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■6212 / 2階層)  Necessity(2)
□投稿者/ 楓夏 一般人(3回)-(2010/02/28(Sun) 23:44:54)
    聖の予想通り、部署全員の人が集まる時間である8時に、全員が手を止めて前を見るように部長から指示を受けた。



    「はい、みんな手ェ止めてこっち見てや〜!」



    部長の浅木時雨は関西出身の女部長で、男女の比が4対6であるこの会社では特に珍しくもない。
    ショートカットの黒髪と赤い縁の眼鏡が印象的で、中国語と英語、フランス語を習得している優等生だ。
    そんな時雨の指示通り、各自パソコンに打ち込んでいたりファイリングしていたりした手を止めて、一斉に前を向いた。
    そこには大きな窓を背景に立っている時雨と、その隣に見知らぬ女性が2人立っていた。
    1人は切れ長の目と胸元までの綺麗な黒髪から、大和撫子や金持ちのお嬢様を連想させる美人な女性。
    もう1人はセミロングの茶髪を緩やかにカーブさせた、色気たっぷりのお姉さん、といった雰囲気の女性。



    「隣の部署から今日付けで異動になった、神埼雅さんと四ノ宮杏子さんや。みんなよろしくしてな!」



    そしてその明るい良く響く声に促されて、まずは黒髪の方から薄い唇を開いた。
    全員が静まり返って本人達の挨拶を待ち望む。



    「初めまして。本日から異動して来ました、神埼雅です。関西出身です」


    「初めまして、四ノ宮杏子です。よろしくお願いします」



    関西出身という事は時雨と同じで多分関西弁を喋るのだろうが、気を使っているのか使わないのか、標準語だった。
    2人は時雨にまたも促されて、指定された席へと着いた。聖の後ろと斜め右前だ。
    そして視線を合わせる事も言葉を交わすことも一切ないまま、そのまま仕事の続きを再開させた。














    時計の長針が12という数字を若干過ぎた頃、社内中に昼休憩を知らせる間の抜けた明るい音楽が鳴り響いた。
    それを合図に社員達は自分達の仕事を一時中断させ、社内の食堂か近くの店で昼食を済ませるのだ。
    聖もずっと向かい合っていたパソコンを閉じると、財布を入れたカバンを持って立ち上がった。



    「聖ちゃん、今日一緒に食べない?」



    ちょうど椅子をきちんと閉まっている時に、同じくショルダーバッグを肩に掛けた理恵に声を掛けられた。
    最近一緒に昼食を食べていなかったが、以前はよく一緒に食べていた仲である。少し迷っている聖に理恵は笑顔で言った。



    「近くにオススメの美味しいレストランが出来たから、一緒に食べたいの。駄目?」



    先輩でもありこんな可愛い女性に駄目?と言われて、駄目です、と言える訳がない。
    1人で食べようか、それともこの人と一緒に食べようかと迷っていた聖は、その言葉に頷いた。
    そして、理恵に連れられて近くのお洒落なレストランへと行く事になった。










    「お待たせ致しました、ランチAセットとBセットです」



    ウエイトレスの制服を着た女性がお盆に乗せたランチのセットを運び込んできた。
    1番奥の窓際の席に座った2人以外に、同じ会社の社員は1人もこのレストランには来ていないようだ。
    聖が頼んだのはAセットで、ライスとハンバーグとスープとサラダ、おまけにアイスとコーヒー付きで800円。
    Bセットを頼んだのは理恵で、パンとエビフライ、スープとサラダとコーヒーで750円。
    料理の内容にしては安く提供してくれるレストランらしく、結構繁盛しているのだろう、店内は空いている席が少ない。
    味も美味しく、グルメな理恵が薦めるレストランだけあって流石だ、と内心絶賛していた。



    「ね?来て良かったでしょ?」


    「・・・はい、美味しいですね、ココ」



    食事中、あまり会話を交わさない2人だったが、ゆったりと落ち着いた時間だった。
    聖がコーヒーを飲み終わってカップをテーブルに置くのと同時に、理恵が突然思い出したように口を開いた。



    「ああ、そういえば聖ちゃんは彼氏とか、いないの?モテそうなのに」


    「いえ・・・全然。モテればよかったんですけど、気になる人もいないし」


    「勿体無いわよ〜?こんなに聖ちゃんは可愛いのに、気が付かない男はよっぽど目が節穴なのね!」


    「そうでもないと思いますよ、私って人見知りだし、別に可愛くも何ともないんで」


    「そう思うのは聖ちゃんだけよ!私は少なくともとっても可愛い女の子だと思うわよ、聖ちゃんの事」



    こうやって誰でも励ませる優しい女性が、同性にも異性にも人気があって好かれるのだろうと聖は思った。
    理恵は友達が多く、違う部署にも他社にも友達がいて、社内でも数人の異性が理恵の事を前々から狙っていたのを知っている。
    だから彼女が結婚する、というニュースを聞いて、どれぐらいの人が肩を落としてショックを受けたのか本人は知らないのだろう。
    でも実際、聖はそんな本当のお姉さんのような理恵の事が嫌いではなく、寧ろ好きだった。



    「じゃ、もうそろそろ帰りましょうか」



    そう言われて、それぞれ別に会計を済ませると来た道を戻って会社へと帰って行った。
    もう雨はとっくに止んで、道路はじめじめしていたが、空は青く晴れ渡って太陽が顔を覗かせていた。














    夜、7時過ぎ。
    本来ならもうそろそろ仕事が終わり、あの1人暮らしの寂しいマンションに帰る支度をしている時間だ。
    しかし、今日はこの時間になっても帰れそうにはなっていない。今だ企画書と報告書が出来上がっていないのだ。
    企画書はもう少しで出来上がりそうだが、出来上がったとしても報告書がまだ済んでいない。
    みんながお疲れ様でした、と言い残して帰って行く中、聖はパソコンに向かっていた。
    大抵の人が帰って行ったためにもう自分だけだろうな、と思い辺りを見渡してみると、自分だけではない事に気が付いた。
    今日異動してきたばかりの神埼雅が、まだ聖と同じようにパソコンに向かって文字を打ち込んでいた。



    「・・・・・・」



    背筋を伸ばした綺麗な姿勢でパソコンに向かう後ろ姿は、やっぱり美人である事を思わせる。
    多分理恵と同じように、異性に人気があるんだろうな、と思う。もう既に昼休憩には気を持った異性がいたからだ。
    しばらくはその背中を見つめていたが、特に言う事も何もなく、仕事をさっさと終わらせようと再度パソコンと向き合った。



    「・・・・・うちの背中に何か付いてた?」



    さあ続きをしよう、とキーボードに手を添えた瞬間、後ろから雅の声がした。
    バッと後ろを振り向くと、足を組んでこちらを微笑みを浮かべた顔で見つめてくる雅の姿があった。

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