ビアンエッセイ♪

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■9466 / ResNo.50)  32
  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(43回)-(2005/05/14(Sat) 19:44:47)

    「おはようございます。」


    「おっ柚羅、早いね。おはよう。」


    いつも通りの朝の風景。

    清水さんが小さな庭で、花に水をやっている。



    「今日は‥煙草ないんですね。」

    なんて冗談混じりに言う。


    照りつける太陽がまぶしい。


    「あたしと煙草はセットかい。」


    と、清水さんは困ったように笑いながら。

    長いホースから出る水を止めた。


    「ねェ、柚羅今日予定ある?」

    「‥ないですけど?」


    たぶん郁は帰っていると思うから。


    「んじゃ、飲みに行こう。」


    そう言うと一人で"うんうん"と頷く。


    「へっ?何でッスか?」


    いきなりの誘いに驚いた。

    しかも行く気まんまんだし‥。


    「嫌なの?あんたには言わなきゃいけない事、いっぱいあるんですけどー?」


    その綺麗な顔で睨みをきかされると、恐い。


    「‥わかりました。」


    と返事をするしか出来なくなるんです。



    私の返事に清水さんはご満悦の様子。


    「あっあと、ちゃんと優太に謝れよ?」


    思い出したようにそう言うと、ニカッと笑った。


    白い歯がまぶしく光る。


    「‥わかってます。」


    苦笑せずにはいられなかった。

    優太にはヒドイことをしたから。


    心を落ち着かせる。


    私は大人なんだから。と。



    小さな子どもの繊細な心を、もう二度と傷つけない。



    再び自分の心にそう誓い、私はその場を後にした。




    (携帯)
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■9467 / ResNo.51)  33
□投稿者/ 菜々子 一般♪(44回)-(2005/05/14(Sat) 19:52:58)
    2005/05/15(Sun) 22:20:55 編集(投稿者)

    園について、教室に入っても。

    優太にいつもの元気も生意気さもなかった。


    その上、私とは目も合わせてくれない。


    「ゆーたっ♪」


    努めて明るく。
    教室の隅でうずくまる優太に声をかける。


    ‥やっぱり私を見てはくれない。


    「昨日はごめんね。」

    隣に座り込み、その小さな手をギュッと握った。


    「‥。」


    やっぱり答えてくれない。


    「先生のこと、嫌いになったか‥な?」


    覗き込むように、話し掛けると。

    優太はソレを避ける。


    「‥先生は優太が好きだから。嫌いなんかじゃないからね。」


    素直だね。

    私と話すことを嫌がっているのが、嫌というほど伝わってくる。


    少々キツイ‥な。


    「ごめんね。」


    反応の無いままの優太の頭を撫でて、私は立ち上がる。


    コレ以上、負担をかけたくないと思ったから。



    「‥ほんとう?」


    と、立ち上がった私の服の裾を優太が掴む。


    「えっ?」

    「ほんとうかよ?」


    合った瞳が、震えていた。


    私の答えを聞くことを、恐がっているかのようにも感じた。


    「‥大好きだよ。本当に。」


    その視線を合わせたまま、自分の気持ちを口にする。


    不安にさせちゃったね。
    ダメな先生だね。



    「もーいーよ。許してやるよ!」


    強きな態度。

    けれど、俯く顔がほんのり赤く染まっている。


    「‥許してくれるの?」
    「そうだよ。」

    「ほんとに?」
    「そうだよ!」


    やっぱり子どもは不思議だな。


    けれど。気が、楽になる。そんな気分になって、笑みがこぼれた。


    「ありがとう、優太。」


    ありがとう。


    嫌がる優太を無理矢理抱き締めて、高く抱げる。




    初めて。優太は、私よりも大人なんだと感じた。


    まったく‥。


    その成長の速さには、驚かされてしまうよ。





    (携帯)
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■9485 / ResNo.52)  34
□投稿者/ 菜々子 一般♪(45回)-(2005/05/15(Sun) 22:21:46)

    「おっ許してもらったか?」


    ドアの向こうから、清水さんのからかう声が聞こえてきた。


    「えぇ、まぁ一応。」


    あえて素っ気なく。


    本当は"良かった"と心から安心していたけど。


    「顔、ニヤけてるけど?」

    フッと鼻で笑われた。


    すかさず私はムスッと顔を歪める。


    「んな顔すんなって。でさ、気分いい所悪いんだけど‥」


    「なんですか?」


    「亜紀、今日休みだって。」


    えっ‥?


