ビアンエッセイ♪

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

■21488 / 3階層)  SolitudE
□投稿者/ mixx 一般♪(5回)-(2012/04/12(Thu) 23:32:23)

    「どうしたの?」


    ナツが私の顔を見つめている。
    今は収録、本番中。

    事故があってからどうなるのかと思ったけど、なつきさんがいてくれるなら、という条件で続けられることになった。


    「全く、今日は帰っていいっていったのに」


    「ふ〜ん。私は帰ってもいいんだよ。マキのために仕方なく」


    わざとらしくため息をつくナツ。

    少しは私のことを考えてくれていたのかな。
    違うな。ナツはいつだって他人のことを考えている。
    ナツは優しすぎる。残酷なくらいに。


    「あたしの事心配してくれたんだ〜」



    ふざけてナツに後ろから絡みつく。
    実際にナツが帰っていたら困っただろう。


    メイちゃんはスタジオに入るなり、一歩も動けなくなっていた。
    このままでは撮影ができない、と困っていたとこでナツがきた。


    「私が付いてるから大丈夫」


    一言だけメイちゃんに声をかけると、さっきまではガチガチだったメイちゃんもようやく笑顔をみせた。
    全く、さらっとカッコイイ事をいってくれる。
    ナツが言うから様になってるし。
    効果絶大。

    メイちゃんだけでなく、周りにいたスタッフまで顔を赤くしていたのは気のせいではないだろうな。
    私は言うまでもなく、ドキドキさせられた。
    メイちゃんに少し嫉妬したくらいだ。


    「で?どうした?」


    ボーっとしていたのを見られていたのか。


    「ん、ちょっとナツと出会った時の事思い出してた」




    あの日、ナツに出会ってから、私は変わってしまった。
    警察がかけつけてきた頃には、すべて片付いていた。

    気絶していた男たちを警察が捕まえ、私たちも別のパトカーにのって警察署まで移動する。
    ショックで呆然としている私たちのかわりにたんたんとしゃべるナツ。


    それから3日後。
    私とあやかとナツの3人で、ご飯を食べにいった。
    どうしてもお礼のしたかったあやかと私は、食事をごちそうする、と言っても大したものではないが、落ち着いた雰囲気のレストランへきていた。



    あの時の私は、あまりしゃべらなかった。
    もっぱらあやかが喋って、ナツが答えて。
    その繰り返しだった。会話もほとんど覚えていない。
    熱にうかされたように、周りが遠くに感じて。色を失っていって。
    でもナツだけは鮮やかな感じがして。


    「マキ」

    ハッとした。
    また昔の事を考えていたみたいだ。
    きっと今日の事故と自分の経験が重なっているんだと思う。


    「さっきの事が原因?」


    ほらね、やっぱり。
    ナツは必要以上にカンが鋭い。
    ナツにはお見通し。


    「そうかもね」


    あの日から少しもたたないうちに、私とあやかは別れた。
    あやかが嫌いになった訳じゃない。

    ただ、知ってしまったから。
    ナツという存在を。
    あやかを求めるよりも、強く、比にならないくらい求めてしまったから。


    何よりも誰よりもナツが欲しい、と自分の気持ちに気づいてしまった。
    ナツがビアンかなんて知るはずもないし、どこにいるのかも知らないし。
    それでも、ナツが好きだときづいてから、あやかを抱くことができなかった。


    「ナツ。あのお店って、ナツの行きつけだったの?」


    あやかと行こうとしていた、普段とは違うお店。
    そこへはちょくちょく通うようになっていて、そこで偶然再会した。


    「ん?マキと偶然会ったバーのこと?あれは、たまたま店員に用があっただけ」


    そっか、偶然か。


    「何ニヤニヤしてんの。気持ち悪い」

    ナツが気持ち悪そうにこちらを見ている。


    「たまには気持ち悪くてもいいでしょ〜」


    なんて言ってナツの首に絡めていた腕に力を込める。
    私より少し小さいナツの肩にニヤニヤが止まらない顔をおいてみる。


    ナツ、偶然って言葉ってさ、運命って言葉とどこかにてると思わない?
    声に出さずに心の中でナツに尋ねる。


    ナツとバーで偶然あった日は、運命のように感じた。



    そして関係は、その日から恩人なんかじゃなくなった。


    ナツに抱かれたあの日、私は気づいてしまった。
    この気持ちを伝えれば、ナツは離れていく。

    なぜそう思ったかはわからない。
    あえて言うなら、ただのカン、女のカンってやつかな。


    「ね!今度ナツの家に行ってもいい?」

    少し間を置いて返事が返ってくる。

    「わかった」


    とだけ言って了解するナツ。
    ナツの家に行くと行っても遊びに行くわけじゃない。


    私たちの関係は求めて、求められて。
    あえて言うなら、セフレ。

    だから、家に行くって事は、抱かれに、もしくは抱きに行くって事。

    体だけの関係。
    それでも少しはナツの心の中に近づけたかなと思ったりする。


    ナツ、好きだよ、大好きなんだよ。

    愛してる。


    声にだしてはいけないから、せめて心の中で叫ばせて。
    カンのいいあなただから、私の気持ちにも気づいてるんでしょ?
    でも、こんなにもナツを愛おしく思ってることはさすがのナツも気づいてないでしょ。
    ナツと出会ってからこの思いは大きくなって、いつか爆発してしまいそうだよ、ナツ。


    愛してる、ナツ。


    つづく

記事引用 削除キー/

前の記事(元になった記事) 次の記事(この記事の返信)
←Re[2]: SolitudE /mixx →Re[4]: SolitudE /mixx
 
上記関連ツリー

Nomal SolitudE / mixx (12/04/12(Thu) 00:26) #21484
Nomal Re[1]: SolitudE / mixx (12/04/12(Thu) 03:32) #21485
Nomal Re[1]: SolitudE / mixx (12/04/12(Thu) 05:12) #21486
  └Nomal Re[2]: SolitudE / mixx (12/04/12(Thu) 09:47) #21487
    └Nomal SolitudE / mixx (12/04/12(Thu) 23:32) #21488 ←Now
      └Nomal Re[4]: SolitudE / mixx (12/04/13(Fri) 04:07) #21489
        └Nomal 感想 / さつき (12/04/16(Mon) 20:52) #21490
          └Nomal Re[6]: 感想 / mixx (12/04/28(Sat) 23:58) #21503

All 上記ツリーを一括表示 / 上記ツリーをトピック表示
 
上記の記事へ返信

Mode/  Pass/

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

- Child Tree -