| 「それじゃあ、あとは校舎の中を案内するわね。」 その時、僕のお腹がぐぅ〜って音をたてた。 うわっ、恥ずかしいな。朝ごはん食べたの早かったからな。 だって、今日は初登校だから緊張して、早く起きちゃったから、 朝ごはんも早かったんだ。
「くすっ、食堂から案内するわね。」 宮嶋さんに笑われた。うわ〜・・・今僕、顔赤いだろうな〜。
食堂はまだ昼には少し早い時間だったせいか、人はまばらだった。 よかった〜、食事中まで注目されたらどうしようかと思った。
食事はセルフサービスで、好きなものをカウンターからとるみたいだ。 メニューもいっぱいあるな〜。 和食、洋食、中華、イタリアン、いろいろある。 ホテルのバイキングみたいだね。 ついつい、目移りして、結局僕のトレイに乗ったものは・・・ ハンバーグとご飯、菜の花のおひたし、ひじきの煮付け、ラーメンだった。 食べ合わせ的に変かな? 前の学校にいたときは、友達と食事に行くと、よく笑われたっけ。
宮嶋さんをみると、野菜のサンドイッチとスープをとっていた。 「あれっ、お金ってどこではらうの?」 レジってないのかな? 「お金?ああっ、お金はかからないわ?」 はっ? 「食堂での食事は、学費に含まれるから、 食事ごとに代金を支払う必要はないの。」 ええっ〜・・・じゃあ、これ全部ただってこと?なんてうらやましいんだろう。 「じゃ、じゃあ、納豆ももらっていいかな?」 ついつい、貧乏くさいことを言ってしまう。
「朝7時から夜八時までやっているから、ここで食事をとる生徒も多いのよ。」 へえ〜、三食付か〜、すごいな。コンビに弁当とか買わなくて済みそうだ。 僕らは窓際のテーブルに座ると、食事を始めた。
「んっ、おいしいね。なんだかちょっとおふくろの味って感じで。 ちょっと意外だけど。」 「そうね、理事長の趣味なのよ。」 宮嶋さんが穏やかな視線をむけて僕を眺めている。 なんだか恥ずかしくなって、僕は一気に話し出す。
「それにしても安心した〜、毎食自分で作るのって大変だろうし。 料理はあんまり得意じゃないから。 僕の両親も、今朝それを心配して、空港に出発して行ったんだ。 母さん仕事で遅くなるときは、 デュークと二人でコンビニ弁当って日もあったし。」
「デューク?」 宮嶋さんが尋ねる。 「あっ、デュークってのは犬だよ。 アラスカンマラミュートっていうんだけど、ハスキー犬みたいな感じの。 両親と一緒にオーストラリアへ行ったけど、僕の大事な家族だよ。」
「そう、素敵なご家族ね。」 宮嶋さんが微笑んでそう言う。 うわっ、やっぱり綺麗な人だ。 つい目が合ってしまい、僕は食事に集中することにした。
食事が済むと、校内のほかの施設を案内してくれた。 これで移動教室のときも、苦労しなくてすみそうだ。 朝たどり着けなかった職員室ももう一回(汗)今度はちゃんと覚えたぞ。
|