| 紗織は部屋の前で立ち止まり、静かに扉を開けた。 大きな窓からはきらきらと光る海が見えた。
紗織がアリサを先に部屋に入れ、自分は後から入り鍵を締めた。 紗織の行動を不愉快そうに眺めるアリサ。
『今更逃げないよ。あの店からは離れられないし…』
鞄とヒールを投げ出し、アリサはベッドに倒れこんで顔を埋めた。 投げ遣りなアリサの態度に苦笑いをし、紗織はバスルームへと消えていった。
シャワーの音がアリサの所にまで聞こえてくる。 不安な気持ちを抑え、アリサはエリナの事を想った。
〔エリナ…会いたいよ……こんな所…逃げたい…〕
手を握り締め、枕にはアリサの涙で染みが出来ていた。冷たいシーツがアリサを包んだ。
しばらくしてバスルームの扉が開く音がした。 ぐっと涙を指先で拭い、凛とした顔で紗織の横を通りすぎてバスルームに向かっていく。
(携帯)
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