| いや、正確には自分の意志ではなかった。 誰かの目を通して見ていた。誰かとは結城友香里15歳。中学三年生だ。 今日は◯◯年12月25日、節子が息を引き取る五年前になる。 友香里は慌てて身支度をすると、キッチンへ行き朝食の用意をする。 「おかーさん!朝御飯の用意したから後で食べてね。」 うーんと返事か寝言かが隣室から聞こえてきた。 彼女の母親は看護士だ。夜勤明けで眠ているらしい。 父親はいない。友香里の夢は介護関連の仕事に就くことだ。 今日は冬休みでクリスマスだが、遊ぶ相手がいない。 図書館で介護関連の書籍を探してみるつもりだ。
図書館で介護の本を数冊選び、棚の角を曲がった時だった。 何か柔らかい物にぶつかってしまった。 「きゃっ!」「ごめんなさい!」 女の子にぶつかったみたいだ。 バラバラと本が散らばって、慌てて拾い集めると、相手の手に触れてしまった。 はっと、お互いに見つめ合うと、友香里の口から突然、 「あっ‥‥ふじい‥‥めぐみさん?」
節子が言わせたのだが、言った本人も驚いた。
「えっ、どうしてわかったんですか?初めて会いますよね?」 友香里もきょとんとして 「‥‥‥‥さぁ?!」 「さぁって。ふふふっ、へんな人。」 「へへへっ、そうですね〜!」 散らばった本を見て、めぐみが 「あらっ、あなたも介護士を目指しているの?」 「も、ってあなたも?」
それから二人は同い年ということもあり意気投合して、たびたび会うようになった。
節子は嬉しかった。自分の身体ではないが、まためぐみと会えたのだ。 会えば会うほど、やはりめぐみのことが好きになった。
一方、友香里は自分の気持ちに戸惑っていた。 なぜ、めぐみのことが気になるのだろう。 会っている時は楽しいのに、別れる時は寂しくて仕方がなかった。 もしかして、あたしは恋してるの?相手は女の子なのに! そう自覚した途端、友香里の恋心は加速した。 想いを告げたい!めぐみに触れたい! 知らず知らずに、めぐみの唇やうなじを熱く見ていた。 ある日、友香里は意を決してめぐみに告白した。 「あの、引かないで聞いてほしんだけど。」 「なに?」 「あ、あのね‥‥‥‥‥‥‥めぐみのことが好きなの!だから付き合ってほしいの!」 「うん、いいよ!」 「えっ、ウソッ 本当?」 コクリとうなづくめぐみ。 「キスしていい?」 目を閉じるめぐみ。顔を近づける友香里。
節子は舞い上がった。とうとうめぐみとキスができるのだ。
続く
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