ビアンエッセイ♪

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

[ 最新記事及び返信フォームをトピックトップへ ]

■20645 / inTopicNo.21)  ももさん
  
□投稿者/ つちふまず 一般♪(18回)-(2008/02/27(Wed) 22:18:39)
    はい初めまして(^0^)
    どもども♪
    読みやすい、ですか。
    それは良かった☆

    難しい理屈も表現も苦手な私です(笑)

    恐らく性格でしょうね。最後までお付き合い頂ければ幸いです。




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20646 / inTopicNo.22)  春さん
□投稿者/ つちふまず 一般♪(19回)-(2008/02/27(Wed) 22:23:30)
    久しぶりですね!(嬉)
    春さーん(^0^)☆

    お元気でしたか?
    最近春一番が吹き荒れましたよ。
    もうすぐ、
    といった所でしょうね。

    節…(笑)
    恐らく春さんには分かってしまうんでしょうね。私が書いた恐ろしく拙い文章は。

    『土踏まZ』

    に改名しようか悩んだのですが、
    しなくて良かったです。

    仕事帰りの私です。
    春さんも忙しい日々を送ってるんでしょうか。

    少しでも息抜きのきっかけになれれば、
    幸いです。





    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20647 / inTopicNo.23)  犬に願えば 12
□投稿者/ つちふまず 一般♪(20回)-(2008/02/27(Wed) 22:43:46)
    ラフィの声が響いた瞬間─





    パシュ!


    眩い光を感じた。




    「中間報告だな」
    「またねー♪」





    ゲンさんとフジさんの翼がパタパタと上下しているのを見て。










    再び雲の上─



    「お疲れさんニャ。」



    瞬間移動した。



    「…………。」



    ………はぁ。


    「疲れておるニャ。ほい変身」





    ぽん。




    人間の姿へと戻った。




    「あのー…」
    「なんニャ。」




    「いえ、なんでもないです…」


    「大丈夫ニャ?」


    「ええ、まぁ…。」




    「“対象”に会った感想は?聞かせるニャよ」




    …………。


    サトの匂いを思い出して、思わず鼻をこすった。




    「…分かりません。」


    「ニャ?」


    「何で今更…。」





    わざわざ犬になってまで。




    …幸せとか奇跡とか。


    …もう私は、







    「もう私は死んでるんでしょ?…だったら、何で今更こんな事しなきゃならないんです?」





    「…………。」





    「…確かに私が突然勝手に死んじゃったからサトに元気が無いのはわかりますよ。でもそれを知ったからって、」





    「…………。」




    「どうしろと?これから結婚するんなら、幸せなら放っておけば、」








    「ハルカ。」






    え…。






    「対象が“忘れるべき人”であればこれほど辛い役目はニャいだろうて。」





    「…………。」








    「ただニャ、人間は幸と不幸の絶妙なバランスの上に生きているニャよ。」






    「…………。」






    「お前さんの人生はどうニャ?不幸な事実だけニャったか?」



    「…もう、思い出せません。」



    「お前さんの人生の履歴を読ませて貰ったニャ。父は離婚、母は病気で死亡、…大変な人生であったな。」



    「……。」



    「それでも素直に生きてこられた理由はなんニャ?」



    「………。」



    「お前さんの対象に神があの子を選んだ理由はただ一つニャロて。」




    「……え。」




    「…対象者に幸せになって欲しいと、一番願っている人間は誰ニャ?」









    ………。




    「しかもお前さんは子犬…運がいいニャよ。」





    「?」





    「いずれ分かるニャ」






    口の端を、
    ラフィは持ち上げた。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20648 / inTopicNo.24)  ここはビアンエッセイ長屋♪
□投稿者/ ゆらら☆ 一般♪(1回)-(2008/02/28(Thu) 01:54:28)
    おっと。おかえり〜つちさん☆

    可愛くて切な甘苦しくて

    いいお話だねぇ〜☆続きが気になるってもんだぁ〜♪

    子犬なでなでしたくなるねぇ☆
引用返信/返信 削除キー/
■20649 / inTopicNo.25)  待ってました!!
□投稿者/ mh 一般♪(1回)-(2008/02/28(Thu) 12:32:04)
    お久しぶりです、つちさん♪
    お元気でしたか?

