ビアンエッセイ♪

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■20614 / inTopicNo.1)  犬に願えば
  
□投稿者/ つちふまず 一般♪(1回)-(2008/02/25(Mon) 09:09:32)
    軽くギャグです(^0^)



    (放置小説はさておき…すみまそん)



    よろしく♪




    つちふまず





    (携帯)
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■20615 / inTopicNo.2)  犬に願えば 1
□投稿者/ つちふまず 一般♪(2回)-(2008/02/25(Mon) 09:12:17)
    ガサガサ。




    ポリポリポリポリ。




    ガサガサ。




    ガサガサ。









    あ、なくなっちった…。




    …………っと。




    あぶなっ!!
    ……………………!!





    特に寝不足だった訳でもましてや酒を飲んでいた訳でもない。




    “ピーポーピーポー”




    危惧するような出来事があった訳でもなく。




    “おおい!こっちだ!”



    恋は終わり、打ちのめされていた時期はとっくに過ぎていたし。




    “こっちです!はい!”



    帰ったらいつも通り、ピーナッツを摘みながらビールでも飲んで。




    “あちゃー…”




    面白そうなテレビも無ければ。




    “ひでーな…”




    古本屋で買って来たドラゴンボールでも読んで。




    “運転席が無くなってるな…”




    風呂に入って寝るのみ。なーんて思っていたのに。




    “無理ですかね?”




    その日は一日中冷たい雨が降っていて。




    “諦めんな。見えるか?何とか出してやらないと…。”




    夜には雨は雪へと変わっていた。




    “いくぞ!せーの!”




    首都圏に住む人間ならノーマルタイヤで充分だって思うし。




    “よし、見えたぞ。…大丈夫ー!?聞こえますかー!”




    ましてや“凍結注意”の表示があったとしても大して気に留めはしない性格だから。




    “おおい、そこの新人!気分悪くなってる暇はねーんだ!シート持って来いや!”




    ─自分がまさか
    こうなるなんて。




    “ピーポーピーポー”




    思ってもみなかったんだ。




    “ピーポーピーポー”




    今日私は。




    “ピーポーピーポー”












    生涯を終えた。


    (相原 晴香 享年25)




    (携帯)
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■20616 / inTopicNo.3)  犬に願えば 2
□投稿者/ つちふまず 一般♪(3回)-(2008/02/25(Mon) 09:15:20)





    スタスタスタ─






    「…いたいた。やっと見つけたニャ。」




    コン。




    ─いて。




    「…そろそろ起きるニャ」




    コンコン。




    ───いたい…。




    「起きるニャ」




    コンコンコン。




    ──もう、ちょっと…。最近残業続きだったんだから…。




    「寝起きの悪い子だニャ」




    ─…もうちょっと寝かせ、て…。




    「仕方がないニャ」




    ──そう。あと五分…。









    ─ゴン!!




    「いだーーーー!!」


    「起きたニャ♪」


    「いだいいだい!………って、」









    え。






    こ、ここは…。




    見渡す限りの。





    白、白、白。





    足元を見れば、
    ふわふわと白く。
    ドライアイスみたいな。


    雲の、上…。




    「おはよう。」




    「え。ぎゃあ!!!」




    化け猫!!!




