ビアンエッセイ♪

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■20865 / 1階層)  カモフラージュ
□投稿者/ 上月 一般♪(5回)-(2008/06/04(Wed) 00:23:56)
    春先の昼下がり

    実里と依子の二人は河原に向かっていた。


    「あー…。」

    依子は目を細め空に顔を向けた。


    実里は依子の横顔を見つめた。



    今この子はゆったりした風をまとっている


    つい半月程前に目の当たりにした怯えた鋭い帯は見る影もない


    確かに依子には違いなかった

    だが依子とは違う人間だった




    「ここらへんにしようか。」

    空に向けた表情より柔らかく依子は実里に笑いかけた。


    「うん。」


    実里は依子の表情に心が柔らかくなるのを感じた。


    実里はトートバッグからシートを出した。

    それは以前二人がデートで洋雑貨店に行き

    子供が描いたような花がちりばめられたそのシートは依子が一目惚れし、購入したものだった。


    二人はシートを広げ

    足を伸ばす


    依子は愛しそうにシートの花を指先で撫でた姿を見て実里が呟いた


    「お気に入りだね。」


    パッとあげた依子の顔は子供みたいだった。

    「うんっ。かわいい。」


    笑う依子は本当に愛される人の笑顔になる。


    愛される人間がここに居て

    愛する人間と共に居る



    「良かったね。」

    依子からの愛情のベールに包まれた実里は

    その温かさを噛み締めるように言った。


    「うんっ。あー…気持ちいい…。」


    春風が吹く

    それはより一層

    二人を包み込む



    実里は春の空気を深く吸い

    「気持ちいい…。」

    ゆっくりと吐息と共に言った。




    二人は共に居た。




    共に春に包まれていた。




    これが


    去年の春だった。




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