    私は風邪でバタンキュ↓でしたが、つちさんのお話を読んで元気になりましたp(^^)q

    やっぱりつちさんのお話はいいですね☆前にも言いましたけど、不思議と心地が良くなって優しい気持ちになれるんですよ(^-^)

    続きがとても楽しみですが、無理せずゆっくり更新していって下さいね(^O^)


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20654 / inTopicNo.26)  ゆららさん
□投稿者/ つちふまず 一般♪(21回)-(2008/02/28(Thu) 21:22:06)
    はい、こんにちは(^0^)

    お元気でしたか。
    良かったです。

    最後までよろしくです☆ほいではまたー♪




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20655 / inTopicNo.27)  mhさん
□投稿者/ つちふまず 一般♪(22回)-(2008/02/28(Thu) 21:24:39)
    お久しぶりです(^0^)

    風邪は大丈夫ですか?
    私も花粉症でして↓
    お大事になさって下さいね☆

    元気になれる文章、
    とまで行かなくても。

    少しでも楽しい気分が降りてくれるなら。
    幸いでございます。





    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20656 / inTopicNo.28)  犬に願えば 13
□投稿者/ つちふまず 一般♪(23回)-(2008/02/28(Thu) 21:25:51)
    「………どちらにしても抗えない、って事ですか。」



    するとラフィは、
    無表情のまま。



    「“対象”以外でポイントを稼ぐのは大変ニャよ。…それもいずれ、わかる事ニャ。」




    ……………。




    ラフィの話は─




    全く説得性もなければ、根拠も無い。




    だけど、




    「分かりました。サトには幸せになって欲しい。それは間違いない。」




    こう答えるしか、




    私には出来ないと思った。




    「ふむ。頑張るニャ。」



    「あ。そうだ。ゲンさんとフジさんって人…、烏と鳩でしたけど。会いましたよ?」




    ずっと立ちっぱなしで話していた自分に気付いて─




    私は雲の上にあぐらをかいた。




    ラフィも大きなお尻をついて、足を投げ出した。



    「またお喋りな2人と知り合ったもんニャ。元気ニャったか?」



    ふぉ、ふぉ、とラフィは笑った。




    「ええ。いい人達ですね?」




    「烏のゲンに鳩のフジ…。彼らもいつかは、転生出来ればいいんニャが」



    「?」




    「ゲンはともかく。フジは背負うべき業が思いニャよ。」




    「業?」




    「フジはニャ、海に身を投げてしまったんニャ。」




    「………そう、なんですか。」




    そんな過去が。




    「自殺に原因は問われないのニャ。深い業となるニャよ。」




    「原因は問われない…。」




    「そう。ゲンは…ちょっと変わりものでニャ、もう転生してもいいはずニャんだが…。」




    「え?」




    「強い意志で下界にとどまっておるニャ。わざわざ人間に嫌われやすいカラスの姿でニャ」




    不思議なヤツニャろ、


    とラフィは笑った。




    そうなんだ…。





    「………ゲンさんもフジさんも、元々は人間なんですよね。」




    「そういう事ニャ。」




    「一杯いるって事ですか…。死者の魂が入った生物は。」




    「ふむ。お前さんの想像以上にニャ。」




    「………そうなんだ。」




    生きてる時には、
    全然分からなかったけど…。




    「全ては神の意志によって決まるニャ。疑問は持つだけ無駄ニャよ」



    「怖いですね、なんか」


    神様とか、
    なんか。





    「そう思うのが、普通ニャろて。」




    ふぉふぉ、と。
    ラフィは笑った。






    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20657 / inTopicNo.29)  犬に願えば 14
□投稿者/ つちふまず 一般♪(24回)-(2008/02/28(Thu) 21:33:56)
    ふぉ、ふぉ、
    とラフィの声が響く。







    天空─



    “部長クラスだぜ”



    「あ、そうだ。」



    ゲンさんの言葉。



    「なんニャ?」



    「ゲンさんが、その…ラフィの事“部長クラス”って言ってましたけど…」




    あれは一体─




    するとラフィは杖を持ち直し。




    「私の様な送り手は他にも沢山いるニャよ」




    空を仰いだ。




    「あ、そうなんですか?」




    「そうニャ。正確な数は私にも分からんニャよ。」




    うーん…。
    そうなんだ。




    「ちょっと変わった所でヴィンセントという送り手もいるニャよ。」




    ラフィは丸い指を一本立てた。




    「変わってる?」




    「人間に不幸を与えるべき送り手ニャよ。」




    「不幸ですか、へー…。…って。………ええっ!そんなのもいるんですか?」




    不幸って…。




    「人間は幸と不幸の絶妙なバランスの上に立っておると説明したニャろ。言うなれば“必要悪”ニャ♪」




    「ふーん…」




    必要悪…。




    「ヤツは人間にも変身出来るニャよ。下界の日常に潜んでおる。」




    「ええっ!こわっ!」




    さながら。


    悪魔みたいな?


