| 翌朝
部員達とおはよう、と挨拶を交わす美帆の顔色は優れなかった。
いつも通りストレッチをこなす私にもフラフラと走り寄ってきて
力のない笑顔でおはようと笑い、ほどけかけていた私のバッシュの紐を結んでくれた。
『はよ、ありがと。 顔色悪いな…寝られへんかったんか?』
ストレッチを続けながら 美帆の顔も見ずにそう言うと
「え…っ……ぅん。
今日……言うつもりやけん色々考えよったら寝れんやった。。」
『そか。
ま…色々無理しなや?』
そう言うと、奏音が私と美帆の名前を呼んで 朝練の開始時刻である事を告げた。
その日の朝練中 3on3で美帆がシュートして着地したと同時に、貧血で倒れそうになった所を
後にいた亜希が支えて2人で倒れ込み 美帆が頭を打たずに済んだ分、亜希が右足を傷めてしまった。
亜希を筆頭にマネージャー陣が2、3人寄ってきて、すぐに亜希の足に冷却スプレーをかけたりしたのだが
どうやら傷めてしまったのはアキレス腱らしく、しばらく顔を苦痛に歪めて立てずにいた。
美帆はまだ意識が朦朧としたまま床に倒れ込んでいる
とりあえず2人を保健室に、と指示すると
奏音ともう一人のマネージャーが亜希に肩を貸し 美帆を残り2人のマネージャーで持ち上げようとするも、持ち上がらずで 結局美帆は私がおぶって運んだ。
保健室で足の処置をしながら先生が
『とりあえずテーピングはしたから、このまま病院に行きなさい。』
と、言う
それは、すなわち インターハイ試合に出場できない事を意味していた。
亜希は下を向いたまま少し黙って
『颯。』
と私の名前を静かに呼んだ。
亜希の斜め後ろに立っていた私が返事をすると
『今日任したけん…頼んだばい。』
「……はい。
どーにか決勝まで繋ぎますから。 安心してそれまで休んどいて下さい。」
がっくりと落ちた肩が 小刻みに震えていた。
その時 怪我の連絡が行った亜希の親御さんが保健室に迎えに来た。
亜希にそっくりな ボーイッシュでひょうきんな感じのお母さん
『も〜…あんたは何でいつもこ〜怪我ばっかするかね〜……。 もういい加減少しは落ち着きーよ!(笑)』
(携帯)
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