ビアンエッセイ♪

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■20059 / ResNo.60)  NO TITLE
  
□投稿者/ のん 一般♪(1回)-(2007/09/20(Thu) 02:19:04)
    すごくおもしろいです。 続き、楽しみにしています。

    (携帯)
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■20060 / ResNo.61)  のん様
□投稿者/ 琉 ちょと常連(58回)-(2007/09/20(Thu) 21:50:07)
    初めまして。
    感想、ありがとうございます。とても励みになります。
    第一章もいよいよ佳境に入りますので、
    どうか最後までお付き合いいただければ嬉しいです!
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■20061 / ResNo.62)  第一章 さくらいろ (54)
□投稿者/ 琉 ちょと常連(59回)-(2007/09/20(Thu) 21:59:56)
    「み〜た〜な〜」

    何て間の悪いタイミング。
    せっかく高いお金を出してまで買ったのに、
    飲み終えていないまま捨てるのはなあ…という
    ある意味やむをえない理由のために
    和沙は先ほどの缶紅茶をここまで持ってきたのであった。
    貧乏性がこんなカタチで裏目に出るなんて。
    間髪を入れずに、背後から杏奈が声をかけてきた。

    もうダメだ…

    大人しく観念しようにも、和沙の足は
    まるで地面に吸いついているように動かなかった。
    それもそのはず。
    和沙が今まで聞いたことのある彼女の声の中で、最も冷淡な声質だったからだ。
    振り向かないといけないのだけれども、
    振り向くのが怖い。
    しかし、次の杏奈の発言は意外なものだった。
    「あ、君を見たら思い出した。真澄先輩が探してたよ、あなたのこと」
    「えっ?」
    とっさの反応とは面白いもので、今度の和沙は躊躇なく振り返った。
    予想とは裏腹に、杏奈は大して怒っている様子ではなかった。
    「な、何で…?」
    「さあ?私もよく知らないけど、もう帰ってしまっているかもしれないけど、
    見かけたら温室まで来るように伝えてほしい、って。
    先輩にしたら珍しく焦っていた様子だったけど…」
    そこまで言い終えた杏奈はニヤツとした笑みを浮かべてこう続けた。
    「きっと和沙ちゃんに何か大事な用があったんじゃないかしら?」
    「なっ」
    自分でもみるみる顔が紅潮していくのが分かる。
    「早く行ってあげて、和沙ちゃん」
    恥ずかしいのと、杏奈の言葉が後押しになったのとで、
    和沙は黙って彼女の横を通り過ぎようとした…のだが
    「あ、待って」
    またも腕を掴まれ、杏奈に阻まれた。
    「ナイショにしててね」
    小声でボソッと呟くようにして言った彼女は、
    そのまま和沙を見ることなく向こう側の通りへと消えていった。
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■20071 / ResNo.63)  第一章 さくらいろ (55)
□投稿者/ 琉 ちょと常連(60回)-(2007/09/23(Sun) 13:56:06)
    高校進学時には、もしかして…なんて懸念でいっぱいだった。
    そしてその中には、女の子同士の恋愛なるものも当然に含まれていた。
    …けど。
    それは、あくまで可能性。
    居るかもしれないし、居ないかもしれない。
    また、仮に存在しようとも、現実の当事者を見るかもしれないし、
    卒業するまで知らないままかもしれない。
    全ては可能性でしかなかった。
    …でも、和沙は今先ほど見てしまった。
    しかも、ごく顔見知りの知っている先輩が関係していたことで、
    いくらか胸の動揺が増幅されている。
    副会長と書記。
    生徒会で重要な職務を担っている二人が、もしかすると当事者なのかもしれない。
    斎の方はともかく、杏奈の方はもしかしなくともほとんど確定的だ。

    『ナイショ』とは、何を内緒にすれば良いのだろう。
    先ほどの彼女と親しげにしていたことを?
    二人で抱き合っていたことを?
    それとも…
    きっと、杏奈が伝えたかったことは
    実はそんなに難しいことではなかったのかもしれないけれど、
    今の和沙には刺激が強すぎて取り乱すことでしか心の均衡を調整できなかった。

    おまけに、真澄も真澄だ。
    一年は早く帰れ、なんて言っておいて、
    また呼び出すなんて彼女らしくない矛盾した行動だ。
    もしや、またからかい半分で明日の緊張を紛らわそうとしているのではないか。
    いや…案外、本当に具合が悪いのかも。

    和沙の中で思いが交錯し、考え事が後からあとから増える一方で、
    温室に到着した頃には頭がパンクする寸前だった。
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■20072 / ResNo.64)  第一章 さくらいろ (56)
□投稿者/ 琉 ちょと常連(61回)-(2007/09/23(Sun) 13:59:22)
    ウイィィン…

    自動ドアの向こうには、またしても別世界が広がっていた。
    もともと温室自体が学内でも指折りの華やかさを誇っているのだが、
    以前見た時より数割増しで豪華になっていた。
    鮮やかな色の花の側には間接照明でさらに輝きが増して、
    いつの間に造ったのか、簡素なものであるが中央広間へと続く一本道に
    アーケードらしきものまで用意されている。

    え…?