    感じなのかな…。




    ふーん…。





    すると突然─




    「これ食べるニャ?」




    好きニャろ、と。
    ラフィはムクムクした手を差し伸べた。





    良く見ると。


    肉球と肉球の間に、










    一粒の、豆。





    「ほい♪」





    「こ、これ………。」







    ももももしや。





    こ、これは…。






    一粒で体力回復。






    カ、
    カリン様と言えば…、




    ごくり。




    「いた、だきます…。」



    一粒摘んで、
    口に入れた。




    ぽりぽり。


    ぽりぽりぽり。




    む、


    むむむむむ…。










    「ピーナッツが好きだとお前さんの履歴に書いておったニャ♪」






    私も好きニャ、と。




    ラフィは。
    小さな袋から沢山のピーナッツを取り出し。





    「ニャ♪ニャ♪ポリポリ」







    ……………。







    ピーナッツ…。






    私の口の中でも。
    ぽりぽりぽり、と。










    音が響いた。




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20659 / inTopicNo.30)  犬に願えば 15
□投稿者/ つちふまず 一般♪(25回)-(2008/02/29(Fri) 11:07:13)
    数日後の、



    下界─



    さて、と…。




    アスファルトの上を歩く。




    時は夕暮れ─


    とは言っても、
    夕焼けは見えず。



    空は薄曇り、
    といった所か。



    サトの住むこの街には、かつては良く来たので地理には詳しい。




    物凄い都会に住んでなくて良かった…。




    華やかな場所は駅周辺のみで、
    簡単に言えば郊外のベッドタウン。



    野良犬がいても、
    目立つ動きをしなければなんとかなりそうだった。



    歩き方はすぐに覚えた。


    この鼻は、私が思う以上に便利なセンサーだった。



    下校途中の小学生ほど危険なものは無いと分かったのは最近だ。


    この鼻はそういった危険を回避する役目も果たしている。


    気付いたのはペットとして飼われている犬とは、会話は出来ない事。



    私の匂いを嗅ぎ分けてもさほど興味を示さない。



    丘の上公園に誰もいない事を確認して植木の影に座る。



    自然に、
    野良犬に変化している自分に驚くばかりだ。




    すると─


    パタパタと羽が擦れる音と共に、
    慣れた匂い。



    胸に安心感が広がる。



    「いたいた、お嬢さん。調子はどう?」



    「フジさん。」



    フジは私の隣にある大きな樫の木の枝に止まった。



    「幸せポイント、稼げそう?」



    ラフィも言っていたけど“仕事”はポイント制らしくて。



    まるで会社だ。



    「うーん…どうでしょう。とりあえず今日会ってみますけど」



    「どうやって?」



    「ちょっと考えが、あるんです。」



    「あらまぁ。前向き♪」



    「性格を知ってないと、出来ない事ですけどね…」



    「頑張って。応援してるわよ♪」



    「あ、はい。フジさんは?」



    「…そうね。所詮は私は鳩だから。それなりに。またねー♪」



    くるっくー、と。
    喉を鳴らせて。


    冷たい空に、
    フジさんは飛び立った。


    自由だなぁ…。
    飛べるのは羨ましい。



    風に乗って様々な匂いが濡れた鼻を掠める。


    カレーの匂い。
    鰹ダシの匂い。
    ガソリンの匂い。


    通り過ぎる女性の、
    香水の匂い…。




    夜の帳が、
    降り始める頃。




    特別な匂いが鼻を掠める。




    そろそろかな。



    サトが改札をくぐり抜けたのを鼻が感知して。









    私は再び歩きだした。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20660 / inTopicNo.31)  犬に願えば 16
□投稿者/ つちふまず 一般♪(26回)-(2008/02/29(Fri) 11:13:05)
    もう帰っているみたいだ。




    事実─
    私の鼻はサトの匂いを確実に捉えて。


    家路に着くまでのルートを確認していた。



    慎重に目的地に近付いた頃、




    灰色の空から、
    雨が降り始めていた。




    サトのマンションは、あの頃と変わってない。




    結婚する前に、
    同棲するつもりは無いのだろうか…。






    ─オートロックの方が安全じゃない?





    ─んー…そうかな?





    ─心配だよ





    ─こんなオンボロマンションに泥棒入る人なんていないよね。ふふ




    こんな話、
    したっけなぁ…。





    管理人さんの部屋の窓からは見えない位置をすり抜けて。



    集合ポストからは離れて、



    ぶるぶるぶる─


    体の水滴を払った。




    務めて静かに、
    階段を昇る。



    んしょ、んしょ。



    足が短いもんだから(涙)



    5階に着くと、
    私は舌を出して熱を発散させた。




    はぁ。はぁ。




    502…、と。



    あったあった。




    さて、ここからだ。





    ………むん(気合い)




    私が思い付いた、


    “案”


    と言えば。




    ………せーの!!




