SMビアンエッセイ♪

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

■6216 / 4階層)  Necessity(4)
□投稿者/ 楓夏 一般人(6回)-(2010/03/02(Tue) 23:13:24)
    10時を過ぎた頃、聖は杏子と一緒に部長である時雨の机の元へ彼女に大声で呼び出された。
    何かと思いながら仕事を止めて彼女の元に行くと、パソコン画面に目を通していた時雨に言われた。



    「お、来たか!いや〜実はなあ、聖に杏子の教育係を任されて欲しいねん。本当はうちがやるべきやろうけど、忙しくて。あかん?」



    確かに時雨が自分で言う通り、部長という立場にいるからには仕事だって沢山あるし、出張や会議もあるため忙しい。
    それに勝手に聖が目標の女性としている時雨に頼まれては、珍しいのもあるが断れるわけが無かった。



    「はい・・・・いいですよ」


    「おお、引き受けてくれるか!じゃあ頼んだで!うちはこれから出張で九州や!」



    どこから取り出したのか、多分机の下から取り出した白のキャリーバッグの車輪を転がしながら、時雨は早足で部屋を去って行った。
    取り残された聖と杏子だったが、仕事もまだ残っているし、教える事が無いわけではない。
    しばらく呆然としていたが、聖は白いスーツを綺麗に着こなしている杏子の方を向いた。



    「私なんかが教えるなんて不安かもしれませんが・・・・よろしくお願いします」


    「いえいえ、聖さんて何だか頼りがいがありそうだし・・・・こちらこそよろしくお願いします」



    10時を過ぎているのを腕時計で確認した聖は、まずはコーヒーを淹れる事を杏子に教える事にした。
    この部署では10時と3時に誰気が付いた人、手が空いている人が率先してコーヒーを淹れる事になっている。
    杏子を連れて行って部屋の奥にある扉を開けると、その奥には冷蔵庫やガスコンロなど、給仕に必要なものが置いてある。
    聖は杏子にものの場所を教えながら、今日来ている同じ部署の全社員の人数分のコーヒーを淹れる準備を整えていく。



    「聖さんて、失礼ですけどおいくつですか?」


    「私・・・・?私は26歳ですよ。もうすぐ三十路に入っちゃうんです」


    「そうなんですか!?私と同い年なんですね!嬉しいわ」



    実は聖と部署は違ったが同期で入社していた杏子は、聖とは同じ年齢だったのだ。
    それで一気に2人の仲は順調に深まっていき、今夜は仕事帰りに一緒に夕食を食べる約束をするまでになった。
    コーヒーを人数分淹れた聖と杏子は、砂糖とミルクが入った小さな籠と一緒に各社員に配り、そして自分の仕事に戻った。














    7時過ぎ、仕事を終わらせた聖と杏子は、電車に乗って少し離れた和風の料理店に訪れていた。
    2人の家が正反対の位置にあったため、中間地点で夕食を食べる事になって携帯で調べてみた、2人とも初めての店だ。
    松や梅が綺麗に整えられた庭を囲むようにして建てられた和風の平屋。庭が見えるように中央部はガラス張りになっている。
    店自体の雰囲気はとても落ち着いた静かな店で、聖の好みの店だった。小音量で音楽が流れる店内は、癒される雰囲気を醸し出している。



    「とてもいいわね、このお店。今度他の友達も連れて来ようかしら」


    「私も気に入ったかも」



    刺身や茶碗蒸し、天ぷらといった和食の夕食を赤い箸で食べながら、まったりと座敷で2人で話をする。
    聖は大学に6年間通ってカウンセラーの資格を取得している事、結婚願望など恋愛に対する興味が今はあまりない事。
    杏子は大学は海外の大学に4年間通い、数カ国に留学経験がある事、聖と同じく、今は恋愛に対する興味があまりない事。
    2人は今日の朝に仲が深まったばかりだというのに意気投合し、会話を弾ませていたが、時間には限りがある。
    ご飯を食べ終わり会計を済ませ、電車で会社の最寄の駅に着くと、名残惜しい気もしながらそこで別れた。



    「じゃあまた明日ね、杏子」


    「ええ、また明日。おやすみなさい」



    自分のマンションに帰った聖は、包帯とガーゼを取り替えて傷口の消毒をすると、服を着替えてベッドに横になった。
    今日は何だか寝れそうな気がしていたが、電気を消して布団に潜り込んで数分が経過しても、やっぱり今日も眠りには辿り着けない。
    せわしくごろごろと何度も寝返りを打って左右に動きながら、カーテン越しに入ってくる月明かりを見つめていた。
    今夜もやっぱり、消毒して包帯とガーゼを取り替えたばかりだというのに傷口は疼いて熱を持っていた。



    「流石にやばいかな・・・・・・・」




    病院に行くのは嫌だから、という理由で精神科などには行った事はないが、自分の精神が普通ではないというのは分かっている。
    手首だけではなく、聖は高校生ぐらいの頃から足首や腕、胸元などを何回かカッターで自分で傷付けていた。
    高校生の頃から続いている不眠症もいつかは治るのが分かっているため、積極的に病院に行く気にはならなかった。
    結局、聖は冷蔵庫の中で冷やされていたペットボトルのミネラルウォーターを飲みながら夜を明かした。
記事引用 削除キー/

前の記事(元になった記事) 次の記事(この記事の返信)
←Necessity(3) /楓夏 →Necessity(5) /楓夏
 
上記関連ツリー

Nomal Necessity / 楓夏 (10/02/27(Sat) 23:43) #6209
Nomal Necessity(1) / 楓夏 (10/02/28(Sun) 00:43) #6210
│└Nomal Necessity(2) / 楓夏 (10/02/28(Sun) 23:44) #6212
│  └Nomal Necessity(3) / 楓夏 (10/03/01(Mon) 00:21) #6213
│    └Nomal Necessity(4) / 楓夏 (10/03/02(Tue) 23:13) #6216 ←Now
│      └Nomal Necessity(5) / 楓夏 (10/03/02(Tue) 23:43) #6217
│        └Nomal NO TITLE / 名無し (10/03/16(Tue) 01:56) #6220
Nomal Re[1]: Necessity / 沙耶 (10/03/02(Tue) 10:20) #6214
  └Nomal Necessity〜沙耶様〜 / 楓夏 (10/03/02(Tue) 22:24) #6215

All 上記ツリーを一括表示 / 上記ツリーをトピック表示
 
上記の記事へ返信

Mode/  Pass/

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

- Child Tree -