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「ただいまー」
鍵を開けて、少し疲れた声で言ってみる。
誰もいない部屋からは返事が返ってくるわけではないけど。 わかってても言いたくなるんだよね。
いつもより風が強くて、綺麗な雪も荒々しく見えていた今日は 冬の寒さ以外にも、何か他の、冷たさのようなものがある気がした。
部屋の電気をつけると 殺風景な様子が現われて、余計に冷たく感じてしまう。
チャラチャラと指で鍵を回していたら、鼻歌が自然と流れる。
♪
何かいい気分。
そのまま、コーヒーでもいれようかと思った。
〜♪
鞄の中が騒がしくなる。
あっ‥電話?
鍵をテーブルに置き すぐに鞄の中をあさってみるが、 焦っているとなかなか見つけだすことが出来ない。
やばっ切れちゃう!
〜♪――‥
「あっ。」
手探りでやっと見つけたのに。 切れちゃった。
「チェッ。」
静かになった携帯を開き、着信履歴を見てみる。
少しだけの期待が、私の胸を襲う。
けれど、 あぁ、また‥か。
―非通知設定―
うまい具合に期待が裏切られてしまう。
誰なんだろう。前からあったけど、最近は特に多いな。
「ストーカーかな?」
そんなことを呟いてみるが、本当は大して気にしていない。 だからそのまま鞄ごとソファに放り投げる。
何期待してんだろー。
なんとなく、そんな自分に嫌気がさした。
もう自分の心の中は整理したはずなのに。
ちゃんと受けとめられたはずなのに。
どうして私は。
(携帯)
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