ビアンエッセイ♪

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■18755 / 1階層)  チェリー2
□投稿者/ 恵麻 一般♪(6回)-(2007/04/21(Sat) 00:59:26)
    pipipipipi・・・・

    すっぽり被った布団の中から、腕だけをもぞもぞと出して眠りを妨げる音をストップした。
    いつもならここで2度寝という名の脳内旅行へとトリップするのだが、今日だけはそうもいかない。
    上半身を起こし、思いっきり伸びをする。

    (今日は入学式か・・・)
    そう、夏季のスパルタ&美咲の努力が実を結び、見事星蘭女子への切符を手に入れたのだ。
    クローゼットの扉に真新しい制服がかけてある・・・・はずなのだが。


    「あ、あれ・・?ない」
    代わりにあるのは地元の公立高校の制服だ。滑り止めとして受けてはいたが、制服を購入した覚えはない。
    この状況を飲み込めずぽかんとしていると、ドアの向こうの階段の音に気づいた。

    「あら、起きてたのね」
    「おっ、おかあさん!ちょうどよかった! 私の制服はどこ?」
    母が部屋へと入り込むなり、美咲は彼女にしがみつきながらそう問うた。
    「・・・どこ?目の前にかかってるじゃないの」
    顎でついと示した先には、先程の制服がかかってある。
    そうじゃなくて私が聞きたいのはと、くってかかったのだがー

    「あんなに夏季ちゃんに迷惑かけた結果がコレだなんて・・・お母さんがっかりだわ」
    手のひらを片頬にあてて溜息混じりにそう呟いた母の顔は・・・・どう形容したらいいのだろうか。
    まるで般若のようだった。このような顔は娘としてこの世に生を受けてから今までみたことがない。

    「え・・・どういうこと・・?」
    「どういうことも、こういうことも貴方は星蘭女子に落ちたのよ!」
    「残念だよ、美咲。絶対私の期待に応えてくれるって思ってたんだけどな・・・」
    その声にびっくりして振り返るとそこにはいつのまにか夏季が立っていた。いつもは周りが振り返るほどの容姿の持ち主がきつく眉を寄せる様は、恐怖を感じるのと同時に魅力的でもあった。

    (どうしよう・・・あんなに熱心に面倒見てくれたのに私ったら・・)
    やっぱり夏季のそばにいたいなんて私には分不相応だったんだ。


    泣きじゃくる美咲を見限ったのか、二人はつれなくその場をあとにしようとした。
    「まっ・待って!! 行かないで!!」
    もう口も聞いてもらえないかもしれない。そのことに恐怖を感じて必死で夏季の背中に腕を伸ばした。





    「・・・さき・・・・・美咲っ!」
    「・・・・え・・・? なっちゃ・・・?」
    美咲の見開いた瞳には、ベッドに腰掛けて心配そうに見詰める夏季の姿があった。
    「何か怖い夢見たか・・? 大丈夫?」そう言い、美咲の後頭部に手のひらをあててそっと胸に引き寄せる。片方の手は美咲の手をぎゅっと握ったまま。

    (夢・・?・・・あんなリアルな夢があるの?)
    思わず夏季の肩越しに目線を上げれば、元通り麗しき星蘭女子の制服が掲げられていた。

    よかった・・・と美咲はほっと息をついた。もしさっきの夢が事実だったらとてもじゃないけど夏季にあわせる顔がなかっただろう。よく考えたらお気楽母があのような態度を取る時点でおかしいのだが、自分でももともと受かるなんて自信がなかったため、気づかなかったのだ。
    そう、今だって安心させようと頭を撫で、手を握ってくれている・・・って あ、れ・?
    なぜ、こんな時間に夏季が・・・


    「・・ちょっ・・・何でココにいるの〜?! どっ・・・どうやってっ!!」
    美咲の母親はああ見えて雑誌の編集長を務めるいわゆる“バリキャリ”だ。 
    故に帰宅は大抵遅く、朝のこの時間は当然夢の中。少々のことでは滅多に眼を覚ましなどしない。
    当然うちの鍵など持ってるはずもなく、だからなぜ彼女がここにいるのかわからない。

    「あ?どっからって・・・あそこから」
    そう指し示す先には開け放たれた窓。カーテンがパタパタとはためいている。
    小さい頃はよくここから出入りしたじゃん? そう暢気に言うが今何歳だと思っているのだ。
    「あのねえ・・・こんな所から出入りするなんて、危ないでしょ? そっ・・それにっ・・・」
    そう言い二の句を告げないで赤くなる美咲を見て、夏季が訝しがる。

    美咲が赤くなるのも無理はない。 なにせ、今の格好は当然パジャマ。
    そして今の体勢といったら、まるで飼い主に甘える子猫のよう。
    女同士なら何も赤くなることはないと思うのだが、美咲にとって夏季は恋焦がれる相手。
    異性にされているのとなんら変わりはないのだ。




    顔を赤らめながら夏季の胸に抱かれる美咲。
    こんな面白い状況をほっといていられようか、否、である。
    「・・・まるでロミオとジュリエットみたいじゃない・・?」美咲の耳元でわざと吐息混じりに囁く。
    (まるで茹蛸みたいだな・・・)くっくっと忍び笑いを漏らす。
    ほんと、この子はからかい甲斐がある。だから何かに付けてかまってしまうのだ。
    美咲にはいつも笑っていて欲しい。そのためにはなんでもするつもりでいる。
    もう二度とあんな辛い思いはさせない。あの時にそう誓ったのだ。

    こんな事をしたら君は笑うだろうか。 それとも真っ赤になって怒る?
    反応が見たくてそっと握り締めていた手を引き寄せて、その甲にキスを落とす。
    ジュリエット? どんな悪夢を見てたの?と。









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