ビアンエッセイ♪

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■20839 / 1階層)  浸透
□投稿者/ 上月 一般♪(3回)-(2008/05/23(Fri) 22:23:25)
    依子は出逢った時からすでに

    実里が血液に触れることを拒んだ。

    以前依子が持っていたグラスが倒れ

    割れた拍子に破片が依子の手の甲を傷つけた。

    「いいっ!!触らないで!!!」


    手当てをしようと近付けた実里の手を

    依子は払いのけた。


    −えっ?


    小さな傷からはまだ滲む程度しか血は出ていなかったが

    依子の拒否反応は強かった。



    どうして?



    実里は疑問に思った。

    些細な傷に遠慮ではなく、あからさまに拒否という形に取れる程に声を荒げて

    近付くなと背を向けて

    普通ではないその態度

    取り乱す程のことではない筈なのに。



    カバンをあさり

    依子が除菌タイプのウェットティッシュを取り出した時

    テーブルに一滴

    血が落ちた。


    「あぁっ!!!!」

    依子は余計取り乱し

    急いでウェットティッシュを出して傷に当て

    押さえながら傷ついた手で

    テーブルを拭き出した。


    何度も何度も


    一枚で拭える筈の

    たった一滴の血液を

    依子は幾度も拭き

    何枚も使った。



    「大丈夫だよ。そんなにしなくても。」


    落ち着かせようと腕に触れようとした


    「だめ。だめだよ。ちゃんと拭かないと。ちゃんと拭かないとだめなんだよ。残ってるかもしれない。まだ残ってるかもしれない。」


    依子は今にも泣きそうになりながら一心不乱に何も残っていないテーブルを拭いていた


    「ねぇ、もういいよ。残ってないよ。綺麗だよ。」



    実里の指先が腕に触れても


    「だめ。だめなんだよ。」

    依子は小さな声で言った

    手は止めようとしない



    「もう大丈夫だよ!!!!」


    実里は声を荒げて依子の腕を掴んだ


    依子の手が止まり


    静かで深い呼吸に肩が揺れた。



    「本当に?」



    依子は


    泣いていた



    「大丈夫。大丈夫だから。」



    実里は依子の背中から静かに強く抱き締めた


    それでも


    傷ついた手を握る力は弱めずに

    指のふちが白くなる程

    血が止まり小指が赤くなる程


    頑なに握っていた。




    しばらくして涙も引き

    呼吸も落ち着いた時


    依子が呟いた



    「あたしの血が付くと、汚れちゃう。」



    実里は驚いた。


    普段、依子は至って普通の女の子だ。

    落ち着いているけど明るくて

    前向きで優しい。


    そんな子が

    ここまで取り乱す程


    自分の血液を嫌悪している



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