    ─タタタタ、ドン。


    いて!




    ─タタタタ、ドン。


    あいたたたた!




    ただただ単純に。
    ドアを、


    “ノック”


    しようと思った。




    ─タタタタ、ドン。


    いち〜。




    だって難しい事は考えつかないし。




    ─タタタタ、





    「…はい、どちらさま?」




    何となく、
    これが一番かなって…。



    「………あれ。」




    いた。
    …………サト。



    訪問者が、
    “かなり”小さかった事が意外だったか。





    足元に座る私を見て。




    「この前の…、」




    サトはドアを支えたまましゃがんで。




    「また会ったね。」




    一つ、笑顔を見せた後に私の頭を撫でた。




    「冷たい…。寒くないの?」




    そう、
    サトは優しいから。




    きっと私を迎え入れるだろうと。


    どこか確信めいた自信があった。






    ─どうして雨の日には良く来るの?





    ─なんだろ……物悲しいからかなぁ




    ─じゃあ、毎日雨ならいいのにね。




    ─……はは。











    私はいつもその優しさに甘えていた。






    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20661 / inTopicNo.32)  犬に願えば 17
□投稿者/ つちふまず 一般♪(27回)-(2008/02/29(Fri) 11:18:12)
    「よいしょ。」




    サトは片手で私を持ち上げ静かにドアを締める。



    同時にふわりと広がる、懐かしい匂い。





    「ちょっと待ってね…。」



    洗面所にサトは入ると、タオルを片手に取り。




    リビングへと足を進めた。



    良かった…。
    この鼻も示していたが、サト“一人”らしい。




    フローリングに静かに足が着地した後、
    柔らかくタオルに包まれる。



    「大人しいんだね」



    体に這うタオルと手の感触が少々くすぐったいが。


    「………キャウ」


    (ありがと)



    「あ、鳴いた。ふふ」



    再び体が持ち上がる。



    「で、君はどこから来たの?」



    両脇を抱えられて。



    「…………。」



    顔。




    サトの顔が近い。




    長い睫。
    気にしている広い額。


    真っ直ぐに伸びた鼻筋。



    は、
    恥ずかしいー…。




    「どこから来たんですかー?」




    ふりふり、と左右に揺らされて短い足が空を切る。




    「あ、女の子なんだ。」



    下半身に目を遣るサト。





    は、
    恥ずかしいっちゅーねん!!




    「イヤイヤしてる。ごめんね。ふふ」




    ストンとフローリングに下ろされた。



    ふう…。



    「不思議なワンちゃんだ。飼い主さんはいないのかな…。」



    うーん、とサトは指で顎をさすった。



    サトが考え事する時の癖。




    「ミルクでも飲む?」




    思い付いた様にサトは言うとキッチンへと向う。



    部屋を見渡す。



    ある事実に気付く。



    こんなにさっぱり、
    してたっけなぁ…。



    必要最低限の家具、と言った所だろうか。



    雑貨が好きなサトにしては物が少ない。




    ………あ。



    テレビの横にある、小さな棚の上を見ると。


    そこには、
    私が“仕事”をする上で重要なポイントがあった。




    …………。



    近付いて、
    目の前で座る。





    この人、か。




    うーん…。


    まぁ。


    いい男に、見えなくもない。かな。




    …………。



    幸せを形にするとしたらこんな感じだろうか。



    フレームに入った写真。



    胸の痛みは感じないように心がけていた。




    それなりの覚悟を持ってここに来たつもりだから。







    けどやっぱり。










    結構悔しいもんだ。




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20666 / inTopicNo.33)  犬に願えば 18
□投稿者/ つちふまず 一般♪(28回)-(2008/03/01(Sat) 18:20:59)
    ぼーっと2人が寄り添う図を見ていた私に、



    「写真を見てるの?」



    ホントに不思議なワンちゃんだね、と。




    キッチンから戻ったサトは私の隣にしゃがんだ。



    コトリ─




    ミルクを入れた小皿を、フローリングの上に置く。



    わざわざ温めてくれたのかな。



    小皿はゆるく、湯気を立てているのを見て。




    こういう所はサトだなぁとぼんやり思う。




    「いい人、なんだよ」




    見上げるとサトは目を細めて写真を見ていた。




    …………うん。




    それは何となく、




    わかるよ。




    「いい人、……なんだけどね…。」




    「…………。」




    「はぁ。」




    ため息…。





    の後に─





    「ゲプ」


    (↑私)




    ええっ!




