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■21622 / 親階層)  ヤクソク
□投稿者/ 楼 一般♪(2回)-(2012/09/08(Sat) 18:45:59)
    2012/09/08(Sat) 20:24:10 編集(投稿者)





    出会ったきっかけは・・・・確か、大学の入学式の時。










    留年も浪人もすることなく、無事地元の高校を卒業できた。
    1年生の時から憧れていた第一志望の大学にも一発合格、入学決定。
    初めて地元からも親元からも離れ、他県で一人暮らしをすることになった。




    春休み、両親と妹を引き連れて、これからの生活の拠点にお引越し。
    先に運んでおいてもらった段ボールの山を、4人で片付けた。
    部屋を決める時にも訪れたマンションだったけど、やっぱり違った。
    今日からここで生活するんだなあ、って思うと、複雑な気持ちだった。
    わくわく感と、寂しさと、不安と・・・・いろんな感情があった。
    だけど今更実家に帰ることもできなくて、せっせと片付けに精を出した。




    4人で集中して作業をしたおかげで、数時間で片付けは終了。
    近くのレストランで、家族全員で引っ越し祝いのディナーを食べた。
    その後、両親も妹も新幹線でとっとと家に帰っちゃったけど。
    1泊ぐらいしていってもよかったけど、生憎場所がなかったから。
    ホテルに泊まるのも何だかねえ、ってお母さんは笑ってた。




    それから1週間経って、大学で盛大に入学式が行われた。
    事前に買い揃えておいた黒のレディーススーツを身にまとい出席。
    両親は共働き、2人とも仕事で入学式には出席できなかった。
    だから1人で電車に乗って大学に行って、1人で出席した。
    親御さんも来ている人がたくさんいたけど、羨ましくはなかった。
    昔から周りの人に「意外とドライなとこあるよね」って言われる私。
    確かにこういうところがドライだよなあ、って1人で小さく苦笑した。




    やっぱり大学の入学式はすごくて、とにかく人が多かった。
    今まで入学した学校の生徒数は少ない方ではなかったけど、比じゃない。
    人、人、人で、人が多い場所が苦手な私は、うんざりしていた。
    だから入学式が始まるまでの間、ちょっとそこらを散策することに。
    正直電車の時間を間違えてしまって、早めに来ちゃって暇だったから。
    入学式が始まる予定の時間まで、あと数十分の余裕があった。




    人の流れに逆らって歩いて、適当に敷地内をぶらぶら歩いた。
    先輩方の視線が多少は気になったけど、全部無視して歩く。
    オープンキャンパス以来だったから、夏以来の大学の風景だ。
    夏とは違って丁度いいぐらいの気温で、春らしい晴天の日だった。




    携帯を弄りながら適当に歩き回っていると、1人の先輩が視界に映った。
    赤いファイルやら教材らしき本やらを抱えた、1人の女の先輩。
    急いでいるのか、少し多めの荷物を抱えながら走っていた。
    年上だろうけどどこか危なっかしい感じで、なんだか気になる先輩だ。
    つい立ち止まって、その先輩がこちらに走ってくるのを眺める。




    「あっ、えっ、わわわっ!?」



    「!?」




    ・・・・・私が立ち止まった数秒後、その先輩は盛大にすっ転んだ。
    段差も何もない、本来なら転ぶ要素がどこにもない場所で、盛大に、だ。
    ファイルやら本やら荷物が宙に舞い、先輩の身体は前方に大きく傾いていく。
    手ぐらいつけばいいものを、腕を真っ直ぐに伸ばしたまま、顔面から、ドシャッ。
    しかも転んだ後、すぐに起き上がることをせず、しばらくそのまま。




    頭を打って気絶でもしたのかと思い、近くに歩み寄ってみる。
    すると、むくりと顔をあげ、こちらを涙で潤んだ目で見上げてきた。




    (・・・・・可愛い)




    顔面から地面に着地したせいで、額に傷ができ、血が出ていた。
    無言のまま身体を起こし、身体のあちこちをチェックする。
    膝も少し擦りむけていたし、荷物は少し離れた場所に吹っ飛んでいる。
    よくもまああそこまで盛大に転んだものだと、内心感心すらした。




    「・・・・大丈夫ですか?」




    未だに涙目で荷物を拾い上げていた先輩に声をかけた。
    荷物を全部拾い終わると同時に、額から血を出した先輩が振り向く。
    私は無言でカバンから絆創膏を取り出し、先輩に数枚手渡す。
    先輩もきょとんとしたままの顔で無言で受け取った。




    「あ・・・・ありがとう、ございます、」




    私の顔をしっかり見ながらふにゃり、と笑った顔は、可愛らしく見えた。
    私は無言で先輩の小さな手から1枚の絆創膏を抜き取った。
    それにまたきょとんとした先輩の顔は、目が点になっている。




    「・・・・おでこ、血ぃ出てるんで。貼ってあげましょうか?」



    「えっ!?あ、じゃあ・・・・お願いします」




    前髪を両手で押さえ、貼りやすいようにして、目をぎゅっと瞑る。
    目を瞑る必要性なんてどこにもないけど、特につっこまず。
    傷の大きさと絆創膏の大きさが合うか心配したけど、大丈夫だった。
    絆創膏を貼り終えると、先輩は、必死で前髪で隠そうとしていた。
    額に貼るついでに、膝の怪我の所にも絆創膏を貼ってあげた。




    「本当すみません・・・・」



    「いえ、別にこんぐらい・・・・じゃ」




    私は荷物を両手で胸のところで抱えた先輩を置いて、来た道を戻った。
    ちょっと後ろを振り返ってみたい気がしたけど、入学式の会場へと歩く。
    思い出しても笑える転び方をした先輩と、これから関わることはあるだろうか。
    人数が多い学校だし、多分数えるほどしか関われないとは思う。
    というか、これから先、何らかの形で関われたなら、それはすごい。
    私は積極的に何かの役を引き受けたりしないタイプだから余計に。
    サークルには参加する予定だけど、サークルもたくさんある。




    その後、入学式に出席し、その日は徐々に慣れてきた自宅に帰った。





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