ビアンエッセイ♪

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■18756 / 1階層)  チェリー3
□投稿者/ 恵麻 一般♪(7回)-(2007/04/21(Sat) 01:00:35)
    「ジュリエットかぁ・・・相変わらず飛ばすねえ 夏季サンも☆」
    「あのねえ・・笑い事じゃないわよっ なんであの人はあんななのっ? ふつーあーいうこと言う? 恥ずかしいったらありゃしないっ」

    初登校中の道すがら、ぷりぷりしながら口を尖らす親友の横で各務舞はにかっと笑う。
    二人して晴れて星蘭へ通える喜びを分かち合ったのもつかの間、先程の出来事を真っ赤になりながら語る美咲。ぶつぶつ「ヘンタイなんだから」と呟いている。
    「あたしも久しぶりだし会いたいな〜 夏季さんに。で、どんな夢見てたわけ?」
    「・・・・・・星蘭に落ちる夢・・・」
    「はぁ?」
    クールビューティが台無しだ、と美咲は思った。 何しろ鳩が豆鉄砲をくらったかのように口をぽかんと開けて自分を見つめているのだから。

    「・・なんでそんな夢みるかなあ」
    「だっ だってしょうがないじゃない! そりゃ舞は帰国子女だから英語もペラペラだしっ?頭もいいから星蘭の試験なんて簡単だったんでしょーけどっ 私はやっとの思いで入ったのよ?」

    やれやれ、すぐむきになるのも悪い癖だ。これも長い間あの夏季さんと比べられてきた結果なのだろうか。彼女には少々僻みっぽく、自分を過小評価しすぎるところがある。

    親友の自分が言うのもなんだが、美咲は普通に可愛い。
    ただ相手があの夏季さんだから。彼女と比べることなんてない。美咲には美咲の良さがあるのだから。
    芸能人相手に私なんて・・・と言ってるのと同じようなものだと舞は考えていた。


    「あのねえ・・私はそんなこと言いたいんじゃなくて。まだ発表前だったら分かるけどお分かり?
    今日は入学式だってこと。何でこんな日にそんな夢見るんだって言ってんの」
    「言わないで。なっちゃんにもそれは言われたから」
    それ以上はつっこむな、ということらしい。そっぽを向いた美咲に舞は溜息をつく。

    「それからさあ・・あんま自分を卑下する物の言い方って止めたほうがいいよ。気持悪いし。そんなだと夏季さんにも愛想つかされちゃうよ?」

    容赦ない言葉が美咲の胸に突き刺さる。好きでこんな風になったわけじゃないのだ。
    夏季のそばにいれば誰だって・・・・


    涙ぐんだ美咲を横目に舞は(いいすぎたか・・・)と罪悪感を感じていた。
    「ごめん。言い過ぎたかもだけど、でもね」
    「舞って前からだったけどオーストラリア行ってから毒舌に磨きがかかったよね」

    言い終わらないうちに美咲が切り出した。その顔に涙はもうない。
    彼女もこのままじゃいけないと思っているのだろう。その瞳にはっきりとした意思を感じる。
    「そりゃあたしも色々あったし? うじうじしてたら向こうではやってけないしね〜」
    そう言ってにかっと笑う。
    元々二人は幼馴染だったのだが、小学校へ上がる寸前に父親の都合でオーストラリアへと引っ越してしまった。以来メール等で連絡は欠かさず取り合ってきた仲だが、よくお互いに悩みを打ち明けていたりもした。特に異国で暮らす舞にとっては美咲との些細な繋がりはとても大事なものだった。

    おおらかな国だが、虐めがないこともない。 アジア人だと蔑まれたこともある。
    時に子供は大人よりも残酷な一面を持っている。
    幼少期に差別を受けた舞には、美咲の受けた傷が痛いほどわかる。
    だけど、そこで負けてはいけない。何も悪いことはしていないのだから。 もっと強くなってほしい。その思いがあるからこそ、きつく諭しもするのだ。

    (でも、もう必要ないみたいね)
    美咲の瞳は今までとは違う。これなら前みたいなことにはもうならないだろう。
    自分ももう日本にいるんだし、あの時とは違う。そばで守ってやれるんだから。何より夏季さんがそばにいる。