    「そんな驚くニャ。お前さんのイメージをそのまま具現化したニャ。」




    「具現化!?」




    上から下まで真っ白い毛に包まれた、身長は私の腰位だろうか。




    2頭身に近い体型。




    百日紅のようなツルツルとした木目の、


    杖を持っている。




    「こういうイメージを持つ人間も珍しいニャ。」



    自分の体を眺めた後に、まん丸の肉球から伸びた短い爪で。


    長い髭を撫でた。




    どっかで見た事あるような…。



    …そんな場合ではないわ。




    「あの、えー…。」



    「簡単に言うと」



    コン、と杖を鳴らした。



    「お前さんは死んだニャ」




    「…………。」




    「見つけるのに時間がかかってニャ。一年位、時は経ってしまったニャ。」


    「…………。」


    「という訳で待たせた分しっかり働いてもらうニャ。」




    「えー…」




    私は、死んだ…。




    「現状を把握出来ないのも無理無いニャ。」




    ふう、とため息をついて白い体躯を折り畳み座った。




    「死んだ…。」




    手の平を見ても、とてもそうは思えない。




    「そう、交通事故ニャ。即死だったから苦しまなかったニャ。」




    見ると、
    大きい口から伸びた舌で肉球を舐めている。




    「事故…ああ、そうだっけ、か…。」









    記憶を辿る。




    (携帯)
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■20617 / inTopicNo.4)  犬に願えば 3
□投稿者/ つちふまず 一般♪(4回)-(2008/02/25(Mon) 09:19:41)
    「ハンドル切り損ねて…。」



    夜の闇と─
    ワイパーの速度。


    流れるテールランプ。


    「そう、じばく。ニャよ。」


    「はあ…。」



    その瞬間を思い出せないって事は、
    相当な勢いで突っ込んだんだろうなぁ。




    「は。ははははは」

    「ニャ?ニャハハハ…何を笑っとるニャ」




    バカだなぁ。
    まだ25だったのに…。



    あら。
    って、事は。



    「あなたはさながら…」


    「ニャ?」


    「神様?」




    どう見ても猫だけど。



    「神様は別にいるニャ。」

    「じゃあ…、?」

    「送り手、ニャよ♪」



    ポーズは招き猫である。



    「?」


    「こちらの世界では、ラファエルと呼ばれとる。ラフィと呼んでニャ♪」


    「ラフィ…。」



    「では説明するニャ♪」


    よいしょ、と腰を上げる。でっぷりしたお腹だ。



    「…その壱。
    死者は皆一旦送り手の元へ預けられるニャ。


    …その弐。
    預けられた死者はその送り手の指示に従うニャ。


    …その参。
    死者が天国、または地獄へと向かうかは送り手によって判断されるニャ。

    …その四。
    死者が天国へと向かい、また再びの生を受けるためには…、」




    「ちょ、ちょちょっと、待って下さい!」


    「なんニャ」


    「混乱しまくりです…。」


    「とても分かりやすく説明したつもりニャ。」


    「あの、冗談ですよね?」


    「ニャにを言っとる」


    「……あ。私行い良かったですよ?ヒャクパー天国行きかと…。」


    「若くして死んでしまったからニャ。命を全う出来なかった者には役割が与えられるニャ。」


    「そんなのおかしいですよー…。」


    「そう言うニャ。天国も地獄も最近は人口過多ニャよ。」



    「………。」





    そんなもんなの?



    「シャて。お前さんが天国へと向かい、新しい生を得るためには…、」



    「?」



    「仕事を与えるニャ♪」


    仕事?



    「…姿を変え、現世に生きる人間へ幸せを与える事。」





    突然猫調でなくなる。





    「幸せ?」




    「そう。その数と質で、お前さんのこの先の道が決まるニャ。」



    「幸せ…。」



    「下界の人間は、それを奇跡と呼ぶニャ。」




    ……奇跡。




    「お前さんは順応性がある。良い仕事を期待してるニャ♪」










    奇跡。
    ねぇ…。




    (携帯)
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■20618 / inTopicNo.5)  犬に願えば 4
□投稿者/ つちふまず 一般♪(5回)-(2008/02/25(Mon) 09:27:49)
    「…奇跡の数で、私が天国に行けるかどうか決まるって訳ですか?」




