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■6213 / 3階層)  Necessity(3)
□投稿者/ 楓夏 一般人(4回)-(2010/03/01(Mon) 00:21:31)
    外見とは異なった印象を与えるその口調に少なからず聖が驚いていると、ふう、と溜息を付いた雅が頭に手をやった。
    そしてそのまま一気に髪を掴んだ手をずらすと、その手と一緒に髪の毛がずるり、と下へずれ落ちた。
    その下には、同じ黒い髪だが時雨のようにショートに整えられた髪があった。
    意味が分からない行動にぽかんと唖然としていた聖に、雅はにやりとした怪しげな笑みを送る。



    「ああ、コレな。別に切るのを失敗したとかじゃないねん。ただイメチェンしたかっただけや。でも暑苦しいな」



    そう言うと雅は、自らが取り外したその黒く長い髪の毛を、自分のカバンにどうでもいいような感じで入れた。
    そしてパンツスーツに包まれた足を組みかえると、じっと聖の目を覗き込むように今度は無言で見つめる。
    何がなんだか分からない、予測が付かない雅の奇妙な行動に混乱と戸惑いを覚えながらも、聖はじっと相手を見つめ返す。
    しかし、あまりにも長い時間聖の事を見つめてくる彼女の視線に、照れ屋な聖は耐えられなくなって視線を逸らした。



    「・・・・クククッ、面白い子やね、アンタ。普通何なんですかとか言うもんやないの?」



    雅は手を口に添えて喉の奥で聖の事を笑った。その行動に、聖の鼓動は休息に高まり、速まった。
    ・・・・・・あまりにも、前の恋人の笑い方に似ていたから。
    前の恋人、というのは男性ではない、女性、つまり同性だ。昔付き合っていた彼女の笑い方と似ているのだ、それが。
    聖があまりにも似ている笑い方に息を呑むと、おや、と雅は笑いを止めて声を漏らした。



    「その反応はもしかして・・・・・元彼にでも笑い方が似とったんか?」



    その鋭過ぎるほど鋭い雅の勘に対して聖が驚きを隠しもせずに顔に表すと、雅はまたあの笑い方で笑った。
    本当にこの人は一体何なんだと不機嫌になった事をこれまた隠しもしない聖に、更に雅は笑う。



    「分かりやす過ぎやねん、アンタ。すぐ顔に表情が出るんやな」



    そう言って雅はパソコンの電源を切ってパソコンを閉じると、カバンを肩に掛けて立ち上がった。
    今だむっとした表情を浮かべていた聖に向かって、にやりと意地悪そうな笑みを向ける。



    「バイバイ。また明日な」



    雅が手を振りながらその場を後にした後も、聖の脳裏からは意地悪そうな雅の笑みと低く呟くように言われたのが離れなかった。
    そしてようやくの思いで仕事を終えて会社を出たのは、それから1時間も後の事だった。














    8時半過ぎにマンションに帰ってきた聖は、夕食も食べずに疲れたのかベッドにどさりと倒れこんだ。
    シャツに皺が寄るのもスーツに皺が寄るのも気にせずに、ただ白いシーツの中に顔を埋めた。
    しばらくその格好で寝転んでいた聖だったが、ようやく動く気になったのか起き上がると服を着替えた。
    だがやはり夕食を食べないまま、その日はずっと朝までシーツに顔を埋めて寝転んでいた。



    「・・・・・・」



    雅の別れ際のあの笑みと声が頭からずっと離れずに何度も何度も繰り返し再生され、そわそわと落ち着かない。
    こんな事は今まで経験した事がなく、どうやったら雅のあの姿を忘れられるのかが分からない。
    思い出されるたびに身体の奥がじん、と熱くなり、頭の中が火照るような混乱するような感覚に陥るのだ。
    今日初めて会った雅にどうしてここまで自分の事を乱されなければならないのか、聖は少し苛立ちを覚えながらも一夜を過ごした。














    一睡も1時間も眠れていない聖はそのまま着替えると身だしなみを整え、会社へと出勤した。
    本当は睡眠を得たいのだが、なぜか全く眠れないのだ。理由は聖本人にも全く心当たりがないため分からない。
    今だ熱を持って疼く傷口を気にしながらも、新しく取り替えた包帯とガーゼを隠すようにして自分の席に着席した。
    聖はそんなに遅い方ではなく、寧ろ出勤は早めな方だ。しかし、理恵も雅も杏子ももう既に出勤して仕事を行っていた。



    「おはよう、聖ちゃん」



    聖が出勤して来た事に気が付いた理恵が、手を止めていつものようににこやかに出迎えてくれた。
    それに対して微笑みで返した聖は、ちらりと何やら書類を読んでいる杏子の方を見やった。
    杏子はクリップでまとめた分厚い書類に目を通していた視線をちらり、と聖の方へと向けると、にこりと笑みを浮かべた。
    その笑みにつられるように軽く会釈を返した聖は杏子への視線を外すと、確認のために自分の昨日作成した書類へと落とした。
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