ビアンエッセイ♪

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■10915 / inTopicNo.61)  和美のBlue 52
  
□投稿者/ つちふまず 大御所(986回)-(2005/07/14(Thu) 20:52:09)
    それからは─
    ナツさんと顔を合わせても。


    「お疲れ様です。」


    「ん。」


    いわゆるオーナーと、
    バイトとして。


    必要最低源のコミュニケーションのみを取り、


    ユニフォームもリニューアルされ、夏本番を迎えた。


    夏の繁忙期には。
    毎年三人ほど、
    ホールはバイトを雇う。


    今年も新しいメンツを迎えて、せわしなく仕事をこなした。


    ナツさんもこの時期は、
    土曜日だけでなく。
    木曜日や日曜日にも現れる。


    中目黒をクローズさせた事は、鎌倉へ足を運ぶ時間が前よりも出来たのか。


    言葉を交しにくい私にしてみれば微妙だった。


    それでも。
    中目黒が閉店してから。


    少しナツさんは変わった。


    あの時見た白髪は、もう綺麗なブラウンに変わったけれど。


    より一層、


    はっきり言ってしまうと。


    厳しい人になった。


    もっと笑わなくなった。


    言葉を発しなくなった。


    テラスから海を眺める姿が、


    多くなった。


    ヤスさんが言うには。


    「何だか戻っちまったな。」


    らしい。


    ナツさんの過去は、


    想像もつかなければ、


    ほとんど知らない。


    けれど。


    一時期ナツさんと、
    近い距離にあった事。


    何だか嘘みたいに見えた。






    「カズちゃん、カズちゃん。」


    金曜日のクローズ前。


    食器を片付けていた、
    私の背中に。


    「ん、何?」


    臨時バイトで雇われている、希ちゃんに声をかけられた。


    希(ノゾミ)ちゃんは女子大生。以前から良く、うちのお店に食べに来てくれていたらしい。


    長い髪と。
    方エクボが特徴的。ナツさんとまでは行かなくても、背が高い。


    「今日オーナーってラストまでかなぁ。」


    希ちゃんは。
    テラスのオウムに餌をやっている、ナツさんを見た。


    「ん…どうだろうね。」


    さほど気にせずに、
    手を動かした。


    「素敵。もー遊ばれたい!」


    「………。」


    頼んでみたら、と。
    心に思ったけど。


    口にはしなかった。


    「ね、カズちゃんはオーナーと話した事、あるんだよね?」


    「…少し、だけどね。」


    本当に少し、なんだろうけど。


    「ね、どういう人?」


    ね、ね、と。


    「んー。」


    「ん?」


    「どういう人、なんだろうね…。」


    わかんないや、と。





    私は苦笑いした。


    (携帯)
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■10916 / inTopicNo.62)  和美のBlue 53
□投稿者/ つちふまず 大御所(987回)-(2005/07/14(Thu) 20:55:23)
    希ちゃんを見ていると。


    何だか少し前の、
    私を見るようで。


    「やめといた方がいいよ。」


    と、喉元まで。


    その言葉が出かけていたけれど、敢えて口にしなかった。


    そんな言葉を言う資格、
    私には無いと思っていたから。


    でも。


    ナツさんの気まぐれは、
    相変わらずだなと。


    ある日感じた。


    それは土曜日のクローズ前。


    店内には、


    あと二組ほど。


    ホールには私と、希ちゃんだけが残る形になり。


    ナツさんは。
    奥の席でノートパソコンに向かっていた。


    一組が帰ったので。


    食器を片付けようと、
    同じサイズのお皿を。
    手早く重ねていた時。


    「オーナー。」


    「ん?」


    希ちゃんが、
    ナツさんを呼ぶ声がした。


    私はさほど。
    気にせずに手を動かした。


    「カクテル…教えて頂けませんか?」


    希ちゃんの、緊張した声。


    私の耳にハッキリ聞こえた。


    思わず手を止める。


    振り返るとナツさんは。


    あの時みたいに、


    チェアに深く腰掛けて、腕を組んでいた。


    希ちゃん、


    …多分。


    チャイナブルーから。


    教えて貰えるよ。


    良かったね。




    私はまた手を動かして。


    食器をまとめた。


    でも。


    「ごめん。…ホールに専念して。」


    ナツさんの。


    低くて甘い声。


    思わず手を止めて、


    また振り返った。


    「そうですか…。はい。」


    残念そうな、
    希ちゃん。


    ナツさんはまたパソコンに、真剣な目を向けた。




    気まぐれ、だね。


    ナツさん。


    相変わらず。




    でも。


    私は一瞬、


    喜んでしまった。





    だけど。


    そんな気持ちは、


    今の私には必要ない。


    手を動かして。


    また仕事に集中した。




    それから二日後─




    「お疲れ様〜。」


    自転車に乗る、希ちゃんに声をかけて。


    店を後にしようとした時。


    ファン、ファン、と。


    派手なクラクション。


    「カズ!乗れや!」


    大きくて、


    いかつい。


    ヤスさんのインパラが。







    私の真横に停車した。


    (携帯)
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■10928 / inTopicNo.63)  NO TITLE
□投稿者/ 由兎魔 一般♪(28回)-(2005/07/15(Fri) 00:21:39)
    続きがメッチャ気になります!!カズはナツさんとどうなっていくんでしょうか〜??新しくバイトに来た希ちゃんがひょっとしたらくせ者になってしまうんでしょうか??気になって仕方ありません。。。続き待ってますんで頑張ってさいね♪♪