    果ての見えない雲の海を見渡し。
    上を見上げれば、
    夏のように抜ける。




    青…。




    こんな仕組みに、なってたの…。

    あの世ってのは。




    「ま、そんな所ニャ。」




    「いくつか質問しても?」



    「もちろんニャ。」




    「天国でも地獄でも、はたまた生まれ変われなくても…どっちでもいい場合は?」




    どうせ死んじゃったんだしねぇ。




    「…………。」



    スタスタスタ─


    え。


    近付いて来た。



    「お前さんの今までの生き方、今の一言で見えたニャ。」



    ………。



    「たまにいるニャ。最近の若者に多いニャよ。」




    「………。どっちでもいい場合は?」




    「それでも役割からは逃げられないニャ。運命と同じくして。」




    「………誰でも通る、道ですか。」




    「そう、命を全う出来なかった者は必ずニャ。」




    「ところで…。」



    「ニャ?」



    「なんで猫なんですか?」



    「送り手は死者の神に対する最後のイメージが具現化したもの…。お前さんの神のイメージが、」



    「まさか猫だったって事?」



    「みたいニャ。」



    「……………。」



    あ。


    何かに似てる、


    と思ったら。




    「カリン、様…。」




    そうか。
    死ぬ直前に。


    帰ったら読もうと…、




    「カリン?なんニャそれは。」




    喋り難いったらありゃしニャいわ、と。




    「はははははは…。」




    一番お気に入りの。




    キャラなんです、


    とは言えず…。




    「まぁいいニャ。お前さんが仕事をしなければならない“対象”はもう決まってるニャよ」




    「へ?」




    「姿を変え、幸せを与えるニャ。アイデアを駆使してニャ。」




    「ちょちょちょっと待って、幸せを与える相手って…決まってんの?」




    「もちろんニャ。」




    「…………。」




    「この人ニャよ。」




    杖が空を切ると。




    雲が割れ…。




    ぼんやりと浮かぶ人影。




    「え゛」





    「女の子ニャ♪」




    可愛い子ニャ、と。





    「こ、これは…」












    元、彼女が。









    そこにいた。




    (携帯)
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■20619 / inTopicNo.6)  犬に願えば 5
□投稿者/ つちふまず 一般♪(6回)-(2008/02/25(Mon) 09:32:08)
    「…無理、無理無理。」


    「ニャ?」



    「ぜーったい無理!ほらもっといるでしょ?いかにも不幸な人っていうか…、とにかく無理です!」


    「何を動揺してるニャ。」


    「二度と関わりたくない人間って生きてる内に一人は二人はいるでしょー?」


    「お前さん死んでるニャ」


    「…………そりゃ、ま、……そうですけど。」



    けど。
    よりによって…。



    「事情は分かってるニャ。」


    「え゛」


    「愛し合ったんニャロ?」


    「………。」


    「履歴によるとお前さんが振った事になっておるようニャ。」



    「………。」



    「でもお前さんは引きずったまま誰も好きな人も作れず死んでしまった訳ニャ。哀れよのう」



    「…………。」



    「じょ、冗談ニャて。こっちの世界に偏見はニャいわ。」



    「それはどうも。あれでも確か…結婚して、るんじゃ。」




    “彼氏が出来た”
    “結婚するらしい”




    生前聞いた2つの噂。




    「お前さんが死んでからニャ、この子は随分苦しんどったニャよ。」



    「え」



    「結婚もまだ延期になっとるみたいニャ。」




    …………。


    なに、それ…。


    「仕事先は、この子しかリストに載ってなかったニャよ。」



    いつの間にか分厚いノートを捲っている。



    「そうそう、今なら“対象者”限定でポイント二倍ニャよ!」




    「は?」




    「……のちのち説明するニャ。」


    「………?」




    「ふむ、お前さん…生きてる内に幸せにしたいと思える人は他にいニャかったのかい?」



    「………。」




    そう。
    …かもね。



    「そうニャのか。ふむ。」


    「…姿を変え、って言いませんでした?あれはどういう意味です?」



    「知りたいニャ?では、…変身してもらおう。」


    へ。


    変身?








