| 「ほら、出来たよ。」と大き目の手鏡を私に渡す貴女。 「何これ〜!パンダじゃん!もうっ!あんまり〜!ひどい〜!」と貴女の背中を 両手でぺちぺちと軽く怒りながら叩く私。叩かれながらも嬉しそうに笑う貴女。「もういい!自分でやるから!」と私は洗面所に行き白黒の面白パンダ顔にされた メークを、クレンジングで洗い流す。
「遅刻した罰だよ・・」と急な声に振り向く私。いつの間にか後ろに立って居た貴女は、にやりと微笑みながらそう言った。 「遅刻って・・だからこっちに来てもらったんじゃない・・。お昼も作ってあげたでしょ?スパゲッティー・・」私はタオルで顔を拭きながら、ぶつぶつと答えた。「駅に10時待ち合わせで待ちぼうけさせておいて、2時間勝手に時間延長されたあげく、こっちに来て!だもんな・・おまけにレトルトのルーを、茹でただけのパスタにかけるだけで、作ってあげたなんてねぇ〜」「うるさいっ!時間が無かったんだからしょうがないでしょ!第一、人の顔にいたずら描きなんて子供みたいな事するから遅れるんだよぉ!」「うわぁ〜責任転換・・自己中・・」と自己弁護ばかりする私に、からかうのが楽しいような顔つきで貴女は言った。
「もう〜素顔なんだから・・あっちに行ってて・・」少し照れた私は貴女をリビングに追い払った。「・・素顔・・可愛いのに・・」聞こえるか聞こえないかの呟きで去り際に貴女が言った。(あっ又始まった・・貴女の思わせぶり攻撃・・)私は素知らぬふりで洗面所の鏡を見ながらメークを始めた。「メーク完了〜!」私はいそいそとリビングに戻った。「どう?いんちき美容部員さん♪」私は自慢げに貴女の顔の前に自分の顔を突き出して見せた。「普通かな?でも私の部下だったら練習し直させるわ・・猛特訓かな・・その仕上がりじゃ・・」冷めた口調で適当そうなコメントを嫌味たっぷりに言う貴女。「本職なのに女性の一番大事な素肌にパンダの落描きをして遊ぶ美容部員にはそんな事、言われる筋合いはな〜い!」負けじと私も軽く軽口を返す。
「で、そっちなら正解だったんだ。動物メーク・・」貴女がぼそっと呟いた。「動物メーク〜?何よそれっ?」私はあわてて聞き返す。貴女はにっこり微笑んで「タヌキメークでしょ?それっ♪」まんまる顔でまんまるお目目を見開いて、あんぐりしている私を貴女は楽しそうに見ている。「もうっ!今日は行かない!カラオケ!」すねた私に貴女は顔を近付け甘くささやく。「聞かせてよ・・声がかすれるくらいに限界までいった貴女の声を・・」(あっ・・又)そう、貴女は思わせぶり名人・・。恋人も親友も作らないクールな女(ひと)。私は貴女の友達の1人な存在なだけ・・。だからどきっ・としたとしても絶対言っちゃいけない・そんな存在。「またぁ〜安くあげようと思って・・。オールナイトで歌いまくるつもりなんでしょ?今日も。」「ご名答〜♪」と明るく笑う貴女。私は心のどきどきをはぐらかすように、茶化すように、冗談めかして貴女を責める。
すっくと立ち上がって玄関で靴を履き始める貴女。揃えてあるサンダルをちらっと見て「あれっ?白?ピンクの方がいいよ〜この前のやつ・・」と貴女は言うと私のシューズBOXからお気に入りのピンクのサンダルを見つけ出して玄関に揃える。「履きたいの〜?履いていいよ・それっ・・」私も玄関まで来て、からかうように微笑みながら貴女に声をかけた。「ば〜か・・サイズ違うじゃん・・」一瞬、照れたような顔をして下を向いた貴女。「ほらっ・・遅れるから。もう出るよ・いい?」先を急ぎ玄関のドアを出て行く貴女。「待ってよぉ〜」と声をかけ、私も部屋を出てドアの鍵を閉めた。少し歩くのが速い貴女の腕を捕まえて、自然にそっと腕を組む私。「暑いってばぁ〜・・」言葉とは裏腹に照れながらも、まんざらでも無い貴女。「・・仕返し・・」そっと呟く私。「えっ・・?何・・?」聞き返す貴女。「ううん・何でもない♪」満面の笑みの私。(思わせぶり攻撃返しだもん・・)
まるで、キツネとタヌキの化かし合いのように、思わせぶりな会話をしながら、貴女と私は歩いている。いつも・そんな感じで・・。さて、正体を現すのはいつ?どっちかな?
すいません。お初なんで長文・改行下手、色々、大目に見て下さい〜。お題小説も大好きで、今まで楽しく拝見してたので、つい思わず参加しちゃいました。 次のお題は、「無防備な笑顔」でお願いします。
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