    呼ばれたから来てみたは良いが、これでは真澄がどこに居るのか
    検討もつかない。
    室内の広さを考えると、多少大声で叫んだところで反響性は期待できない。
    和沙は改めて温室中を見渡した。
    なるほど、所々にプラカードらしきものがぶら下がっていることから、
    単なるイメチェンではなさそうだ。
    温室を刷新するにしてはやりすぎる、でも誰かを迎え入れるために
    歓迎の意味で装飾を加えたとしたら…このくらいが妥当なように思える。

    生徒会主導で『誰かを迎え入れる』ような最近の行事といえば…

    明日の歓迎会に関係することなのだろう、と和沙が結論を下すまでに
    そう時間はかからなかった。
    彼女は企画をはじめ明日の全指揮を取り持つ会長なのだ。
    大事な作業に没頭していて、それを邪魔するのも気の毒だ。

    真澄がこちらに気づく前に帰ってしまおう

    そう決めて、和沙が振り向こうとした瞬間…またしても
    あの日と同じことが起こった。
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■20077 / ResNo.65)  第一章 さくらいろ (57)
□投稿者/ 琉 ちょと常連(62回)-(2007/09/24(Mon) 01:07:03)
    「ごめんなさいね…えっ」
    「うわっ」

    おそらく、ほぼ同じタイミングで二人は互いの反応に驚いた。
    和沙は背後に誰か居るとは気づかず、また真澄はまさか和沙が
    自分に気づいていないとは思っていなかったからだ。

    …しゅ、瞬間移動?

    真澄に対して若干偏見を持っている和沙は、
    本気で彼女の神業に感服した。
    「ああ…これ。すごいでしょう?自信作なの」
    真澄は和沙が温室の変わりように驚いているものだと勘違いして、
    あれやこれやと熱心に説明を続けた。

    ん…?

    そのうち、和沙はある異変に気づいた。
    真澄の鼻筋がうっすらと土で汚れているのだ。
    よく見ると、それは鼻だけでなく、頬や額にもチラホラ確認できる。
    たぶん、花壇を整えるために土いじりした時にでも
    付着したのだろう。
    まるで努力の勲章のようだ。

    もしかして、気がつかない…?

    和沙が不思議がるのも無理はない。
    百合園でも屈指の名家である高柳家のお嬢様ともあろうお方の
    麗しのご尊顔にこのようなことがこれまでにあっただろうか。
    たぶん、ない。
    きっと彼女の家なら、お付の者が慌てて消しにかかるだろう。
    真澄の顔立ちが端正であるが故に和沙には滑稽に映り、
    彼女が「すごいでしょ」を連発するたびに
    和沙には別の意味に聞こえて笑いを堪えるのに必死だった。

    そのうち、立ち話も何だから座ってお茶でもしましょう、ということになって、
    和沙は以前杏奈と昼食を共にした例のスペースに通された。
    本当ならば、こういう時こそ後輩が進み出て支度をするものだが、
    真澄が今日は自分がやりたいと言うので、和沙は座って待っていることにした。
    そろそろお湯が沸騰する頃だろうかというタイミングで、
    キッチンの方からはタイマーの音と真澄の悲鳴が聞こえた。
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■20078 / ResNo.66)  第一章 さくらいろ (58)
□投稿者/ 琉 ちょと常連(63回)-(2007/09/24(Mon) 01:15:47)
    「見た?」

    開口一番、真澄は和沙にそう訊ねた。
    キッチンで洗顔してきたのか、今の彼女はいつもの美人生徒会長に戻っている。
    心なしか、彼女の頬は紅くなっている気がする。
    「何がです?」
    とりあえず和沙はとぼけてみた。
    こっちはこれまでに散々醜態をさらしてきたのだ。
    しかも、もともと和沙の仕業ではないのだから、
    このくらいの仕打ちは覚悟してもらいたい。
    けど。
    プライドの高いお嬢様は、和沙の返答がお気に召さなかったようで、
    ムッとした表情をしながらも二人分の紅茶の用意を始めた。
    白いジノリのカップに真っ赤な液体が注がれていく。
    「これは…?」
    「ローズヒップティーよ」

    ろーずひっぷ…うげっ

    一度だけ試してみたことがある銘柄だが、その時は
    香りと渋みが強すぎて全部は飲みきれなかった。
    そんな和沙のしかめっ面を見た真澄は、
    騙されたと思って飲んでみなさいとばかりに
    カップを差し出した。