    コン─


    杖を突くと、
    まるで合図のように。








    ぽん。




    …………。


    「ほう、可愛いニャ♪お前さんはこの系列か」



    「(…ええっ!これ!ちょっと、何!?)」



    「大抵の生物には変化出来るニャよ。1人につき1種のみ、ニャけど。」


    「(ちょっと!ラフィ!)」



    「人間には変身できニャいけどニャ♪」




    見事に、


    それは生物学上。








    “犬”と呼ばれる生命体へと変身した自分がいた。




    (携帯)
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■20620 / inTopicNo.7)  うわっ!?
□投稿者/ ワンコ 一般♪(1回)-(2008/02/25(Mon) 12:41:01)
    はじめまして!
    久しぶりにつちふまずさんの小説が読めたので、興奮した勢いで初レスです!


    出だしで一気にはまりました(^O^)まさか、カリン様が登場するとは!私も大好きなキャラです♪


    体調に気をつけて更新してください。のんびり楽しみにしてます♪

    (携帯)
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■20623 / inTopicNo.8)  わぁ♪
□投稿者/ 黒 一般♪(2回)-(2008/02/26(Tue) 00:41:50)
    つちふまずサン作品読めて嬉しいです。
    更新が待ち遠しいですが、つちふまずサンのペースで体調崩されませんように。


    (携帯)
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■20624 / inTopicNo.9)  わんこさん
□投稿者/ つちふまず 一般♪(7回)-(2008/02/26(Tue) 00:52:34)
    ども(^0^)☆
    わんこさん。
    初めまして。


    今回は…。
    ズバリわんこが主人公ですよ☆
    (いよいよ何でもアリに)

    結構前に書いたものなんですが、
    少し手直ししてます。


    カリン様…。
    ぼてっとした、
    愛くるしいキャラって。私は相当好きなんだと思います(笑)


    JR東日本のスイカペンギンが踊ってるポスター…。
    こっそりパクったらマズいかなぁと日々思っている位です。(そりゃマズいってね)


    ではわんこさんのコメントに感謝しつつ、


    少し更新しておきましょう。


    久しぶりに、
    楽しみにしていて下さい。




    (携帯)
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■20625 / inTopicNo.10)  黒さん
□投稿者/ つちふまず 一般♪(8回)-(2008/02/26(Tue) 01:03:06)
    初めまして、
    でしょうか黒さん。


    どもども(^0^)☆
    私の事はご存知のようで…。

    皆さんが忘れた頃に何か書こうかな、なんて思ってたんですが(笑)

    ありがとうございます。感謝申し上げます。

    それでは黒さんの期待に答えるためにも、
    少し更新しておきましょう。

    では、
    おやすみなさい。




    (携帯)
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■20627 / inTopicNo.11)  犬に願えば 6
□投稿者/ つちふまず 一般♪(10回)-(2008/02/26(Tue) 01:08:06)
    「キャンキャンキャンキャン!!」



    (訳:何で犬なんですかぁー!!)



    「まぁ落ち着くニャ。ほれ、………お手。」



    ─ぽす(手)



    あれ。


    「いい子ニャ。」



    「クゥー…」
    (体が自然に)。



    「送り手とは喋れるニャよ。ほい。」



    コン、と杖を再び鳴らす。



    「ぐすん。なんで?犬になっちゃったんですかー…?」



    「人間のまま降りたら大混乱ニャよ。でもお前さんは運がいいニャ。」



    「?」



    「子犬に変化できる死者は稀ニャよ。」



    「…………。」





    犬なのに?(涙)



    茶の短い毛に包まれた自分の姿を見る。



    今までに無い異物感を感じて振り返ると、



    短い尻尾があった。



    「とりあえず行くニャ。論より証拠。知識より経験ニャ。」



    「む……。(不満)」



    「ほんニャ、行ってニャっしゃーい!!」



    ラフィは両手を上げた。


    「えええ!!」



    パシュ─








    「………やれやれ。やっと見つけたニャ。頑張るんニャよ。」










    下界─





    パシュ!