    亜紀の名前が出た途端、


    ちっぽけな私の心が揺れた気がした。


    「ってことで、最後まで宜しく。」


    清水さんは困ったように笑うと、優しさに溢れた手を私の肩にかける。


    「‥わかりました。」

    「飲みに行くのは、そのあとで。」


    ポンポンと二三度、肩を叩くと、そう言い残し教室を後にした。



    風邪だ。きっと。


    そう、自分に言い聞かせる。



    休みなんて誰にでもあるだろう。




    ‥けれど。昨夜見せた亜紀の悲しい笑顔。




    思い出して。


    胸が苦しくなるのは何故なんだろう。





    (携帯)
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■9487 / ResNo.53)  こんばんわ〜^^
□投稿者/ 純 一般♪(3回)-(2005/05/15(Sun) 23:04:21)
http://ganbare.k-server.org/index.html
    初めまして〜♪ずっと読ませていただいてました(^^)とてもおもしろいです!
    これからも頑張ってください(´∀`)
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■9508 / ResNo.54)  純さん
□投稿者/ 菜々子 一般♪(46回)-(2005/05/16(Mon) 23:05:56)
    こんばんわ☆そして初めまして♪読んでくれてありがとうございます(*^o^*)

    はい、頑張ります♪完結までお付き合い頂けますと嬉しいです☆☆

    実は‥ココまで長いお話書くのは初めてなんです(苦笑)だから、読んでくれている方がいるのは本当に嬉しくて。励みになります☆

    感想、ありがとうございました♪

    (携帯)
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■9509 / ResNo.55)  35
□投稿者/ 菜々子 一般♪(47回)-(2005/05/16(Mon) 23:06:39)

    ‥お姉さん、遅いなぁ。



    おにぎりを食べてからも、私はお姉さんの部屋に居た。


    この幸せな気持ちで学校に行くのは、もったいない。そんな感じがしたから。


    で、お姉さんの帰りを待っているわけだけど。


    「遅いっっ!」


    早く逢いたいのに。


    逢って抱き締めてもらいたいのに。


    お姉さんが帰ってくる気配はなくって。



    「今日早番なはずじゃーん。何で帰ってこないんだよォ‥」


    なんて一人でブツブツ。



    「どーしよ。」


    帰ろっかなぁ。

    そう思い、バックに物をつめ始めた瞬間。


    ―ブー―
    っと。古くさい音のインターホンがなった。


    「あっ☆」


    お姉さんが帰ってきた☆なんて疑いもせずに思い。


    駆け足で玄関の扉を開ける。


    「おかえり☆な‥‥さい?」


    よーく考えて。


    お姉さんだったら、鍵あるもんね。


    わざわざインターホン鳴らしません。


    と言うことに気付きました。


    で、私の目の前に立っていたのは知らない女の人。


    開けてしまってからでは、もうどうにもならない。


    他人と話すのは苦手なのに。


    「あれ‥ココ木村さんのお宅じゃありませんか?」


    どうしよ‥。


    どう対応すればイイのか分からない。
    しかも‥美人だ。


    ドアノブを握り締めたままの私の手。
    開いた口が塞がらない。



    「ねぇ?」


    彼女は不思議そうに首を傾げる。


    「あっはい!そうです!」


    明らかに挙動不振な自分。
    クスッと笑われてしまった。


    「良かった。柚羅はいます?」


    お姉さんを"柚羅"と呼ぶその女性は、


    綺麗な長い茶髪に、綺麗な瞳。
    筋の通った鼻と、形のいい唇。


    「あっ‥まだ仕事で‥。」


    「あら‥そう。」


    おまけに声まで透き通っている。


    彼女は残念そうにそう言うと、ジッと私を見つめた。


    「?」
    「あなたは?」



    ‥どうしよう。


    他人と話すのは苦手だ。





    (携帯)
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■9523 / ResNo.56)  36
□投稿者/ 菜々子 一般♪(48回)-(2005/05/17(Tue) 20:47:44)

    「はーい。さよなら。」


    最後の子のお迎えがきて、私は笑顔で手を振る。


    一人足りないだけで、仕事の量はかなり増える。


    「んーっ。」


    疲れた方を自分の手で優しく揉む。


    右・左・右。



    「あー終わったー」


    教室に戻ると、清水さんが床に寝転んでいた。


    起きる気力もないのか、寝たままで。


    「どうします?行きますか?」


    見るからに、かなり体力を消耗した模様。


    お疲れさまです。


    「行きたいー!」


    チラッと私のほうを見た彼女は、子どものようにジタバタし始める。


    「わかったわかった。わかりましたから。
    じゃあ行きましょう?」


    少し呆気にとられたが、
    思わず笑ってしまった。


    清水さんは人を笑顔にするのが巧い。と改めて思う。


    「でも疲れたー!」

    「どっちですか‥」

    「んー‥行く!」


    まるで甘えてるみたい。

    なんとなく、私との会話のやり取りを楽しんでいるようにも感じた。


    変わった人。



    「よっ。」

    と、清水さんは起き上がり、ニコッと笑った。


    「さて、行きますか☆」


    そう言い、そそくさと教室を出る。
    私はその後ろをついて歩く。



    歩きながら。


    話って何なのか‥。



    予想はつくけど。



    どうやって言葉にすればイイのか。

    その答えを探していた。





    (携帯)
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■9537 / ResNo.57)  37
□投稿者/ 菜々子 一般♪(49回)-(2005/05/18(Wed) 20:13:37)

    「あーえっと‥」


    言葉につまる。

    「あなたは?」なんて問に、どう答えればいいんだ。


    ‥言葉が見つからない。


    どうしたらいいのかわからずに、目の前の女性を見上げると。

    彼女は薄らと笑みを浮かべていた。



    「友達‥にしては歳が離れているわね。」


    まるでからかうような視線。


    「恋人、かしら?」


    そう言って長い指を私の胸の真ん中へ立てると、
    「当たりでしょ?」と言うような目をむける。


    ドキッとした。


    「‥違います。」


    何にドキッとした?