    「あら、げっぷした…お腹は一杯なのかな?ふふ」




    ななななんだ!?




    サトの前で、
    いやいや。


    人前ではしないはずのげっぷが…。




    出ちゃった(恥)




    ………あれ。


    なんだこれ。




    口に、
    広がる甘い味…。




    そんなおかしな犬の私の変化に気付く事もなく。



    サトは私の背中を撫でている。





    むずむず─


    鼻、が。


    真冬の雨が堪えたのか、


    「プシュン!」



    おっと…。
    (今度はくしゃみが)



    「くしゃみした。ふふ…。まだ体が冷たいね。」



    「…キャウ」
    (大丈夫だよ)



    「…ふふ。あ、そうだ。」









    「お風呂、入ろっか♪」




    ……………。





    えー…っと。




    「入ろう♪あったまろう♪行くよー」




    ヒョイと私を抱きかかえる。




    ええっ!




    「キャウ!キャウ!」
    (いいよ!いいって!)




    「じたばたしないー」




    サトに抱かれつつ、
    イヤイヤするも。




    抵抗虚しく…。




    そういや、


    サトは優しい上に。





    ─お風呂たまったよ〜




    ─いいよーサトの後で。



    ─冷え性なのはそっちでしょう?ほら、早く入って




    ─面倒くさいー




    ─…んもう。髪、洗ったげるから。ほらほら。




    ─へいへい。分かった分かったって。







    かなりのお節介だったなぁと。









    私は思い出していた。





    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20667 / inTopicNo.34)  犬に願えば 19
□投稿者/ つちふまず 一般♪(29回)-(2008/03/01(Sat) 18:24:29)
    シャー…(湯)



    「気持ちいい?ふふ」



    そりゃ、まぁ。




    期待、してた。


    …ワケじゃないけど。




    “一緒に”なんてさ。




    そんな私の下心は、
    ともかく。




    部屋着の裾と袖を捲って髪をアップにしたサト。



    さながら風呂掃除、と同じ格好だろうか。




    産毛の中までお湯が入り込む感覚。




    ふ、


    ふいー…。
    (気持ちええ)



    温まって行く体。




    ふと上を見ると、サトは笑顔を見せた。




    私は思わず、
    視線をそらす。




    実際は毛に覆われているのにそうは思えないから…。



    (裸にされている気がする)



    「シャンプー、はマズいよね。やっぱり石鹸かな。」



    「キャウ」
    (どっちでもいいっすよ)


    モコモコと体が泡立つ。やっぱりちょっと…。



    「キャウ」
    (くすぐったい)



    「あれ、ダメ?」



    ダメじゃないけど…。
    くすぐったいよ。





    ぼんやりと思う。




    サトは─




    いいお母さんになりそうだなぁ。




    今までそんな事思った事無かったけど…。




    うん、


    きっとなれるわ。




    「はい、キレイキレイ♪」



    再びシャワーから湯を出すサト。




    「ギャウ!」
    (あちっ!)




    「ごめんごめん!古いから温度調節が難しくて。…」




    慌ててサトはノブを調節する。




    オッチョコチョイなのも相変わらず、かぁ。




    「はい、終了ー。」




    水分を含んだ自分の姿は…。




    「細っ!かわいー♪ふふ」




    酷くピタピタで情けない。



    むむ…。



    あ。
    (いい事思い付いた)



    ─ぶるぶるぶる(反撃)



    「わっ!ここでぶるぶるしないのー!」




    へへっ。


    犬の特権だね。




    下らないやり取りの中─


    口一杯に広がる甘い味と徐々に膨れて行くお腹。



    そんな変化に気付かない位…。




    ふりふり(尾)




    「んもーびしょびしょだよー」



    「キャウ」
    (ざまぁみろ♪)




    ふりふり(尾)




    私は、





    嬉しかったんだと思う。






    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20668 / inTopicNo.35)  犬に願えば 20
□投稿者/ つちふまず 一般♪(30回)-(2008/03/01(Sat) 18:30:31)
    「ふわふわだね♪」



    私の体をタオルで充分に水気を取った後に。



    サトは満足そうに私の背中を撫でた。



    リビングのソファに伏せの状態で私はジッとしていると。



    「私も入って来ようかな…。」



    サトは結った髪を解いた。



    長い髪は、あまり見慣れていないから。



    とても大人っぽく見えるなぁ、と。



    思わず目を細めた。



    そんな私の心中も察する事も無く、
    サトはバスルームへと再び足を運ぶ。



    ガタガタ、
    とサトがお風呂に入るのを確認すると。



    上げていた顎をソファに付けて、辺りを見回した。



    片付けられた部屋。





    …………あ。
    そうか。



    3つほどのダンボールを見て、一つの結論に達した。



    もしかしたら、
    もうすぐ“引っ越す”のかもしれない。



    私が知るサトの部屋にあった本棚は無く。



    フローリングに直に文庫本やハードカバーが積まれていた。




    …本の好みは。
    変わってないのかな。




    見覚えのあるラベルと表題がそこにはいくつも存在していた。




    …………ん。あれ?