    ……っつ。



    ………。






    ここ、は…。



    アスファルトの感触。


    わ。
    わわわわわ。



    目線ひくっ!!



    くんくん。


    くんくんくんくん。




    色んな匂いがするな…。


    あ、私犬っぽいよ今の!やだなー私。




    ……って。



    ホントに犬、
    になっちゃったんだ。



    とほほ…。


    四つ足を使って歩いてみる。


    トボトボ。


    ─リンリンリン!!


    え。


    「あぶなっ!!」


    ぎゃあ!


    目の前を大きな円が通り抜けて行った。
    思わず尻もちをつく。



    「犬かー。あーびっくりした…。」




    ─キーコキーコ





    自転車…。




    ってあんなにビッグだったっけ!?



    こ、怖い…。
    もうやだよー…。




    “あの子を探すニャ”




    空から突然、
    声が振って…。



    ラフィ?



    “匂いは覚えてるニャ?近くにいるニャよ。”



    お、
    覚えてる訳ないでしょ!





    …………。


    あれ。








    くんくん。
    くんくんくんくん。








    懐かしい、




    匂いがする。




    肉球がアスファルトを確かめつつ足を進める。






    “その調子ニャ♪”







    (携帯)
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■20628 / inTopicNo.12)  犬に願えば 7
□投稿者/ つちふまず 一般♪(11回)-(2008/02/26(Tue) 01:15:01)
    この匂いは、




    ……。






    ─いつも鼻をこすりつけるよね。それ癖なの?”




    ─…んー。いや?






    ─くすぐったいよ…。ふふっ。






    サト。



    引き出した記憶。



    忘れたつもりでも、思い出してしまう。



    この鼻のせいか、
    記憶のせいかは。



    とりあえず置いておいて…。




    探そう。




    狭い路地裏を抜けると、広い大通りへと。




    人通りも、
    車も無かった。




    歩道の脇には整備された芝生。




    ここは…。




    木々の匂いに混じって、独特の。




    ああ、どこか何となく分かった。



    “知っている”
    場所だった。




    それに気付くと、
    再び微かな匂いを辿る。



    季節は冬、
    なんだろうか。




    湿った鼻に当たる風がちょっと冷たい。




    体は毛に覆われているからかなり暖かいけど。




    スタスタスタスタ─




    大分慣れて来た四つ足の速度を速める。




    懐かしい匂いが、



    形を成すように。



    はっきりとして来たから…。



    ………っと。



    ピタリと足を止めた。



    ……………あ。





    ………見つけた。



    割と早く、
    見つかった。




    ラフィはピンポイントで私を送れるのかな…。




    心臓がバクンと、
    高鳴る感覚。




    記憶の中でのみ、
    生きていた人が。





    今目の前にいる─






    あー…。




    相変わらず物持ちがいいなぁ…。




    そう思った理由は、



    あの頃と同じ黒いコートを着ていたから。



    カシミアで、
    肌触りがいいんだって。


    私に自慢していた。




    俯き気味にサトは静かに佇んでいる。




    髪が伸びた…。かな。




    風にさらわれて、
    髪が踊っている。



    ツンとした横顔。



    高くはないヒール。




    正確には2年振り、になるんだろうか。


    私には1年ぶり、
    だとしても…。




    “石”




    に隠れて。


    その佇む姿を眺める。




    なんて。




    寂しい…、




    ……ううん、懐かしい。




    顔…。




    スラリとした体が屈んだ。




    顔を上げて、
    白く吐き出されたため息と共に。




    そっと手を合わせる姿に。




    思わず犬である事も忘れ。




    私はサトの元へと。
    足を進めた。






    (携帯)
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■20636 / inTopicNo.13)  犬に願えば 8
□投稿者/ つちふまず 一般♪(12回)-(2008/02/26(Tue) 10:24:02)
    スタスタスタ─