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■10935 / inTopicNo.64)  和美のBlue 54
□投稿者/ つちふまず 大御所(988回)-(2005/07/15(Fri) 08:03:41)
    ヤスさんのインパラの。


    車中で。


    「んもーヤスさんボリューム下げていいですか?」


    ガンガン流れる、
    ボブマーリー。


    近所迷惑上等の、
    大音量。


    「ワハハ!うるさいか?」


    スマンスマンと。
    ヤスさんは音量を下げた。


    “軽く飯でも食おうや”


    無理矢理車に乗せられて。


    ヒュー、パチパチと。
    海で花火を楽しむ。


    若者を横目に見ながら、
    海沿いを走る。


    「リプテーションソ〜ング!イエ!」


    ヤスさんは夜でも…。


    元気(涙)


    リズムに体を揺らせて。


    深夜でも営業している、


    デニーズに入った。




    「おうおうこんな時間でも混んでるなぁ。」


    ガキは早く寝ろ!と。


    混んでいた駐車場を見渡して。


    「私まだ22ですけど…。」


    呆れた目で見つめると。


    「俺もまだまだガキだ。」


    ダハハ!と。


    ベンチシートの肩の辺りに、


    太い腕を乗せて、


    急旋回でバックで駐車。


    んも〜危ないなぁ(涙)



    ─店内に入って。


    「腹減ったなぁ!」


    何にしようかな、と。ヤスさんはメニューをめくる。


    深夜一時なのに。


    「ヒレカツ定ライス大盛り。」


    私はドリンクだけを、


    注文した。






    「なぁカズ。」


    もりもり、という擬音後が。ピッタリな食べっぷり。


    「なんですか?」


    レモンスカッシュのストローをくわえたままヤスさんを見る。


    「オーナーとは駄目か?」


    口いっぱいに。
    ヤスさんはご飯を入れて。


    「ど、どーいう意味ですか。」


    直球の言葉に。
    動揺。


    「ブランカに行ったろ?」


    ゴクン、と飲み込んで。
    ヤスさんは。
    優しい目を私に向けた。


    「行きましたけど…あれ、ヤスさん知ってるの?ブランカ。」


    「おう。長い付き合いだしな、オーナーは。」


    またもりもりと。


    ヒレカツを二口位で、


    食べてしまった。


    「ふーん。でも…。」


    行ったけど…。


    だから何かがある訳じゃ…。


    「お前は特別みてーだったからよ。俺、嬉しかったんだよ。」


    特別。


    「え?」




    そうは見えない。


    (携帯)
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■10936 / inTopicNo.65)  和美のBlue 55
□投稿者/ つちふまず 大御所(989回)-(2005/07/15(Fri) 08:06:49)
    「あいつはさ…。あ、オーナーな?」


    「うん。」


    ズズ、とヤスさんはお味噌汁をすすった。


    「男前だろ?男の俺が言うのもなんだけどよ。」


    「ふふ、そうですね。あ、ヤスさんお漬物下さい。」


    「おう食え。…ま、昔はもっと手辺り次第だったんだよな。」


    全く羨ましい、と。
    ヤスさんは箸を置いた。


    「まぁ…モテるのは分かりますけどね。」


    「モテるどころじゃねーよ。何人店に乗り込んで来たか。」


    「え。」


    「そのたんびにあれだ、まーまーってな。俺が抑えてた。」


    は〜。
    そうなんだ。


    でもま、何と無く。


    納得。


    「でもな、いつか聞いたんだよ。どーすりゃそんなモテるのかってな?」


    ナツさんに聞いたんだ(笑)


    何かヤスさん。
    可愛いかも。


    「そしたら?」


    「それがびっくりだ。」


    「え?」


    「何にもしてないんですけどね、って言われちまった。」


    ………。


    「変わってるよなぁ。」


    「ナツさんらしい…。」


    何にもしなくったって。


    人を惹き付ける。


    それは私も、
    良く良く承知。


    「でもよ、カズは違ったみてーだからよ。」


    「え?」


    「ブランカには誘われたんだろ?」


    「ええ、まぁ…。」


    「多分ブランカは俺とオーナーしか知らないよ。」


    珍しいよ、と。
    ヤスさんは笑った。


    「…………。」


    やだ、な。


    もう期待はしたくない。


    「あいつは、基本的に人に執着しないしな。でも…。」


    「え?」


    「中目黒の件もあって、少しは失う辛さも認識したみたいだな。」


    「失う事。」


    「ああ。人も店もゲームみたいなもんだって、いつか言ってたし。」


    ゲーム。


    そんな感じはする。


    「辛かったって事は、ゲームになりきれない心も、あるんだろ。」


    ちょっとホッとするよ、と。
    ヤスさんは水を飲んだ。


    「ヤスさん。」


    「あ?」


    「私とオーナーは、違い過ぎます。」


    全部。


    持ってる物も。


    見えない物も。


    ヤスさんは、ワハハハと笑った。


    「?」


    「何が違うんだよ。」


    「え?」


    「変わらねーよ。俺から見たら。まだまだ子どもだ。」


    ガハハ、と。
    またヤスさんは笑った。


    (携帯)
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■10937 / inTopicNo.66)  和美のBlue 56
□投稿者/ つちふまず 大御所(990回)-(2005/07/15(Fri) 08:10:52)
    「そりゃヤスさんから見たら…。」


    子どもかもしんないけどさ。


    ふん(涙)