    「あ、美味しい…」
    意外だった。
    けど、思ったよりもすっきりしていて本当に飲みやすいのだ。
    「でしょう?きっとあなたは飲みなれていないだろうから、
    薄めでまろやかにしてみたわ」
    飲みなれていないは余計だが、悔しいことに早くも二杯目をお代わりしてしまう。
    杏奈と別れてからもずっと歩き通しだったため、
    温かい紅茶が染み入るようだ。
    そういえば、何だかんだで先ほど購入した缶紅茶もこぼしてばっかりで、
    ほとんど飲まないまま持ってきてしまった。
    和沙がチラリと見たことで気づいたのか、
    真澄がそれを持ち上げキッチンへと運んでいってしまった。
    何をするのだろう、と和沙が不思議がっている間もないうちに、
    彼女は缶の中身を捨て始めた。

    「ああっ」
    もったいないといったらこの上ない。
    和沙の心の叫びも届くことなく、
    缶の中の紅茶は無情にも排水溝へと消えていった。

    260円…

    まだあと半分の量は残っていたように見えたため、
    その半分の額を考えて嘆いてしまう。
    すぐに値段に換算してしまうのは庶民の性なのだ。
    「こういうのはふたを開けたらすぐに飲んでしまいなさい。
    じゃないと味が落ちてしまうのよ?」
    「でも…」
    まだ飲めるのに…と和沙は続けたかったのだが、
    真澄はそれすらも見通して一刀両断で遮った。
    「飲める飲めないの話をしているのではないの。
    一流の物は最適の時期に味わってこそ価値があるものよ。
    残してしまう恐れがあるなら最初から買わないか、
    もっと小さくて飲みきれるサイズを探すの。
    少しで良いから一流品を嗜むのが至上の幸福だわ。
    あなたもそうは思わない?」
    「はあ…」
    それは正論なのだけれど、和沙にだって言い分はある。
    というか、あれを買った当初はもちろん全部飲み干すつもりでいたのだ。
    なら何故飲んでしまわなかったかというと…

    ああ、そうか…

    その後、いろいろゴタゴタがあってこの温室にたどり着いたことを
    和沙はようやく思い出した。
    気がつくといつの間にか真澄は側まで来ていた。
    「ま、あなたのことだから何か事情があるのでしょ。
    でも…そのもったいないという心がけは
    物事に感謝する精神を養う上でとても良いことだから大切になさい」
    そう言うと、真澄は和沙の頬をそっと撫でた。
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■20101 / ResNo.67)  NO TITLE
□投稿者/ スマイル 一般♪(1回)-(2007/09/29(Sat) 10:33:40)
    琉サン
    読まさせて頂きました。サイコウ!に面白いです!
    是非とも〜続きが気になりゃす(*≧m≦*)
    頑張って下さぃです。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20106 / ResNo.68)  スマイル様
□投稿者/ 琉 ちょと常連(64回)-(2007/09/30(Sun) 00:11:25)
    初めまして。感想をお寄せいただきありがとうございます。
    実はこの作品は、全六章での構成を考えています。
    長すぎ…ですね。
    自分でも完結できるか不安なのですが、
    温かいメッセージを支えに頑張ります。

引用返信/返信 削除キー/
■20107 / ResNo.69)  第一章 さくらいろ (59)
□投稿者/ 琉 ちょと常連(65回)-(2007/09/30(Sun) 00:40:50)
    触れたのは指先だけなのに、和沙はそこから熱くなるのを感じた。
    憧れの生徒会長に近づいて、単に彼女にかまってもらうだけではなく、
    独占しているような状態。
    考えてみると、自分は何て図々しい新入生なのだろう。
    真澄と対面する時間が長ければ長いほど、
    和沙の頭には余計な邪念がよぎるのだった。
    だけど。
    生徒会候補生になれば、毎日彼女の側に居ることができる。
    それだけは確かだ。
    逆に候補生を辞退すれば…今までよりも一緒に過ごせる時間は減ってしまう。
    それもまた明らかだった。

    和沙がぐるぐるとそんな考えを巡らせているうちに、
    真澄はいつの間にか和沙の前から離れてすぐ近くにある
    百合の花へと手を伸ばした。

    …?

    見ると、一列に規則正しく陳列されている百合の中に
    一つだけ萎れかけている花があった。
    真澄は、すぐさまそれに手を加えるようにして整えていく。
    彼女の細長い手を腕ごと惜しげもなく土の中に突っ込んで、
    体全体を使って作業している。
    どうやら和沙が考えていたほどすぐ済むものではないらしく、
    五分ほど四苦八苦している状態が続いた。
    真澄の額にはじんわりと汗がこみ上げていたが、
    彼女はそれを拭おうともせず、ひたすらその百合の花を見つめていた。

    「そこのスコップ取ってくれないかしら?」

    もしかしたら、和沙は真澄のその言葉を待っていたのかもしれない。
    だって、目の前で困っている一生懸命な先輩を
    放っておける人はなかなかいないはず…
    「はい」
    和沙は二つ返事で引き受けた。
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