| ラフィの声が響いた瞬間─
パシュ!
眩い光を感じた。
「中間報告だな」 「またねー♪」
ゲンさんとフジさんの翼がパタパタと上下しているのを見て。
再び雲の上─
「お疲れさんニャ。」
瞬間移動した。
「…………。」
………はぁ。
「疲れておるニャ。ほい変身」
ぽん。
人間の姿へと戻った。
「あのー…」 「なんニャ。」
「いえ、なんでもないです…」
「大丈夫ニャ?」
「ええ、まぁ…。」
「“対象”に会った感想は?聞かせるニャよ」
…………。
サトの匂いを思い出して、思わず鼻をこすった。
「…分かりません。」
「ニャ?」
「何で今更…。」
わざわざ犬になってまで。
…幸せとか奇跡とか。
…もう私は、
「もう私は死んでるんでしょ?…だったら、何で今更こんな事しなきゃならないんです?」
「…………。」
「…確かに私が突然勝手に死んじゃったからサトに元気が無いのはわかりますよ。でもそれを知ったからって、」
「…………。」
「どうしろと?これから結婚するんなら、幸せなら放っておけば、」
「ハルカ。」
え…。
「対象が“忘れるべき人”であればこれほど辛い役目はニャいだろうて。」
「…………。」
「ただニャ、人間は幸と不幸の絶妙なバランスの上に生きているニャよ。」
「…………。」
「お前さんの人生はどうニャ?不幸な事実だけニャったか?」
「…もう、思い出せません。」
「お前さんの人生の履歴を読ませて貰ったニャ。父は離婚、母は病気で死亡、…大変な人生であったな。」
「……。」
「それでも素直に生きてこられた理由はなんニャ?」
「………。」
「お前さんの対象に神があの子を選んだ理由はただ一つニャロて。」
「……え。」
「…対象者に幸せになって欲しいと、一番願っている人間は誰ニャ?」
………。
「しかもお前さんは子犬…運がいいニャよ。」
「?」
「いずれ分かるニャ」
口の端を、 ラフィは持ち上げた。
(携帯)
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