    「いい事教えてやろう。」


    ニシ、とヤスさんは笑って。


    Tシャツから伸びた、タトゥーの腕を組んだ。


    「なんですか?」


    「来週の土曜日。オーナーの誕生日なんだよ。」


    「え?そうなんですか?」


    「おう。そうだ。」


    そうだったんだ…。


    「で?」


    「で?じゃねーよ。祝うの!」


    ヤスさんはポッケから。
    ガラムを取り出して、


    火を着けた。


    「パーティーでもするんですか?」


    「それはしないな。多分喜ばない。」


    ですよね…。


    苦手そうだし。


    「カズの出番だ。」


    プハーと。
    ガラム特有の甘い煙。


    「なななんで?」


    そりゃ誕生日…。


    祝ってあげたいけど、さ。


    「任せろ。」


    またニシシと。


    ヤスさんは笑った。


    「……………。」


    「ミソギの力を信じろ、うまく行くから。」


    ははは…。


    「どうするんですか?」


    「それはな…。」







    ……………。







    全てを聞いて。



    「………やる。」


    やりたい。


    「だろ?そう言うと思った。」


    ダハハ、と。
    またヤスさんは笑った。







    私の作戦。


    最終章…。


    ううん違う。


    ここからにしよう。




    もう一度、勝負に出よう。







    夏はまだ。



    始まったばかりだから。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10949 / inTopicNo.67)  和美のBlue 57
□投稿者/ つちふまず 大御所(991回)-(2005/07/15(Fri) 23:23:31)
    翌週の土曜日までに…。


    ヤスさんと連絡を取り合い、綿密に計画は進んで。


    向かえたナツさんの、
    28歳の誕生日。


    従業員にしてみれば、
    オーナーの誕生日は。


    知らせていなければあまり関係ないみたいで。


    いつも通りに、
    お店はオープンした。


    この日は混む事は予想していたのか、


    ナツさんも18時過ぎに、
    お店に現れて。


    「おはようございます。」


    「ん。」


    いつも通り。





    …でも今日は、


    ちょっと違うんだ。


    「オーナー。」


    ナツさんの背中に、
    声をかけた。


    だってあなたの。


    やっぱり好きなあなたの。


    「ん?」


    誕生日なんだもん。


    この日のナツさんは。
    夏らしいベージュのスーツ。


    「今日、予定はありますか?」


    ドキドキしながら。


    「いや、ラストまでいるよ。」


    テラスは、
    夕陽が差し込んでいたから。


    眩しそうな瞳で。


    私を見た。


    「そうですか。わかりました。」


    良かった。


    「どうして?」


    「終わったらお時間頂けますか?」


    「ん、わかった。」


    すぐに振り返って、


    ナツさんは店内へと。


    入って行った。





    ふー。


    ドキドキした…。


    何度もセリフを、
    練習したかいがあった。


    バーカウンターを見ると。


    ヤスさんがニッと。
    白い歯を見せた。


    よし。


    準備は出来てるから…。


    後は仕事をこなすだけ!






    15分後─


    ぼちぼち混んで来た。


    あ。


    ……え?


    店内を歩く、その人に。


    びっくり。


    ナツさん。


    私達と同じ、
    ユニフォーム。


    でもオーナー特注かな。
    サロンが、
    私達と違う、黒。


    しかもすごく…。
    長い。


    素敵。


    「珍しいな。」


    ヤスさんもびっくり。


    ナツさんは、
    手を挙げていたお客に。


    すぐに注文を取る動作。


    ナツさん、
    立つんだ…。


    ホールに。


    珍しい…。


    でも私と変わらない動作を、してるはずなのに。


    「かしこまりました。」


    「お待ち下さいませ。」


    プロだ。やっぱり。


    素敵。


    「どういう心境の、変化かな。」


    ヤスさんはカウンターに肘をついて、








    私を見て微笑んだ。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10950 / inTopicNo.68)  和美のBlue 58
□投稿者/ つちふまず 大御所(992回)-(2005/07/15(Fri) 23:26:22)
    pm.20:00─


    ザワザワと。
    満席状態の店内。


    「カズ、三番。」


    「は、はい。」


    ナツさんの指示。


    同じユニフォームで。


    同じ仕事。


    なんていうか、


    こんなに嬉しい事はない。


    キッチンも、バーテンも。


    これにはかなり。
    驚いたようで。


    フル回転。


    ナツさんは。


    オーダーも取るし、


    会計もするし、


    レセプションもするし、


    シェイカーも振るし、


    盛り付けもしていて、


    どれも完璧な仕事のこなし方に。


    その日入っていたどのスタッフも。


    びっくりしてた。


    やっぱりこの人がオーナーなんだと、


    改めて実感した。







    pm23:15─


    「ありがとうございました。」


    良かった…。


    最後のお客さん、
    今日中に帰ってくれた。


    これなら間に合う。


    「お疲れ様。」


    ナツさんはサロンを取ると、


    私の肩をポンと叩いて。


    キッチンに向かい、


    「お疲れ様です。」


    一人一人に。
    声を掛けてた。




    ─全部の片付けが済んで。


    「カズ。」


    ナツさんの声。


    オウムに餌をやっていた手を止める。


    キッチンもホールも、
    みんな帰ったかな。


    「あ、すみません。オーナールームにいて頂けますか?」


    「わかった。」


    ナツさんが下がるのを確認して。


    「じゃ、頑張れよ。」


    テラスの下から、


    ヤスさんの声。


    下を覗き込むと。


    ヤスさんが手を振っていた。


    「ヤスさん。ありがとう。」


    「礼はいらねえぜ。」


    ダハハと笑って、
    地下の駐車場へと。


    消えて行った。







    よし。


    やるかな。


    サロンを取りながら、


    店内を抜けて、






    キッチンへと入った。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10951 / inTopicNo.69)  和美のBlue 59
□投稿者/ つちふまず 大御所(993回)-(2005/07/15(Fri) 23:33:10)
    好きな人の。
    誕生日。


