ビアンエッセイ♪

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

■19336 / 1階層)  チェリー4
□投稿者/ 恵麻 一般♪(1回)-(2007/06/25(Mon) 23:36:54)
    私立星蘭女子学院ー


    近所でも評判の美しい桜並木を上がった小高い丘の上にそれはある。
    星蘭の教育方針ー即ち『古き良きものを大切にし、尚且つ新しいものを取り入れていく柔軟な女性を育成する』を裏付けるかのように、明治時代からの古めかしき校舎と、最新設備を取り入れた近代的でモダンな校舎が違和感なく立ち並んでいる。

    生徒の自主性を重んじる学校は多々あれど、星蘭を代表する生徒会の持つ特異性は他にはないと言えるだろう。
    全学年から選ばれた生徒会のメンバーは星蘭の『顔』として常に良識ある態度と行動が求められる反面、ある権利が彼女らに与えられている。



    「へ〜 詳しいねえ。舞」
    「って、それはコレに書いてあるから」
    そういって舞は、学院案内のパンフレットを丸めてぽんぽん叩いた。

    「いや、でもその生徒会のこととか、校則を自分たちで云々は載ってないけど」
    そう、確かに教育方針はあれど、先程舞が言ったことなんてどこにも書かれていない。
    「当たり前よー コレは裏情報だもん。パンフにはそんなこと載せないでしょ」
    「・・・って情報源は?」
    「ん、うちの姉。」

    舞の姉、各務幸は今年度3年生で、生徒会長である夏季と同級生だ。
    夏季とはタイプが違うが、凛とした眼差しと腰まで伸ばした艶のある黒髪が妖しい魅力を醸しだして、今では夏季を人気を二分するほどまでになっている。
    彼女には美咲もまるで自分の妹のように可愛がってもらった。
    「そっか、幸さんだけ日本に残ったんだっけ・・・ ねえ、ところでそのある権利ってなんなの?」
    「それは・・・たぶんもうすぐわかるんじゃない?」
    舞の言うとおりその答えはすぐに解明されることとなるのだが、美咲はまだ知る由もない。




    適度な緊張感を伴う体育館の中。 入学式はまだ始まっていない。
    順序良く並ぶイスに座らされた新入生の顔立ちは皆初々しく、はつらつとしている。
    そんな中、壇上の影から美咲と舞を見つめる夏季と幸の姿があった。

    「美咲ちゃんいるわよ。久しぶりだわね〜 何年ぶりかしら」
    「こら あんま覗くなっつーのに」
    幸の首根っこを掴んでひっぱると、口を膨らませて抗議した。
    「ちょっとぐらいいでしょ。夏季だって気になるくせに。 ・・・でもよかったわよね」
    幸は眼を細めて美咲を見つめていた。
    「これで夏季が星蘭に入った意味があるっていうものよね」
    そう言ってにやりと妖しげな笑みを浮かべる幸にはきっと勝てない そう思った夏季だった。



    『これより第○回入学式をとりおこないます』
    マイクアナウンスの後、何事もなく式は進んでいるのだが。
    夢見が悪いせいで、次第に睡魔が美咲を襲おうとしていた。こういう堅苦しい雰囲気は苦手だ。
    眠っちゃいけないと思えば思うほど、眠気が倍増するのはどうしてなのだろう。
    軽く頭が船を漕ぎそうになって舞に注意された時・・・

    「新入生の皆さん。御入学おめでとうございます」
    澄んだ声がマイクを通して響き渡ると同時に美咲は、今までの眠気が嘘のようにぱちっと目を開けた。
    あっという間にこの場の空気が変わり、他の生徒たちも、明らかに先程と目の輝きが違う。
    同時に聞こえるのは「あの人かっこいい〜」という、お決まりのセリフ。

    「うわ〜 夏季さん相変わらずすごいね・・」
    「う、うん・・・」
    隣でそう呟く舞にも上の空の返事しかできない。 美咲の胸中は複雑だった。
    もう夏季は生徒たちの心を掴んでしまった。
    それも仕方のないことなのだろう。 だって何年も夏季のそばにいた自分でさえ、未だにドキドキさせられるのだから。 そんな夏季を誇らしいと思う。
    でもそれ以上にそんな夏季のそばにいることに引け目を感じてしまう。
    そして誰も夏季を見ないで欲しい 私だけの夏季でいてくれたらいいのにー
    そう思うのを止められなかった。
    ドキドキしながら壇上を眺める美咲と、夏季の視線が一瞬絡まり、そして・・・
    (・・え・・・・?)

    気のせいだろうか、いや、でも今確かに・・・
    夏季の形のよい唇が弧を描いた。微笑ったのだ。
    (何か、やな予感がするんですけど)
    夏季があのような表情をする時は、彼女が何かを企んでいる時。
    夏季と離れてからしばらく目にすることはなかった。
    (・・・・やっぱ入学やめとけばよかったかも・・?)
    夏季の微笑に軽く寒気を感じ、これからの学校生活に波乱があることを早くも察知する者が一人。
    何をカン違いしたのか、自分に笑いかけてると頬を染める者、大多数。
    そして・・
    (ふふっ 面白くなりそ〜)
    日本に戻ってきてよかったと、大いに学校生活を楽しみにしている者がこれまた一人。

    それぞれの思いが交錯する中、
    「改めて星蘭学院へようこそ。皆さんの学院生活が悩みのない楽しいものとなることを私達生徒会がお約束いたします。」
    生徒会長、高田夏季の声が体育館に響き渡った。











記事引用 削除キー/

前の記事(元になった記事) 次の記事(この記事の返信)
←チェリー1 /恵麻 返信無し
 
上記関連ツリー

Nomal チェリー1 / 恵麻 (07/04/19(Thu) 23:04) #18740
Nomal 初めまして / 晃 (07/04/20(Fri) 00:51) #18743
│└Nomal Re[2]: 初めまして / 恵麻 (07/04/20(Fri) 23:39) #18750
Nomal こんばんは / 優貴 (07/04/21(Sat) 00:06) #18751
│└Nomal Re[2]: こんばんは / 恵麻 (07/04/21(Sat) 00:52) #18753
Nomal チェリー2 / 恵麻 (07/04/21(Sat) 00:59) #18755
Nomal チェリー3 / 恵麻 (07/04/21(Sat) 01:00) #18756
Nomal NO TITLE / 希 (07/04/23(Mon) 09:06) #18783
Nomal チェリー4 / 恵麻 (07/06/25(Mon) 23:36) #19336 ←Now

All 上記ツリーを一括表示 / 上記ツリーをトピック表示
 
上記の記事へ返信

Mode/  Pass/

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

- Child Tree -