    「…………。ん?」




    “その人”は。


    半径2m以内に座った私を一瞥した。



    「…………。?」



    何でここに犬が?とでも言いたげなリアクション。


    左右に小さく頭を動かしている。



    私は努めて静かに─
    “お座り”のまま。



    「キャウ」
    (久しぶり)



    「どこから、………?」


    「クゥー」
    (雲の上からだよ)



    私は冗談を言ったつもりだけど。




    伝わるはずも無い。


    少し怯えたように、サトの綺麗な眉が歪んだ。




    …そりゃ、そうだ。


    説明なんて出来るはずはない。




    とそこで、




    パタパタパタパタ─




    あれ?




    パタパタパタパタ。




    勝手に、
    尻尾が…。




    自身の短い尻尾が、小刻みに左右に揺れる。




    戸惑っていると─




    サトの表情は、先ほどよりも緩んだ気がした。




    パタパタ、と。
    再び揺れる尾。








    “嬉しい”







    “嬉しい”




    喜んで、いるの?


    犬の私は…。






    「迷ったの?……おいで。」




    優しい声に、
    変わらない声に。


    体に染み付いた声に。




    体が支配されていく。




    綺麗で長い指が、
    差し伸べられる。



    スタスタ。




    …………。




    ふわりとした温もりが、頭上に乗った。


    「…ノラくん、なのかな。」




    よしよし、
    と小さい声と同時に頭を撫でられる感触が伝う。



    懐かしい匂い。


    懐かしい温もり。




    「クゥー…」


    「あ、怒った…?」


    「キャウ(ちがう)」



    ちがうよ。



    「名前はなんていうの?どこから、来たの?」



    「…………ウー」



    私だよ。











    …ハルカだよ。





    「…綺麗な毛だね。」






    ……。








    「この人もね、おんなじ髪の色してたよ。」





    向けられた視線の先─



    ん?



    相原…。






    ………あ!そっか…。




    そういう事、か。




    目線が低いから全然気付かなかった。




    ましてや生前は。
    足を運ぶ事も少なくなっていたから…。







    そこには紛れもなく。





    私の母と─







    そして私自身が。











    眠っている場所に他ならなかった。



    (携帯)
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■20637 / inTopicNo.14)  わぉ↑
□投稿者/ ルー 一般♪(1回)-(2008/02/26(Tue) 12:14:00)
    久しぶりにのぞいたら、つちさんの小説が…。
    寒いですがお元気ですか?更新楽しみにしてます♪
    体調には気をつけて下さいね(^O^)

    (携帯)
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■20638 / inTopicNo.15)  犬に願えば 9
□投稿者/ つちふまず 一般♪(13回)-(2008/02/26(Tue) 12:22:56)
    「車の事故でさー。…バカだよねー。」



    ピン、と墓石に向かって長い指を弾くジェスチャー。



    …………。



    「…そんな事あなたに言ったって分からないか。」




    “あれからどう?”




    生きていれば─


    きっと当たり前のように交わされる再会の会話。



    「なーんで死んじゃったのかなぁ…。」




    切ない声で、
    サトは言う。





    ………。


    ホントだよ。




    私もまさか、
    こんな事になるなんて。



    しゃがんだままのサトの小さな肩を。





    ……抱いてあげたい。




    そんな小さな欲求にかられて─


    私は思わず手を伸ばす。






    ─ぽす(手)




    「…………。」




    あれ。


    サトは自分の太ももに乗った私の短い手を見る。




    くそう…。
    こ、この手じゃ。
    キマらない。


    ただの反省のポーズになってしまった私を見て、





    サトは微笑んだ。




    「…大丈夫。私もうすぐ結婚するんだよー」





    いい子いい子、
    と私を再び撫でた。




    ………。




    うん。




    そうらしい、ね。






    するとサトはもう一度墓石を見て。




    「うん。結婚…するんだよね…。」




    呟いた。




    迷いとも、
    納得とも。


    取れる表情。


    これは…?