    それは多分自分の誕生日より。


    大切な日。




    ─コンコン


    「失礼します。」


    ここに入るのも…。


    結構久しぶり。
    中に入ると、


    既に着替えたナツさんは。


    ソファに座って、
    煙草を吸ってた。


    「…………。」


    ナツさんの、
    驚いた顔。




    やば。


    すっごいドキドキして来た。


    「失礼します。」


    抱えていた、
    二つのお皿。


    静かにナツさんの前に、
    並べた。


    ナツさんは。
    ジッとお皿を。


    眺めていた。


    私も隣に座り。


    「お誕生日、おめでとうございます。」


    小さく頭を下げると。


    「よく知ってるね。」


    こっちを見て、
    目を細めた。


    あ、


    すっごい優しい、目。


    ホッとした。


    「ヤスさんから聞きました。」


    ナツさんは。
    口の端を持ち上げて。


    「そうか。」


    言いながら煙草を消した。


    「食べて下さい。」


    「ん。」


    ナツさんは。


    フォークとナイフを、
    手に取ると。


    それにナイフを入れた。


    うまく…出来てるかな。


    「…………。」


    もぐもぐ、と。
    小さく口を動かして。


    「ど、どうですか?」


    やっぱりダメ、かな。


    ひーん(涙)


    「どうやって…。」


    「え。」


    「どうやって作ったの?」


    これ、と。
    ナツさんは。


    本当に驚いた顔。


    「覚えてる人がいたんです。」


    「…………。」


    「長い付き合いなんですね、ヤスさんとは。」



    “俺、ブランカで働いてたから”


    “あっそうなんですか!?”


    “おうよ。あそこのハンバーグはオーナーの好物だよ。”


    “そうだったんだ…”


    「おばぁちゃんに直接聞いた方がベストだったんでしょうけどね。」


    「…………。」


    「でもヤスさんはブランカの味をちゃんと覚えてました。」


    おいしいおいしい、


    ハンバーグ。


    デミグラスソースは、
    苦労したけど。


    「辛い時、よく、食べに行ってたんじゃないですか?」


    だからこの前も。


    「…………。」




    「私もナツさんの為に、作らせてください。」





    「………カズ。」



    「これからは。」



    凝った愛の告白かな。


    でもナツさん。


    私はあなたが辛い時。


    こんな事しか出来ないけど。









    でも私の精一杯なの。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10952 / inTopicNo.70)  和美のBlue 60
□投稿者/ つちふまず 大御所(994回)-(2005/07/15(Fri) 23:41:37)
    「…………。」


    ナイフとフォークを、
    お皿に置いて。


    ナツさんは目を伏せた。


    「いえ、そんな…、た、食べて下さい。ねっ?」


    こういう時位、
    テンパらずにいたいけど。


    できない私(涙)



    「おいしい。」



    ナツさんは満足したように、またハンバーグにナイフを入れた。


    「良かったー。」


    胸を撫で下ろした。


    「カズの分は?」


    ないの?とナツさん。


    「いえ、実は…。」


    あります。
    ちゃんと(笑)


    「ホールで食べようか。」


    「あ、はい、」


    二人同時に、
    立ち上がった瞬間。


    ブーブーと。
    携帯のバイブが鳴る音。


    ナツさんのだ。


    「ちょっと待って。」


    デスクの上にある、
    携帯を手に取る。


    私に背を向けて。


    「…もしもし。」


    “あ!ナツ!やっと繋がった〜!!”


    相手の声は、
    かなり大きいのか。


    丸聞こえ(汗)


    「何?」


    ナツさんはあくまでも、
    冷静。


    “何?じゃなくて…誕生日でしょ?今から家に…”


    「悪いけど。」


    一つ息を吸い込むような。


    そんな感じがした後、


    「今日はダメ。」


    “えー?何で?…”


    「ん…。」


    ナツさんは、


    少しの間を空けた後。


    また息を吸い込んで、



    「…今日だけじゃない。もう会わない。」




    え、


    あ。あら…。




    “ちょ、待って、なんで…”



    せっぱつまった、
    声が聞こえる。


    その瞬間。
    ナツさんは振り返った。









    「好きな子がいるから。」







    “…え?”