    積まれた本の上の隣に、小さな収納箱。


    その上にはサトがこだわって使っていたスキンケアメーカーの瓶が並ぶ。


    その場所に、



    ある“モノ”を発見して。



    私はソファの下に降りてそれを目指した。




    あ、やっぱりそうだ…。


    頭が届きそうなので、体を伸ばして。




    それをくわえた。


    そっとフローリングに下ろす。




    ─しょっちゅう止まるらしいから、あんまり使えないかもだけど…



    ─ううん、嬉しい




    ─お金があれば、もっといいもん買えるのにね。ごめん




    ─そういう問題じゃないよ。嬉しい






    いつかのクリスマスに。



    あげたね。



    これ。




    アンティークの腕時計。



    予想通り、


    針は時を刻んではいなかった。








    しばらくして─




    「……それね、貰いものなの」




    お座りをしたまま、時計を見ていた私に。




    タオルで髪を拭きながらサトは声をかけた。




    「キャウ」
    (知ってる)




    やっぱり止まってんね。安物だしなぁ…。




    「あなたに会った日…お墓にいたでしょ?その人から貰ったんだ。」




    ストンとサトは、ソファに腰を下ろした。





    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20670 / inTopicNo.36)  犬に願えば 21
□投稿者/ つちふまず 一般♪(31回)-(2008/03/02(Sun) 09:02:47)
    私は時計をくわえると。


    サトは私を抱いて再びソファに座った。



    「気に入ったの?…ふふ。やっぱり不思議なワンちゃんだね」



    私の頭を撫でる。



    すると私の口から時計をそっと手に取り。




    「…私の時計も。………止まったままなのかもね」





    ……………。




    サト。




    ダメだよ。




    それじゃ…。





    思わず立ち上がって、サトの太ももに乗る。




    「キュー。ウー。」
    (ダメだよサト)




    「どう、したの?」




    「ウー、キャン!」
    (ダメなんだってば)






    こんなもの─



    早く捨てて。




    「何…。あっ」



    私は時計をくわえて、勢い良く投げ捨てた。



    ボトン、と。
    重たい音がする。



    「…………。」



    サトを見上げると、
    悲しい顔を。


    …していた。



    「わかってる。もういないんだもん、ね…」




    サトの柔らかい胸の中にいるのに。





    ちゃんといるよ。







    ぽた、ぽた、と。




    私の顔に当たる何かに、上を見ると。




    サトは泣いていた。




    長い睫では、
    せき止められてない。




    …………。







    ─泣き虫だなぁ




    ─だって…好きなら泣きたくなる時だってあるでしょ?




    ─良くわかんないよー




    思えば私は、
    サトが悲しくて泣く姿なんて。



    見た事が無かった。



    別れの時でさえ、サトは必死に涙をこらえて。



    ─ばいばい。



    って笑ってた。





    …違う。


    私はサトの泣く姿なんて見たく無かったんだ。


    最後にサトが笑う姿を見て、
    どこかホッとした自分がいたから。




    …………ごめん。




    体を伸ばして、
    私はサトの頬に。




    舌を伸ばした。




    ホントにごめん。




    「ん?………ふふ。くすぐったいよー」




    幸せにならなきゃね。



    「ふふ。んもー…大丈夫だよ?あー鼻水まで出て来ちゃった」




    サトなら出来るから。




    「ありがと。いい子だね、優しい子だ。」




    サトの涙は、
    これまでに無く。




    不思議と甘い味だった。




    ねぇ、サト。




    私もさ。





    本当はね?