    「…あ、いけない。」



    腕時計を確認した後、再び私の頭に手を置いた。


    「ノラくんじゃなければ家に帰るんだよ。」



    小さく微笑んで、






    手桶を持ち直し、




    足早に去って行く。







    私はサトの背中が見えなくなるまで、


    動けずにいた。










    ……サト。






    …結婚、か。




    軌跡を辿るように徐々に遠ざかっていく、サトの匂い。





    “迷い”
    の原因は。





    私に、
    あるのだろうか。





    …………。



    なんなんだよ、もう。




    そもそも何がおかしいって…。




    「………キャウ。キャン!」



    (お前が死んだのが悪い)




    私はかつての肉体が眠る場所に向かって鳴いた。






    何で…。





    なんなのさ、もう…。












    「…キャウーン!!!」




    踏ん張った肉球の隙間に砂利が入ったけど。










    私は叫ばずには、
    いられなかった。




    (携帯)
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■20640 / inTopicNo.16)  犬に願えば 10
□投稿者/ つちふまず 一般♪(15回)-(2008/02/26(Tue) 12:45:38)
    「キャウーン!!!」



    三回ほど鳴いた所で─



    「…嬢ちゃんよ」



    低い声が冷たい空気を割いた。



    …え?



    「珍しいな。女の子か。」



    しゃがれた声…。


    キョロキョロと見回す。人影は全く無い。


    「アウ (誰?)」


    「ここだよ。ここ。」


    えっ。



    声の主は、
    私の墓石の隣。



    「まだ子供だな。可愛い顔してら」



    濡れた翼。
    カーブした口。
    犬目線で見ると、





    かなり大きい。






    烏…。


    カラス?


    「気を付けな。そんな大声出したら通報されちまうぜ。」


    か!!!


    「カラスが喋っ…、ええっ!!」


    「お前さんだって犬なのに喋ってるぞ」


    「あれ?」


    「俺も同じ。なんだ?お前さん来たばっかりか。」


    「あの、えー…」



    「俺はゲン。烏のナリしちまってるがな。」


    「ゲン、さん…。」


    「おう。そうだ。」


    良く見ると、
    片目を失っているのか。


    額から首にかけて×と大きな傷が見えた。




    「…私、ハルカです、はい。」


    「かしこまるな。俺はつついたりしねーよ。」



    この人も、
    …死者?



    「事故か?病気か?まさか殺られちまったとか?」



    たたみかけるような質問。



    「あの、事故で…」


    「だろうな。犬は優等生にしかなれない」


    「優等生?」


    「お前ホントに来たばっかりなんだな。…いいか?」



    太い声に体が縮こまる。



    「はい」



    「簡単に言えば、どういう生き物に変身するかは生前の行いによって決まるんだ。」



    「はい」



    「…それだけだ」



    「え。あ、はい」





    「……なんで俺が烏になっちまったのか聞かねーのかい?」



    「え?あ、すみません。聞きたいですはい。」



    「ピリッとしねーなぁ…。」


    「すみません…」








    「まぁいいや。生前の俺と言えば札付のワルでな、街を歩けば誰しも視線を合わせず思えば人様に迷惑かけっぱなしで、それでもオギャアと男と産まれて来たからには、」






    …。










    「…一旗上げるのが筋ってもんよ。ってな事でまだ毛も生えてねぇ頃の話からになるが、義務教育もそこそこに盗んだバイクで旅をする事2年、そこで出会ったサブローって兄貴がまたいい男でよ?」









    ……。




    つづく。




    (携帯)
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■20641 / inTopicNo.17)  ルーさん
□投稿者/ つちふまず 一般♪(16回)-(2008/02/26(Tue) 20:18:03)
    おす(^0^)☆
    オラつちふまず!
    (懐かしい)

    久しぶりですね、
    ルーさん。
    お元気でしたか?