    「今わかったんだ。じゃ。」





    ピッとナツさんは。


    携帯を切って。


    デスクに置いた。




    今、わかった。


    …………今。




    「行こうか。」


    テーブルの上にある、


    ハンバーグのお皿に。


    手を伸ばした瞬間。





    「待ってナツさん。」



    「ん。」



    声が震えた。


    でもその腕を、遮って。







    私はナツさんの胸に、
    飛込んだ。



    「……ナツさん。」


    「ん。」


    背中に回される、手。
    少し力が籠るのがわかる。


    「……本当に?」


    首筋には。
    何も見えなかった。


    「………ん。」


    本当、と小さく。
    聞こえた瞬間。


    私の体は、







    どうしようもなく震えた。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10953 / inTopicNo.71)  和美のBlue 61
□投稿者/ つちふまず 大御所(995回)-(2005/07/15(Fri) 23:44:40)
    抱き合ったまま。



    「ハンバーグ…冷めちゃいますね。」


    「…もう少し。」



    背中に回された手に。
    もっと力が篭って。



    泣けて来そうな、
    予感がした。




    「………。あ、」




    ナツさんは首にしがみついていた、私の体を。


    スッと持ち上げて。


    ナツさんはそのまま、
    ソファに座った。


    「…………。」


    ナツさんの膝に。


    ちょこんと座る私。


    「あの………。」


    「ん?」


    「いえ、……。」


    て、


    照れる。


    改めて。


    「何?」


    ナツさんの目は。


    とっても優しい。


    「うふふ。」


    笑っちゃう。


    なんか。


    「ふっ。」


    ナツさんも。
    私の背中に手を回したまま。


    少し照れたように笑った。


    「嫌われてると、思ってた。」


    ふう、とナツさんは。


    溜め息を着いた。


    「嫌い、じゃないです…。」


    嫌いな訳ないよ。


    こんなに好きなのに。


    「カズ。」


    「はい。」


    「ごめん。」


    「え。」


    「この前。」


    どう言えばいいかな、
    とばかりに。


    ナツさんは頬を掻いた。


    ふふ。


    ナツさんてば。


    やっぱ可愛いかも。




    「いいんです。だって…。」


    「ん?」


    「……いえ。」


    だって抱かれたかったのは。本当だもの。


    言わないけど、ね。


    でも。






    「大好きです。」








    こう伝えるまでに。


    結構時間かかっちゃった。







    「カズ。」





    額と額を付け合って。


    「……はい。」


    目を瞑って。


    その空気に。


    「……カズ。」


    酔う。


    「なんですか。ふふ。」


    「………和美。」


    「ん。………んっ。」




    重なる唇から。


    漏れる気持ち。


    あなたを感じれる、


    最大限の方法。




    好き。


    すっごい好き。




    キスを交すのは。


    もう何回目だろう。




    でも今日は。


    違うよ、ナツさん。


    嬉しいキスは。


    初めてかも。


    いつも突然だったもの。








    唇を離して。




    「晩御飯に、しようか。」


    笑顔のナツさん。


    「はい。」





    私も笑顔で答えた。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10954 / inTopicNo.72)  和美のBlue 62
□投稿者/ つちふまず 大御所(996回)-(2005/07/15(Fri) 23:49:50)
    閉店後の─


    お店で。


    ライトは。


    少しの灯りでいいよね。


    音楽は。


    音量を抑えた、ダイアナロス。


    「いただきまーす!」


    「ん。」


    二人だけの。


    晩御飯。


    「ふふ、おいしー。」


    自分で作ったのに。
    我ながら、上出来。


    「そうだ、カズ。」


    「はい?」


    ナツさんはナイフとフォークを置いて。


    両肘を付いて、こちらを見た。


    優しい目が。
    ふと真剣に。


    「恵比寿も売るつもりなんだ。」


    「………え?」


    「鎌倉だけでやる。」


    鎌倉だけ、って…。


    「そう…ですか。」


    「腹を決めた。」


    「……はい。」


    「ん。だから、」


    「?」


    「ここに、いるよ。」


    え!?


    いるよって…。


    「今日、わかった。ホールに立って。」


    頭が。


    いい加減爆発しそう。


    「ランチも始めよう。カズ。」


    「え?」


    ランチ?


    「ここの客は、地元客が多い。…ランチを始めても、問題ない。」


    「ランチ…ですか。」


    うん、とナツさんは。
    大きく頷いた。


    「来年は、頼むよ。」


    ナツさんは笑顔で。
    ワインに口を付けた。


    「へ?」


    来年?


    「店長候補で頼むよ。」


    「えーっ無理ですよ!」


    そんなそんな!


    むーりー!


    「大丈夫。」


    ふっとナツさんは笑った後。


    「そうでしょ!父さん!」


    は。


    と、父さん?


    って?


    ナツさんの視線を追うと。


    バーカウンター。


    下から少しずつ。


    金髪が見えて…。


    「見付かっちゃった。ニヒ。」


    手を挙げて。


    ヤスさんが出てきた。


    「えっ!えーっ!!」


    ととと、


    父さんって!!


    「いやいや…ワッハッハ!」


    大笑いで。
    ヤスさんは。


    こちらに歩いて来た。


    「盗み聞き…全く趣味が悪い。」


    ナツさんは。
    肘を付いて。


    「おや、こ…。え?」


    二人を見て。
    私は口を開けるだけ。


    「娘の心配をして何が悪い!」


    ヤスさんは、
    ナツさんの背中を。


    ドン、と叩くと。


    「痛いって。」


    ナツさんはヤスさんを。


    思いっきり睨んだ。




    親子…。


    親子。





    全っ然信じられない!!