    ホントは私も…。










    幸せになりたかったんだ。




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20671 / inTopicNo.37)  犬に願えば 22
□投稿者/ つちふまず 一般♪(32回)-(2008/03/02(Sun) 09:06:44)
    サトの頬に舌を伸ばして涙を拾っていたその時─



    ブーブーブー




    リビングテーブルの上の携帯が鳴った。



    「…ん」



    私を胸に抱き直して、サトは携帯に手を伸ばす。


    カチ、と携帯を開いて、メールだろうか。



    文章を確認する。



    私からは内容は見えない。



    というよりも。
    私の残る人間的部分がそうさせたのか、


    画面を見る気にはなれなかった。




    …彼氏さん、かなぁ。




    やがてサトは何かを考えるように顎を指で触ると。



    口元が少し、緩んだ。



    どうやら、
    悪い内容では無かったみたいだ。



    するとサトは指を動かしてキーを打ち始める。



    私はその一連の動作中。



    サトの顔を眺めていた。



    サトが画面を通して誰かと会話する時の表情。


    初めて見る顔に少し戸惑いを感じつつも、



    サトが生きている事。



    サトが笑ってる事。



    凄い事なんだなーって。



    感動すら感じていた。




    短い内容にとどめたのかサトは携帯をパタンと閉じて。



    もうこんな時間、
    と呟いた。





    そっか。
    じゃあ私は…。




    「いこうか♪」




    え。




    サトは私を抱っこしたままソファから立ち上がり。



    リビングを抜け、
    電気を付けつつベッドルームへと。




    ジタバタジタバタ
    (いいよ!いいって!)



    「一緒に寝ようねー」



    私をベッドの上にストンと下ろす。



    ……………。



    な、なんか。




    「固まってる。寒いのかな?」




    いや、そうではなくて…。




    「大丈夫、私寝相はいい方なんだからさ」




    嘘こけ。


    しょっちゅう起きたら逆さまになってたのは。


    どこの誰だい?




    軽い掛け布団の中にサトは入ると、


    私はその上に伏せの状態のまま、サトの隣に位置を取った。



    「ホント不思議な子だね。新しい家で…、」







    「飼ってあげる、から…。ね。」



    …………。



    すぐに小さく息を吐いてサトは眠りについた。



    相変わらず寝つきのいい事…。









    って。







    …………飼う?




    私を?









    そりゃ、
    マズいっしょ!








    ……………。









    マズい、のかな。
    やっぱり。






    ラフィに聞いてみよう。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20674 / inTopicNo.38)  犬に願えば 23
□投稿者/ つちふまず 一般♪(35回)-(2008/03/02(Sun) 09:19:14)
    「おかえりニャ♪」




    ─ぽん。
    (変身)



    「ふいー…戻りました」



    サトの眠る夜、私は再び天上へと戻った。



    「今日は凄いニャ♪沢山ゲットニャよ!」



    ひょひょーと。
    ラフィは杖を回した。



    「…あぶなっ。え、ゲット?って何が?」



    「ポイントニャよ。お前さん初めてにしてはいい腕ニャ!」



    前にも手にしていた分厚いノートを捲っている。


    白紙だったページに、何やら文字が書かれている。



    「なんですそれ?」



    ラフィからそのノートを受け取ると、







    ○ 笑顔 152
    ○ 喜び 86
    ○ ぐち 43
    ○ なみだ 424







    と、書かれていた。




    ………。




    「なんすかコレ」




    「ポイントの内訳ニャ。」




    「……………。」




    「この涙ポイントは大きいニャよ…。ウニャ!」




    「ふざけてません?」




    ラフィの腕を掴み肉球を強く、うにうにした。



    「ニャハハハハ!ニャにをする!くしゅぐったいニャー!」



    「ったくもう…」



    何なのさ。ったく。



    …………。





    あれ、
    でももしや。



    あのげっぷと。



    口に広がるあの、
    不思議な甘さは…。



    思わず口を抑えると、





    「気付いたニャ?そう、味わえばわかるニャよ」



    ………なんと、


    まぁ。





    「あの…“ぐち”ってありますけど、これは?」




    「幸せは与えるだけが幸せではないニャ。対象の苦しみや悲しみを受け止める事も、それもまた幸せの一部ニャよ。」




    「…………。」




    「意外といい事言うニャーと思ったニャロ?」




    「ははは…」




    苦笑いで答えた。




    「この調子で頑張るニャよ♪」





    「あ、そうだ…。あの、“対象”が実際に私を飼う事って出来るんですか?」







    「ニャに?」




    ラフィは髭をピンと伸ばした。






    「サトにそう言われたんです。新しい家で、飼ってあげるからねって…」







    「出来ない事はニャい」






    ラフィは笑わずに、
    杖を持ち直した。




    「ただし…」






    「え?」







    「人間であった記憶は全て抹消されるニャよ。」




    「そう、ですか…」










    そうなんだ。




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20675 / inTopicNo.39)  犬に願えば 24
□投稿者/ つちふまず 一般♪(36回)-(2008/03/02(Sun) 10:05:50)
    「ウニャ。子犬に変化したお前さんは運がいい、そう言った理由が分かったニャ?」