    私は花粉症ノックアウツ…。
    鼻トールメントールという飴が手放せません。

    三寒四温とは正にこの事…ルーさんも体調にはお気を付けて☆




    (携帯)
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■20642 / inTopicNo.18)  犬に願えば 11
□投稿者/ つちふまず 一般♪(17回)-(2008/02/27(Wed) 08:18:04)
    ゲンさんの武勇伝は、まだまだ続く…。




    ヒューるり〜(北風)




    「という訳でサブローの兄貴が俺に裏で生きるための処世術を…処世術ってわかるか?教えてくれた訳だ。そりゃもう、」


    とそこに─






    「ただのヤクザよ。流れ弾に当たって死んだの。つまんない喧嘩でね」







    ……あれ、
    いつの間に。



    我が家の墓石に─





    はと。







    今度は鳩…。
    (段々慣れて来た)




    「おうフジ。なんだよいい所で。」




    「いい加減におし。…変なオジサンの話聞かされて鼻が乾いてしまうわよ。」




    ねぇ、とフジと呼ばれた鳩は首を傾げた。



    「いえ、はは…」



    「いやーついついな。若えもん見ると舌が滑っちまって…」


    「始末に負えない烏だよ。…ところで、来たばかりなのかい?」




    羽を揺らせてお座りをした私の目の前で、


    フジさんは止まった。




    「ええ。そうなんです…。」



    何が何だか。



    「私はフジ。よろしくね。」



    「私…、は」
    「ハルカだよな♪」
    「お前さんは黙ってて」





    …………。


    何か、
    こういう会話。




    「はははは…。」




    「あらやだ。笑うと可愛い。若いっていいわ…」


    「お前はただの鳩婆だろ」


    「うるさい!」





    はははは…。





    暫くの会話ののち─




    「と、いう訳なんです。」




    私が死んだ理由。
    与えられた“仕事”。
    などを説明した。




    私とサトの関係性は、敢えて伏せたけど…。




    「なるほど。お前さんの送り手はラフィか…そりゃ運がいいぜ。」





    ゲンさんは頷いた。




    「そうなんですか?」




    「そうよ。いい送り手だもの。」




    「部長クラスだな。」




    部長クラス?



    「ただ…“対象”が結婚するとなると難しいわね。」


    「んだなぁ…。」



    「どういう意味です?」


    「考えてみろよ。これから幸せになるって事だろ?…俺らの仕事は、人間様に幸せを届けること」


    「既に幸せな状態にある対象者には難しいわ。」



    「そう、ですか…」




    ただ─




    サトのあの表情…。


    “迷い”


    があったような…。






    とそこで─




    “おーい!一旦戻るニャよー!”









    ラフィの声が、
    天から響いた。



    (携帯)
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■20643 / inTopicNo.19)  Re[2]: 犬に願えば 11
□投稿者/ もも 一般♪(1回)-(2008/02/27(Wed) 13:16:13)
    はじめまして^^つちふまずさん。
    もう、何年も前からよく読ませてもらってましたよ〜「スマイル」とか?

    なんか、作風がかわいくていいですね〜。小さな子犬が頭の中に浮かびます。
    ほんと読みやすくて感心します。今回はパターンが違うのでほんと楽しみ♪
    ホントはもっとお話したいとこですが、邪魔になると困るので!!
    頑張ってくださいね〜
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■20644 / inTopicNo.20)  お久しぶりですね
□投稿者/ 春坊 一般♪(1回)-(2008/02/27(Wed) 16:11:21)
    名を見てつい書いてしまいました。
    今更ながら再認識し好きだなこのテンポ(^O^)つちふまず節(笑)では、又。

    (携帯)
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