ビアンエッセイ♪

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■21623 / 1階層)  
□投稿者/ 楼 一般♪(3回)-(2012/09/08(Sat) 19:20:01)





    ・・・・・また、あの先輩に出会った。










    今度は、入学式の数日後、自宅の近くのスーパーにて。
    私は今日から1週間分の食材を買うために、野菜売り場にいた。
    ここらへんのお店はどこも安くて、学生にとても優しい。
    バイトと仕送りでやりくりをする予定の私には、救世主だ。
    まだバイト先は決まっていないから、早く決めないといけない。
    今日はわずかしかない貯金で買い物をすることになってしまった。




    ばら売りが基本のようで、人参や大根などが1本ずつ山積みになっている。
    私はサラダにでもしようときゅうりを手に取り、適当にカゴに放り込む。
    他にもキャベツなどを放り込んでいくと、だんだんカゴが重くなってきた。
    野菜はこのぐらいでいいだろう、と肉売り場に行こうとした、その時だった。




    「っきゃあ!?」




    女性の短い悲鳴が聞こえて、私だけじゃなく、数人の人が振り返る。
    視線の先には、山積みにされているかぼちゃが崩れそうになっている光景。
    そのかぼちゃを一生懸命押さえているのは・・・・あの、先輩だった。
    カゴの中にかぼちゃを入れているところを見ると、原因は彼女のようだ。
    多分、かぼちゃを手に取ったら、山が崩れてきてしまったんだろう。
    私はどこかデジャヴを感じながらも、かぼちゃを一緒に押し上げてあげた。




    「あ・・・・・」



    「・・・・どーも」




    びっくりしている先輩に軽く会釈をすると、先輩も慌てて会釈をした。
    そのお陰で押さえる力が弱まり、またかぼちゃの山が崩れかける。
    先輩はそれを急いで押さえると、小さな声ですみません、と。
    私は特にこれといった言葉を返さず、かぼちゃの山を元に戻した。




    「あの・・・・こないだといい今日といい、ほんとすみません・・・・」




    かぼちゃの山から手を放した先輩は、深々とおじぎをした。
    周りの人はもうこっちを見ていなくて、商品と睨めっこをしている。
    額と膝の絆創膏は取れ、代わりにかさぶたができていた。




    「おっちょこちょいな方なんですね」



    「えっ、そ、そうでもないですけどっ・・・・!」




    何もないところで転び、かぼちゃの山を崩す人が否定することではない。
    改めて先輩の容姿を見ると、結構可愛らしい感じの人だった。
    雰囲気からしておっとりしててふわふわしていて、危なっかしい。
    美人とかそういうわけではないけど・・・・・可愛い人だと思った。




    「これからは気を付けて下さいね」



    「はい・・・・ほんと、すみませんでした・・・・」




    しょんぼりしてしまった彼女に少しばかり罪悪感的なものが芽生えた。
    本当は買い物を済ませたらとっとと食事を作ってしまうつもりだったのに。
    なんだか自分が悪い気がして仕方がなくなって、ひっそりとため息をついた。




    「・・・・先輩。家、どこですか」



    「え、」



    「どこですか」



    「・・・・ここから、20分ぐらい・・・・?」




    ここから20分ということは、私の家よりも離れているらしい。
    私の家からここのスーパーまで、10分ぐらいで来れる。
    20分もかかるなら、ここまで自転車か車で来ているんだろうか。




    「先輩危なっかしいんで、家まで送ります」



    「それは申し訳な「送ります」・・・・はい」




    先輩の言葉を途中で遮り、有無を言わさずに送ることにした。
    それからそれぞれ買い物を済ませ、外で待ち合わせることにした。
    私はさっさと肉売り場を回り、飲み物なども買い込んで、会計を済ませる。
    スーパーの外の入り口付近で待つこと約5分、先輩が出てきた。




    「あの・・・・・私、自転車なんですけど」




    先輩は赤い自転車の鍵を解除すると、カゴに袋を少し強引に詰め込んだ。
    私は徒歩で来ていたし荷物もそれなり、後ろに乗るわけにはいかない。
    仕方がないので、先輩に自転車を手で押しながら帰って頂くことになった。










    「あ、ここのマンションです」




    無言のまま一緒に歩くこと数十分、確実に20分はオーバーした。
    今まで私同様黙り込んでこちらを見ることもなかった先輩が、口を開いた。
    高くそびえている、家賃が高そうなグレーの壁のマンションの前で。
    どうやらここが先輩の自宅らしい、歩いていた足が止まった。




    「・・・・・良さそうなとこですね」



    「そうかな・・・・案外狭いかもしれません」




    先輩の家に到着したなら、もう一緒にいる必要はない。
    私は先輩が自転車置き場に自転車をしまうのを見届けて、さようなら。
    もうほとんど暗くなった道を歩いて、自分の家に帰った。





    その日は、シャワーを浴びただけで寝てしまった。





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