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10955 / inTopicNo.73)  和美のBlue 63
□投稿者/ つちふまず 大御所(997回)-(2005/07/15(Fri) 23:52:20)
    テーブルを囲む。
    三人。


    「ダハハハハ!!」


    「……静かにして。」


    「ふふっ。それにしても…びっくり。」


    ヤスさんと。
    ナツさん。


    まさか父娘だなんて…。


    「おう。内緒だぞ?父親にはならなくていいから、店長になってって言われたんだからな。」


    全くひどい娘だ、と。
    また笑った。


    「父さんに経営は無理。」


    子どもだから、と。
    ナツさんは呆れたように。


    「でも随分若いパパですよね…。」


    ナツさんとヤスさんを。
    交互に見た。


    「俺が20歳の時の子どもだからなぁ。大きくなったぜ、全く。」


    「父さんは変わらないよ。」


    フン、とナツさんは。
    ワインに口を付けた。


    普段は全然、
    そんな感じはしないのに。


    今日は父、娘。


    いいなぁなんか♪


    「恵比寿も手引くんだろ?」


    ヤスさんはタトゥーの腕を組んだ。


    あ、よく考えたら。


    タトゥーは親子揃って…。


    いかついなぁ(涙)


    「ん。そのつもり。」


    「鎌倉に越せよ!なぁカズ!」


    そーだそーだと。
    ヤスさん。


    あ、そうか。
    恵比寿がなくなれば、
    都内に住む理由も…。


    でもそんな簡単に行く訳、


    「ん、裏のマンション、買ったよ。」


    ナツさんは。
    店の裏手に、
    指を向けた。


    「おおそうか!そりゃいい!」


    めでてえなぁ!と。
    ヤスさん。


    あの。


    買った、って!?


    マンションを!?


    そんな醤油買っといたみたいな、軽いノリで…。


    買っちゃうもんなの!?


    「カズ。」


    「え、はい!」


    ヤスさんに呼ばれて、
    慌てて向き直る。


    ヤスさんはサングラスを外して、目がしらを押さえた。


    「こいつはふつつか者だが、これからは俺の事を…お父、」


    「やめて父さん。」


    バシ、と。
    ヤスさんのモヒカンが。
    縦に大きく揺れた。


    「いてえ!」


    「余計な事しないで。」


    「ぷっ!あはは。」


    ナツさん…。


    また意外な点、


    発見しちゃった(笑)


    「でもカズ、俺嬉しいぞ。」


    「え?」


    「娘が二人出来たみてーだし。父親としてこんなに幸せな事はない!!」


    「…………。」


    「…………。」


    ぷっ。


    ふふ…。


    ナツさんと二人。







    顔を見合わせて笑った。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10956 / inTopicNo.74)  和美のBlue 64
□投稿者/ つちふまず 大御所(998回)-(2005/07/15(Fri) 23:55:45)
    「びっくりでした…。」


    夜風が心地いい、
    帰り道。


    “送るよ。”


    ナツさんの言葉に甘えて。
    約五分程の道のりを。
    二人でゆっくりと。


    「ん…うるさい父親。」


    はぁとナツさんは。
    夜空を見上げながら、


    溜め息。


    「すっかり遅くなっちゃいましたね…。」


    今何時位なんだろう…。


    見上げるとナツさんは。
    していた時計を見ずに。


    「大丈夫。」


    前を見たまま。
    小さく呟いた。


    鎌倉の道は。
    海沿いから一本入ると。


    とっても静か。


    「…………。」


    無言だけど。


    何故か、安心。


    あ、……ふふ。


    追い付けなかったコンパス。


    今は。


    私の歩幅に合わせて、
    ゆっくり歩いてくれてる。


    シャワシャワ、と。
    虫が鳴く音。


    「ん。」


    はい、と。


    ナツさんは、
    利き手の左手を。


    差し出した。


    あ。


    これ、は。


    わわわわわ。


    ナツさんに見えないように、ゴシゴシと右手を。


    ジーンズで拭いて。


    ナツさんの左手を握った。


    あったかくて、
    大きくて長い指。


    う、嬉しい(歓喜)


    「………。」


    「ん、カズ?」


    やば。


    「……ふ、ふぇ。」


    「………どした。」


    突然、


    泣けてきた。


    立ち止まり。


    ナツさんは手を握ったまま、私に向き合った。


    ……止まんない。


    「カズ。」


    「す、すみません…、うっ。」


    収まらない。


    それ位好きで、


    ずっと夢見てた。


    叶わないものだと、


    思ってた。


    「………ですか。」


    「………カズ。」


    「私でいいんですか。」


    なんにもないよ。
    私。


    「……いいの。」


    「…………。」


    顔を上げて。
    ナツさんを見た。


    「カズがいい。」


    「う、……ふ、…っ」


    フワッと、
    抱き寄せられて。


    ナツさんにすっぽり。


    カンガルーの子どもみたいに。


    収まった。


    背中を優しく、
    さすってくれた。


    暫くして。




    「来週、引っ越すから。」




    顔を上げると。


    ナツさんは困ったように。
    でもこれは、


    照れ笑いなんだと。
    後から気付いた。






    街灯と。


    月明かりが、


    手を繋いで。


    終電が過ぎ去った、


    江ノ電の踏み切りにもたれて。









    いつまでも抱き合った。


    (携帯)
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■10962 / inTopicNo.75)  すごい!
□投稿者/ hiromi 一般♪(1回)-(2005/07/16(Sat) 01:36:02)
    ぐいぐい引き込まれて一気に読んじゃいました!今、1:30。明日早いのに(笑)素敵なお話でした♪情景がありありと浮かんできました。私の実家も湘南で、鎌倉はよく行ったから余計。葉山のマーロウあたりをイメージしてました。なんか鎌倉行きたくなりました♪また書いてくださいね!