    手をかざしながら空を仰げば、春らしい陽気を感じることができる。
    (これからの学校生活が私たちにとっていいものでありますように・・・)
    隣にいる親友と微笑みあいながら、校門への道を急いだのだった。







    その頃、美咲の母 沙羅は姉である響子の元を訪れていた。といっても、隣なのだが。
    「いつも昼頃まで寝てるあんたがこんな時間に起きてるなんてめずらしーじゃない。なんかあったの?」
    「ん、これ夏季ちゃんにね〜」
    そう言って響子の目の前にマダムご用達のケーキ屋の箱が掲げられた。ココのは朝から並ばないとすぐに売切れてしまうほど大人気だ。どれだけ沙羅が朝早くに起きたかが想像できる。

    「ほんとに夏季ちゃんにはお世話になって・・・今日、星蘭の入学式なのよ。 在校生は確か休みよね?夏季ちゃん起きてる?」
    「ああ、あの子アレでも一応生徒会長らしいから、もうとっくに出てるわよ。 出る前に私の可愛い美咲ちゃんに窓から夜這い・・じゃないわね、朝這い?かけてたわよ? ったくあのバカ娘は。ちょっとは美咲ちゃんみたいに可愛らしくできないのかしらねえ」

    沙羅が夏季をベタ可愛がりしてるように、響子の美咲に対するソレも負けず劣らずのところがある。
    こうやってお互い実の娘より、姪を可愛がる光景は何とも滑稽だ。

    「でも美咲が星蘭に合格してくれてほっとしてるわ〜 姉さん覚えてる? 各務舞ちゃんって子」
    「確か、美咲ちゃんの幼馴染よね? オーストラリア行っちゃったんだったっけ?」
    「そう。高校からまたこっちで暮らすらしくてー それが同じ星蘭なのよ!」

    リビングのイスに腰掛けて紅茶を啜りながら、懐かしい話に花を咲かせた二人はふと昔のことを思い出していた。

    「これで夏季ちゃんも同じ学校だし・・・少しは安心だわ」
    「そうね・・・私も美咲ちゃんに二度とあんな辛い思いはさせたくないもの。 だから、最初は私は反対だったのよ?美咲ちゃんがあの子と同じ学校に入るのは」
    「姉さん・・・」

    美咲が夏季を避けるようになってからというもの、彼女を可愛がる叔母としては寂しかったがそのほうがいいのだとも思っていた。
    夏季のそばにいれば美咲は傷付くだけだ。彼女が悲しむ姿を見るよりはマシだった。

    「確かに私も心配だけれど、いつまでも逃げていては何にもならないわ。あの子達は従兄弟同士だもの。一生避けているわけにはいかないでしょう? それに・・・これは美咲が望んだことだわ。」

    そう、いつも逃げていた美咲が「星蘭に行きたい」と沙羅に頼み込んできたのだ。
    その瞳を見たとき、もう大丈夫だと確信した。あの子の決意が見えたからだ。

    本人がその気なら、私は親として応援するわ、そういった沙羅に響子もまた(私にできることなら何でもしよう)と決意を新たにするのであった。

























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Nomal チェリー1 / 恵麻 (07/04/19(Thu) 23:04) #18740
Nomal 初めまして / 晃 (07/04/20(Fri) 00:51) #18743
│└Nomal Re[2]: 初めまして / 恵麻 (07/04/20(Fri) 23:39) #18750
Nomal こんばんは / 優貴 (07/04/21(Sat) 00:06) #18751
│└Nomal Re[2]: こんばんは / 恵麻 (07/04/21(Sat) 00:52) #18753
Nomal チェリー2 / 恵麻 (07/04/21(Sat) 00:59) #18755
Nomal チェリー3 / 恵麻 (07/04/21(Sat) 01:00) #18756 ←Now
Nomal NO TITLE / 希 (07/04/23(Mon) 09:06) #18783
Nomal チェリー4 / 恵麻 (07/06/25(Mon) 23:36) #19336

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