| 「おはようございます。」
「おっ柚羅、早いね。おはよう。」
いつも通りの朝の風景。
清水さんが小さな庭で、花に水をやっている。
「今日は‥煙草ないんですね。」
なんて冗談混じりに言う。
照りつける太陽がまぶしい。
「あたしと煙草はセットかい。」
と、清水さんは困ったように笑いながら。
長いホースから出る水を止めた。
「ねェ、柚羅今日予定ある?」
「‥ないですけど?」
たぶん郁は帰っていると思うから。
「んじゃ、飲みに行こう。」
そう言うと一人で"うんうん"と頷く。
「へっ?何でッスか?」
いきなりの誘いに驚いた。
しかも行く気まんまんだし‥。
「嫌なの?あんたには言わなきゃいけない事、いっぱいあるんですけどー?」
その綺麗な顔で睨みをきかされると、恐い。
「‥わかりました。」
と返事をするしか出来なくなるんです。
私の返事に清水さんはご満悦の様子。
「あっあと、ちゃんと優太に謝れよ?」
思い出したようにそう言うと、ニカッと笑った。
白い歯がまぶしく光る。
「‥わかってます。」
苦笑せずにはいられなかった。
優太にはヒドイことをしたから。
心を落ち着かせる。
私は大人なんだから。と。
小さな子どもの繊細な心を、もう二度と傷つけない。
再び自分の心にそう誓い、私はその場を後にした。
(携帯)
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