのに』とまた笑う


    「花さん?告白すんのってなかなか出来ないんだよ。」と思い出しながら海は言う


    『そろそろ行くか。もうすぐ着くらしいから。』

    四季がそう言うと海は本日何本目かのタバコを消そうとした

    『いいよ。それ吸ってからで。』

    「そか。」と海は2、3口吸うとタバコを消した。


    二人は立ち上がりゴミを片付け

    敷いていたビニールを畳んだ


    「あででででっ!!足痺れた!!!」

    『いやーん痛い子が居る〜』

    「あででででっ!!いででででっ!!」


    『ほぃ』


    そう言って四季が出した手を

    痺れに歪んだ顔で恥ずかしさをごまかしながら


    海は手を握った。


    『あったかいな。』

    「私にしたら冷たい方だよ。」


    四季は万年冷え症らしく

    海は心の中で

    早く緊張であったかくなれ 手よ

    と念じていた。


    人並みをかいくぐり

    駅前に着くと 四季は花に電話をした。

    が、


    駅を間違えて教えていたことが発覚し

    花がくるまでマックに入って待とうとしたが、あいにく喫煙席は満席でマックを後にした。


    道をキョロキョロと店を探していると四季が

    『あれドトール?』

    「ん〜…ドトールやね。」


    二人は同じタイミングで歩き始めたが

    同じタイミングで四季が好きそうな店を見つけた


    「寄る?」と言いながら海は四季を押す

    四季は無言で店に入り二人で物色し始めたが、気に入るものは無く5分も経たない内に店を出てドトールに向かった




    (携帯)
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