ビアンエッセイ♪

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■21652 / 1階層)  深海 2
□投稿者/ kuro* 一般♪(2回)-(2012/09/28(Fri) 18:47:23)




    「ねえ今朝の見た!?」



    「雨月さんと和宮さんのツーショットでしょ!?」



    「えーっ、すっごいツーショット!!」



    「今朝雨月さんいなかったし、2人で過ごしてたのかな!?」



    「じゃあ2人は恋人同士!?」



    「えーっ、じゃあ私達無理じゃない!!」



    「でもすっごく似合ってるから、納得しちゃうよねー!!」




    今まで台風の話でもちきりだったのに、今度は薫と乙葉の話でもちきり状態。
    薫は朝礼が終わった後、休憩時間の度に他の生徒からの質問攻めを受けた。
    乙葉は普段なら薫のように囲まれることはないが、この日ばかりは囲まれた。




    「ねえ、和宮さんって、あの雨月さんと付き合ってたの!?」



    「今日初めてお会いしたわ。それまではお名前しか知らなかったわ」



    「ええーっ、和宮さんって雨月さんのこと知らなかったの!?」



    「ええ・・・・」




    乙葉は慣れない質問攻めと人の輪に若干たじろぎながらも、質問に答える。
    周りの生徒達が離れてくれる気配は全くなく、まだしばらく続きそうだ。
    いつの間にか勝手な憶測や妄想までもが飛び交い、訂正する気にもならなかった。




    (私は本を読みたいのだけれど・・・・困ったわね)




    図書室で借りた本を読んでしまいたいのだが、そうもいかないこの状況。
    ここから抜け出そうにも四方を生徒に取り囲まれているため、出来そうにない。
    今頃薫も同じような目に遭っているのだろうと想像して、こっそり溜め息をつく。










    ―――――乙葉が想像した通り、薫は薫でまた、同じように囲まれていた。
    笑顔を浮かべているものの、これまた乙葉と同じく、抜け出したがっていた。




    「和宮さんと付き合ってるの!?」



    「いや、付き合ってないよ、たまたま出会っただけ」



    「なんだ・・・・ならよかった〜!!!」



    「和宮さんも素敵だけど君たちも十分素敵だよ、とっても可愛いじゃない」



    「「「「・・・・!!!!」」」」





    にっこりと優しげに微笑んで言えば、簡単に真っ赤になってしまう周りの生徒。
    こういうところが女の子は可愛いから好きなのだが、いい加減逃げ出したい。
    さっきよりも静かになった彼女達を置いて、薫は教室を出て行った。
    そして3つ隣のクラスの教室で困っているであろう乙葉の元へと急ぐ。
    こっそりと教室の中を覗くと、予想通り、窓際の席には人だかりが出来ていた。
    乙葉のクラスの生徒の視線を集めながらも、その人だかりへと近付く。




    「あ、雨月さん!!!!」



    「えっ、どうしてうちのクラスに!?」




    人だかりをつくっていた生徒達にばれてしまい、また騒がれてしまった。
    乙葉は慣れていない人だかりの中央部分で困り果てたような顔をしていた。
    そんな乙葉の手を握って彼女を立たせると、周りの生徒達は急に静まり返る。
    そして薫が歩みだすと、自然と人だかりが割れ、道をつくってくれた。




    「みんな、僕らのことが気になるのは分かるけど・・・・ほどほどにしてね?」



    「で、でも・・・・・!!」



    「特に和宮さんはこういうの慣れてないし・・・・ね?」



    「「「・・・・!!!」」」




    先程は自分のクラスの教室で、優しげな王子様スマイルを浮かべた薫。
    今度は違うクラスの教室で、困ったような微笑みを浮かべてみせた。
    その捨てられた子犬のように愛らしく同情を誘う笑みは、人を黙らせた。
    周りの生徒を無事黙らせることに成功した薫は、乙葉を連れてさっさと退散した。




    「貴女・・・・自分を上手く見せるコツを知っているのね」



    「ふふ、何のことかな?」



    「まあ、性質が悪いわね」




    薫に性質が悪いなどと言いつつも、乙葉はくすくすと可笑しそうに笑った。
    廊下でも生徒達の視線を浴びながら、薫は乙葉の手を引き、歩き続ける。




    「あら雨月さん、どちらに行くつもり?」



    「薫でいいよ・・・・どこか静かな場所に行こう」



    「でもあと少しで授業が始まるのではなくって?」



    「うん、そうだね」




    そうだね、と当たり前だと言わんばかりに返事をしつつ、教室から遠ざかる薫。
    乙葉は授業をサボることになると分かりつつも、その手を振り払わなかった。










    「・・・・こんな場所、あったのね」




    あの後薫は黙ったまま歩き続け、乙葉も行き先も何も聞かずに黙って歩いた。
    薫が乙葉を連れてきたのは、学校の敷地内の隅の方の、誰も知らないような場所。
    大きな木があり、芝生の上に影をつくっていて、薫は影の上に寝転んだ。
    それを見て乙葉も薫の横に座り、周りをもの珍しそうにきょろきょろと眺めた。




    「僕のとっておきの場所。人が滅多に来ないんだ。たまに掃除の人が来るぐらい」



    「そうなの・・・・そんなとっておきの場所に私が来てもよかったのかしら?」



    「ああ。・・・・君は他の人とは違う気がするんだ」



    「あら奇遇ね、私もそういう風に思っているわ」




    遠くで鳴る授業の開始を知らせるチャイムを聞きながら、2人は上を見上げた。
    青い空と白い雲が広がっていて、飛行機雲も見えて、涼しい風が吹き渡っている。
    風が吹くのに合わせてこの大きな木や周りの木の葉が揺れ、音を立てている。




    2人は授業の間中、ずっとその場所で2人きりの時間を過ごしていた。




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