    (携帯)
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■10982 / inTopicNo.76)  和美のBlue 65
□投稿者/ つちふまず 大御所(1000回)-(2005/07/17(Sun) 00:21:40)
    翌週─


    ナツさんの引っ越し日。


    それまではかなり忙しかったようで。


    会えずにいたから。


    どうしても手伝いたい私は。


    引っ越し先である、新築のマンションの前で。


    待っていた。


    「あっつ〜。」


    ジリジリと、
    差す太陽。


    今日も暑くなりそう…。


    あち、と。
    手をはらはら振っていると。


    赤いアルファロメオが、
    五分後位に現れて。


    来た♪


    マンションの前で止まったのを確認して、


    私は運転席側に回った。


    「おはよう。」


    ウィンドウを下げながら、
    ナツさんは微笑んだ。


    「おはようございます。…トラック、後から来るんですか?」


    引っ越し業者の、トラックがいない事に気付いて。


    「ん、来ないよ。頼んでない。」


    ナツさんは眩しそうに、私を見た。


    「え?」


    「とりあえず、乗って。」


    ウィーンと窓は閉まってしまったので。


    あらら。


    慌てて助手席側に、
    回って車へと。


    ─バタン


    「涼しいーっ!」


    ナツさんの車は、
    とってもクーラーが効いていて。


    「ごめん、待たせたね。」


    ………。


    や、優しい。


    照れるよ〜!!


    私のドキドキはおかまいなしに。車は発進した。


    「引っ越し…。あれ?」


    マンションに入らないの?


    「全部置いて来たから。」


    煙草いい?とナツさんは付け加えたので。


    「あ、はい。…置いて来た?」


    え?


    「家具付きで売った。ついでに車も。」


    車の天井にある、
    空気清浄器に。
    ナツさんは手を伸ばして。


    「か、家具付き?」


    マセラティも?


    ふーとナツさんは。
    煙を小さく吐いて。


    「ん。だからなんもない。」


    服以外は、とナツさんは笑った。


    な、


    なんもない!?


    へ!?


    「………という事は。」


    「今から揃える。付き合って。」


    煙草をくわえながら。


    ナツさんはこちらを見て、


    口の端を持ち上げた。


    あ、あの。


    それって、ね?


    ナツさん。


    意識してないかもだけど。


    「初デー…ト。」


    「ん?」


    「な、なんでも、ないです…。」


    「……そうだね。」


    「え。」


    「ちょうどいい。」


    「ちょうどいい?」


    「いやいや何でもない。」




    クックッと。
    またナツさんは笑った。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10983 / inTopicNo.77)  和美のBlue 66
□投稿者/ つちふまず 大御所(1001回)-(2005/07/17(Sun) 00:26:15)
    「とりあえず…。家電、かな。」


    横浜にある、大型のショッピングモールに入り車を止めた。


    サイドブレーキを引く。


    「あ、あの、ナツさん?」


    「ん?」


    バタン、バタンと。
    ドアを閉める音が。
    立体駐車場内に響く。


    「今日…、」
    「ん?」
    「あ、いえ。」


    まさか本当に。
    今日揃えるわけ、じゃ。


    ないよね。はは(笑)


    ウィーンと。
    電気ストアに入る。


    独特の活気が感じられた。



    洗濯機、洗濯機…と。
    呟きながら。



    スタスタと歩いてしまう。


    「あ、ま、待って〜。」


    追い掛ける私。







    とは言っても。


    「やっぱり乾燥機付き、いいなー!あ、今の洗濯機って静かなんですよねー!」


    電気屋さんは好きです♪


    すっかりナツさんの、
    引っ越しも忘れて。


    はしゃいでばかり。


    ナツさんは腕を組んで。


    「うん…よし。次。冷蔵庫。」


    アッと言う間に。
    あらら。


    ちゃんと見てるのかな?


    ま、いっか。


    「はーい!」


    楽しい♪




    冷蔵庫も、
    五分程見て。


    私がきゃあきゃあ騒いで見てるのを暫く見た後に。


    「ん。じゃあ次はテレビ。」


    テレビコーナーへ。


    「こ、こんなテレビで見てみたい…。」


    大画面の。
    液晶プラズマ。
    デジタル対応。


    それを囲むように、
    ホームシアターシステム。


    いいなぁ…。
    こんなテレビで。


    ナツさんと映画なんか、
    見ちゃったりして?


    くう〜っ(涙)


    「ん。オッケー。行くよ。」


    「あ、はーい。」


    スタスタとナツさん。


    レジに向かうと。


    「これ。お願いします。」


    は?


    お願いします?


    手には。


    気付かなかった。


    注文カード。


    五枚程持っていて。


    「あの、…ナツさん?」


    チョイチョイと。
    ナツさんのTシャツの裾を、私が引っ張ると。


    「ん?」


    優しい瞳で。
    見下ろされた。


    「ま、まさか購入?」


    「うん。もちろん。」


    ………。


    は。


    早い(涙)


    「あの…私が、選んじゃった、みたいな…。」


    ナツさんは、はしゃいでいた私を、見てただけだし。


    「今日届けてくれるって。」


    良かった、と。


    ナツさんは笑った。



    これ、これが。


    やるやるとは、
    聞いていたけど。







    金持ちA様?


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10984 / inTopicNo.78)  和美のBlue 67
□投稿者/ つちふまず 大御所(1002回)-(2005/07/17(Sun) 00:30:30)
    「さて…次は、と。」


    再び、アルファロメオ。
    電気屋さんにいたのは、
    約30分程で。


    「…………。」


    私は声を出せません(涙)


    「家具、かな。」


    あそこにしよう、と。
    ナツさんは言って。
    車は走り出した。


    「あの、ナツ、さん?」


    「ん?」


    立体駐車場から出ると。
    外はギラギラと。
    眩しい光に照らされて。


    「こんな早く、決めちゃって、というか私が決めちゃった、みたいな…。」


    日本語おかしい(涙)


    「いい。カズが使いやすい物、買いたかったし。」


    また空気清浄器のスイッチを押して、ナツさんは煙草に火を着けた。


    「はい?」


    使いやすい?


