ビアンエッセイ♪

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■20851 / 1階層)  ベアリー
□投稿者/ 上月 一般♪(4回)-(2008/05/25(Sun) 23:57:00)
    「絆創膏…取ってくるよ。」

    実里は依子を刺激しないように静かに言い、その場を離れようとした。


    その時の

    依子の瞳は

    恐らく一生忘れない程

    失望していた。



    一瞬

    時が止まった。



    そして実里は依子の肩を握った。



    失望は悲しみに移った。



    彼女の何がこれ程までにしているのだろう




    寝室の小さな戸棚の薬箱を取り出した。


    怒りが湧く


    何に対して?


    わからない


    何があったのか





    依子のもとに戻り、箱から絆創膏を取り出すと

    「自分でやる。」


    依子が小さな声で言った。


    差し出された手は

    震えている。


    「はい。」


    静かな時が流れた。

    「もう…一枚…。」

    「はい。」

    「やっぱりあと二枚…。」

    「はい。」


    実里は言われた通りにした。

    小さな傷に重ねられた何枚もの絆創膏。

    それを眺めて

    終わった合図のように依子が絆創膏を撫でた。


    「何か…あったの?」

    実里が聞く。

    何だか涙が出てくる。

    勝手に出てくるのが何故か悔しい。


    依子は黙っている。


    実里は泣いている。


    依子は傷ついていない方の手で実里の頬を撫でた。


    「何故泣いてるの?」

    そう言った依子の頬にも涙が伝う。


    「何があったの?」


    震える唇で

    もう一度実里が聞いた。

    その震える声は

    依子の手をかたく握らせた。



    「いつかその時がきたらちゃんと言う。今は言えない。ごめん。」


    依子は小さな声でもう一度ごめんと呟いた。




    実里は

    自分が小さく感じた。


    何にも力が及ばぬ程の

    小さな小さなものに。



    世界から落ちていくのではなく

    身が剥がれそうな勢いで

    自分が小さくなっていくような





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