□投稿者/ 無花果 一般♪(2回)-(2015/04/08(Wed) 10:07:35)
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少女たちの物語(2)「付喪神」
いつのことであったか、ひとりの少女はその短い生涯の中で恋をした。 彼女の名前も何も知らない、ただ自分を使い捨てるだけの存在に恋をした。
彼女はまだ高校生になりたての若き少女で、青春真っ只中の時期の女の子だった。 本当は黒いはずの髪は明るい金色に染められ、濃いめのメイクが顔を彩る子。 制服のスカートは短く、いつもだるそうに退屈そうに時間を過ごしている。 それでも少女は知っていた、その瞳の中には寂しさと諦めがあることを。 本当は誰か頼れる人が、傍に居てくれる人が欲しいと少女が願っていたことを。 少女は、自分がその女の子の願いを叶えてやることができないことも知っていた。 だから少女は願った、誰かが彼女の本当の気持ちに気が付きますようにと。 毎日毎日、太陽にも星にも月にも雲にも何にでも祈りの気持ちを捧げ続けた。
最近の彼女は機嫌がいい、分かりづらいが前よりも少し表情が明るくなった。 一見無表情で無愛想に見える彼女の隣には、知らない女の子が笑って立っている。 明るい彼女は少女の願いを聞き入れ、そして叶えてくれたいわば恩人である。 孤独な少女の寂しさも、諦めも、微かな表情も、全部を包み込める「おともだち」。 自分がなりたくてもなれなかった、彼女の理解者、彼女の支え、彼女の恩人。 毎日願った必死の願いが聞き入れられたというのに、少女は素直に喜べなかった。 本当は自分があそこに立ちたかった、本当は自分の方が先に彼女の魅力に気が付いたのに。 願いが聞き入れられたのにも関わらず、無邪気な救世主である彼女の存在を憎んだ。
だからだろうか、せっかくの彼女の恩人を憎むような真似をしたからであろうか。 遂に少女は大好きな彼女の元を離れる時、すなわち別れの時がやってきてしまった。 彼女はひどく辛そうな顔で少女の身体を持ち上げ抱き締め、そして手放した。
「さよなら、どうか貴女が幸せであらんことを」
次の日、彼女のお気に入りのぼろぼろになった筆箱は、炎に消えた。
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