    なんで?


    「うちに来なよ。」


    「行きますよ?言われなくても遊びに行っちゃうけど♪ふふっ。」


    「…………。」


    へ。


    あり?


    シカト?


    隣を見ると。


    ナツさんは下唇を。
    出していて。


    びっくり。


    「………へ、変な、顔。」


    崩れたナツさんの顔を。
    初めて見た衝撃に。


    「あははは!」


    私はお腹を抱えて、
    笑った。


    「…………ふん。」


    れ?
    今度は機嫌が…。
    悪くなっちゃった。


    「あれ、ナツさーん。」


    「遊びに…遊びに、ね。」


    ふーと煙を吐いて。
    また下唇を突き出した。


    「あ、何か…怒って、」


    「遊びにじゃなくて。」


    思い直したような声。


    「はい?」


    「違う…んだけど。」


    車はいつの間にか。
    大きな倉庫見たいな、
    建物の側。


    広い駐車場に入った。


    「へ、違う?」


    何が?


    はーとナツさんは。
    溜め息をつきながら、
    車のエンジンを切った。


    「あのねカズ。」


    にぶいな…と。
    ナツさんは寂しい目をした。


    え。


    「鈍い?ですか?トロいとは良く…言われま、」


    「一緒に暮らそうって事。」


    口の端を持ち上げる仕草は。いつも通りのナツさんで。


    「……………。」


    「近いんだから。」


    さて、と。
    ナツさんは車のドアを開けて。


    バタンとすぐに閉めた。


    …………。


    くらす、


    暮らす?


    だれと?


    誰が?


    コンコン、と。
    窓をノックする音。


    いつの間にかナツさんは。


    助手席側に。
    立っていて。


    “い、く、よ”


    と。目の前の倉庫を指差した。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10985 / inTopicNo.79)  和美のBlue 68
□投稿者/ つちふまず 大御所(1003回)-(2005/07/17(Sun) 00:34:42)
    くらす…。


    「ソファ、と…。」


    暮らす、というのは。


    同じ屋根の下で。


    「これでいいかな。」


    一緒にご飯食べたり。


    「こっちの方が壁紙に合うかな…。」


    一緒にテレビ見たり。


    「カズ。」


    その…。


    生活するって。


    「カズ。」


    ことだよね。
    私と…。


    ナツさんが。


    「和美。」


    へ?


    「あっはい!」


    「どこに飛んでるの。」


    ふーとナツさんは。
    困ったように微笑んだ。


    「す、すみません。」


    リアルに飛んでた(涙)


    「どれがいい?」


    「はい?」


    「ソファ。」


    「あ、はい。………。」


    ぐるっと。
    店内を。
    初めて見渡した。


    広い倉庫の中は。
    古い建物とは裏腹に、


    モダンな輸入家具達が、
    所狭しと並んでいた。


    「お、洒落ですね…、ここ。」


    改めて。
    気付いた。


    「ん?ああ…。何かと世話になってるよ。うちの店は全部ここ。」


    アメリカン。
    ヨーロピアン。
    ジャパニーズモダン。
    アジアン。


    何でもありな、
    店内だった。


    「そうなんですか…。」


    一日見ても、
    飽きなそう。


    「で、どうする。」


    「はい?」


    「ソファ。」


    うーんとナツさんは。
    腕を組んだ。


    な、


    なんか。


    ほんのちょっぴり。
    リアルに感じて来た。


    “同棲”


    でもやっぱり…。


    嬉しいよ〜!!


    きゃあーっ!!


    バフ、と近くにあったソファに、なだれ込むように顔を抑えて座る。


    だめ。


    超嬉しい〜!!


    「それにするか。」


    「…………は。」


    はい?


    顔を上げると、ナツさん。


    「いいセンスだ。」


    と、私の座っていた。
    三点セット、低くてフカフカの白いソファを。長い指で撫でた。


    あ。あれ?


    「次は…と。」


    ナツさんはスタスタと。


    ベッドのコーナーへ。
    歩いて行ってしまった。


    「ま、待って〜。」


    また慌てて、
    ナツさんを追い掛けた。


    続いてベッド。


    ベッド…。


    ベッド(赤面)


    想像するなっていうのがおかしいから。


    照れる…。


    挙動不信な私をおかまいなしに。


    「ベッドは私が決める。」


    ナツさんの右眉が上がって、ちょっとエッチな目に見えたのは。


    意識しすぎかなと。




    私は赤くなった。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10998 / inTopicNo.80)  hiromiさん
□投稿者/ つちふまず 大御所(1004回)-(2005/07/17(Sun) 11:15:36)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    初めまして(^O^)
    おや、湘南ですか?
    私も今実家なので。
    湘南にいますよ★★

    これから知り合いの不動産屋さんに行きまして。

    この辺で部屋を借りようかと♪
    実家に戻ってもいいんですが、一人暮らしにこだわるつちです。

    カズの舞台になってるお店も…結構有名ですよ(>_<)
    湘南スタイルや横浜ウォーカーにも良く載りますしね♪

    良かったらHPにも。
    お越し下さいね〜♪♪

    (携帯)
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