| 「あいつはなー…。まぁちょっと曲がってるというか何というか。」
ゲンさんがシズカについて口を開く。
「生前、相当嫌な思いをしたみたいよ。会社でイジメられたとか何とか。」
フジさんの意見。
「社会人…だったんですか?」
「24歳で亡くなったと聞いてますわ。」
シラトリさんのくちばしがキラリと光った。
あれ。 私とそんな変わらない…年だったのか。
「何。ハルカちゃん興味が湧いたの?」
止めときなさい、と。フジさんは私に促す。
「あんまり危険そうには見えないですけど…」
「そこが問題なの。シズカはね、他人の“対象者”を食べちゃうのよ。」
「へ?」
どういう意味?
「送り手を操るんですわ。」
シラトリさんの口調は極めて冷静だ。
「…ま。まさか、ヴィンセント?」
噂の?
クリーチャー?
「そういう事だ。ヴィンセントもなぁ、別に悪いヤツじゃないんだぜ?」
「え。ゲンさん、悪魔みたいなのじゃないの?」
「ははは、そんな空恐ろしいヤツじゃねーよ。」
「要は使い手によって…動物によってね、変わるのよ。大抵問題のある死者の送り手になるからそう見られるけど。」
ゲンさんとフジさんはお互いにコクコクと。
同じリズムで頷いた。
複雑だな…。
「あまり関わらない方がいいですわ、ハルカ様。子犬で対象者がいるとなると…」
「そうね。シズカに狙われないように気をつけた方がいいわよ。」
そうだそうだ、と。
三人…三羽は頷いた。
ふーむ…。
元来─ 私は他人にはあまり興味が湧かないタイプの人間だから。
「ですね。まぁ、関わらないようにしときます。」
シズカの事は─
大して気にも留めない存在になるだろうと、 思っていた。
でも私はその時、 気付いてはいなかった。
「ところでハルカ様、明日の朝も川にいらっしゃいません事?」
「え。なんで?」
「あのお方をゆっくり拝見出来るんですもの。ハルカ様に気を取られて…。」
「はは、は…。」
遠くからシズカが─
私を見ている事に。
(携帯)
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