    わからない。けれど答えは正しい。



    「本当に?」



    本当?

    ねェ‥あなたが私を、お姉さんの恋人だと思うのはどうして?


    どうしてそんな風に思うの?


    「‥違います。」


    そう。私は恋人じゃない。恋人ではない。


    自分の声が、消え入りそう。弱々しく響いている。


    「そうなの。」


    彼女は困ったように笑うと、指をそっと撫でおろした。



    前にお姉さんが言っていた事が頭をよぎる。



    『一度だけ恋人がいた時があったよ。』



    酔っ払ってた。
    笑ったフリをしていた。
    悲しい瞳をしていた。



    何でこんなに綺麗なのに、恋人がいないんだろうって疑問だった。



    「‥あなたは?」



    一体誰なの?



    ダレナノ?






    (携帯)
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■9578 / ResNo.58)  38
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(50回)-(2005/05/20(Fri) 21:59:48)

    「‥今暇?」

    彼女はスッと息を吸い込むと、内緒話のように声を潜めた。


    「えっ?」

    「おなか、すいてない?」


    半ば強引に私の腕を掴むと、耳元にその綺麗な形の唇を寄せる。


    「ご飯食べに行きましょう?」


    甘く、甘く囁かれた。


    戸惑う自分。


    返事もしないうちに彼女が私の背中を押した。


    「準備して。」


    ニコリと笑うと、扉の前で腕を組む。

    チラっと時計を見てから。


    「5分でね。」


    「えっ?」


    何だ、何だ。

    私は「行く」と一言も言っていないのに。


    けれど彼女は私を待っている。


    「‥。」


    少し悩んで。少し呆れた。


    バックの中に、持ってきたものをつめ直し息を吸い込む。


    サイドテーブルに置いたままの鍵を握り締めてから


    「‥できました。」


    扉のむこうの彼女に言った。


    「もう?早いわね。じゃあ‥行きましょうか。」


    少し微笑むと、歩き出した彼女。

    私も玄関を出て、お姉さんの部屋の鍵をしめる。


    ―ガチャ―


    静かな闇に鍵音が響く。

    夜の風はまだ冷たい。



    駐車場に行く前に、管理人さんの部屋に寄った。


    もちろん、鍵を返すために。


    そんな私を、彼女は不思議そうに見つめていた。



    不安。


    好奇心。


    不安。



    二つの思いが私の胸をかき乱す。
    けれど、黙っていたってどうにもならないから。


    私は彼女の後ろを歩いて行った。




    (携帯)
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■9629 / ResNo.59)  39
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(51回)-(2005/05/22(Sun) 20:48:01)

    「で、どうよ?」

    「だから何がですか‥。」


    さっきから、ずっとこの調子。


    今日は清水さんの行きつけのバーで、いつもの居酒屋とは違った雰囲気。


    カウンター席に、私と清水さんは並んで座っていた。


    「あたしに隠し事する気?」


    薄暗い、オレンジ色の照明が店内を照らす。


    いまいち、彼女の表情が読み取れない。


    「別に話すような事じゃないと‥。」


    正直、何を話せばいいのかがわからないから。


    「悩んでるくせに。」


    だろ?みたいな目をしながら、淡い水色のカクテルを口に運ぶ。


    「亜紀のこと、でしょ?」

    そう言って首を右に傾けて見せる。


    うーん―‥


    「まぁ‥はい。」

    答えた笑顔がひきつってしまう。


    「好きなの?」


    ストレートな質問。
    なんて答えればいいんだ。


    戸惑い、答えられない私は目の前のグラスをつついた。


    「まだ引きずってるんだ?」


    疑問系。
    しゃれた感じのBGMがやけに耳に響く。


    覗き込むような清水さんの瞳とこの店の雰囲気が。


    何故か私を切なくさせる。


    「引きずっているつもりは無いんです。」


    うん。と心の中で頷く。
    自分の中では整理できたはずだから。


    でも‥


    「携帯が鳴るたびに思い出しちゃうんですよ。」


    来るはずがない電話。
    わかっているのに。


    そう言ってかわいた笑いをあげる。


    ソレを見て清水さんは困ったように笑うと、


    「まだ綾香の事が好き?」



    またまたストレートに。


    私は少し悩んでから、赤く光るグラスを口に運ぶ。


    「‥よくわからないです。けど‥」


    グラスを置き、小さく息を吸う。


    「けど、何?」

    「綾香を思い出すのは‥辛い。」


    それが正直な気持ちで。
    胸が、苦しくなる。


    綾香を思い出すたびに、私の心は乱される。



    私の愛しかった人。



    綾香は



    もう何処にもいないから。






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