    「……なんとなく。」




    「2つの選択肢が出来た訳ニャ。ポイントを貯めて天国に行き、生まれ変わるかはたまた…」



    「“対象者”に飼われるか…」



    「そういう事ニャ。」



    ほれ、
    とラフィは小さな袋を差し出す。




    『やちまたピーナッツ』



    と書かれていた。




    「どうも…」



    手を伸ばして2、3粒取り。



    口に放り込んだ。



    ぽりぽりと、
    砕く音。



    「考えときます。」



    「ニャ♪では私はちょっと出るニャよ。」




    やちまたピーナッツの袋を私に渡して。




    コン、と杖をついた。




    「…はい、用事?」




    「送り手も忙しいニャよ。」




    提出する書類が多くてニャーと。


    長い髭をまん丸の指で撫でながら言った。




    「会社みたいですね…そうですか、分かりました。」



    「ではまたニャ。下界に降りる時はあそこから飛び降りるニャよ。」




    ラフィが杖で示した先は雲の切れ目。



    水たまりのように─
    ぽっかりと小さい穴が開いている。




    「はい、分かりました」



    「あ、そうニャ。」



    「?」





    「…歯に詰まりやすいから気を付けてニャ。」





    ラフィは背を向けたままそう言った。



    「へいへい、分かりました。」



    するとラフィは光を放って、



    すぐに消えた。








    うーん…。




    雲に座り。




    ピーナッツを口に放る。




    飼い犬、かぁ…。




    わしわし、
    と髪を撫でる。




    石鹸の匂いが舞う。




    お風呂に入れてくれたサトを思い出した。






    サトは優しい─




    これから新居に移って。




    幸せな家庭を築いて…。






    だからきっと、
    私は飼われても。




    幸せに、
    生きれるのかもしれない。




    “ただし犬として”







    ぽりぽり。





    2つの選択肢、かぁ。





    「もうよくわかんないなー…」





    ゴロンと大の字になって空を見上げた。




    青いなぁ…。




    何もない…。







    幸せか…。








    ぽりぽり。




    「んっ。」










    (詰まった)




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20676 / inTopicNo.40)  犬に願えば 25
□投稿者/ つちふまず 一般♪(37回)-(2008/03/02(Sun) 10:12:02)
    下界─




    ピピピピピピピピ




    「キャウ」
    (起きろー)




    「う、うーん…」




    相変わらず、
    寝相も悪い上に。




    ピピピピピピピピ!




    「キャン!キャン!」




    起きないんだよなー。
    コイツは。


    ったく。



    ピピピピピピピピ!!



    ……んしょ(足)


    ぽん(止)




    …やれやれ。




    「う、………うん?あー…おはよ…ふふ」




    がばちょ(抱)



    ………げ



    「ニュー!(苦しい!)ギャウ!(起きろ!)」



    「あれ、…ごめんごめん。ってこんな時間!!」



    がばちょ(布団)


    ゴロン◎


    ゴン!(頭)



    「ウー…(いだい)」



    「きゃあごめん!」



    朝起きて私がいない事は不自然に感じるだろうと思って…。



    下界に降りてみたけど。


    来ない方が良かったかな…。



    バタバタと支度をするサトを見ながら、



    犬なりにため息をついた。




    30分程で支度が終盤に差し掛かったサトを見る。




    髪をセットした後、



    大人びた仕草で、ワンピースを整えている。



    揺れる髪に、
    朝日が当たって。




    「…キャウ」




    (綺麗だね)





    「ん?んー…。あっ。」



    私のお座り姿を見て。


    さながら、



    “この子をどうしよう”


    と言った所か。
    戸惑っている。




    ……それは心配ないよ。



    私は玄関に向かって。




    体を伸ばしてドアに両足をかけた。




    「キャウ、キャウ」
    (私も出るから)




    「え。出たいの?」




    サトは慌ててコートとバッグを手に、ブーツを履いた。




    「キューン」
    (心配ないから)




    「…………。」




    サトは戸惑った顔をしたまま、
    玄関の扉を開けた。




    私が飛び出すと。



    「えっ!」



    サトも玄関の外に出る。



    お座りをしてサトを見上げる。




    (行ってらっしゃい)




    ふりふり、
    と尻尾を振ると。



    サトはしゃがんで。



    「また来るよね?」



    私の頭を撫でた。




    (うん)




    私はサトを置いて、
    廊下を駆けた。




    そうでもしないとサトは遅刻するから。




    5階から一気に降りて。(ずっこけながら)




    足早に通りを過ぎて。





    いつもの丘公園に着いた。



    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/

<前の20件 | 次の20件>

トピック内ページ移動 / << 0 | 1 | 2 | 3 >>

[このトピックに返信]
Mode/  Pass/

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

- Child Tree -